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番外編〈第一部 終了ボーナストラック〉
番外編 メイドズ☆ブラスト episode5
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「──どちらか一方が降参、もしくは動けなくなったと判定員に判断された時が勝敗が決する時である。この大会ルールに乗っ取り、正々堂々と試合にのぞむことを両名、誓うか?」
「誓います」
「はい」
ようやく、試合前の宣誓が終わり、私とエミリが闘技場の真ん中へ出てくると場内、割れんばかりの歓声が沸きおこった。
「獲物は?」
観衆が今か今かと固唾を飲んで試合開始を待ち望むなか、大会主催者の用意した武器がところ狭しと並べられた机の前にまず私たちは連れていかれた。そして、この中から好きなものを選ぶように促される。
毒を仕込んだ武器などの不正を防ぐため、この大会では自前の武器の使用は禁止されているのだ。
「あたしはその長剣にする」
エミリは即座に大振りの剣を選んで私に刃先を向けた。
「そのふざけたアーマーをこれで切り刻んであげるわ」
「……剣か。私、剣はあまり得意じゃないのよねぇ~」
私はため息をつきながらエミリと同じ長剣を手に取った。
私より上背があり、ゴツゴツと筋肉が盛り上がった体格のいかにも女闘士といったエミリに比べ、小柄な私は力勝負になると大剣はかなり分が悪い。
重たい剣を振り回すだけで体力を消耗してしまうからだ。
ルール上、別に他の武器を選ぶことも出来た。
だけど、問題はこの動きにくい、露出の多いアーマー。
防御を考え、また自信満々のエミリの鼻っ柱をへし折ってやろうと私も長剣を選んでみたんだけど。
うう~ん。
さて。
これが吉と出るか、凶と出るか……。
ま、勝負はやってみないとわからないわよね。
「両者、前へ」
試合開始! の笛が鳴ると同時に大剣を振りかざし、エミリは私に凄い形相で打ちかかってきた。
私はそれをさっと鞘を投げ捨て、迎え撃つ。
「チャンピオンは今日からあたしだ! この露出狂のチビ!」
「だから好きでこれを着てるんじゃないっていうのに……」
ガンガンと斬り込んでくるエミリの剣をげんなりしながら軽く受け流し、私は後ろに素早く飛び退く。
それを繰り返しているうち、エミリの息が激しくあがってきた。
「ちょこまかと……このチビネズミが!」
苛々したエミリは剣を振りかざして威嚇した。
「可愛いネズミさんでしょ?」
私はブリッコポーズで挑発してやった。
「このぉ!」
力任せに振り下ろされる、エミリの上段からの渾身の一撃を私は真正面から受けとめた。
「つぅ……」
逞しい体格のエミリの一撃を受けた両手がジィンと痺れる。
「全く、馬鹿力ねぇ」
「ほざけ!」
エミリは受けとめられた刀をすかさず引き、突きへ転じる。
それをヒラリと余裕で軽くかわすと、私は再び受けへまわった。
次々と濃厚な殺気とともに繰り出されるエミリの剣先を受けては流す。
「ふーん」
剣術の道場出身者らしく、エミリの太刀筋は悪くなかった。一撃でも食らってしまったら流石の私も無傷では済まないだろう。
「マリン! さっさと勝負をつけろ!」
「エミリ! マリンのアーマーを脱がしてやれ!」
「いいぞ! 二人とも脱げ!」
スケスケコールだった観衆のヤジも熱い試合を見てヒートアップしていく。
「私は脱がないわよ」
私は苦笑すると一気に胸元に踏み込み、剣先でパッと突き入れて刃先を上にして思いっきり跳ね上げた。
私の剣先にかすられてエミリのマントの留め金がバチン! と弾け飛ぶ。
わぁぁぁぁ! っと大喝采が嵐のように観客席から巻きおこった。
「くそっ!」
エミリはマントと一緒に切り裂かれた上着の止めヒモを押さえ、悔しそうに吠えた。
「あらぁ、結構派手なの着てるのねぇ。これが本当の勝負下着ってやつ?」
上着がめくれ上がり、エミリの赤いフルカップの下着がはみ出していた。
「ゆっ、許さんぞ! マリン・ハーランドぉぉぉ!」
怒りで震えるエミリ。
「それぐらいで怒ることないじゃない。私なんかこんな格好してるんだから……ババくさいブラがちょっと見えたぐらい、どうってこともないってば……」
「うるさい、うるさい、うるさぁぁぁ~いっ!」
私の慰めを無視して、エミリは突如闘技場の壁を猿のように俊敏な動きでよじ登った。
「……何!?」
「くらえ、 クソチビっ!」
エミリは壁の上で素早く縦に剣を構え、私の頭上目がけて思いっきり空を──跳んだ。
「誓います」
「はい」
ようやく、試合前の宣誓が終わり、私とエミリが闘技場の真ん中へ出てくると場内、割れんばかりの歓声が沸きおこった。
「獲物は?」
観衆が今か今かと固唾を飲んで試合開始を待ち望むなか、大会主催者の用意した武器がところ狭しと並べられた机の前にまず私たちは連れていかれた。そして、この中から好きなものを選ぶように促される。
毒を仕込んだ武器などの不正を防ぐため、この大会では自前の武器の使用は禁止されているのだ。
「あたしはその長剣にする」
エミリは即座に大振りの剣を選んで私に刃先を向けた。
「そのふざけたアーマーをこれで切り刻んであげるわ」
「……剣か。私、剣はあまり得意じゃないのよねぇ~」
私はため息をつきながらエミリと同じ長剣を手に取った。
私より上背があり、ゴツゴツと筋肉が盛り上がった体格のいかにも女闘士といったエミリに比べ、小柄な私は力勝負になると大剣はかなり分が悪い。
重たい剣を振り回すだけで体力を消耗してしまうからだ。
ルール上、別に他の武器を選ぶことも出来た。
だけど、問題はこの動きにくい、露出の多いアーマー。
防御を考え、また自信満々のエミリの鼻っ柱をへし折ってやろうと私も長剣を選んでみたんだけど。
うう~ん。
さて。
これが吉と出るか、凶と出るか……。
ま、勝負はやってみないとわからないわよね。
「両者、前へ」
試合開始! の笛が鳴ると同時に大剣を振りかざし、エミリは私に凄い形相で打ちかかってきた。
私はそれをさっと鞘を投げ捨て、迎え撃つ。
「チャンピオンは今日からあたしだ! この露出狂のチビ!」
「だから好きでこれを着てるんじゃないっていうのに……」
ガンガンと斬り込んでくるエミリの剣をげんなりしながら軽く受け流し、私は後ろに素早く飛び退く。
それを繰り返しているうち、エミリの息が激しくあがってきた。
「ちょこまかと……このチビネズミが!」
苛々したエミリは剣を振りかざして威嚇した。
「可愛いネズミさんでしょ?」
私はブリッコポーズで挑発してやった。
「このぉ!」
力任せに振り下ろされる、エミリの上段からの渾身の一撃を私は真正面から受けとめた。
「つぅ……」
逞しい体格のエミリの一撃を受けた両手がジィンと痺れる。
「全く、馬鹿力ねぇ」
「ほざけ!」
エミリは受けとめられた刀をすかさず引き、突きへ転じる。
それをヒラリと余裕で軽くかわすと、私は再び受けへまわった。
次々と濃厚な殺気とともに繰り出されるエミリの剣先を受けては流す。
「ふーん」
剣術の道場出身者らしく、エミリの太刀筋は悪くなかった。一撃でも食らってしまったら流石の私も無傷では済まないだろう。
「マリン! さっさと勝負をつけろ!」
「エミリ! マリンのアーマーを脱がしてやれ!」
「いいぞ! 二人とも脱げ!」
スケスケコールだった観衆のヤジも熱い試合を見てヒートアップしていく。
「私は脱がないわよ」
私は苦笑すると一気に胸元に踏み込み、剣先でパッと突き入れて刃先を上にして思いっきり跳ね上げた。
私の剣先にかすられてエミリのマントの留め金がバチン! と弾け飛ぶ。
わぁぁぁぁ! っと大喝采が嵐のように観客席から巻きおこった。
「くそっ!」
エミリはマントと一緒に切り裂かれた上着の止めヒモを押さえ、悔しそうに吠えた。
「あらぁ、結構派手なの着てるのねぇ。これが本当の勝負下着ってやつ?」
上着がめくれ上がり、エミリの赤いフルカップの下着がはみ出していた。
「ゆっ、許さんぞ! マリン・ハーランドぉぉぉ!」
怒りで震えるエミリ。
「それぐらいで怒ることないじゃない。私なんかこんな格好してるんだから……ババくさいブラがちょっと見えたぐらい、どうってこともないってば……」
「うるさい、うるさい、うるさぁぁぁ~いっ!」
私の慰めを無視して、エミリは突如闘技場の壁を猿のように俊敏な動きでよじ登った。
「……何!?」
「くらえ、 クソチビっ!」
エミリは壁の上で素早く縦に剣を構え、私の頭上目がけて思いっきり空を──跳んだ。
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