アラフォーの悪役令嬢~婚約破棄って何ですか?~

七々瀬 咲蘭

文字の大きさ
102 / 150
番外編〈第一部 終了ボーナストラック〉

番外編 メイドズ☆ブラスト episode5

しおりを挟む
 「──どちらか一方が降参、もしくは動けなくなったと判定員に判断された時が勝敗が決する時である。この大会ルールに乗っ取り、正々堂々と試合にのぞむことを両名、誓うか?」
「誓います」
「はい」

 ようやく、試合前の宣誓が終わり、私とエミリが闘技場の真ん中へ出てくると場内、割れんばかりの歓声が沸きおこった。
 
「獲物は?」
 観衆が今か今かと固唾を飲んで試合開始を待ち望むなか、大会主催者の用意した武器がところ狭しと並べられた机の前にまず私たちは連れていかれた。そして、この中から好きなものを選ぶように促される。
 毒を仕込んだ武器などの不正を防ぐため、では自前の武器の使用は禁止されているのだ。


「あたしはその長剣ロングソードにする」
 エミリは即座に大振りの剣を選んで私に刃先を向けた。
「そのふざけたアーマーをこれで切り刻んであげるわ」

「……剣か。私、剣はあまり得意じゃないのよねぇ~」
 私はため息をつきながらエミリと同じ長剣を手に取った。

 私より上背があり、ゴツゴツと筋肉が盛り上がった体格のいかにも女闘士といったエミリに比べ、小柄な私は力勝負になると大剣はかなり分が悪い。

 重たい剣を振り回すだけで体力を消耗してしまうからだ。

 ルール上、別に他の武器を選ぶことも出来た。
 だけど、問題はこの動きにくい、露出の多いアーマー。


 防御を考え、また自信満々のエミリの鼻っ柱をへし折ってやろうと私も長剣を選んでみたんだけど。


 うう~ん。
 さて。

 これが吉と出るか、凶と出るか……。
 ま、勝負はやってみないとわからないわよね。


「両者、前へ」
 試合開始! の笛が鳴ると同時に大剣を振りかざし、エミリは私に凄い形相で打ちかかってきた。

 私はそれをさっと鞘を投げ捨て、迎え撃つ。

「チャンピオンは今日からあたしだ! この露出狂のチビ!」
「だから好きでこれを着てるんじゃないっていうのに……」
 ガンガンと斬り込んでくるエミリの剣をげんなりしながら軽く受け流し、私は後ろに素早く飛び退く。

 それを繰り返しているうち、エミリの息が激しくあがってきた。
「ちょこまかと……このチビネズミが!」
 苛々したエミリは剣を振りかざして威嚇した。
 
「可愛いネズミさんでしょ?」
 私はブリッコポーズで挑発してやった。
「このぉ!」
 力任せに振り下ろされる、エミリの上段からの渾身の一撃を私は真正面から受けとめた。

「つぅ……」
 逞しい体格のエミリの一撃を受けた両手がジィンと痺れる。


「全く、馬鹿力ねぇ」
「ほざけ!」
 エミリは受けとめられた刀をすかさず引き、突きへ転じる。

 それをヒラリと余裕で軽くかわすと、私は再び受けへまわった。
 次々と濃厚な殺気とともに繰り出されるエミリの剣先を受けては流す。

「ふーん」
 剣術の道場出身者らしく、エミリの太刀筋は悪くなかった。一撃でも食らってしまったら流石の私も無傷では済まないだろう。

「マリン! さっさと勝負をつけろ!」
「エミリ! マリンのアーマーを脱がしてやれ!」
「いいぞ! 二人とも脱げ!」
 スケスケコールだった観衆のヤジも熱い試合を見てヒートアップしていく。 


「私は脱がないわよ」
 私は苦笑すると一気に胸元に踏み込み、剣先でパッと突き入れて刃先を上にして思いっきり跳ね上げた。

 私の剣先にかすられてエミリのマントの留め金がバチン! と弾け飛ぶ。


 わぁぁぁぁ! っと大喝采が嵐のように観客席から巻きおこった。

「くそっ!」
 エミリはマントと一緒に切り裂かれた上着の止めヒモを押さえ、悔しそうに吠えた。

「あらぁ、結構派手なの着てるのねぇ。これが本当の勝負下着ってやつ?」
 上着がめくれ上がり、エミリの赤いフルカップの下着がはみ出していた。

「ゆっ、許さんぞ! マリン・ハーランドぉぉぉ!」
 怒りで震えるエミリ。
「それぐらいで怒ることないじゃない。私なんかこんな格好してるんだから……ババくさいブラがちょっと見えたぐらい、どうってこともないってば……」
「うるさい、うるさい、うるさぁぁぁ~いっ!」

 私の慰めを無視して、エミリは突如闘技場の壁を猿のように俊敏な動きでよじ登った。
「……何!?」

「くらえ、 クソチビっ!」
 エミリは壁の上で素早く縦に剣を構え、私の頭上目がけて思いっきり空を──跳んだ。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【12月末日公開終了】これは裏切りですか?

たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。 だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。 そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

永遠の十七歳なんて、呪いに決まってる

鷹 綾
恋愛
永遠の十七歳―― それは祝福ではなく、三百年続く“呪い”だった。 公には「名門イソファガス家の孫娘」として知られる少女キクコ。 だがその正体は、歴史の裏側で幾度も国を救ってきた不老の元聖女であり、 王家すら真実を知らぬ“生きた時代遺産”。 政治も権力も、面倒ごとは大嫌い。 紅茶と読書に囲まれた静かな余生(?)を望んでいたキクコだったが―― 魔王討伐後、王位継承問題に巻き込まれたことをきっかけに、 まさかの王位継承権十七位という事実が発覚する。 「……私が女王? 冗談じゃないわ」 回避策として動いたはずが、 誕生した新国王アルフェリットから、なぜか突然の求婚。 しかも彼は、 幼少期に命を救われた“恩人”がキクコであることを覚えていた―― 年を取らぬ姿のままで。 永遠に老いない少女と、 彼女の真実を問わず選んだ自分ファーストな若き王。 王妃になどなる気はない。 けれど、逃げ続けることももうできない。 これは、 歴史の影に生きてきた少女が、 はじめて「誰かの隣」を選ぶかもしれない物語。 ざまぁも陰謀も押し付けない。 それでも―― この国で一番、誰よりも“強い”のは彼女だった。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

公爵家の秘密の愛娘 

ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝グラント公爵家は王家に仕える名門の家柄。 過去の事情により、今だに独身の当主ダリウス。国王から懇願され、ようやく伯爵未亡人との婚姻を決める。 そんな時、グラント公爵ダリウスの元へと現れたのは1人の少女アンジェラ。 「パパ……私はあなたの娘です」 名乗り出るアンジェラ。 ◇ アンジェラが現れたことにより、グラント公爵家は一変。伯爵未亡人との再婚もあやふや。しかも、アンジェラが道中に出逢った人物はまさかの王族。 この時からアンジェラの世界も一変。華やかに色付き出す。 初めはよそよそしいグラント公爵ダリウス(パパ)だが、次第に娘アンジェラを気に掛けるように……。 母娘2代のハッピーライフ&淑女達と貴公子達の恋模様💞  🔶設定などは独自の世界観でご都合主義となります。ハピエン💞 🔶稚拙ながらもHOTランキング(最高20位)に入れて頂き(2025.5.9)、ありがとうございます🙇‍♀️

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

処理中です...