101 / 150
番外編〈第一部 終了ボーナストラック〉
番外編 メイドズ☆ブラスト episode4
しおりを挟む
「ほら、貴女もカルゾメイドなら覚悟を決めなさい」
ジリジリと迫るパロマ。
「くっ…… 嘘だ! こんなこと、ソーヴェさまがお許しになるハズがっ……」
私は低い呻き声をあげ、顔面に押しつけられた鎖帷子でつくられた赤いフンドシを払いのけた。
「本当よ。ノーザン商会で購入すると高くつくから私がアーマーを製作することについてお許しが出たの。ほら、あんたの大好きな執事長も決裁の判を押してるし」
「……うっ……!」
見慣れたカルゾ公主の決裁印を振りかざすパロマに怯む私。
「ま……でもそんなにこれが嫌だというならば、仕方ないわね」
「どーゆーこと?」
憮然と問い返す私に、パロマは片乳にニプレスをはりつけた胸を張った。
「あんたがそこまで嫌がるのはこちらも計算済みなのよ。ほら、最初にインパクトのある囮を見せて、予定通りの本命を承諾させる天才の作戦!」
「作戦言っちゃったら意味ないんじゃない?」
私のツッコミをまたしても無視したパロマは、マネキンの股にいきなり両手を突っ込んだ。
いやぁん!
ちょっと、この絵面ヤメテ!
マネキン相手に痴態を繰り広げるパロマに思わず赤面する私。
だって、私。いつでも素人童貞の執事長に捧げるつもりですけど、まだ処女なのよっ!
突然、パン! という音とともにマネキンがパカッと左右に割れた。
「わぁっ!」
パロマがそのマネキンの内部から得意満面、取り出したのは──メイド服?
「ほら、これならいつも着てるのと変わらないでしょ?」
「……どこが?」
パロマは私の言葉に不満げな表情を浮かべた。
が、すぐに気を取り直し、
「まぁ、とにかく着てみなさいよ」
と私の胴着を強引に脱がしにかかる。
「……ちょっ! ちょっと待ちなさいよ! 私はそれを着るとは一言も……」
「往生際が悪いわね、マリン。もう時間がないわ。あんたも戦わずして不戦敗になったら嫌でしょ?」
……そうなったらそれは誰のせいよ?
しかし、ツッコミをいれたところでゴキブリ並みにしつこいパロマが引き下がるわけはない。
「さ、お着替え、お着替え♪」
楽しそうに私の胴着を剥ぐとアーマーをガチャガチャと装着させていく。
「あのねぇ。決勝前に身内の心をへし折ってどうするのよぉぉぉ! ……うげぇっ! ねぇ、何よこれ。私、こんな破廉恥なの着たくないってば──!」
「だから、ほれ。これ見て見て。ソーヴェさまのご命令なんだからね♪」
普段は事務をしている私が決裁印に弱いことを知っているパロマは私の目の前でヒラヒラと書類をちらつかせる。
「うぐぐぐ……」
「ほら、試合開始五分前のベルが鳴ったわ! 急ぎなさいよぉ~」
ぐっと喉の奥へ抗議の言葉を飲み込んで、私は仕方なくパロマに着せられたアーマーのまま、試合会場に飛び出したのだった。
◇◆◇
「──ねぇ! ちょっと」
「何? マリンったらどうしちゃったのかしら……」
「しっ、きっと人には言えないような気の毒な事情があるんだよ……」
「ギャハハハ~、あれでメイド服のつもりかよ」
「いや、俺はアリだな。マリンちゃーん!」
………………!
イライライライラッ!
「あら。随分と支度にかかってると思ったら、あははは! 変なビキニアーマー着ちゃってさ。チャンピオンさん、もうあたしに勝ったつもり?」
ぷっちーん!
対戦相手のエミリのバカにしたような物言いに私の頭の血管がぶちギレた。
「……私だって好きで着てるんじゃないのよぉぉぉっ!」
変態に着せられたこの出で立ちは。
頭には白いメイドカチューシャ。
ショルダーはメイド服のようなバルーンスリープ。
首にはメイド服の襟とリボン。
ここまでは許容範囲だ。
問題はここから。
乳房の下方から申し訳程度に支える、メタルビキニトップ。
それが謎の素材、黒地に白いフリルエプロン状の透け透けミニワンピースからのぞく。
ビキニボトムもハイレグで、透けるメイドエプロンはもちろんそれを隠すという目的は殆んど達成されていない。
とにかく、全身が妙にスケルトンで落ちつかないアーマーだった。
こんなので闘うって……闘いに集中できるわけないじゃない!
「はい、皆の者。ちゅうもーくっ!! あれが本選に使用予定のビキニアーマーよ!
コンセプトはメイド服なんだけど、なんちゃって裸エプロン!? メイドさんの服の中身をのぞいてみたい! という沸き上がるみんなの熱い想いとロマンを叶える、私の自信作ビキニアーマーなの!」
いつの間にか観客席から、パロマが私を指さしてビシィ! と宣言していた。
「ぅおぉぉぉぉ……!」
「サイコーだせ!」
「いいぞ、いいぞ! もっとスケスケさせろぉ!」
パロマの周囲から男達の熱い雄叫びと拍手が沸き起こる。
なんじゃ、そのコンセプトはっ!
「ス~ケ、スケ!」
「ス~ケスケッ!」
いつの間にか、会場の声援はスケスケオンリーになってしまっていた。
「イケイケ、スケスケ」
「スケスケマリン!」
……おのれ、パロマめ! 結局変な呼び方されてるじゃないのよっ!
これが終わったら、覚えてなさいよぉぉぉぉっ!
ジリジリと迫るパロマ。
「くっ…… 嘘だ! こんなこと、ソーヴェさまがお許しになるハズがっ……」
私は低い呻き声をあげ、顔面に押しつけられた鎖帷子でつくられた赤いフンドシを払いのけた。
「本当よ。ノーザン商会で購入すると高くつくから私がアーマーを製作することについてお許しが出たの。ほら、あんたの大好きな執事長も決裁の判を押してるし」
「……うっ……!」
見慣れたカルゾ公主の決裁印を振りかざすパロマに怯む私。
「ま……でもそんなにこれが嫌だというならば、仕方ないわね」
「どーゆーこと?」
憮然と問い返す私に、パロマは片乳にニプレスをはりつけた胸を張った。
「あんたがそこまで嫌がるのはこちらも計算済みなのよ。ほら、最初にインパクトのある囮を見せて、予定通りの本命を承諾させる天才の作戦!」
「作戦言っちゃったら意味ないんじゃない?」
私のツッコミをまたしても無視したパロマは、マネキンの股にいきなり両手を突っ込んだ。
いやぁん!
ちょっと、この絵面ヤメテ!
マネキン相手に痴態を繰り広げるパロマに思わず赤面する私。
だって、私。いつでも素人童貞の執事長に捧げるつもりですけど、まだ処女なのよっ!
突然、パン! という音とともにマネキンがパカッと左右に割れた。
「わぁっ!」
パロマがそのマネキンの内部から得意満面、取り出したのは──メイド服?
「ほら、これならいつも着てるのと変わらないでしょ?」
「……どこが?」
パロマは私の言葉に不満げな表情を浮かべた。
が、すぐに気を取り直し、
「まぁ、とにかく着てみなさいよ」
と私の胴着を強引に脱がしにかかる。
「……ちょっ! ちょっと待ちなさいよ! 私はそれを着るとは一言も……」
「往生際が悪いわね、マリン。もう時間がないわ。あんたも戦わずして不戦敗になったら嫌でしょ?」
……そうなったらそれは誰のせいよ?
しかし、ツッコミをいれたところでゴキブリ並みにしつこいパロマが引き下がるわけはない。
「さ、お着替え、お着替え♪」
楽しそうに私の胴着を剥ぐとアーマーをガチャガチャと装着させていく。
「あのねぇ。決勝前に身内の心をへし折ってどうするのよぉぉぉ! ……うげぇっ! ねぇ、何よこれ。私、こんな破廉恥なの着たくないってば──!」
「だから、ほれ。これ見て見て。ソーヴェさまのご命令なんだからね♪」
普段は事務をしている私が決裁印に弱いことを知っているパロマは私の目の前でヒラヒラと書類をちらつかせる。
「うぐぐぐ……」
「ほら、試合開始五分前のベルが鳴ったわ! 急ぎなさいよぉ~」
ぐっと喉の奥へ抗議の言葉を飲み込んで、私は仕方なくパロマに着せられたアーマーのまま、試合会場に飛び出したのだった。
◇◆◇
「──ねぇ! ちょっと」
「何? マリンったらどうしちゃったのかしら……」
「しっ、きっと人には言えないような気の毒な事情があるんだよ……」
「ギャハハハ~、あれでメイド服のつもりかよ」
「いや、俺はアリだな。マリンちゃーん!」
………………!
イライライライラッ!
「あら。随分と支度にかかってると思ったら、あははは! 変なビキニアーマー着ちゃってさ。チャンピオンさん、もうあたしに勝ったつもり?」
ぷっちーん!
対戦相手のエミリのバカにしたような物言いに私の頭の血管がぶちギレた。
「……私だって好きで着てるんじゃないのよぉぉぉっ!」
変態に着せられたこの出で立ちは。
頭には白いメイドカチューシャ。
ショルダーはメイド服のようなバルーンスリープ。
首にはメイド服の襟とリボン。
ここまでは許容範囲だ。
問題はここから。
乳房の下方から申し訳程度に支える、メタルビキニトップ。
それが謎の素材、黒地に白いフリルエプロン状の透け透けミニワンピースからのぞく。
ビキニボトムもハイレグで、透けるメイドエプロンはもちろんそれを隠すという目的は殆んど達成されていない。
とにかく、全身が妙にスケルトンで落ちつかないアーマーだった。
こんなので闘うって……闘いに集中できるわけないじゃない!
「はい、皆の者。ちゅうもーくっ!! あれが本選に使用予定のビキニアーマーよ!
コンセプトはメイド服なんだけど、なんちゃって裸エプロン!? メイドさんの服の中身をのぞいてみたい! という沸き上がるみんなの熱い想いとロマンを叶える、私の自信作ビキニアーマーなの!」
いつの間にか観客席から、パロマが私を指さしてビシィ! と宣言していた。
「ぅおぉぉぉぉ……!」
「サイコーだせ!」
「いいぞ、いいぞ! もっとスケスケさせろぉ!」
パロマの周囲から男達の熱い雄叫びと拍手が沸き起こる。
なんじゃ、そのコンセプトはっ!
「ス~ケ、スケ!」
「ス~ケスケッ!」
いつの間にか、会場の声援はスケスケオンリーになってしまっていた。
「イケイケ、スケスケ」
「スケスケマリン!」
……おのれ、パロマめ! 結局変な呼び方されてるじゃないのよっ!
これが終わったら、覚えてなさいよぉぉぉぉっ!
0
お気に入りに追加
144
あなたにおすすめの小説
愛することをやめたら、怒る必要もなくなりました。今さら私を愛する振りなんて、していただかなくても大丈夫です。
石河 翠
恋愛
貴族令嬢でありながら、家族に虐げられて育ったアイビー。彼女は社交界でも人気者の恋多き侯爵エリックに望まれて、彼の妻となった。
ひとなみに愛される生活を夢見たものの、彼が欲していたのは、夫に従順で、家の中を取り仕切る女主人のみ。先妻の子どもと仲良くできない彼女をエリックは疎み、なじる。
それでもエリックを愛し、結婚生活にしがみついていたアイビーだが、彼の子どもに言われたたった一言で心が折れてしまう。ところが、愛することを止めてしまえばその生活は以前よりも穏やかで心地いいものになっていて……。
愛することをやめた途端に愛を囁くようになったヒーローと、その愛をやんわりと拒むヒロインのお話。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID 179331)をお借りしております。
初恋の兄嫁を優先する私の旦那様へ。惨めな思いをあとどのくらい我慢したらいいですか。
梅雨の人
恋愛
ハーゲンシュタイン公爵の娘ローズは王命で第二王子サミュエルの婚約者となった。
王命でなければ誰もサミュエルの婚約者になろうとする高位貴族の令嬢が現れなかったからだ。
第一王子ウィリアムの婚約者となったブリアナに一目ぼれしてしまったサミュエルは、駄目だと分かっていても次第に互いの距離を近くしていったためだった。
常識のある周囲の冷ややかな視線にも気が付かない愚鈍なサミュエルと義姉ブリアナ。
ローズへの必要最低限の役目はかろうじて行っていたサミュエルだったが、常にその視線の先にはブリアナがいた。
みじめな婚約者時代を経てサミュエルと結婚し、さらに思いがけず王妃になってしまったローズはただひたすらその不遇の境遇を耐えた。
そんな中でもサミュエルが時折見せる優しさに、ローズは胸を高鳴らせてしまうのだった。
しかし、サミュエルとブリアナの愚かな言動がローズを深く傷つけ続け、遂にサミュエルは己の行動を深く後悔することになる―――。
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました
さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。
王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ
頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。
ゆるい設定です
【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。
つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。
彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。
なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか?
それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。
恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。
その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。
更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。
婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。
生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。
婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。
後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。
「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。
【完結】婿入り予定の婚約者は恋人と結婚したいらしい 〜そのひと爵位継げなくなるけどそんなに欲しいなら譲ります〜
早奈恵
恋愛
【完結】ざまぁ展開あります⚫︎幼なじみで婚約者のデニスが恋人を作り、破談となってしまう。困ったステファニーは急遽婿探しをする事になる。⚫︎新しい相手と婚約発表直前『やっぱりステファニーと結婚する』とデニスが言い出した。⚫︎辺境伯になるにはステファニーと結婚が必要と気が付いたデニスと辺境伯夫人になりたかった恋人ブリトニーを前に、ステファニーは新しい婚約者ブラッドリーと共に対抗する。⚫︎デニスの恋人ブリトニーが不公平だと言い、デニスにもチャンスをくれと縋り出す。⚫︎そしてデニスとブラッドが言い合いになり、決闘することに……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる