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第二部
第8話 他人のフリをしたい!
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ズキズキする頭痛と目眩に耐え、俺はモンチッチ娘の挨拶を聞いた。
挨拶が終わると無情にもホームルーム終了のチャイムが鳴って、
「今年の留学生、ハズレだな……」
「中東とか、最近やたらアジア人多いよな……?」
「あー、残念。金髪美女が良かったわ」
担任教師が出ていって、無遠慮な感想が飛び交う教室内に、
「奏大!逢いたかったぞ!!」
……マルサネのよく通る大きな声が響き渡った。
し……ん!とざわついていた教室が、一瞬静まり返る。
そして。
当のモンチッチ娘は。
ニッコニコで、その力強い腕を勢いよく俺の首に絡ませ、ハグをかましてきたのだった。
「ぐぇぇぇっ!!」
息が!……ギブギブギブっ!何ていう力だよ……!
俺を殺す気か!?
「……ヤメロ!マルサネっ!」
「あぁ、すまない奏大。つい、嬉しくてな。手加減するのを忘れた」
マルサネなりに心細かったのだろう。見知った俺の顔を見て嬉しさのあまり、力一杯絞めあげてしまったらしい。
「何?奏大、知り合いなの?」
「ウソウソ、もしかして澤井の彼女?」
「え?マジ?澤井って優姫狙いだったのに、タイプ違うくない?」
ヒソヒソと嬉しくない囁きが俺の耳に漏れ聞こえてくる。好奇心剥き出しの視線がチクチクと、痛い。
ついでに最後の噂話にココロも、ジクジクと痛む。
そう。俺は隣のクラスの幼馴染に絶賛失恋中なのだ。
「おいおい奏大、大丈夫か?」
首もとを押さえて咳き込む俺の背中を、佳彦がさすってくれた。
「あぁ……」
「奏大の友人か?」
マルサネが無邪気に聞いた。
「え?うん。加賀見 佳彦だ。よろしく」
佳彦は爽やかに片手を差し出す。
「あたしは、マルサネ・ゲンメ。奏大のウチに本を捨てに来ている」
マルサネはその手を今度は慎重に握ると、おかしな挨拶をした。
「……ん?キミんち、古本屋さん?」
佳彦はマルサネの言葉に首をひねった。
「ホームスティだろぉ……?」
俺の言葉に佳彦が笑いを堪える。
「ぷっ、くくく……なるほど」
「ホームすてい?あぁ、それそれ。ワカナがそんなことを言ってた。よろしくな。佳彦」
ドン!っと男らしくマルサネは自分の胸をたたいてみせた。
うわ、やっぱり猿だ、猿……。
「……ぅくくっ……面白れぇヤツ。それにしても随分と男前な留学生だな、奏大!」
「俺は全っ然面白くないぞ、佳彦」
俺は目の端に涙を浮かべ、笑いを堪える佳彦を睨みつける。
「はぁぁぁ……しっかし奏大の学園は小さいなぁ。人がギュウギュウに押し込められていて、まるで屠殺前のニワトリ小屋のようだな」
思いっきり伸びをして、マルサネが言った。
「屠殺?」
「ニワトリ小屋……?ウサギ小屋なら聞いたことあるけど。文化圈で言い方も変わるんだろうか……」
佳彦が興味深げに呟く。
「あのな、これが日本の平均的な公立高校だ。そんなことより、どうやってここへ来た」
「ワカナが連れてきてくれた。キョートーとかいう上役と話をつけてくれたらしい」
「あー、教頭!」
和奏姉ちゃんもここの高校出身だ。
今の教頭は確か、当時和奏姉ちゃんの部活の顧問をしていたハズ。
……今朝、何か和奏姉ちゃんがニヤニヤしてたのはこういうことだったのか。
制服は和奏姉ちゃんのお下がりだろう。くたびれ具合が半端ない。
やられたっ。
どうりで昨夜、ミシンの音がしてたハズだ。制服の裾を下ろしていたのか……。
「なぁ、奏大。この制服とやらは脱いでも良いのか?」
「何でだ?」
「う~、ワカナに丈は伸ばしてもらったのだが、なんだか胸が妙にキツくてな……」
マルサネはブレザーを脱ぐと、制服のブラウスのボタンを三つ目まで開けて俺達に見せた。
「うわ……っ」
「バカ!早く着ろよっ!!」
俺は慌ててブレザーをマルサネに投げつけた。
「脱いだらダメなのか」
不服そうにマルサネは口を尖らす。
「絶対ダメ!ずっと着てろ!ボタンも開けるのも禁止!」
「仕方ないだろ。ワカナの服は胸がキツい」
「……お前、それ和奏姉ちゃんに絶対言うなよ?」
「なぜだ?」
「気にしてるからだよ」
「何を?」
「胸がちっちゃいことをだよ!」
思わず、大声で言ってしまった。
……クラスの女子からの冷ややかな視線がグサグサと刺さる。
うわ……もう、俺帰りたい……〈泣〉
「ふん、ワカナはそんなことを気にしてるのか。胸が小さければ、揉めば良いではないか。奏大、それぐらい揉んでやれ」
「なんで俺が……!」
真面目な顔して突然なんてこと言うんだ、この女~!
「弟だろ?一つあたしが良いことを教えてやろう。男が揉むと胸が育つらしいぞ」
声をひそめて得意そうにマルサネが言った。
「そんな教えはいらねーよ!」
「なんだ、奏大は女の胸を触る度胸もないのか。何ならあたしの胸で練習するか?」
「バっ、いらねーよ。それを出すな!頼むから!」
ブレザーの前を開けようとするマルサネを必死に止める俺。
助けを求めて隣を見ると佳彦が、腹を抱えてひーひー言いながら笑っていた。
「……っ……助けてくれ……死ぬ……!」
「勝手に死ね!」
俺は窮地になっても助けてくれない親友に冷たく言い放った。
挨拶が終わると無情にもホームルーム終了のチャイムが鳴って、
「今年の留学生、ハズレだな……」
「中東とか、最近やたらアジア人多いよな……?」
「あー、残念。金髪美女が良かったわ」
担任教師が出ていって、無遠慮な感想が飛び交う教室内に、
「奏大!逢いたかったぞ!!」
……マルサネのよく通る大きな声が響き渡った。
し……ん!とざわついていた教室が、一瞬静まり返る。
そして。
当のモンチッチ娘は。
ニッコニコで、その力強い腕を勢いよく俺の首に絡ませ、ハグをかましてきたのだった。
「ぐぇぇぇっ!!」
息が!……ギブギブギブっ!何ていう力だよ……!
俺を殺す気か!?
「……ヤメロ!マルサネっ!」
「あぁ、すまない奏大。つい、嬉しくてな。手加減するのを忘れた」
マルサネなりに心細かったのだろう。見知った俺の顔を見て嬉しさのあまり、力一杯絞めあげてしまったらしい。
「何?奏大、知り合いなの?」
「ウソウソ、もしかして澤井の彼女?」
「え?マジ?澤井って優姫狙いだったのに、タイプ違うくない?」
ヒソヒソと嬉しくない囁きが俺の耳に漏れ聞こえてくる。好奇心剥き出しの視線がチクチクと、痛い。
ついでに最後の噂話にココロも、ジクジクと痛む。
そう。俺は隣のクラスの幼馴染に絶賛失恋中なのだ。
「おいおい奏大、大丈夫か?」
首もとを押さえて咳き込む俺の背中を、佳彦がさすってくれた。
「あぁ……」
「奏大の友人か?」
マルサネが無邪気に聞いた。
「え?うん。加賀見 佳彦だ。よろしく」
佳彦は爽やかに片手を差し出す。
「あたしは、マルサネ・ゲンメ。奏大のウチに本を捨てに来ている」
マルサネはその手を今度は慎重に握ると、おかしな挨拶をした。
「……ん?キミんち、古本屋さん?」
佳彦はマルサネの言葉に首をひねった。
「ホームスティだろぉ……?」
俺の言葉に佳彦が笑いを堪える。
「ぷっ、くくく……なるほど」
「ホームすてい?あぁ、それそれ。ワカナがそんなことを言ってた。よろしくな。佳彦」
ドン!っと男らしくマルサネは自分の胸をたたいてみせた。
うわ、やっぱり猿だ、猿……。
「……ぅくくっ……面白れぇヤツ。それにしても随分と男前な留学生だな、奏大!」
「俺は全っ然面白くないぞ、佳彦」
俺は目の端に涙を浮かべ、笑いを堪える佳彦を睨みつける。
「はぁぁぁ……しっかし奏大の学園は小さいなぁ。人がギュウギュウに押し込められていて、まるで屠殺前のニワトリ小屋のようだな」
思いっきり伸びをして、マルサネが言った。
「屠殺?」
「ニワトリ小屋……?ウサギ小屋なら聞いたことあるけど。文化圈で言い方も変わるんだろうか……」
佳彦が興味深げに呟く。
「あのな、これが日本の平均的な公立高校だ。そんなことより、どうやってここへ来た」
「ワカナが連れてきてくれた。キョートーとかいう上役と話をつけてくれたらしい」
「あー、教頭!」
和奏姉ちゃんもここの高校出身だ。
今の教頭は確か、当時和奏姉ちゃんの部活の顧問をしていたハズ。
……今朝、何か和奏姉ちゃんがニヤニヤしてたのはこういうことだったのか。
制服は和奏姉ちゃんのお下がりだろう。くたびれ具合が半端ない。
やられたっ。
どうりで昨夜、ミシンの音がしてたハズだ。制服の裾を下ろしていたのか……。
「なぁ、奏大。この制服とやらは脱いでも良いのか?」
「何でだ?」
「う~、ワカナに丈は伸ばしてもらったのだが、なんだか胸が妙にキツくてな……」
マルサネはブレザーを脱ぐと、制服のブラウスのボタンを三つ目まで開けて俺達に見せた。
「うわ……っ」
「バカ!早く着ろよっ!!」
俺は慌ててブレザーをマルサネに投げつけた。
「脱いだらダメなのか」
不服そうにマルサネは口を尖らす。
「絶対ダメ!ずっと着てろ!ボタンも開けるのも禁止!」
「仕方ないだろ。ワカナの服は胸がキツい」
「……お前、それ和奏姉ちゃんに絶対言うなよ?」
「なぜだ?」
「気にしてるからだよ」
「何を?」
「胸がちっちゃいことをだよ!」
思わず、大声で言ってしまった。
……クラスの女子からの冷ややかな視線がグサグサと刺さる。
うわ……もう、俺帰りたい……〈泣〉
「ふん、ワカナはそんなことを気にしてるのか。胸が小さければ、揉めば良いではないか。奏大、それぐらい揉んでやれ」
「なんで俺が……!」
真面目な顔して突然なんてこと言うんだ、この女~!
「弟だろ?一つあたしが良いことを教えてやろう。男が揉むと胸が育つらしいぞ」
声をひそめて得意そうにマルサネが言った。
「そんな教えはいらねーよ!」
「なんだ、奏大は女の胸を触る度胸もないのか。何ならあたしの胸で練習するか?」
「バっ、いらねーよ。それを出すな!頼むから!」
ブレザーの前を開けようとするマルサネを必死に止める俺。
助けを求めて隣を見ると佳彦が、腹を抱えてひーひー言いながら笑っていた。
「……っ……助けてくれ……死ぬ……!」
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俺は窮地になっても助けてくれない親友に冷たく言い放った。
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