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第一部
第42話 告白!
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フードをつかんで深く被ったまま、私は縦に大きく頭をふった。
前が見えない……。このフード、マルサネにはいいけど、私にはデカ過ぎる。
「ありがとう、ルーチェ」
「いいえ、お嬢様。私もまたお会いできて嬉しいですわ」
「サラック茶が好きなって……」
「もちろん、サラック様もお好きな方のお嬢様という意味ですわ。そうでございましょう?」
ルーチェがウィンクして、私に笑いかける。
「……ルーチェ」
「最近のお嬢様は、知恵熱とやらを出される前のお嬢様に戻られたご様子……。元々マルサネ様は、フルーツ系は大の苦手、サラック茶は本当にお嫌いみたいです。見るだけで不機嫌になっておられました」
「はぁ」
マルサネ、甘いの苦手みたいだもんね。私は大好きだけど。
「で、どういう仕組みで変わられますの?知恵熱とかいう病のせいですか?何かよくわかりませんが、ややこしいことですねぇ。しかも、今回、声まで変わってません?」
ルーチェが不思議そうに首を傾げる。
「声だけじゃないのよ……」
「はい?」
「ごめんね、ルーチェ。なんて説明したらいいかわからなくて……。お願いだから、ビックリしないで聞いてね。あのね……、実は私、マルサネではないの」
私は思いきって切り出す。
「え……?」
「名前はサワイリツコ。リツコ、が私の本当の名前なの」
「リツコ、様……」
「お嬢様じゃないから、様はいらないわ」
「私にとってはお嬢様は、お嬢様です」
ルーチェはムキになって答えた。
こんな時、年相応な様子で可愛いなぁと思う。
「私もよくわからないけど、こないだは頭を打って……気がついたらマルサネになってたの」
「お嬢様に、なってた……?」
「それでね……これを見てくれる?」
私は思いきって、フードをとった。
「なぜか、マルサネじゃなくて……。今度は、私。本当の姿でこちらに来てしまったみたいなの……」
「まぁ……!」
ルーチェは私の姿を見て、目を見開いた。
相当驚いている?…… まぁ、そうだろうねぇ。マルサネの倍以上の年齢の別人だもの。
「お嬢様!早く!早くフードを被ってください。誰に見られるかわかりません」
ルーチェは直ぐに我にかえると私にフードを大慌てで被せた。
「う、うん……」
ルーチェの剣幕に私はしっかりとフードを掴んで被り直す。
「わかりました。ではリツコ様。これからあなた様はどうされるおつもりですか?」
「う~ん、どうするって……あんまり考えてなかったなぁ」
「元のマルサネお嬢様は、どこへ?」
「わからない……。この邸のどこかに居るのかしら?」
「そうですね。昨夜お嬢様がこちらでお休みになられてから、私もお見かけしておりませんが……。とにかく、いつまでもフードを被って過ごすこともできません。なんとか、まずはリツコ様の居場所を確保して参りましょう」
「え?」
「ルーチェにお任せ下さい」
意味ありげな笑みを浮かべるルーチェ。
何か企んでるのかな?
「とりあえず暫く、気分が悪いとベッドに伏せてて下さい。後で雑誌をお持ちしますので」
「ありがとう」
「声は極力お出しになりませんよう」
「風邪だと言えばいいんじゃない?」
「ダメです。風邪だというと心配して旦那様がやって参りますよ?」
「心配するかなぁ」
「しますよ。なんだかんだと、いつもおいでになってたでしょう?」
「そう言えばそうかも」
「月のモノが来て気鬱だということにしてください。旦那様は婦人病には滅法弱いので、きっと、近寄りませんから」
「ルーチェは何処へ行くの?」
「まぁ、お任せ下さいませ」
ルーチェは素早く部屋を出ると、お茶菓子やら雑誌やらを積んで再び戻ってきた。
「良いですね。私が戻るまでここから出ないで下さいよ」
ルーチェが置いていったユッカナウを数冊、ベッドの上に運び込むとゴロンと私は横になった。
手元のサイドワゴンには山盛りの焼き菓子。
懐かしい感じだわ。これ。
極楽だけど、人間的にダメな気がする。
それにしても、ルーチェ。
何処へ行ったんだろうか……。
前が見えない……。このフード、マルサネにはいいけど、私にはデカ過ぎる。
「ありがとう、ルーチェ」
「いいえ、お嬢様。私もまたお会いできて嬉しいですわ」
「サラック茶が好きなって……」
「もちろん、サラック様もお好きな方のお嬢様という意味ですわ。そうでございましょう?」
ルーチェがウィンクして、私に笑いかける。
「……ルーチェ」
「最近のお嬢様は、知恵熱とやらを出される前のお嬢様に戻られたご様子……。元々マルサネ様は、フルーツ系は大の苦手、サラック茶は本当にお嫌いみたいです。見るだけで不機嫌になっておられました」
「はぁ」
マルサネ、甘いの苦手みたいだもんね。私は大好きだけど。
「で、どういう仕組みで変わられますの?知恵熱とかいう病のせいですか?何かよくわかりませんが、ややこしいことですねぇ。しかも、今回、声まで変わってません?」
ルーチェが不思議そうに首を傾げる。
「声だけじゃないのよ……」
「はい?」
「ごめんね、ルーチェ。なんて説明したらいいかわからなくて……。お願いだから、ビックリしないで聞いてね。あのね……、実は私、マルサネではないの」
私は思いきって切り出す。
「え……?」
「名前はサワイリツコ。リツコ、が私の本当の名前なの」
「リツコ、様……」
「お嬢様じゃないから、様はいらないわ」
「私にとってはお嬢様は、お嬢様です」
ルーチェはムキになって答えた。
こんな時、年相応な様子で可愛いなぁと思う。
「私もよくわからないけど、こないだは頭を打って……気がついたらマルサネになってたの」
「お嬢様に、なってた……?」
「それでね……これを見てくれる?」
私は思いきって、フードをとった。
「なぜか、マルサネじゃなくて……。今度は、私。本当の姿でこちらに来てしまったみたいなの……」
「まぁ……!」
ルーチェは私の姿を見て、目を見開いた。
相当驚いている?…… まぁ、そうだろうねぇ。マルサネの倍以上の年齢の別人だもの。
「お嬢様!早く!早くフードを被ってください。誰に見られるかわかりません」
ルーチェは直ぐに我にかえると私にフードを大慌てで被せた。
「う、うん……」
ルーチェの剣幕に私はしっかりとフードを掴んで被り直す。
「わかりました。ではリツコ様。これからあなた様はどうされるおつもりですか?」
「う~ん、どうするって……あんまり考えてなかったなぁ」
「元のマルサネお嬢様は、どこへ?」
「わからない……。この邸のどこかに居るのかしら?」
「そうですね。昨夜お嬢様がこちらでお休みになられてから、私もお見かけしておりませんが……。とにかく、いつまでもフードを被って過ごすこともできません。なんとか、まずはリツコ様の居場所を確保して参りましょう」
「え?」
「ルーチェにお任せ下さい」
意味ありげな笑みを浮かべるルーチェ。
何か企んでるのかな?
「とりあえず暫く、気分が悪いとベッドに伏せてて下さい。後で雑誌をお持ちしますので」
「ありがとう」
「声は極力お出しになりませんよう」
「風邪だと言えばいいんじゃない?」
「ダメです。風邪だというと心配して旦那様がやって参りますよ?」
「心配するかなぁ」
「しますよ。なんだかんだと、いつもおいでになってたでしょう?」
「そう言えばそうかも」
「月のモノが来て気鬱だということにしてください。旦那様は婦人病には滅法弱いので、きっと、近寄りませんから」
「ルーチェは何処へ行くの?」
「まぁ、お任せ下さいませ」
ルーチェは素早く部屋を出ると、お茶菓子やら雑誌やらを積んで再び戻ってきた。
「良いですね。私が戻るまでここから出ないで下さいよ」
ルーチェが置いていったユッカナウを数冊、ベッドの上に運び込むとゴロンと私は横になった。
手元のサイドワゴンには山盛りの焼き菓子。
懐かしい感じだわ。これ。
極楽だけど、人間的にダメな気がする。
それにしても、ルーチェ。
何処へ行ったんだろうか……。
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