33 / 150
第一部
第30話 婚約破棄決行!☆
しおりを挟む
「つまらない茶番ですね。いつまでこんな下らないことをされるおつもりですか?」
「ヴィンセント!」
それまで黙って聞いていたヴィンセント様が急に口を挟んだ。
「ウィルに言われてたので、とりあえず黙って大人しくしていましたが。全く、付き合いきれませんね」
「やっぱりウィルか……」
深い溜め息とともに、サラック様の呟きが聞こえた。
やっぱり、って何だろうか。銀の公子が何かしたのかしら?
ソーヴェ様が渋い顔でヴィンセント様をたしなめる。
「ヴィン、大人しくしているって約束だったはずよ」
「約束ですか。幼い子どもでもあるまいし……別にあの箱や部屋は自力で何とかしますから、反古で結構です」
何故だかヴィンセント様の言葉を聞いて、ソーヴェ様の後ろに控える執事が蒼白になっていた。
……あの執事さん、大丈夫かしら?
だけど箱とか部屋ってっ何の話だろう……。
「あっそ。可愛くない子」
口を尖らすソーヴェ様。
「親子喧嘩なら帰ってから勝手にやってくれ」
サラック様が唸るように言った。
「喧嘩ではありませんよ、大公。先日も私は四公家だろうが縁談はお断りするとハッキリ申し上げたはず。私の真実の愛は母に弄ばれるような軽いものではありません」
「軽くはないけど、あんたのは重すぎるのよ……」
ソーヴェ様が今度はヴィンセント様に唸る。
「重くて結構。では、そういうわけでマルサネ。貴女との婚約は破棄させて貰います」
彼にとって二度目?の婚約破棄を金の公子は爽やかに宣言した。
(「婚約破棄ですって!」
「やっぱりですわね。何かのドッキリかしら?」
「大体、おかしいと思ったのよ、ヴィンセント様と猿姫ですもの」)
踊ることも忘れ、群衆は大公の目前で繰り広げられた婚約破棄劇に騒然となったいた。
今日、舞踏会ですよね?
皆さん、私ら見せ物ではないですよ……。
しかし、本当にイケメンの破壊力は半端ない。
私、ざまぁ王子の動画を久しぶりに思い出しちゃった。さすが本物。
美しいお顔に微笑まれて、婚約破棄されたのは私だけど、そんなことを忘れてうっとり見惚れてしまったわ。
「婚約破棄の理由は貴女も私も心に決めた相手が居るからです。よろしいですね?」
ヴィンセント様の言葉に私はコクコクと必死に首を縦に振った。
よろしいに決まってる。
そもそも、私も暴れて婚約破棄してもらおうと思ってやって来たんだもの。
ヴィンセント様から破棄してくれるのは予想外というか、予想すべきだったというか……。
色々、何が目的でどうなってるのか、私混乱してきたわ。
「この婚約、これで無効ね。タウラージ」
「どういうつもりだ、ソーヴェ」
ギロっと狸オヤジが本性丸出しでソーヴェ様にくってかかる。
「さぁ、これからが本番よ」
「?」
「婚約破棄された不誠実な令嬢、もしくは不誠実な公子の処分を大公にしてもらわなくてはね。さて、サラックどうするの?」
ソーヴェ様の突拍子もない言葉にサラック様も呆然としていた様子だったが、自分の名前を呼ばれて我にかえって叫んだ。
「おいソーヴェ、正気か?処分って、お前の息子だぞ?」
「あら、こないだは貴方、自分の息子を国外追放したじゃない」
「あれは……」
「マルサネとヴィンも国外追放する?」
母の言葉を聞いて、嬉しそうに顔を輝かせるヴィンセント様。
何故に?
銀の公子もだけど、そんなに国外行きたいの?
……わかった!ヴィンセント様はアルルの所に行きたいのね。
ある意味、わかりやすいわ。
「二人にそんな事をする理由はない」
「あら、公女として不倫は罪よ。理由はあるわ」
「マルサネは不倫などしていない」
「何故、貴方がそう言い切れるの?サラック」
「……」
口ごもるサラック様。
その困ったお顔をみていて何となく、私。ソーヴェ様の意図がわかってしまった。
サラック様にミスターユッカだと皆の前で白状させようとしているんじゃ…?
でも、それってどうなのかしら?
とりあえず、ソーヴェ様の手の内にのせられてみよう。
「じゃ、マルサネにもう一回聞くわ。貴女の相手は誰?」
「私からは申し上げることはできません」
「なぜ庇うの?」
「ご迷惑がかかるからです。不倫などでは勿論ありません。私が一方的にお慕いしているだけですので」
「片想いだといいたいのね?でも貴女たちがランチをした時、相手の男は部屋を取っていたようよ?それを使ったか貴女に聞くべきかしら?」
「部屋……?」
何のこと?あの日はランチをして……帰ったハズだけど。
私は言われたことが、一瞬理解ができなくて呆然と立ち尽くした。
……!部屋って……サラック様がまさか、そんなこと!?
イヤ、でも部屋なんか使ってないし。
肉体関係あるようにちらつかせたいの?
ちょっとそれは、サラック様の性格的に無理があるんじゃ……。
ソーヴェ様、私たちには過激すぎますわ。
(「そういえば、こないだまでマルサネ姫と言えば猿のように発情されて、男を追い回しておいでになられてたっけ」
「酒場をうろついて、誰とでも寝所を共にされているとも聞いたことがありますわ……」
「いくら公女でも、ヴィンセント様にはあまりにも不釣り合い。本当に公女として相応しくありませんよねぇ」)
やはり。
耳を塞ぎたくなるような言葉が次々に聞こえてくる。
「いい加減にしろ!ソーヴェ。いくらお前でもやり過ぎだ」
険しい顔をしてサラック様が立ち上がった瞬間、
「マルサネ!危ないっ!」
「リツコ、逃げろっ!!」
突然、シュッという空気を切る音とともに何かが私の方向に向かって飛んできた。
「ヴィンセント!」
それまで黙って聞いていたヴィンセント様が急に口を挟んだ。
「ウィルに言われてたので、とりあえず黙って大人しくしていましたが。全く、付き合いきれませんね」
「やっぱりウィルか……」
深い溜め息とともに、サラック様の呟きが聞こえた。
やっぱり、って何だろうか。銀の公子が何かしたのかしら?
ソーヴェ様が渋い顔でヴィンセント様をたしなめる。
「ヴィン、大人しくしているって約束だったはずよ」
「約束ですか。幼い子どもでもあるまいし……別にあの箱や部屋は自力で何とかしますから、反古で結構です」
何故だかヴィンセント様の言葉を聞いて、ソーヴェ様の後ろに控える執事が蒼白になっていた。
……あの執事さん、大丈夫かしら?
だけど箱とか部屋ってっ何の話だろう……。
「あっそ。可愛くない子」
口を尖らすソーヴェ様。
「親子喧嘩なら帰ってから勝手にやってくれ」
サラック様が唸るように言った。
「喧嘩ではありませんよ、大公。先日も私は四公家だろうが縁談はお断りするとハッキリ申し上げたはず。私の真実の愛は母に弄ばれるような軽いものではありません」
「軽くはないけど、あんたのは重すぎるのよ……」
ソーヴェ様が今度はヴィンセント様に唸る。
「重くて結構。では、そういうわけでマルサネ。貴女との婚約は破棄させて貰います」
彼にとって二度目?の婚約破棄を金の公子は爽やかに宣言した。
(「婚約破棄ですって!」
「やっぱりですわね。何かのドッキリかしら?」
「大体、おかしいと思ったのよ、ヴィンセント様と猿姫ですもの」)
踊ることも忘れ、群衆は大公の目前で繰り広げられた婚約破棄劇に騒然となったいた。
今日、舞踏会ですよね?
皆さん、私ら見せ物ではないですよ……。
しかし、本当にイケメンの破壊力は半端ない。
私、ざまぁ王子の動画を久しぶりに思い出しちゃった。さすが本物。
美しいお顔に微笑まれて、婚約破棄されたのは私だけど、そんなことを忘れてうっとり見惚れてしまったわ。
「婚約破棄の理由は貴女も私も心に決めた相手が居るからです。よろしいですね?」
ヴィンセント様の言葉に私はコクコクと必死に首を縦に振った。
よろしいに決まってる。
そもそも、私も暴れて婚約破棄してもらおうと思ってやって来たんだもの。
ヴィンセント様から破棄してくれるのは予想外というか、予想すべきだったというか……。
色々、何が目的でどうなってるのか、私混乱してきたわ。
「この婚約、これで無効ね。タウラージ」
「どういうつもりだ、ソーヴェ」
ギロっと狸オヤジが本性丸出しでソーヴェ様にくってかかる。
「さぁ、これからが本番よ」
「?」
「婚約破棄された不誠実な令嬢、もしくは不誠実な公子の処分を大公にしてもらわなくてはね。さて、サラックどうするの?」
ソーヴェ様の突拍子もない言葉にサラック様も呆然としていた様子だったが、自分の名前を呼ばれて我にかえって叫んだ。
「おいソーヴェ、正気か?処分って、お前の息子だぞ?」
「あら、こないだは貴方、自分の息子を国外追放したじゃない」
「あれは……」
「マルサネとヴィンも国外追放する?」
母の言葉を聞いて、嬉しそうに顔を輝かせるヴィンセント様。
何故に?
銀の公子もだけど、そんなに国外行きたいの?
……わかった!ヴィンセント様はアルルの所に行きたいのね。
ある意味、わかりやすいわ。
「二人にそんな事をする理由はない」
「あら、公女として不倫は罪よ。理由はあるわ」
「マルサネは不倫などしていない」
「何故、貴方がそう言い切れるの?サラック」
「……」
口ごもるサラック様。
その困ったお顔をみていて何となく、私。ソーヴェ様の意図がわかってしまった。
サラック様にミスターユッカだと皆の前で白状させようとしているんじゃ…?
でも、それってどうなのかしら?
とりあえず、ソーヴェ様の手の内にのせられてみよう。
「じゃ、マルサネにもう一回聞くわ。貴女の相手は誰?」
「私からは申し上げることはできません」
「なぜ庇うの?」
「ご迷惑がかかるからです。不倫などでは勿論ありません。私が一方的にお慕いしているだけですので」
「片想いだといいたいのね?でも貴女たちがランチをした時、相手の男は部屋を取っていたようよ?それを使ったか貴女に聞くべきかしら?」
「部屋……?」
何のこと?あの日はランチをして……帰ったハズだけど。
私は言われたことが、一瞬理解ができなくて呆然と立ち尽くした。
……!部屋って……サラック様がまさか、そんなこと!?
イヤ、でも部屋なんか使ってないし。
肉体関係あるようにちらつかせたいの?
ちょっとそれは、サラック様の性格的に無理があるんじゃ……。
ソーヴェ様、私たちには過激すぎますわ。
(「そういえば、こないだまでマルサネ姫と言えば猿のように発情されて、男を追い回しておいでになられてたっけ」
「酒場をうろついて、誰とでも寝所を共にされているとも聞いたことがありますわ……」
「いくら公女でも、ヴィンセント様にはあまりにも不釣り合い。本当に公女として相応しくありませんよねぇ」)
やはり。
耳を塞ぎたくなるような言葉が次々に聞こえてくる。
「いい加減にしろ!ソーヴェ。いくらお前でもやり過ぎだ」
険しい顔をしてサラック様が立ち上がった瞬間、
「マルサネ!危ないっ!」
「リツコ、逃げろっ!!」
突然、シュッという空気を切る音とともに何かが私の方向に向かって飛んできた。
0
お気に入りに追加
142
あなたにおすすめの小説
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした
葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。
でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。
本編完結済みです。時々番外編を追加します。
宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました
悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。
クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。
婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。
そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。
そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯
王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。
シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯
妹がいなくなった
アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。
メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。
お父様とお母様の泣き声が聞こえる。
「うるさくて寝ていられないわ」
妹は我が家の宝。
お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。
妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?
もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
どうして私にこだわるんですか!?
風見ゆうみ
恋愛
「手柄をたてて君に似合う男になって帰ってくる」そう言って旅立って行った婚約者は三年後、伯爵の爵位をいただくのですが、それと同時に旅先で出会った令嬢との結婚が決まったそうです。
それを知った伯爵令嬢である私、リノア・ブルーミングは悲しい気持ちなんて全くわいてきませんでした。だって、そんな事になるだろうなってわかってましたから!
婚約破棄されて捨てられたという噂が広まり、もう結婚は無理かな、と諦めていたら、なんと辺境伯から結婚の申し出が! その方は冷酷、無口で有名な方。おっとりした私なんて、すぐに捨てられてしまう、そう思ったので、うまーくお断りして田舎でゆっくり過ごそうと思ったら、なぜか結婚のお断りを断られてしまう。
え!? そんな事ってあるんですか? しかもなぜか、元婚約者とその彼女が田舎に引っ越した私を追いかけてきて!?
おっとりマイペースなヒロインとヒロインに恋をしている辺境伯とのラブコメです。ざまぁは後半です。
※独自の世界観ですので、設定はゆるめ、ご都合主義です。
【本編完結】実の家族よりも、そんなに従姉妹(いとこ)が可愛いですか?
のんのこ
恋愛
侯爵令嬢セイラは、両親を亡くした従姉妹(いとこ)であるミレイユと暮らしている。
両親や兄はミレイユばかりを溺愛し、実の家族であるセイラのことは意にも介さない。
そんなセイラを救ってくれたのは兄の友人でもある公爵令息キースだった…
本垢執筆のためのリハビリ作品です(;;)
本垢では『婚約者が同僚の女騎士に〜』とか、『兄が私を愛していると〜』とか、『最愛の勇者が〜』とか書いてます。
ちょっとタイトル曖昧で間違ってるかも?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる