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第一部
第13話 ビミョーに婚約破棄?☆
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「では逆に聞くが、我がイスキアが暗殺ギルドに依頼した証拠でもあるのか?」
ゲンメの席に向かってイスキア兄妹が激しくガンを飛ばしてくる。
別に縄をほどいたって事実言っただけなのに。
あんたたちが犯人だなんて、思ってても私は一言も言ってないでしょうが。
大体、見た目で言えば圧倒的にイスキア兄妹もゲンメのハゲ狸と私も、悪役っぽいのよね。
あぁ、忘れてた。
私、悪役令嬢だったんだっけ?
カルドンヌたちの悪行を親子で告発?してるけど。
もしや、私がメインヒロイン?
……なんて、あるわけないか。
確か、攻略対象者とかいうヒロインの相手が何人かいる筈で、それはビジュアル的に金銀公子が含まれているのは間違いないと思うのよ?
でも私が万が一、ヒロインなら金銀公子からこんな珍獣を見るような視線を浴びることはないと思うのよね~。
せめて、人間扱いして貰わないと同じ土俵に立てない……。
はっ、まだ会議中だったわ。
ハゲ狸がまた何か言ってる?
「証拠はないな。意図的にかどうかは知らんが、ギルドの一員のフリをしたどこの誰ともわからぬ者に依頼されてしまっては、誰も尻尾が掴みようがない。もし、お前達が依頼主ならば、証拠がなくて結果オーライだとは思うが」
「「は?」」
ゲンメ公の爆弾発言その二はイスキア兄妹を直撃した。
「何?ギルドのフリ?どういうことだ」
イスキア公は会議が始まって以来初めて焦った様子で背後の妹を振り返った。
蛇姫カルドンヌは必死で首を振り、何の事かわからないアピールをしている。
「イスキア公。どんな闇世界にもそれなりのルールがギルドにあるのはご存じか?そこのカルドンヌが依頼した相手は防犯カメラを解析する限り、ギルドには属さない者。御身が害されても文句は言えん相手だ、努々お気をつけられよ」
食えない狸は淡々と脅す。
狸オヤジ、ただの冴えないバーコードだと思ってたけど。こうやって見るとだんだん、暗黒街のボス。ブラック狸に見えてきたわ。
「くっ……拠がないなら尚更、我らイスキアに疑いをかけるのはおかしな話ではないか?」
「ゲンメもお前らに犯人扱いされる覚えはない」
南北の公主が睨みあう。
「ふん、これでは水掛け論だ。今日はそんなことだけの為に我らを呼んだわけではあるまい?大公と次期女公が倒れた今、この国の円滑な国政の為には、次の輪番の大公をたてるという話をするべきではないのか?」
ほら来た。おいでなさった。 イスキア公の思惑はそこね。
出発前にハゲ狸が言ってた通りの展開だわ。
「次の輪番はカルゾだ。イスキアではないぞ」
「わかってる。だが、若いヴィンセント殿ではいささか荷が重かろう。補佐が必要なのではないか?」
「ご心配、痛み入ります。もし、私が跡目を継ぐとしたら補佐は特に不要と考えますが」
ずっと黙ってイスキアとゲンメのやり取りを聞いていたヴィンセント様が口を開いた。
「イヤ、これを機に正式に婚約をし、身を固めて婚家の補佐を受けられるが良かろう」
何言ってるんだ、ハゲ狸。いい加減に諦めろよ。さっき、こきおろしてた自分の娘を恥ずかしげもなく売り込むな~。
このキラキラ公子の隣にリアル私を並べた日には実写の美女と野獣になるのがわからないのかしら。
もちろん、野獣はマルサネ。魔法が解けて美女になれば良いけど、そもそも魔法はかかってないから永遠に野獣のままよ。
「イスキアならば、ずっと伝えているとおり、我ら兄妹が身も心も補佐をしよう。今日こそは決められよ」
粘っこいねっちょり熱視線をイスキア公がヴィンセント様に送る。
げ!…イスキア公、ひょっとしてヴィンセント様狙い?
盛大に鳥肌が立つ。
兄妹で金の公子狙ってるの?
こういう美しくない?BLってリアルだと見たくないわぁ。ジャンル的に無理矢理系じゃん。
城の地下牢とかに閉じ込めて拘束し、蛇兄妹がヴィンセント様に毒々しく絡みついてる妄想を発動してしまったわ。うぷっ。
「決められないのであれば……」
チラチラと会議場の入り口を見るイスキア公。
「お待ちの方々は来ませんよ?」
暫く、イスキアとゲンメの言い合いを面白そうに眺めていたウィルが口を挟む。
「何?」
「貴方がここへ突入させようとしていた水軍なら来ないと言っているんです」
ウィルの柔和な顔が厳しい表情に変わる。
「なっ……」
「今頃、昨夜の台風災害復興として、兄、アスティが港で水軍の皆様のお相手していますよ。実際、かなりの被害を受けられたようですしね」
ひえ~っ。やっぱりイスキア兄妹ってクーデターまで企んでたの?
昨日の神風台風、なんてタイムリー。
……自然災害よね?
まさか人為的?でもどうやって??
「どういうおつもりかな?」
ハゲ狸がホクホク顔で鼻をフガフガ膨らませて発言する。
うわっ、遺伝子のなせる技って怖いわ。
マルサネのクセは紛れもなくオヤジ譲り……。
「それこそ、ウィルブランよ。イスキア水軍が何か企ててる証拠があるのか?」
いや~、もう開き直り王かってぐらいイスキア公は開き直ってるわね。
「状況証拠なら山盛りありますよ。アスティが戻りましたら水軍から聴取もできると思いますが」
「そのようなもの、勝手に災害後の混乱で水軍が独自で判断して動いたかも知れぬだろう?」
「水軍の長は貴方では?」
「非常時の混乱だ。許せ」
もはや、水軍は来ないと悟り、クーデターは諦めたのか勝手な言い分でのらりくらりと言い逃れるイスキア公。
「いくら、災害後の混乱とはいえ、大公宮に兵を向けるのはあまりに苦しい言い訳かと思いますが」
「証拠もないのに、四公主に言いがかりか?エスト大公もカルゾ公もいない今は我ら年長者に従え」
ウィルとイスキア公が睨みあっていると、壁の奥から爽やかな女の人の声がした。
「見苦しいわね、ラマンドロ。いい加減に諦めなさい」
「……!」
ウィルの背後の壁がぐるり、と回り中からヴィンセント様によく似た整った顔立ちのゴージャスな迫力の金髪美女が現れた。
「「ソーヴェ!」」
驚く南北の関係者と公主。
東西の関係者は全く動じる様子はない。反応からエストとカルゾがあらかじめ仕組んだ茶番劇だったことがわかる。
「やれやれ、やっと出れる」
「エスト大公!」
長身の壮年の美丈夫がカルゾ女公に続いて姿を現した。眼光鋭く、威厳に満ち溢れている。
彼がエスト公……!
「ウィル、大義だったな」
おや、この美声。
どこかで聞いたような…?どこだったかしら?
「大公、バトンタッチお願いします」
「ふぅ、人使いの荒い息子だ」
ウィルが父親に大公席を指し示し、自分は後ろに控えた。
「大公、ご無事でしたか」
「カルゾ公もご無事で何より」
わざとらしく声をかける南北公主。
「私はともかく、ソーヴェが簡単に賊ごときに後れをとるわけはなかろう」
「まぁ、その通りだけど。何か腹立つわね」
カルゾ女公は一緒に壁から現れた、俯いて控えていた美しい令嬢を自分の後ろに座らせる。
「アルル?!」
まるで絵本から抜け出たプリンセス人形のように美しい姿。
めっちゃ可愛いわぁ…。でも何でアルルがこんな所に?
豊かな艶やかな亜麻色の髪は緩やかなウェーブがかかり、一部が結い上げられている。
あら?あの髪飾り……?
さっき、廊下で侍女さんが運んでたものじゃないかしら?
「ところでソーヴェ。その令嬢は?街中で見たことがあるような気がしますが」
イスキア公がねっちょり視線をアルルに向ける。
「私の旧知の友人の娘ですの。はるばる我が国までやってきてくれたのに、今回のことに巻き込んでしまいました。こんな狭い退屈なところに押し込められていたので、私の無聊を慰めてもらっていましたのよ」
イスキア公の視線から庇うようにカルゾ女公がアルルの前に座り直す。
カルゾ女公の友人の娘?
ということは、アルルも貴族の令嬢なのね。
え?じゃあ、ウィルの従姉妹って……アルルなの?
迷探偵律子がまたムクムクと活動し出す。
「ところでラマンドロよ。輪番のことだが」
大公が厳しい声で改めて、高座に設けられた大公席からイスキア公に声をかける。
「はっ」
「今回のことでお前の代はイスキアは輪番から外す。文句はないな?」
「……」
「それと、南に帰る前に港のバラバラになった船のゴミを片付けていけよ」
「……っ」
「良いな?では行け!」
明らかに格が違う、威厳と鋭い眼光に気圧されたイスキア公はガックリと頭を垂れた。蛇姫を連れ早々に退席していく。
その後ろ姿を見送りながら、桔◯屋か越◯屋ばりの悪徳商人顔でゲンメ公がニヤニヤしながら、カルゾ女公に提案する。
「それはそうとソーヴェ殿。先程の続きだが輪番はともかく、この機会にご子息のお相手をきちんと決めたらどうだ?」
「お父様!」
イスキア公退場で何を言い出すかと思ったら…。まだ、諦めてなかったの?!
こちらも相当しつこい狸だわ。
突き刺さるような好奇の視線が私に集まる。
いや、イスキアが引いたとしてもそんな無理くり猿姫と金の公子って……ないでしょ。間違いなく、可哀想な公子様っていう国民感情が半端なく膨らむと思うのよね。
ネットが間違いなく炎上するだろうし、それこそユッカナウの記事が怖くて私、読めなくなるからやめて~!
「そうだなぁ。いいかもしれないぞ、どうだ?ヴィンセント。いつぞやの真実の愛とやらは見つかったのか?それともまだ、我が息子の方が良いか?」
家族ぐるみでの仲の良さを伺わせる様子で、エスト大公がヴィンセント様に茶目っ気たっぷりに尋ねた。
「ふふっ、ヴィンセント。貴方もそろそろいい加減、年貢の納め時かもよ。ハッキリしなさい」
意味ありげな笑みを浮かべながらソーヴェ様が息子に告げる。
「もう、俺にチューとかは絶対になしだぞ!」
ウィルが自分の口元で両手をクロスさせた。
「では仕方ないですね、ウィルブラン・エスト。君との婚約は破棄させてもらいます」
苦笑いしながら、ヴィンセント様は婚約破棄を宣言した。
「はい、喜んで」
居酒屋のような返しをするウィル。
「まぁ、最初からそもそも婚約なんぞしてないんだが。すっぱり否定は望むところだ。きっちり、ネットニュースに流させてもらうからな」
ゲンメの席に向かってイスキア兄妹が激しくガンを飛ばしてくる。
別に縄をほどいたって事実言っただけなのに。
あんたたちが犯人だなんて、思ってても私は一言も言ってないでしょうが。
大体、見た目で言えば圧倒的にイスキア兄妹もゲンメのハゲ狸と私も、悪役っぽいのよね。
あぁ、忘れてた。
私、悪役令嬢だったんだっけ?
カルドンヌたちの悪行を親子で告発?してるけど。
もしや、私がメインヒロイン?
……なんて、あるわけないか。
確か、攻略対象者とかいうヒロインの相手が何人かいる筈で、それはビジュアル的に金銀公子が含まれているのは間違いないと思うのよ?
でも私が万が一、ヒロインなら金銀公子からこんな珍獣を見るような視線を浴びることはないと思うのよね~。
せめて、人間扱いして貰わないと同じ土俵に立てない……。
はっ、まだ会議中だったわ。
ハゲ狸がまた何か言ってる?
「証拠はないな。意図的にかどうかは知らんが、ギルドの一員のフリをしたどこの誰ともわからぬ者に依頼されてしまっては、誰も尻尾が掴みようがない。もし、お前達が依頼主ならば、証拠がなくて結果オーライだとは思うが」
「「は?」」
ゲンメ公の爆弾発言その二はイスキア兄妹を直撃した。
「何?ギルドのフリ?どういうことだ」
イスキア公は会議が始まって以来初めて焦った様子で背後の妹を振り返った。
蛇姫カルドンヌは必死で首を振り、何の事かわからないアピールをしている。
「イスキア公。どんな闇世界にもそれなりのルールがギルドにあるのはご存じか?そこのカルドンヌが依頼した相手は防犯カメラを解析する限り、ギルドには属さない者。御身が害されても文句は言えん相手だ、努々お気をつけられよ」
食えない狸は淡々と脅す。
狸オヤジ、ただの冴えないバーコードだと思ってたけど。こうやって見るとだんだん、暗黒街のボス。ブラック狸に見えてきたわ。
「くっ……拠がないなら尚更、我らイスキアに疑いをかけるのはおかしな話ではないか?」
「ゲンメもお前らに犯人扱いされる覚えはない」
南北の公主が睨みあう。
「ふん、これでは水掛け論だ。今日はそんなことだけの為に我らを呼んだわけではあるまい?大公と次期女公が倒れた今、この国の円滑な国政の為には、次の輪番の大公をたてるという話をするべきではないのか?」
ほら来た。おいでなさった。 イスキア公の思惑はそこね。
出発前にハゲ狸が言ってた通りの展開だわ。
「次の輪番はカルゾだ。イスキアではないぞ」
「わかってる。だが、若いヴィンセント殿ではいささか荷が重かろう。補佐が必要なのではないか?」
「ご心配、痛み入ります。もし、私が跡目を継ぐとしたら補佐は特に不要と考えますが」
ずっと黙ってイスキアとゲンメのやり取りを聞いていたヴィンセント様が口を開いた。
「イヤ、これを機に正式に婚約をし、身を固めて婚家の補佐を受けられるが良かろう」
何言ってるんだ、ハゲ狸。いい加減に諦めろよ。さっき、こきおろしてた自分の娘を恥ずかしげもなく売り込むな~。
このキラキラ公子の隣にリアル私を並べた日には実写の美女と野獣になるのがわからないのかしら。
もちろん、野獣はマルサネ。魔法が解けて美女になれば良いけど、そもそも魔法はかかってないから永遠に野獣のままよ。
「イスキアならば、ずっと伝えているとおり、我ら兄妹が身も心も補佐をしよう。今日こそは決められよ」
粘っこいねっちょり熱視線をイスキア公がヴィンセント様に送る。
げ!…イスキア公、ひょっとしてヴィンセント様狙い?
盛大に鳥肌が立つ。
兄妹で金の公子狙ってるの?
こういう美しくない?BLってリアルだと見たくないわぁ。ジャンル的に無理矢理系じゃん。
城の地下牢とかに閉じ込めて拘束し、蛇兄妹がヴィンセント様に毒々しく絡みついてる妄想を発動してしまったわ。うぷっ。
「決められないのであれば……」
チラチラと会議場の入り口を見るイスキア公。
「お待ちの方々は来ませんよ?」
暫く、イスキアとゲンメの言い合いを面白そうに眺めていたウィルが口を挟む。
「何?」
「貴方がここへ突入させようとしていた水軍なら来ないと言っているんです」
ウィルの柔和な顔が厳しい表情に変わる。
「なっ……」
「今頃、昨夜の台風災害復興として、兄、アスティが港で水軍の皆様のお相手していますよ。実際、かなりの被害を受けられたようですしね」
ひえ~っ。やっぱりイスキア兄妹ってクーデターまで企んでたの?
昨日の神風台風、なんてタイムリー。
……自然災害よね?
まさか人為的?でもどうやって??
「どういうおつもりかな?」
ハゲ狸がホクホク顔で鼻をフガフガ膨らませて発言する。
うわっ、遺伝子のなせる技って怖いわ。
マルサネのクセは紛れもなくオヤジ譲り……。
「それこそ、ウィルブランよ。イスキア水軍が何か企ててる証拠があるのか?」
いや~、もう開き直り王かってぐらいイスキア公は開き直ってるわね。
「状況証拠なら山盛りありますよ。アスティが戻りましたら水軍から聴取もできると思いますが」
「そのようなもの、勝手に災害後の混乱で水軍が独自で判断して動いたかも知れぬだろう?」
「水軍の長は貴方では?」
「非常時の混乱だ。許せ」
もはや、水軍は来ないと悟り、クーデターは諦めたのか勝手な言い分でのらりくらりと言い逃れるイスキア公。
「いくら、災害後の混乱とはいえ、大公宮に兵を向けるのはあまりに苦しい言い訳かと思いますが」
「証拠もないのに、四公主に言いがかりか?エスト大公もカルゾ公もいない今は我ら年長者に従え」
ウィルとイスキア公が睨みあっていると、壁の奥から爽やかな女の人の声がした。
「見苦しいわね、ラマンドロ。いい加減に諦めなさい」
「……!」
ウィルの背後の壁がぐるり、と回り中からヴィンセント様によく似た整った顔立ちのゴージャスな迫力の金髪美女が現れた。
「「ソーヴェ!」」
驚く南北の関係者と公主。
東西の関係者は全く動じる様子はない。反応からエストとカルゾがあらかじめ仕組んだ茶番劇だったことがわかる。
「やれやれ、やっと出れる」
「エスト大公!」
長身の壮年の美丈夫がカルゾ女公に続いて姿を現した。眼光鋭く、威厳に満ち溢れている。
彼がエスト公……!
「ウィル、大義だったな」
おや、この美声。
どこかで聞いたような…?どこだったかしら?
「大公、バトンタッチお願いします」
「ふぅ、人使いの荒い息子だ」
ウィルが父親に大公席を指し示し、自分は後ろに控えた。
「大公、ご無事でしたか」
「カルゾ公もご無事で何より」
わざとらしく声をかける南北公主。
「私はともかく、ソーヴェが簡単に賊ごときに後れをとるわけはなかろう」
「まぁ、その通りだけど。何か腹立つわね」
カルゾ女公は一緒に壁から現れた、俯いて控えていた美しい令嬢を自分の後ろに座らせる。
「アルル?!」
まるで絵本から抜け出たプリンセス人形のように美しい姿。
めっちゃ可愛いわぁ…。でも何でアルルがこんな所に?
豊かな艶やかな亜麻色の髪は緩やかなウェーブがかかり、一部が結い上げられている。
あら?あの髪飾り……?
さっき、廊下で侍女さんが運んでたものじゃないかしら?
「ところでソーヴェ。その令嬢は?街中で見たことがあるような気がしますが」
イスキア公がねっちょり視線をアルルに向ける。
「私の旧知の友人の娘ですの。はるばる我が国までやってきてくれたのに、今回のことに巻き込んでしまいました。こんな狭い退屈なところに押し込められていたので、私の無聊を慰めてもらっていましたのよ」
イスキア公の視線から庇うようにカルゾ女公がアルルの前に座り直す。
カルゾ女公の友人の娘?
ということは、アルルも貴族の令嬢なのね。
え?じゃあ、ウィルの従姉妹って……アルルなの?
迷探偵律子がまたムクムクと活動し出す。
「ところでラマンドロよ。輪番のことだが」
大公が厳しい声で改めて、高座に設けられた大公席からイスキア公に声をかける。
「はっ」
「今回のことでお前の代はイスキアは輪番から外す。文句はないな?」
「……」
「それと、南に帰る前に港のバラバラになった船のゴミを片付けていけよ」
「……っ」
「良いな?では行け!」
明らかに格が違う、威厳と鋭い眼光に気圧されたイスキア公はガックリと頭を垂れた。蛇姫を連れ早々に退席していく。
その後ろ姿を見送りながら、桔◯屋か越◯屋ばりの悪徳商人顔でゲンメ公がニヤニヤしながら、カルゾ女公に提案する。
「それはそうとソーヴェ殿。先程の続きだが輪番はともかく、この機会にご子息のお相手をきちんと決めたらどうだ?」
「お父様!」
イスキア公退場で何を言い出すかと思ったら…。まだ、諦めてなかったの?!
こちらも相当しつこい狸だわ。
突き刺さるような好奇の視線が私に集まる。
いや、イスキアが引いたとしてもそんな無理くり猿姫と金の公子って……ないでしょ。間違いなく、可哀想な公子様っていう国民感情が半端なく膨らむと思うのよね。
ネットが間違いなく炎上するだろうし、それこそユッカナウの記事が怖くて私、読めなくなるからやめて~!
「そうだなぁ。いいかもしれないぞ、どうだ?ヴィンセント。いつぞやの真実の愛とやらは見つかったのか?それともまだ、我が息子の方が良いか?」
家族ぐるみでの仲の良さを伺わせる様子で、エスト大公がヴィンセント様に茶目っ気たっぷりに尋ねた。
「ふふっ、ヴィンセント。貴方もそろそろいい加減、年貢の納め時かもよ。ハッキリしなさい」
意味ありげな笑みを浮かべながらソーヴェ様が息子に告げる。
「もう、俺にチューとかは絶対になしだぞ!」
ウィルが自分の口元で両手をクロスさせた。
「では仕方ないですね、ウィルブラン・エスト。君との婚約は破棄させてもらいます」
苦笑いしながら、ヴィンセント様は婚約破棄を宣言した。
「はい、喜んで」
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