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イラナイ子④

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確かに、彼女の今までの人生が辛かったのはわかる。

いや、「辛い」なんて言葉では生易しい程、酷いものだったのだろう。

けれど、それでも……人生を「苦しかった」だけで終わらせてほしくはないのだ。

それは、僕の――彼女に対する願望でもあった。

(もう1度……もう1度だけ、彼女に世界を信じてほしい。いや、世界だけじゃ無い。僕達のことを、信じてほしい)

綺麗事かもしれないが、「生きていれば幸せもきっとやってくるはず」――僕は、そう信じて生きてきた。

そうして、少なくとも僕の人生は、その通りになったのだ。

苦しいこともあった。辛いこともあった。

全てを投げ出したい夜もあった。

この世から消えてしまいたい――もういっそ、死んでしまおうとすら思った時期もあった。

それでも、生きていたから「今の僕」があるのだ。

僕は強い決意を胸に、一歩、少女の前に進み出た。

そして、ぎゅっと彼女のせた手を握る。

「わかるよ。……わかる。同じ痛みを知るからこそ、僕は尚更、君に生きて欲しいんだ」

彼女の手を握ったまま、僕は、彼女の心に届くことを願いながら、そう語りかけた。

「人生も世界も美しい」なんて中身のない綺麗事は、僕には言えない。

でも、同じ悲しみを知るものとして寄り添うことは出来るから――。

僕は、真っ直ぐに少女の瞳を見つめ返した。
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