Switch！〜僕とイケメンな地獄の裁判官様の溺愛異世界冒険記〜

イラナイ子③

「生きていることすら許されない。皆に、「死」を願われる。ねぇ、あなた達だったら、そんな場所にいたいと思う？血を分けた家族にすら、「お前はいるだけで周りを暗くする」、「この世界にいない方がいい」と言われるのよ？……私は、もう限界だった」

少女はそう語りながら、僕達の方を徐おもむろに振り返る。

そうして、僕達を真っ直ぐに見つめながら、こう言い切った。

「私は、あの世界で生きることを、もう諦めたの。もし、あなた達が私にあの世界に戻れと言うのなら、私のこの壊れきった心を動かしてみせてよ。私が、もう1度あの世界で生きたいと思える様にしてみせて」

そう語る少女の瞳は、泣きそうなほど悲しげに歪められていた。

（この子を……もう1度、僕達の世界で生きたいと思わせる……）

それは、どれ程難しいことだろう。

彼女は文字通り、全てに絶望して――自らの人生を終わらせるために、敢えてこの牢屋に囚われたままでいるのだ。

きっと、上っ面だけの言葉では、彼女の心を揺り動かすどころか、まともに取り合って貰うことすら出来ないだろう。

それでも――。

（この子の人生を、こんなところで終わらせたくない……！）

それが、紛れも無い僕の本音だった。