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~マリア・フィガロ伯爵令嬢視点~

何なの?
何なのよ!
久しぶりにデューク様とお茶を出来るようにエルザにさせたと言うのに、一口も飲まないまま席を立つなんて!
咄嗟にデューク様の袖を掴もうとした手も払われた・・・

ミラにしてデューク様の隣のポジションをゲットしたというのに!
やっと、やっと近付けたというのに!
あとは能力を使うだけでデューク様をわたくしの物に出来たというのに!!
あと少しだったのに・・・

なのに『臭い』ですって?
今流行りの香水を知らないの?
ミラとチビにまでキツい匂いだと言われた!!

デューク様に言われた恥ずかしさと、ミラとチビにまでバカにされた怒りと苛立ちで頭に血が上って体まで震えた。

『あ、あのマリア?』

『うるっさい!!役立たずは黙っていなさい!』

わたくしに利用される事でしか役に立たないエルザが憐れむような目を向けてわたくしに声を掛けてきた。

『アンタもわたくしが臭いって言うの?』

『・・・ちょ、ちょっとキツいかな?』

・・・・・・。
女に臭いって禁句だよ。
わたくしだって傷付くんだよ。
でも体臭がキツいんじゃなくて、香水がキツいなら次は加減すればいいだけじゃん。

折角のチャンスだったけれど今回は仕方ないわね。

今回はいいわ。
ミラはもう、わたくしの言いなりだもの。






一週間前、ミラに声をかけた。

その時もデューク様の前ではいつも笑顔で甘えているクセに、まるでわたくしを見下すような冷たい目だった。
生意気にもわたくしに『デュークと呼ぶな』ですって!
わたくしの物になる彼をそう呼んで何が悪いの?

いるのよね、男の前と女の前で態度の違う女って!
ミラがまさにそれだった。
普段あの子が猫を被っているのは傍から見れば明らかなのに、デューク様はミラの笑顔に騙されている。

下手に出てムカつくミラに媚びてやっと2人きりにしてもらった。

うふふふ・・・
わたくしの能力は万能よ?
人を思い通りに操れるの。
ほら、さっきまでデューク様と手を繋いでイチャイチャしてたのに、今はもうスルーしている。

何が起こったのか呆然とするデューク様。
ミラの事は気にしなくていいのよ?
あの子にはちゃんとから安心して?
もうミラに付き纏われる心配もしなくていいのよ。



そして今回のお茶会でデューク様の隣で囁く予定が上手くいかなかった。
でも不安なんてないの。
また次があるもの。
わたくしはエルザを使って最後の切り札オズワルド殿下も手駒にするつもりよ?

そうね~乙女ゲームであるあるの卒業パーティーで国外追放でもいっとく?
それとも娼館送りがいいかな?
地下牢に入れちゃう?
他には・・・処刑があったよね?
処刑か~ただ殺すだけなんて面白くないよね?

!!
いいこと思いついちゃった!
オズワルド殿下にミラに国外追放を言い渡させて、護衛に暴行させたらいいんだよ!
お高くとまっているミラの泣き叫ぶ姿なんて最高じゃない?
護衛たちには、たっぷり楽しんだ後に殺害をお願いすればいいわ!

・・・どうしよう。
想像するだけでワクワクしてきたわ。

急がないと!
卒業パーティーまで3ヶ月もない。

同時進行でまずはデューク様を手に入れて、オズワルド殿下は手駒にする。
わたくしの能力を使えば楽勝よ。









・・・楽勝だとそう思っていた。
だって、わたくしの能力は万能だと信じていたから。

『能力を悪用する事は犯罪になります。貴女の能力は生涯使う必要のない力です。くれぐれもお気を付け下さい』

犯罪・・・施設の所長に言われていたけれど忘れていた。
いえ、忘れていたというよりも使える能力を使って何が悪いの!って思っていた。

ドクドクと心臓が早鐘を打つのは・・・
ここから逃げないと!って、本能が訴えてくるのは・・・

目の前でデューク様が冷たく見下ろしている。

その目を以前どこかで見た気がするのは気の所為だろうか・・・
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