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番外編

ロー兄様視点

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「義父上!今度の義父上の休暇に二人で旅行に行こう!僕が計画を立てたんだよ」

いつも旅行はランベル公爵家の皆と一緒に行っていたのだが、二人だけで行くのは初めてだ。
それもいつの間にか計画まで立てたと言う。
可愛い息子のお誘いだ。僕の返事は決まっている。

「いいよ。どこに行くんだい?」

「到着するまでは秘密だよ」

カーティスが珍しくイタズラっ子のような顔をする。
使用人の手も借りずに楽しそうに荷造りする息子も子供らしくて可愛い。
この頃には僕たちはもう本当の親子のように二人の間に遠慮なんてものは無かった。





旅行日和にぴったりの晴れた日に僕たちは出発した。
日程は二泊三日の予定だそうだ。
もちろん馬車での移動で、周りには護衛も連れている。

到着したのは馬車から見える景色と方向から予測していた通り海辺の街だった。
確かにここは観光地だが、今の寒い時期には向かない場所だが⋯⋯カーティスには何か目的があるのだろう。

観光地だと言うこともあり、貴族向けの宿は沢山あるが中でも公爵家に相応しい安心安全な高級宿までをカーティスが手配していたのには驚いた。

「義父上!お腹がすきました!早く服を着替えて食事に行こう!」

貴族には見えないラフな格好に着替え、早く!早く!とはしゃぐカーティスに手を引かれた先には平民が利用するような食堂が見えてきた。

「あそこだよ!美味しいって有名なんだって!」

いつの間にそんな事まで調べていたのか⋯⋯
カーティスは余程楽しみにしていたようだ。
ただ、お腹が空いているだけかもしれないが⋯⋯

「いいじゃないか。一度くらい付き合ってくれよ」

「困ります」

「おい!こっちが下手に出てるからって調子に乗るなよ!」

「は、離して下さい」

どう見ても無理やりだ。
これは黙って見てられないな。
それに⋯⋯この声は知っている。
それに、あの後ろ姿も。
そう思った時にはカーティスを護衛に任せて走り出していた。

「義父上頑張って!」とカーティスの応援が聞こえた気がしたが気の所為だろう。

「うるせえ!お前のような年増を相手にしてやるって言ってんだ!言うこと聞かないと痛い目に合わせるぞ」

「おい!彼女に何をしようとした?」

女性を背に庇い男の腕を捻りあげた⋯⋯が、勢いがあり過ぎたのかゴキっと鳴る音と、男の悲鳴は同時だった。
すぐに護衛の一人が男を縛りあげてたのであとは任せて⋯⋯振り向いた。

「大丈夫かい?」

少し痩せたかな?
震えながらも彼女は「あ、ありがとうございました」とお礼を言ちながら顔を上げた。
彼女の赤いルビーのような瞳が見開かれ僕を映した。

「え?ど、どうして⋯⋯ここに?」

「うん、僕のがここに連れて来てくれたんだ」

誰から聞いたのか⋯⋯閣下しか居ないか。
カーティスは僕と彼女を会わせるためにここに連れて来たんだと気付いた。

「息子⋯⋯さん」

「そう、養子だけど本当の息子のように思っている」

「公爵様は今幸せですか?」

「⋯⋯そうだね。今が一番幸せかな」

良かったですと優しく微笑む。

「君は?」

身分を返上した彼女たち家族がこの海辺の街で暮らしているのは分かるが⋯⋯

「義父上!カッコよかったです!」

カーティスが駆け寄ってきた。丁度いいと彼女の僕の自慢の息子を紹介する。

「紹介するよ。僕の息子のカーティスだ」

「はじめまして。カーティス・スティアートです」

「はじめまして。リディアと申します」

「義父上、義父上、久しぶりに会ったんでしょう?僕は先に宿に帰っているから少し話をしてきたら?」

⋯⋯カーティスめ!
そうだな。僕も彼女のことはずっと気になっていたから⋯⋯

「少し話せるかな?」

彼女とゆっくり話したことは過去を振り返っても最後のあの時だけだ。
既にいい人かいれば断られるかもしれない。

「よろしいのですか?わたくしは今は平民ですよ」

「街の案内もお願いしたいな」

意外とあっさり彼女は頷いてくれた。
相変わらず彼女は控えめで、僕より少し後ろを歩こうとする彼女を横に並ばせた。

遠慮する彼女とランチを取り、歩き疲れるとカフェでお茶をする。
少しづつ彼女から今の生活を聞き出すと、爵位を返上したあとご両親とこの街で慎ましやかだが穏やかな生活を送っていたらしい。
三年前に父親が、七年前に母親が亡くなって今は商家の子供たちの家庭教師をしながらで暮らしていると。

彼女と砂浜にあるベンチに座って気になっていた事を聞いた。「結婚は?」と。見目もいい彼女はここで異性との出会いもあっただろう。

「わたくしには一生に一度の恋がありますから⋯⋯その思いだけでこの先もずっと一人で生きていけるのです」

そう言って微笑む君は⋯⋯あの頃と同じ真っ直ぐな眼差しを海に向けていた。
思いだけで生きて行けるなんて⋯⋯言わないで欲しい。
それが君の選んだ幸せなのか?女として子を産み育て母になりたくはなかったのか?僕は君の幸せを願っていたのに。

「そうか⋯⋯」

この先の言葉は出なかった。
まずはカーティスに相談が必要だ。彼の気持ちを優先する。彼さえ良ければ⋯⋯そう考えていた時だ。

「義父上情けないよ」

後ろからカーティスの呆れた声がした。

「カーティス」

「カーティスさん」

「僕には父様と義父上二人の父親がいるよ。だったら母様と義母上が居てもいいと思うんだ。⋯⋯ 義父上も素直になろうね」

まだ10歳のカーティスに諭されるなんてな。
ありがとうカーティス。
もう40にも近い僕だけど妻を迎えてもいいかな?

ベンチに座っている彼女の前に跪いて手を握る。

「僕も一生に一度の恋を胸に生きていくつもりだった。でも⋯⋯今も君が僕と同じ気持ちでいてくれると言うのなら僕と結婚してくれないか?」

「で、でも⋯⋯わたくしは平民で⋯⋯それに妹が⋯⋯」

「そんなことは関係ない。僕とカーティスと家族にならないか?」

家族に?⋯⋯と呟いてぽろぽろと涙をこぼす彼女は心からの気持ちを伝える。

「ずっと君が、リディアが好きだったよ。愛している。妻になってくれないか?」






次の日にはリディアの家庭教師先の商家に辞める旨を伝えるために挨拶に行ったり、リディアの荷物をまとめ予定よりも一日伸びてしまったが帰路に着いた。
馬車の中で平民になってからのことを人懐っこい笑顔でカーティスが上手く聞き出していた。(我が息子ながら末恐ろしいなカーティスはリディアをすでに義母上と呼んでいる)

リディアは今までにも男たちから強引な誘いはあったそうだが、その度にどこかから知らない男が現れて助けられていたそうだ。お礼を言う前にいつの間にか姿を消していたそだ。

閣下⋯⋯いつからリディアに見守り隊を付けていたんだ?




まずは閣下に報告と⋯⋯お礼だ。

こうなる事を予想していたのかランベル家の応接間のテーブルには婚姻届まで用意されていた。

有り難いが閣下のニヤついた顔がなんだがムカつくのだが⋯⋯
そして、今は僕の部下のフェリクスも閣下とニヤつく顔が似ていてムカつくな!
それに比べルナの「ロー兄様良かったですね」と喜んでくれる可愛らしさよ。

まあ、有り難く婚姻届を使わせてもらい、リディアと一緒にサインをする。
もちろん保証人欄は閣下だ。
そのまま教会に届けを出してから我が家に戻った。

⋯⋯どれだけ手筈を整えていたんだよ!

カーティスが今日はランベル家に泊まると言い出した時に気付くべきだった。
すでに公爵夫人の部屋も、夫婦の寝室も出来上がっていた⋯⋯

⋯⋯初夜?
え?いいのか?
僕は思春期の頃には諦めていたから実践で伽教育を受けていない。本の中でしか知らないぞ。
落ち着け。まずは夕食だ。それにリディアを疲れているだろう。ゆっくり休ませてあげたい。






そう思っていたのだが⋯⋯結局はリディアをさらに疲れさせてしまった。
リディアとの口付けも、夜の行為も、幸せそうに眠るリディアの寝顔を見るのも初めてだった。

ルナがあの家を追い出されて、初めて姪っ子に会えた時も、ルナに子供たちが生まれた時も、カーティスが僕の息子になってくれると言った時も幸せを感じていた。




閣下⋯⋯幸せって増えていくんですね。

ありがとうございます閣下義兄上

貴方が僕の義兄上で良かった。

今度は僕が家族を幸せにします。







♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

これで番外編も完結です。
最後まで稚拙な小説にお付き合い下さりありがとうございましたm(_ _)m

沢山の感想とエールといいねをありがとうございました。
ずっと励みになっておりました。

結婚後のルナとフェイのイチャイチャやロー兄様とリディアのイチャイチャが描けなかったことは少し心残りですが読者様のご想像にお任せ致します。(*˘︶˘*).。.:*♡

これからもkanaをよろしくお願い致します。
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みんなの感想(463件)

天花
2024.11.18 天花
ネタバレ含む
kana
2024.11.19 kana

天花 様

感想ありがとうございます😊💕

作者はハッピーエンドが大好きなので、ほとんどの作品がそうなっています(๑´罒`๑)ʊʊʊ

まあ、ざまぁ好きなんですけどね( ̄▽ ̄;)💦

解除
ぱら
2024.05.11 ぱら
ネタバレ含む
kana
2024.05.14 kana

返信が遅れて申し訳ございません🙇‍♀️💦

みんながロー兄様の幸せを願っていました😊😊😊💕
カーティスという息子と、好きだったリディアを妻に迎えもう寂しくないですね(*•̀ᴗ•́*)👍

解除
迷夢
2024.05.08 迷夢
ネタバレ含む
kana
2024.05.08 kana

最後まで読んで頂きありがとうございました٩(๑>ᴗ<๑)۶

これも迷夢様を含む読者様のお陰です😊💕
ありがとうございました꒰ˆ‎꜆‪⸝⸝⸝⸝‎꜀ˆ꒱💓

解除

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