二度目の人生は、地雷BLゲーの当て馬らしい。

くすのき

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情報量が多い!⑦

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 現れたのはラムとグノーだった。
 彼等は抱き合う俺達を視界に入れるなり、やっちまったと顔を顰める。
 対する俺達も一時停止の後、瞬間湯沸かし器となって距離を取った。

「ふ、二人とも。お疲れさま」
「あ~……邪魔して悪ぃな」
「全然! 全然問題ないから!」
「うんうんうん! ……グノー?」

 高速赤べこになった俺の前にグノーが立ち、頬に触れる。

「目の下が腫れているゾ」
「あー、ちょっと色々あって。でも全然、全然大丈夫だから!」
「……そうカ」
「? どうかしたの」

 暫し無言で顔を覗き込んでいた彼が、にやりと口角をあげた。懐かしい何時もの悪人笑いだ。続けて皮の厚い大きな手が豪快に頭を撫でる。

「わ、わわっ! ちょっ、グノー!」
「元気そうで何よりダ」
「元気! 元気だから手ェどけて!」
「すまンすまン」
「もうっ!」

 手櫛で整えると、グノーと入れ替わる形でラムが俺の肩に手を添える。

「……ラム?」
「早めに目元は冷やすんだぞ」
「あ、うん」
「安心したわ」
「……心配かけてごめんなさい」

 今度は二人で俺の頭を撫でる。だが今度は乱暴なものではなく、犬猫にでも触るように繊細だ。
 星夜経由で到底理解出来ない話しを聞いただろうに、二人はまだ俺を“仲間”として見てくれている。
 その事実にじぃんと胸が熱くなる。

「ところで二人は仕事帰りかい?」
「あぁ、今日はいつもより早く終わったからな。ユニの顔でも見ようって寄ったわけよ」
「あ、ありがと」
「あれから具合はどうだ?」
「体調については問題ないって。ただやっぱり体力は落ちてるから暫くはリハビリが必要みたい」
「ハハッ。そりゃ仕方ねえわな」
「ゆっくり戻セ。待ってるかラ」
「……待っててくれるの?」

 当然だロ、とグノーが鼻を鳴らす。
 また鼻の奥がつんとなる。
 今日だけで何回泣くんだろう。
 乱暴に目元を拭い、俺はしっかりと二人に向き直った。

「ラム、グノー」
「ん? なんだ。急に改まって」
「二人に話したい事があるんだ。これから、ううん、都合が良い日で構わないから話し聞いてもらってもいい?」

 ラムとグノーが顔を見合わせ、椅子に座る。

「聞こう」
「ユニ、本当にいいの? 二人には俺から話してもいいんだよ」
「有難う。でも俺は二人の優しさにちゃんと応えたい」
「……解った。じゃあ俺は念の為、人払いしてくるから」

 ちゅっ、と俺の頬に口付けて踵を返したレオに、ラム達が大きく目を見開き、直ぐに破顔した。

「お前等、遂に」
「あ、うん。プロポーズされて今はお試しでお付き合いしてる」
「おオ、遂にカ! ――――ん? なんでお試しなんダ?」
「俺の都合でそうして貰ってるんだ」
「まあ何はともあれ、目出度いじゃねえか!」

 今日は良い酒飲むぞと有頂天な二人を咳払いで止める。

「どうした?」
「報告はそれだけじゃないんだ。俺の事……二人もオズ、一条 星夜から聞いてるんだよね」
「あぁ」

 机の上できつく拳を握ると、グノーの手がそっと重ねられる。

「無理して話そうとしなくていイ」
「……ううん。彼から俺の中にもう一人別人格がいるかもしれないって聞いてるだろうけど正確には違うんだ」

 俺は深く息を吸う。

「俺は前世の記憶を思い出しただけで、別人格はいない」
「……!」
「思い出したのは、以前小鬼と戦闘した時。目の前に文字が現れてこうなったんだ」
「文字?」

 首肯した俺は、一部――この世界がゲームの中であること――を除き、レオとほぼ同じ説明を彼等にも語る。
 二人は最初こそ真剣に聞いていたが、半分くらいになると頭を抱えて「マジかヨ」とか「情報量が多い」と唸り声を上げていた。
 気持ちは判る。

「ただいま」
「あ、お帰り」
「どれくらい話したの」
「えっとね、前世の記憶を取り戻した経緯と自己紹介、あとは実は等級上げて疾風迅雷を抜けたら支部の職員になろうと思ってたところまで」
「あ、そこかー」

 戻ってきたレオは俺を抱えると、その状態で椅子に座り直す。

「いや、そこかー。じゃねえわ!」
「なんでお前は冷静なんダ!」
「え、だってユニはユニだし、問題さえ片付けば一生俺と添い遂げてくれるって約束したから別に」
「別にじゃねえだろ!」
「えー」

 俺の手をにぎにぎしながら、レオは不思議そうに言う。

「逆に何が問題なの?」
「っ、それハ」
「……混乱させてごめんね。でも俺は俺なんだ。勿論全部理解してほしいなんて言わないし、二人にもちゃんと知っておいてもらいたかったの」
「「……ユニ」」

 ちょっとだけ眉を下げて笑うと、ラムとグノーがバツが悪そうに下を向いた。軈てがしがしと乱暴に頭を搔き、「あーー!!」と叫ぶ。

「あの、大丈夫?」
「大丈夫なわけねーだろ」
「アッ、ハイ。ごめんなさい」
「謝んな!」
「はいっ!」

 しゅんとした俺に、ラムが肺腑の中の空気を吐ききるように息を吐く。

「他には」
「え」
「他には何があるんだ」
「えっとざっくり言うとね、星夜は恋人と宣ってたけど一応俺にとっては初彼で、けど奴にとって俺は飯炊き兼オナホだったし、ユニとして目覚めてからレオが浮気した彼氏の声にそっくりで、大森林ダンジョンの問題は前世では娯楽の一種だった……くらいかな」
「だから情報量が多いんだよ!」
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