俺だけ使えるバグで異世界無双

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3話 クラスメイトとの再会

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「やっと着いたあああああああああ!!!!」

あれから三日間、俺はひたすら真っ直ぐ進み続けた。勿論、普通であれば真っ直ぐ進むと行き止まりの場所にぶち当たるだろう。だが、俺にはこの壁を通過できる能力がある。
はたしてこの能力が一体何なのか分からないが、クラスメイトがパンチだけで壁を破壊できてたんだ。これくらいできても
不思議じゃない。

十メートル程の人工壁が見えたときは嬉しさで発狂してしまった。
だが、こんな髪も服もボロボロな俺が
門を通れるはずがない。だから、人工壁を通過した。

通過したその先には立ち並ぶ店や中世ヨーロッパ風の民家があり、往来する人々で
賑わっていた。

ここがどこで、なぜ街行く人達が日本語を
話しているのかは知らないが、そんなことは
どうでもいい。ようやく人に会えた。
日本で学生をしていた頃は人に会いたくなかったのに、こんなにも涙が出そうなんて。

というより、もう涙が出ていた。
そんな俺に街の人たちはどん引きしている。

だが、今の俺がその程度で恥ずかしがるはずもない。何せあの地獄を生き抜いてきたのだから。

「なぁ! おっさんたち!
聞きたいことがあるんだけどよ!」

陰キャの俺はもういない。
バンッ! と机を叩いて強面の集団に
話しかける。

「あ?」

「やんのか?」

「......あ、いえ......なんでもないです」

思っていた以上に俺は陰キャだったようだ。
本能がこいつたちには歯向かうなと
警告している。
俺は殴られる前にその場を立ち去った。

「はぁ......にしてもどうすっかな......これから......」

セリナには頑張って生き残れとしか
言われていない。
見た感じこの辺は平和そうだし、
ここに住むか? 
てか、魔王に滅ぼされかけてるって
言ってたけど、その王国は
ここじゃないのか?

数々の疑問が浮かぶも一人では
解決できるわけがない。やっぱり
もう一度勇気を出して誰かに声を
かけようかと思っていたときだった。

「逃げろ!!! 向こうで喧嘩だ!!」

誰かがそう叫んだ。

直後、俺の目の前に何かがぶっ飛んで来た。

その風圧に体ごと壁に激突する。

「いってええええええええ」

もがきながら、恐る恐る目を開くとそこに
立っていたのは、

「......清水愛?」

勿論、陰キャの俺が彼女と知り合いな訳がない。彼女はただのクラスメイトで俺が一方的に認知していただけだ。
モデルのようなすらりとした体型に加えて、
驚くほどに整った容姿と黒髪ポニーテイル。
学校のマドンナは春だが、愛もまた男子から人気の高い。しかしながら、その冷然とした態度と周囲から異質した性格から誰も彼女に近づかない。

一体なんで彼女が飛んできたんだ?
そんな疑問も浮かんだが、何よりクラスメイトに出会えたことが嬉しすぎて、

「お、おい! 俺だよ俺! 愛!」

そう叫んでいた。

慌てた様子の彼女はこちらに顔を向ける。

「......あ......えっと......貴方の名前
なんだったかしら?」

こんなことで落ち込む俺ではない。
何度こんな困った顔を女性にされてきたことか。

「成瀬だ! 成瀬敬! 同じクラスの!」

そう言っても彼女ははてと首を傾げる。

「お、おい......さすがにそれは俺も泣いちゃうぞ......」

そんな俺に愛が突然駆け寄ってきた。

「危ない!」

今何が起こってるのかは分からないが、愛に襟を掴まれて引きずられてるのは理解できた。

「く、くるし......しぬ......」

意識の途絶えそうな直前で俺はどこかの建物の中に投げ捨てられた。

「お、おい! てめぇ何しやが」

「しっ!」

愛が手で俺の口を塞いできた。
落ち着いて見れば、愛の表情は険しく、
何か怯えている様子だった。

「な、なぁ......何から逃げてるんだ?」

そう訊ねなくても、直ぐにその
正体が分かった。
それは同じクラスの男子だった。
名前は覚えていないが小畑や三沢達の
グループにいた奴だ。
そいつが誰かを探しているかのように首を巡らしながら窓の外を巡回している。

「針山さとし」

愛の言葉でようやく思い出した。
そうだ。針山だ。
坊主で野球部だったか。

「何で針山から逃げてるんだ?」

「......は? 貴方......何も知らないの?」

「何を?」

「あ、そういえば、貴方は転移石を
貰っていなかったわね。それに一人だけ
王都にいなかったし」

「あれからどうなったんだ? みんなは俺のこと心配してくれてたのか?」

その問いに愛は目をそらした。

あ、そう。まぁなんとなく予想してたからいいよ。別に気にしてないから。ほんとに大丈夫。あとで泣くから。

「どこから説明すればいいのかしら。
私たちが王都にテレポートしたあの日、
私たちは国王からギルド会員証を貰ったの。これよ」

愛が取り出したそのカードにはレベル560と職業マジシャンという言葉が表記されていた。

「なんだこれ」

「レベルとジョブよ。
この世界はゲームみたいにその人の強さを
表すレベルと職業があるの」

今さらそんなことを言われて驚くこともないが、こういうことを平然と言ってしまう彼女を見ていると背中が痒くなってしまうのは俺だけなのだろうか。

「これで職業を決めて、各々の力を確認した私たちは修行をしながら迫り来る魔王に準備を進めたわ」

「おおお! その展開面白いな!
それでこれから魔王とのバチバチの戦いが始まるんだろ?」

「何言ってるの? もう魔王は倒したわよ」

「........................は?」

「私たちがこの世界に転移してから一週間後に。圧勝だったわ」

「......え? 一週間後に?」

な、なんで? 俺は? 俺何もしてないんだけど。一大イベントじゃん。その為にこの世界に来たんじゃん。なんで俺も呼んでくれなかったの。
俺、腹壊して森のなかでうんこ
してただけじゃん。

「本当に何も知らなかったのね」

やめて。そんな哀れみの目で俺を見ないで...... 

「じゃ、じゃあもう俺らがこの世界にいる必要ねぇじゃん。帰れるってことだろ?
よかったぁ......やっと帰れるのか」

「あ、もう二度とあの世界には
帰れないわよ?」

「....................................ふぇ?」

「転移魔法を発動できる杖が誰かに
壊されたから」

「えええええええええええええええええええ!?」

「ば、ばか! 声が大きい!」

遅かった。針山が俺の声に気がついて
背に背負っていた大剣を振るった。
その直後、成瀬達の隠れていた建物が真っ二つに割れる。

「見つけたぜぇ......愛」

針山は口の端を吊り上げてそう言った。





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