異世界サバイバルゲーム 〜転移先はエアガンが最強魔道具でした〜

九尾の猫

文字の大きさ
1 / 252

0.プロローグ

しおりを挟む
俺の名前は伊藤和也。

どこにでもいる、しがない中年サラリーマンだ。
最近俺の身に起きている不思議な現象について記録するために、この文を書いている。
日記というか備忘録というか、まあそういった類のもの。

あれはゴールデンウィーク初日、4月28日土曜日の夜だった。
今年のゴールデンウィークは土日を含めて9連休。
いつも通っているサバイバルゲームフィールドの何周年だかのイベントゲームに参加して、近くの銭湯で風呂に入り飯まで食って帰ってきたところ、家の近くで濃霧に包まれた。

この地域は早春の明け方には濃霧が出ることは多々あるが、もうすっかり気温も上がったこの時期の、しかも夜間に霧が出るのは珍しい。見通し50mも無いほどの濃霧など久しぶりで、ものすごい違和感があった。

自宅は数年前に購入した中古物件。
会社の上司には「結婚もしていないのに持ち家?」という顔をされたが、単に賃貸物件契約の補助金が打ち切られる年齢になったからだ。

バブル期にちょっと流行った鉄筋コンクリート造りの平屋根二階建てをリフォームした。外壁と屋根は金属サイディングで仕上げ、ついでに屋根にはソーラーパネルを設置。
リフォームを手掛けてくれたのは、仕事でも付き合いのある某建設会社だ。この地域では有名どころだが、全国的には無名の会社だ。
これでオール電化はもちろん、多少は売電もできている。もっとも浮いたガス代と電気代で元が取れる頃にはパネルの更新時期になりそうではあるが。

リフォーム時に貯水槽を床下に設置している。ポンプ付きポリエチレン製300ℓタンクを4基で合計1200ℓ。家族4人で1週間分相当との触れ込みだったが、一人暮らしの身の上では貯水としては十分だろう。
水道管に逆止弁を経由して直結しているから、日常のメンテナンスや水管理は必要ない。

自宅の周囲は住宅化の波が途中で止まったかのように田畑が広がっていた。物件の隣の畑も併せて買い取り、家庭菜園の真似事なんぞも始めた。
それで雨水の貯水タンクも外壁の外に設置した。

畑の片隅には井戸があり、昔ながらの手押しポンプが設置してあったが、残念ながら飲用には適さないとの事だった。ヒ素の含有量が飲料水基準を僅かに外れている。

趣味は春と秋はサバイバルゲーム、夏はキャンプをしながらの釣り、冬はスノーボード。
自宅一階の一室は、趣味の道具とメンテナンススペースに占拠されている。
独身で特に彼女もおらず、酒もギャンブルもしないともなれば、それなりに趣味に打ち込む金と時間は作れるものだ。

愛用のエアガンは、野外フィールドではG36VかG36C、インドアフィールドではMP5A2かMP5K、砂漠フィールドや狙撃可能なフィールドではPSG-1、バックアップウェポンとしてUSPを装備することが多いが、それ以外にもベレッタM93Rやリボルバータイプのハンドガンも所持している。

慎重な運転の末に自宅に辿り着いた俺は、ガンラックにエアガンを立て掛け、BDUを洗濯機に放り込み、ニーパッドや各種装備品を風呂の洗い場に入れたところで力尽きてベッドに倒れこんだ。




さて、異変に気づいたのはゴールデンウィーク2日目、4月29日の日曜日の朝である。

結局平日と同じ時間に目が覚める。20年近く同じサイクルの生活をしていると、休日でもサイクルから抜け出すのは難しい。
休日とは言え、異常に静かな朝だった。いつもこの時期に聞こえるコジュケイやキジの鳴き声もない。

その日は特に予定もなく、とりあえず昨日風呂場に放り込んでいたニーパッドやブーツなど装備品の泥を落とし、洗濯機を回した。

洗い終わった洗濯物をベランダに干すために階段を上る。
2階には3部屋あるが、まずは南側のベランダに面した窓を開ける。

……なんだこれは……

ベランダから見える範囲が百メートルほど先まで草地になっている。家の南側を通っていたはずの舗装道路もなくなり、道路の向こう側にあった田んぼを1面残して全てが草地になっていた。
田んぼには近所の農家が田植えした稲の苗が風に揺れていた。

慌てて他の部屋の窓からも周囲を確認する。

東の窓からは、少し離れた場所にある製鉄所の煙突群が見えていたはずだ。
風向きによっては細かい煤塵がこの辺りにも降り注ぐから、外で洗濯物を干すのは不可とまで言われた原因の工場だ。
だがそんな煙突群は一切見えなかった。
代わりに家庭菜園を営んでいた畑の直近まで、イネっぽい草で覆われた草地になっている。
春先に植えつけたジャガイモやサツマイモ、トウモロコシはそのまま植わっている。
その先に見えるのは松林だろうか。

北の窓は腰の高さからしか開かないが、ここから見える風景も変わっていた。
以前は少し先にアパートが建っていたはずだが、いまではただの森になっている。
北の森は東の松林から始まり、ぐるっと北を抜けて西に続いているようだ。

つまり、俺の家は森に囲まれた野原の一軒家になってしまっていた。

「なんじゃこりゃあああああ!」
2階から叫んでみたが、声は虚しく響き渡るだけだった。いや、某俳優ばりに一度叫んでみたかっただけかもしれない。

慌てて玄関から外に出る。
少なくとも地に足は付く。夢ではないようだ。

庭の鉄製の門から出た俺は、自宅の敷地境界の高さ1メートルほどの白い柵に沿って、ぐるっと一周する。

建物の外観には特に異常はない。例えば壁に亀裂が入ったり、傾いたりしている気配はない。
鉄筋コンクリートのガレージと、ガレージ内の車も異常なしだ。シャッターの開閉も普通にできる。
自宅前のアスファルト舗装された道路は跡形もなく、背丈の短い草が地面を覆っている。
畑に植えていたジャガイモなどにも異常は見られない。

畑の土と畑の外の土を少し掘り返してみる。
明らかに土の質が違う。畑の土は黒っぽく砂混じりだが、畑の外の土はいわゆる赤土だ。粘土質で……

しゃがみ込んで確認をしていると、背後に異様な気配を感じた。

振り返ると、10メートルほど先に異形の物が立っていた。
しおりを挟む
感想 232

あなたにおすすめの小説

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜

駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。 しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった─── そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。 前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける! 完結まで毎日投稿!

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。 ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。 そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。 視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。 二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。 *カクヨムでも先行更新しております。

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

転生魔竜~異世界ライフを謳歌してたら世界最強最悪の覇者となってた?~

アズドラ
ファンタジー
主人公タカトはテンプレ通り事故で死亡、運よく異世界転生できることになり神様にドラゴンになりたいとお願いした。 夢にまで見た異世界生活をドラゴンパワーと現代地球の知識で全力満喫! 仲間を増やして夢を叶える王道、テンプレ、モリモリファンタジー。

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~

イノナかノかワズ
ファンタジー
 助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。  *話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。  *他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。  *頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。  *本作の無断転載、無断翻訳、無断利用を禁止します。   小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。 カクヨムにても公開しています。 更新は不定期です。

処理中です...