異世界サバイバルゲーム 〜転移先はエアガンが最強魔道具でした〜

九尾の猫

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1.自宅防衛戦①(4月29日)

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小さな子供ほどの身長に黒っぽい緑色の肌。大きな毛の無い頭部。目は吊り上がっており耳は長く、大きく裂けた口からは長い牙が生えている。
ぼろ布を巻いただけのような腰巻と、腰から下げた大きな錆びた抜き身のナイフがやけに目立つ。

やばい……背を向けたら襲われる……
駆け出したい衝動を抑えつつ、ゆっくりと立ち上がり後ずさりする。

ソイツから目を逸らさないように、後ずさりで門まで戻った俺は、音を立てないように慎重に門を開いて中に入り、門を閉めて閂を掛ける。

玄関までダッシュする。
様子を伺うように俺の後をついてきた来たソイツは、俺が背を向けた瞬間に躍りかかってきたようだ。

ガシン!という門に衝突する音に追われるように、俺は玄関に駆け込んだ。

そのまま2階に駆け上がり、南側のベランダの陰から門のほうを覗き見る。
ソイツはいつの間にか5匹に増え、ギャアギャア言いながら門を揺すっている。
いくら鉄製の門とは言え、そんなに揺する事を想定した設計ではない。じきに壊されそうだ。

畜生……追い払ってやる!

俺は1階に戻り、G36Cを手にする。
たかがエアガンとはいえ、初速90m/sで打ち出される6mmのBB弾が直撃すれば分厚いBDUの上からでもそれなりに痛い。追い払うぐらいはできるはずだ。

マガジンには、昨日のBB弾の残りがまだ入っている。

2階に取って返した俺は、マガジンをG36Cに叩き込み、セレクターを単発に合わせてドットサイトを覗き狙いを付ける。
狙うのは大きく丸い頭。彼我の距離は約15メートル。サバゲなら必中の距離だ。

引き金を素早く3回引く。
タタタッ!
心地よい発射音を残し、BB弾が銃口から飛び出す。

BB弾がヤツの頭に吸い込まれ、ドットサイトの視野いっぱいに何かが飛び散った。


は?何が起きた?
ドットサイトから顔を上げ、肉眼で状況を確認する。

門の前で崩れ落ちたヤツの周りで、他のヤツラが辺りをキョロキョロしながら大騒ぎしている。
その内の一匹が柵を乗り越えようとする。

慌ててドットサイトを覗き込み、その一匹に狙いを付け引き金を引く。
またしてもBB弾が頭部に直撃した直後に、ヤツの頭が吹き飛ぶ。

確認は後回しにして、残り三匹にもBB弾を叩き込む。

五匹の異形の物を撃ち倒した後で、俺はそのままベランダにへたり込んだ。

何だ……何なんだあれは……

子供ぐらいの身長に緑色の肌、大きく裂けた口に牙とくれば、俺の多くないファンタジー知識から導き出せる答えは一つしかない。

…ゴブリン…か?…

ゴブリン。醜く醜悪な悪魔または小鬼。語源はラテン語だったかフランス語だったか。要はヒトならざる存在。

しかしなぜそんなモノが俺を襲ってくる?
そもそもなぜそんなモノがいるのだ?

とりあえず……洗濯物を干そう。
意味不明な状況では、いち早く日常生活に戻るアクションが大事だ。まあ思考停止ともいうがな。

2階のベランダの物干し竿に洗濯物を干し終わる頃に、南側の森の木の陰で何かが動く気配を感じた。

1階から双眼鏡を持ってくる。
接眼レンズ越しに見えたのは…またしてもゴブリンだ。しかも今回は数が多い。見える範囲で10匹はいる。
木の陰から槍先や弓が見えているから、実際はもっといるのだろう。

あの数が一斉に襲いかかってきたら……


生唾を飲み込む音がやけに響く。
何か備えなければ!

1階に駆け降り、窓にシャッターを下ろす。

エアガンが効果があるようだから、とりあえず武装する。
BDUを着てブーツを履く。
フレック迷彩は干したばかりだから、砂漠仕様のデザート迷彩の上下にヘルメットとニーパッドを装着。
レッグホルスターにはM93Rを、ヒップホルスターにはUSPハンドガンを装備した。
後は、G36VとG36C、PSG-1、MP5A2、MP5Kを屋上に上げる。当然バッテリーとマガジン、予備のBB弾も全部持ち込む。
ちょうどまとめ買いをした直後だったから、3000発入りの袋が10個、3万発以上はある。

ヤツラを監視するには、屋上は打ってつけだった。
チラチラと監視しながら、エアガンのバッテリーを全て予備と交換し、屋上のコンセントに分岐タップを繋いで、取り外したバッテリーを充電する。

G36用マガジンにBB弾を装填し、ジャングルスタイルで2個づつ連結し、それぞれ1セットをG36VとG36Cに装着する。
G36系のマガジンには300発ほどBB弾が入るから、1セットで600発は入っている。

MP5用マガジンは220発ダブルショートマガジン2つをそれぞれMP5A2とMP5Kに装着。
純正の50発マガジン4つは予備だ。

PSG-1のマガジンに装填できるのは15発。
予備マガジンは1つ。狙撃銃が活躍できるタイミングはそう長くはないから十分だろう。

装備しているハンドガンのバッテリーも交換し、マガジンのBB弾も入れ替える。
M93Rの装填数は40発、予備のマガジンは2個。
USPの装填数は30発、予備のマガジンはこちらも2個。インドアフィールドでハンドガン戦をやるぐらいなら十分な装備だ。

屋上のソーラーパネルの陰から様子を伺うが、まだ押し寄せてくる気配はない。木陰からチラチラ覗く弓が気になる。
ソーラーパネルの強度は一応JIS規格に定められたとおりなら矢が貫通することはないはずだが、今いるのはソーラーパネルの間だ。頭上には青空が広がっている。

何か矢を防げそうなもの……テントはどうだ?いや、雨粒は防げても矢は防げないだろう。
もっと強度のある金属製の……アルミのテーブルだ!

数あるアウトドア用品の中からアルミ製の折り畳みテーブルを屋上へ持ち込む。

テーブルの足を限界まで延ばせば、だいたい1メートル弱の空間ができる。傍から見れば情けない姿だろうが、この際仕方ない。

テーブルの下から監視を続行する。そうだ。今のうちにPSG-1の調整を……
PSG-1を引き寄せ、スコープを覗く。
ヤツラとの距離は約100メートル。いくら電動とはいえ、エアガンでは絶対に届かない距離だ。
その手前にある木の幹に狙いを付ける。柳の木のようだ。垂れ下がった枝がわずかに揺れている。
木まではおよそ50メートル。PSG-1で狙える限界の距離だ。

タンッ!
銃口から放たれたBB弾は数秒後にスコープの視界に入り、そのままスルスルと直線軌道を描いて木の幹に命中した。

はい?軌道が全くブレない……いくら調整しているとはいえ、この距離でいきなりど真ん中、しかも全くブレずに……まるで10メートル先の標的を撃ったかのようだ。
まさか……な。
俺は100メートル先のヤツラの一匹に狙いを付ける。
狙うのは当然ツルツルに光る緑色の頭だ。

タンッ!
放たれたBB弾は先ほどと同じくスルスルと飛んでいき……そのままヤツの額に吸い込まれた。
スコープの中でヤツの頭が弾ける。

まじか……何が起きているかはわからないが、これなら一方的に遠距離で敵を叩ける。
二脚バイポットを展開し屋上の縁に乗せると、座り姿勢での狙撃にちょうどいい高さになった。

そのまま次々とBB弾を発射する。
頭が見えない敵には、槍や弓の位置からおおよその本体の位置を推定しBB弾を放つ。

予備マガジンも含め30発のBB弾を放つ頃には、スコープの先には動く敵はいなくなっていた。
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