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◯イケメン三割増し。
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ひっぺがされていく毛布に、意地でも離すもんかとしがみつく。敵は結構手強い。華奢で、普段はふわふわしているくせに、お袋め。
「アキちゃん、ほら起きないと! 仕事の時間!」
抵抗虚しく取り払われる毛布。臍の辺りがすうすうして、俺は反射的に背中を丸めた。
「起きなさいっ、知白っ!」
「っせぇなぁー、もー」
渋々起き上がると、お袋は俺を鬼の形相で見下ろしていた。
「まったく、いつまでたっても子供なんだから。これじゃあ未来のお嫁さんに、あんたを引き渡せないよ」
「うるせぇ。俺の薄給で結婚が出来るかっての。嫁に来て欲しけりゃ給料満額よこせや」
「ふざけたこと言ってないで、早く支度して、プラント動かしてちょうだい。従業員の皆が来ちゃう。あと、お薬はちゃんと飲んでね」
お袋は、まだ毛布なんか被って寝てるなんて、などとぶつくさ言いながら、俺の最愛の毛布をさっさと丸めて持って行ってしまった。
「クソったれ」
着替えて、ピルケースから発情抑制剤を一錠出して、水なしで飲む。知玄に寝込みを襲われて番の契を結んでから数日は断薬していた。番が出来れば三ヶ月に一度の発情期がなくなるため、抑制剤は不要なはずだからだ。だが、しばらく様子を見て感じたのは、発情期はなくなったのかもしれないが、そのかわり、俺は対番限定でずっと発情しっぱなしなのではないか? ということだ。だって……、
「お水、持って来ましょうか?」
不意打ちで背後から声をかけられてビビった。知玄がいつの間にかドアの隙間から俺の部屋を覗いていた。心配そうに眉間にシワを寄せる知玄の顔が、いつもの三割増しくらいにイケメンに見える。そう、薬が切れてくると、知玄の顔がやたらイケメンに見えるんだ。
俺はなんとか平静を装ったが、心臓がまだバクバクしていた。
「いいよ。水なしで飲めるやつだし」
「ならいいですけど。どうしたんですか、風邪でも引きました?」
「いや。これは風邪薬じゃなくていつものやつだから」
「あー! 喘息の」
「そうそう、喘息の」
とんだ大嘘だ。俺がΩだというのは俺とお袋だけの秘密だ。知玄と親父には、俺の定期的な通院と服薬の理由を喘息持ちだからと偽っている。俺は昔っから運動しまくりの煙草吸いまくりなのに、よくそんな嘘がずっとバレずにきてるよな。
なんだそうですかと言って、知玄は行ってしまった。今回もちゃんと誤魔化せた。変な動悸は薬が効いてくると治まった。
ベッドの枕元で、携帯がピカピカ光っていた。確認してみると、昨夜またセフレから電話があったらしい。昨夜は早く寝ちゃったから気づかなかった。
なんかもういいかなって思って、俺はあの人の番号を着拒した。なんだ、やれば出来るんじゃねぇかよ。
番になった途端に知玄の顔がイケメンに見えてきたんなら、もし今あの人に再会したら、昔ほどイケメンに見えないかもしれないな。ガキの頃はあの人のことがすごくかっこよく見えたのに。背が高くて柔道が強くて、頭も良くて物知りで。だけど今はもう、沢山遊んでもらった思い出も、忘れかけの夢みたいに霞んでらぁ。
「アキちゃん、ほら起きないと! 仕事の時間!」
抵抗虚しく取り払われる毛布。臍の辺りがすうすうして、俺は反射的に背中を丸めた。
「起きなさいっ、知白っ!」
「っせぇなぁー、もー」
渋々起き上がると、お袋は俺を鬼の形相で見下ろしていた。
「まったく、いつまでたっても子供なんだから。これじゃあ未来のお嫁さんに、あんたを引き渡せないよ」
「うるせぇ。俺の薄給で結婚が出来るかっての。嫁に来て欲しけりゃ給料満額よこせや」
「ふざけたこと言ってないで、早く支度して、プラント動かしてちょうだい。従業員の皆が来ちゃう。あと、お薬はちゃんと飲んでね」
お袋は、まだ毛布なんか被って寝てるなんて、などとぶつくさ言いながら、俺の最愛の毛布をさっさと丸めて持って行ってしまった。
「クソったれ」
着替えて、ピルケースから発情抑制剤を一錠出して、水なしで飲む。知玄に寝込みを襲われて番の契を結んでから数日は断薬していた。番が出来れば三ヶ月に一度の発情期がなくなるため、抑制剤は不要なはずだからだ。だが、しばらく様子を見て感じたのは、発情期はなくなったのかもしれないが、そのかわり、俺は対番限定でずっと発情しっぱなしなのではないか? ということだ。だって……、
「お水、持って来ましょうか?」
不意打ちで背後から声をかけられてビビった。知玄がいつの間にかドアの隙間から俺の部屋を覗いていた。心配そうに眉間にシワを寄せる知玄の顔が、いつもの三割増しくらいにイケメンに見える。そう、薬が切れてくると、知玄の顔がやたらイケメンに見えるんだ。
俺はなんとか平静を装ったが、心臓がまだバクバクしていた。
「いいよ。水なしで飲めるやつだし」
「ならいいですけど。どうしたんですか、風邪でも引きました?」
「いや。これは風邪薬じゃなくていつものやつだから」
「あー! 喘息の」
「そうそう、喘息の」
とんだ大嘘だ。俺がΩだというのは俺とお袋だけの秘密だ。知玄と親父には、俺の定期的な通院と服薬の理由を喘息持ちだからと偽っている。俺は昔っから運動しまくりの煙草吸いまくりなのに、よくそんな嘘がずっとバレずにきてるよな。
なんだそうですかと言って、知玄は行ってしまった。今回もちゃんと誤魔化せた。変な動悸は薬が効いてくると治まった。
ベッドの枕元で、携帯がピカピカ光っていた。確認してみると、昨夜またセフレから電話があったらしい。昨夜は早く寝ちゃったから気づかなかった。
なんかもういいかなって思って、俺はあの人の番号を着拒した。なんだ、やれば出来るんじゃねぇかよ。
番になった途端に知玄の顔がイケメンに見えてきたんなら、もし今あの人に再会したら、昔ほどイケメンに見えないかもしれないな。ガキの頃はあの人のことがすごくかっこよく見えたのに。背が高くて柔道が強くて、頭も良くて物知りで。だけど今はもう、沢山遊んでもらった思い出も、忘れかけの夢みたいに霞んでらぁ。
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