【完結】どうも、使い魔の人間です。~魔族しかいない世界でモフモフ魔族に溺愛されてます~

胡蝶乃夢

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23.使い魔との甘美な関係

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 祝賀会が終わって、僕達もそろそろ休もうかと、ノヴァと一緒に部屋へと戻る。
 部屋の扉を閉めるなり、ノヴァが後ろから僕を抱きすくめてきた。

「どうしたの、急に?」
「……マナト……」

 小さく震える声で僕の名を呼んで、ノヴァは抱きしめる腕の力を強めていく。
 いつもと違うノヴァの様子に戸惑い、肩口に押し付けられた顔を覗き込む。

「えっ、顔色悪いよ! 大丈夫?!」
「……決闘で魔力使いすぎた反動が今きた……回復させろ……」

 先程までとは、明らかに顔色が違っていたのだ。
 例えるなら、貧血を起こして倒れそうになっているみたいな、青ざめてぐったりしている。

「あぁ、もう無理……本当に、限界だ……っ……」

 ポフンッ!

「わっ、ノヴァ?!」

 人姿が保っていられなくなったのか、突然、獣化してしまった。
 肩口から滑り落ちる猫姿のノヴァを、慌てて抱きとめる。

「ああ、ビックリした……僕の精気ならいくらでも吸っていいから、回復して」
「うぅ……魔力欠乏起こして、上手く精気が吸えない……こうしていれば少し楽になるから、くっついていれば徐々に吸収できると思うんだが……」

 接触していれば良さそうだということで、僕はベッドへと移動して座り、膝の上にノヴァを抱きかかえた。
 ノヴァはちょこんと『香箱座り』して、大人しくしている。
 腕の中に納まるサイズ感が、たまらなく可愛い。

「どう、回復できそう?」
「うーん……」

 覗き込んで訊いてみれば、なんとも言えない表情をして答える。

「多少は楽になってきた気はするが、上手く吸収できなくて微々たる回復だな……この調子じゃ、人化できるまでに数日はかかりそうだ……」
「そっか、困ったね。僕としては可愛い猫姿のノヴァとくっつけて、幸せな気持ちだけど、ノヴァにとっては不便だもんね」

 何か良い方法はないかなと考えて、提案してみる。

「マナ・ポーションで回復するって方法はどうだろ?」
「この小さい体じゃ、たいした量は飲めん……それに、決闘でほとんど使ってしまっただろう」
「たしかに、そうだった」
「うー……嫌だ―、あいつらにこの猫姿を見られたくないー、絶対に『ちっちゃい仔猫ちゃん(笑)』とかバカにされておちょくられるー、一生ネタにされていじり倒されるのが目に見えてるー、うわー、嫌だー!」

 ノヴァは肉球で目元を押さえて、『ごめん寝』ポーズして嘆いている。
 可愛い。可哀そ可愛い。めちゃくちゃ可愛い。
 内心では可愛さを大絶賛しているのだけど、ノヴァが嘆いてるのに不謹慎なので、大人として真顔で謹んでおく。

「いっそのこと本物の猫のふりして、押し通しちゃうのとかどう? ノヴァは大事な用でスラムに帰ってるんだとか言ってさ」
「使い魔を置いて別行動してるとか無理があるだろう。それに、俺がいないのをいいことに、あいつらお前にいかがわしいことしようとするだろう。何もせずに指を咥えて見てるなんてできないぞ」
「そ、それは、僕も困るなぁ……」

 早急にどうにかしなければと考えを巡らせ、あることを思い出した。

「あ、そうだ! 吸血することでもエナジー・ドレインできるんだったよね?」
「……そうだな。ただの接触より、体液での接触の方が精気の吸収率は高い」
「なら、僕の血を吸ったらいいよ」
「それは……」

 ノヴァは顔を上げて僕を見つめ、逡巡してから視線を落とし呟く。

「お前を傷つけるのは気が引ける。急速ドレインされるやつはみんな、苦痛にのたうち回るんだ。きっと、激痛だぞ……」
「痛くてもいいよ。僕はノヴァが困っている方が嫌だし」

 大丈夫だよと安心できるように笑いかければ、ノヴァは僕をじっと見つめて問う。

「本当に、いいのか?」
「うん、もちろん」

 吸血しやすいよう、ノヴァを抱き上げ、首を傾けて差し出す。

「さぁ、どうぞ」

 ノヴァはごくりと生唾を飲み込み、しばし躊躇してから、意を決してそろりと顔を寄せる。

 ペロリ。

「っ……!」

 ざらついた舌先に首筋を舐められ、僕の背筋は粟立った。
 そっと歯を立てられ、鋭い牙が食い込んでいく。

 プツッ! ツツー……

「んっ!」

 激痛を覚悟していたのに、予想していたような痛みはなく――

 ペロリ、ペロペロ。

 ――痺れるような快感が背筋を駆け抜けた。

「……ノ、ノヴァ……これ、痛いっていうより……なんか、変な感じする……んっ……」

 首筋から零れる僕の血を啜り、ノヴァの喉が鳴る。

「お前の血、甘いな……ずっと、美味そうな匂いさせてたが……これは、想像以上だ……美味すぎて、病みつきになりそう……ぺろ、ぺろぺろ……」

 最初は遠慮がちだった吸血が、しだいに貪るように変わっていく。
 首筋から響く痺れるような快感に、思わず声が漏れる。

「ふっ、ん……はぁ、あ……この感覚、んぅ……ヤバい、変な声でる……はぅ、んっ……」
「あぁ、俺も変だ……お前の匂いに、血の味に酔って……はぁ、たまらなくなる……やめられない……ぺろぺろ、ぺろぺろ……」

 痛みなどは一切なく、甘く痺れるだけ。
 ゾクゾクと背筋を駆け上がる快感に、体が勝手に震えてしまう。
 なおも、ノヴァの舌先が丹念に首筋を舐め回してくる。

「はっ、んんっ……もう、おかしくなりそ、だよ……ノヴァ、ぁ……あ、あっ!」

 全身が甘く痺れて、体感したことのない感覚にわけがわからなくなって、ノヴァを強く抱きしめた。その瞬間――

 ボフンッ!

 ――魔力が回復できたのか、ノヴァはいつもの人姿へと変化した。
 ようやく、おかしくなりそうな吸血が終わったと安堵する。

「はぁ、はぁ……っ……」

 だけど、ノヴァの様子がどこかおかしい。
 熱に浮かされたような表情で荒い息を吐き、首元から顔を離そうとしないのだ。

「はぁ……もっと……もっと、欲しい……ちゅっ、ちゅう……ぺろ、れろ……」

 恍惚とした表情でうっとりと呟き、首筋に舌を這わせて舐るのをやめない。
 むしろ、人型に戻ったことで、より激しく求めてくるようになった。

「あ……ノヴァ、元の姿に戻ったのに、もう……舐めないで、よぉ……んっ、はぅ……」
「ちゅっ、もっと……はぁ、もう少し……もう少し、だけ……ちゅっ、ちゅう……」

 耳元に響く、荒い息遣いが、掠れた低い声が、艶めかしいくて目眩がする。

「ひゃあんっ……ダメ、これ……ダメ、だってぇ……」

 気がつけば、ノヴァと絡み合うようにベッドに倒れ込んでいた。

 これ以上したら、きっと一線を越えてしまう。
 止めなきゃいけないのに、止められない。

「んっ……ふぁ……」

 本気で拒もうと思えばできるのに、拒みきれない。
 一線を越えてしまってもいいとさえ、思ってしまっている自分がいる。

「はぁ、はぁ……マナト、ちゅっ……」

 僕はノヴァの唯一無二の特別な使い魔だ。
 なのに、もっと深く、もっと強く、ノヴァと繋がりたいと思ってしまっている。

「ん、んっ……は、はぁ……あぅ……ん……」

 快感で酩酊しているから、そんな風に思ってしまうのか。
 それとも、恋しい愛しいと感じるのは、まぎれもない僕の本心なのか。
 全身を駆け巡る甘い痺れに理性が溶かされて、よくわからなくなってしまう。

「マナト、欲しい……全部、欲しい……」

 僕を求めるノヴァの熱い視線を感じているだけで、どうしようもなく愛しくて、切なくて、胸が締め付けられる。

(ノヴァも僕の血に酔っているから、そんな風に僕を求めるのかな? 正気だったら、求めてくれないのかな? もしそうなら、早く止めなきゃいけないのに……)

 ノヴァの瞳に映る僕の姿は、熱に浮かされたように頬を染め、涙を浮かべた潤んだ目で見上げている。
 その表情に、ノヴァの呼吸が荒くなるのを感じた。

「はぁ……マナト……全部、俺のだ……マナトは俺の……」

(僕も……僕も欲しい、ノヴァが欲しいよ……)

 ノヴァの全部が欲しくて、全部になりたくて、ノヴァのことしか考えられなくなっていく。

 こんな快感に酩酊したような曖昧な状態で、この気持ちを口にするべきではないと思うのに。なのに、抑えきれない感情が溢れて、言ってしまいそうになる。

「ノヴァ、僕も……」
「……マナト……」

 見つめ合う距離が徐々に縮まり、互いの吐息が近づいて、唇が触れそうになる――

 ダンダンダンダン!

 ーー間際、部屋の扉を叩く大きな音が響いた。

 「「!!?」」

 ボフンッ!

 大きな音に驚いてか、ノヴァが再び獣化してしまった。
 僕は慌てて布団をかぶり、猫姿のノヴァを隠す。
 間一髪、勢いよく扉が開かれる。

「うおぉー、宴の二次会するぜー! ウエーイ!!」
「主役がおらんと始まらんからのう、ワレらも強制参加じゃー! ウオオオ!!」
「ノヴァよ、飲み比べで勝負するでござる! 勝者がマナト殿を嫁にするのでござるー!!」

 酔っぱらい状態の仲間達が部屋に入ってきて、騒ぎ出した。
 僕は布団からもぞもぞと顔を出し、目元を擦りながら寝起きを装う。

「ああ……みんな、ごめんね。僕もう疲れちゃったから、今日は休ませてもらうよ。ふわぁ~……また、今度にしよう」
「あれぇ? ノヴァが見当たらねぇけど、どこ行ったぁ?」
「え、えーと、手洗いかな? ノヴァも決闘で疲れ切ってるから、今日はゆっくり休ませてあげてね」

 僕がお願いすると、仲間達は酔いの勢いが削がれたようで、渋々といった感じで頷く。

「ふむ、それもそうじゃな。マナトの美味い手料理が食えるチャンスかと思ったが、しかたないのう。また日を改めて宴を開くとするかのう」
「すまぬ、マナト殿。止めたのでござるが、こやつらが言うことを聞かず、拙者まで乗せられてしまったでござる……不覚。マナト殿は無理せず、ゆっくり休むでござるよ」
「うん、ありがとう。みんなもまたね、おやすみ……」

 手を振りながら仲間達を見送る。
 部屋を出ても賑やかな仲間達の声が、徐々に遠ざかっていく。
 なんとか誤魔化しきれたと嘆息し、布団を覗き込んで囁きかける。

「なんか、変な酔いが醒めたね」
「…………だな」

 布団の中、僕のお腹で丸くなっていたノヴァが伺う。

「もう、行ったか?」
「うん、出てきて大丈夫だよ。でも、どうしてまた獣化しちゃったの? 魔力回復、上手くできてなかった?」
「いや、魔力回復はできているが、なんと言うか……あいつらに見られたらまずい気がして、思わず……」

 ボフンッ!

 ノヴァはまた人姿に戻り、僕の隣に座り直す。

(とっさに獣化して隠れたということは、みんなに対してちょっと後ろめたい気持ちがあるってことだよね。それって、僕だけじゃなくて、ノヴァも僕のこと意識してるってことだよね)

 そう思ったら、なんだか安心した心地になる。
 嬉しくなって笑顔で見つめていれば、そんな僕に訝しげな視線を向けて、ノヴァがぼやく。

「……なんだよ、物言いたげだな?」
「んーん、なんでもないよー。ノヴァも僕のこと意識してるんだなって思っただけだから」
「なっ、何を言ってるんだ? お前は俺の使い魔なんだから、俺がお前を気にかけるのは、当然のことだろう。まったくもって、至極当然なことだ」
「うんうん、そうだよねー。ノヴァは僕のこと意識してくれてるんだよねー」
「……なんか、腑に落ちんな」

 釈然としないといった顔のノヴァに、ふと思い出したことを訊いてみる。

「そういえば、吸血ってのたうつほどの激痛って言ってたのに、全然そんなことなかったよ。なんでだろう?」
「そうなのか? 吸血自体そうそうすることじゃないからな……エナジー・ドレインされた相手の反応を考えると、リンクした俺の共感や好感・気遣いで大きく変わるようだから、それが原因かもしれないな」

 それを聞いて、僕は気付いてしまった。

「え、それじゃ、ノヴァは……もう、僕のこと大好きじゃん」
「はぁっ?!」

 大きな声を出したノヴァが、目を見開いて驚いている。

「だって、そういうことだよね? 僕は吸血されてる時、変になるくらい気持ち良かったんだから」

 ノヴァはボッと湯気が出る勢いで、全身を真っ赤に染め上げて――

 ボフンッ!

 ――色々思い出したのか、羞恥心に耐えられないといった感じで獣化し、ノヴァはまた布団の中に潜り込んで隠れた。
 その一挙手一投足のすべてが愛らしくて、僕の胸はキュンキュンしてしまう。

「何それ~、恥ずかしがって獣化しちゃうとか、可愛すぎか~♡ はわわわわ~♡」
「~~~~っ! うっ、うるさいバカ! バカマナト!!」

 悪態を吐く可愛らしい膨らみを、僕は布団ごと抱きしめる。

「ふふふ。僕もノヴァのこと大好きだよ」
「う゛う゛ぅ~~~~…………ゴロゴロゴロゴロ」
「あはは。小さく喉鳴らしてるノヴァ、可愛すぎ~♡ 好き好き、大好きだよ~♡」
「うるさい、笑うな! ぐぅ、俺の喉も勝手に鳴るなぁ!! …………ゴロゴロゴロゴロ」

 愛らしい反応に、満面の笑みがこぼれてしまう。
 こんな仕草を見せてくれるなんて、僕のことを信頼してくれているんだと思えて、幸せな気持ちになる。

(急ぐ必要なんてないよね。僕達は運命を共にすると誓い合った仲だ。これから先も、ずっと一緒に生きていくんだから)

 布団の越しに丸くなったノヴァを抱きしめ、そっと目を閉じる。
 聞こえてくる小さな喉鳴らしと、確かな温もりを感じて。


 ◆
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