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24.みんなの待つスラム街への帰省
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遠目にモフモフな混ざり者達の姿を見つけ、僕は大きく声を張る。
「みんなー、ただいまー!」
長期休日に入り、ノヴァの家族が待つ故郷、スラムへと僕達は帰省してきたのだ。
「おお、マナトだ! ノヴァもいるぞ!!」
「ノヴァもマナトも、おかえりおかえりー」
「おかえりなさい。よく帰ってきてくれたわ」
ノヴァと一緒に手を振れば、モフモフ魔族達が嬉しそうに駆け寄ってきてくれる。
僕は可愛いお出迎えに感激して、思わず歓声を上げてしまう。
「ふわぁ~~~~~~~~♡」
もちろん僕の表情筋は崩壊してデレデレである。
「やっぱりここはモフモフ・キュートのパラダイス~~~~♡♡♡」
「ひどい締まりのない顔だな……ヨダレが垂れそうだぞ」
「おっと、じゅるっ……えへへへへ」
涎を拭って表情を引き締めても、尻尾や耳を嬉しいそうに立てたり振ったりしてくれる可愛いモフモフ魔族達の姿を目にすると、どうしたってにやけてしまう。
そんな僕を半目で眺め、ノヴァがぼやく。
「前にもまして駄目な顔してるぞ」
「だって、しょうがないよ~。学園にいるとモフモフ成分が足りないんだから、思う存分モフモフを愛でられるここは、まさに僕の楽園なんだよ~♡」
お出迎えのハグをしてくれるモフモフをぎゅうぅと抱きかかえ、僕は上機嫌にクルクルと回る。
モフモフ魔族達とキャッキャウフフと戯れている僕の姿を見て、一緒についてきた仲間達がぼやく。
「薄々そうなんじゃねぇかと思ってたんだが、やっぱりマナトは随分と変わった性癖……おほん。無類のケモノ好きなんだなぁ」
「ようあんな人離れした姿の混ざり者に嬉々として抱きつけるのう。だから、ワシらが獣化した時も醜い姿を見て抱きついてきたわけか。相当な変態……ごほん。物好きじゃのう」
「なんと! それでは拙者が圧倒的に不利ではござらんか?! 拙者には毛皮は生えないでござる……この立派な角と尻尾では駄目でござるかぁ? マナト殿ぉ!」
悲愴な声を上げてリュウが訴えてきたので、振り返って答える。
「え? モフモフの動物も好きだけど、ツルスベの動物も好きだよ。動物全般、大好き♡」
「マナト殿ぉ♡ 拙者も大好きでござる! これは相思相愛、やはり拙者の伴侶に――おぶわっ!?」
リュウが僕に抱きつこうとしたところで、横にいたノヴァがリュウの顔を鷲掴みにして止めた。
「だから、どさくさに紛れて口説くなって言ってんだろうが……俺の使い魔は嫁にはやらん!」
顔に影を落とすノヴァがドスの利いた声でがなり、いつもの急速ドレインを発動する。
「うぎゃぁっ! 精気吸うの止めるでござる! そしてマナト殿を嫁にください、お父様!!」
「誰がお父様だ誰が! 頭が沸いているのか、お前は?!」
「ドレインのせいで本当に沸きそうでござる! うぎゃぁぁぁぁ!!」
もはや、一連の流れが様式化してきた気さえする、漫才を繰り広げている。
「またやってる。ははは……」
僕が苦笑いしていると、モフモフ魔族達は一緒に来た彼らに興味津々な様子だった。
「何あれオモロー、キャハハ」
「随分と賑やかなの連れて帰ってきたな」
「まぁまぁ、仲の良いお友達ができたのね」
スラムのみんなに歓迎され、僕達は決闘で勝ち上がったことを盛大にお祝いされる。
話を聞くと、ノヴァが勝ち進むたびに、混ざり者達の境遇が改善されていったのだそうだ。
「ノヴァ、それにマナトも、本当にありがとう。あなたたちが頑張ってくれたおかげで、暮らしがとても楽になったわ」
「危険な仕事や無理難題を押し付けられることもなくなった。働きに見合った報酬を支払われるようにもなった。ノヴァ達には感謝が尽きないな」
「混ざり者を劣等種って馬鹿にするヤツらもいなくなったし、これからは堂々とできるって、みんな喜んでるよ。二人とも、ありがとー」
スラムのみんなから、僕達は多大に感謝されたのだ。
ノヴァは本当に嬉しそうに笑って言葉を返す。
「ああ。だけど、俺達だけじゃなく、仲間達が協力してくれたから成し遂げられたことだ」
「そうだね。みんなで掴み取った勝利だよ」
おごり高ぶったりしないノヴァはやっぱり人間ができているなと思いつつ、僕はスラムのみんなに言う。
「これからもっと暮らしやすくするよ。そのために手伝ってもらおうと思って仲間達を連れてきたんだ。やることいっぱいあるから、みんなも協力してね」
モフモフ魔族達が目を輝かせ、僕の周りに集まってくる。
「なになにー、今度は何するのー?」
「お土産の美味しいご飯やお菓子、ここでも作れたりするのかしら?」
「前にマナトがしてくれたトリミングとやらも気持ちよかったな。またしてくれたりするのか?」
ワクワクと楽しそうに話すモフモフ魔族達の姿を見られるだけでも、僕は幸せな気持ちになってしまう。
でもやっぱり、もっともっと喜ばせてあげたいと思うので、僕はわかりやすく説明してあげる。
「えへへへ、それはね――」
この長期休暇の間、一見して不安だったスラムのライフライン設備を整えようと、色々と計画を練ってきたのだ。
要はスラムにある家屋の改築工事や土木工事をする予定なのである。
配下になったグレイ達も、率先して手伝ってくれるというので連れてきたのだ。実に頼もしい。
早速、明日から取り組もうと思う旨を伝えれば、モフモフ魔族達はさらに目をキラキラと輝かせたのだった。
◆
数日が経過し、ノヴァの魔法や怪力な仲間達の手を借りて土木工事は無事に終わり、次いで家屋の改築作業も順調に進んでいた。
そんなある時、モフモフ魔族達が血相を変えて僕達のところに駆けてくる。
「ノヴァ、大変だ!」
「お願い、助けて!」
「重傷者だよ!!」
慌ただしく駆けてきた魔族達によれば、スラムの端で行き倒れている人を発見したのだと言う。
ノヴァと僕は急いでその人の元へと向かった。
着いた先では、ひどい大怪我を負い、虫の息状態の魔族が横たわっていた。
「!!?」
混ざり者達に保護され、寝台で意識を失っている人物。その姿を見て、僕達は驚愕に目を見開く。
「みんなー、ただいまー!」
長期休日に入り、ノヴァの家族が待つ故郷、スラムへと僕達は帰省してきたのだ。
「おお、マナトだ! ノヴァもいるぞ!!」
「ノヴァもマナトも、おかえりおかえりー」
「おかえりなさい。よく帰ってきてくれたわ」
ノヴァと一緒に手を振れば、モフモフ魔族達が嬉しそうに駆け寄ってきてくれる。
僕は可愛いお出迎えに感激して、思わず歓声を上げてしまう。
「ふわぁ~~~~~~~~♡」
もちろん僕の表情筋は崩壊してデレデレである。
「やっぱりここはモフモフ・キュートのパラダイス~~~~♡♡♡」
「ひどい締まりのない顔だな……ヨダレが垂れそうだぞ」
「おっと、じゅるっ……えへへへへ」
涎を拭って表情を引き締めても、尻尾や耳を嬉しいそうに立てたり振ったりしてくれる可愛いモフモフ魔族達の姿を目にすると、どうしたってにやけてしまう。
そんな僕を半目で眺め、ノヴァがぼやく。
「前にもまして駄目な顔してるぞ」
「だって、しょうがないよ~。学園にいるとモフモフ成分が足りないんだから、思う存分モフモフを愛でられるここは、まさに僕の楽園なんだよ~♡」
お出迎えのハグをしてくれるモフモフをぎゅうぅと抱きかかえ、僕は上機嫌にクルクルと回る。
モフモフ魔族達とキャッキャウフフと戯れている僕の姿を見て、一緒についてきた仲間達がぼやく。
「薄々そうなんじゃねぇかと思ってたんだが、やっぱりマナトは随分と変わった性癖……おほん。無類のケモノ好きなんだなぁ」
「ようあんな人離れした姿の混ざり者に嬉々として抱きつけるのう。だから、ワシらが獣化した時も醜い姿を見て抱きついてきたわけか。相当な変態……ごほん。物好きじゃのう」
「なんと! それでは拙者が圧倒的に不利ではござらんか?! 拙者には毛皮は生えないでござる……この立派な角と尻尾では駄目でござるかぁ? マナト殿ぉ!」
悲愴な声を上げてリュウが訴えてきたので、振り返って答える。
「え? モフモフの動物も好きだけど、ツルスベの動物も好きだよ。動物全般、大好き♡」
「マナト殿ぉ♡ 拙者も大好きでござる! これは相思相愛、やはり拙者の伴侶に――おぶわっ!?」
リュウが僕に抱きつこうとしたところで、横にいたノヴァがリュウの顔を鷲掴みにして止めた。
「だから、どさくさに紛れて口説くなって言ってんだろうが……俺の使い魔は嫁にはやらん!」
顔に影を落とすノヴァがドスの利いた声でがなり、いつもの急速ドレインを発動する。
「うぎゃぁっ! 精気吸うの止めるでござる! そしてマナト殿を嫁にください、お父様!!」
「誰がお父様だ誰が! 頭が沸いているのか、お前は?!」
「ドレインのせいで本当に沸きそうでござる! うぎゃぁぁぁぁ!!」
もはや、一連の流れが様式化してきた気さえする、漫才を繰り広げている。
「またやってる。ははは……」
僕が苦笑いしていると、モフモフ魔族達は一緒に来た彼らに興味津々な様子だった。
「何あれオモロー、キャハハ」
「随分と賑やかなの連れて帰ってきたな」
「まぁまぁ、仲の良いお友達ができたのね」
スラムのみんなに歓迎され、僕達は決闘で勝ち上がったことを盛大にお祝いされる。
話を聞くと、ノヴァが勝ち進むたびに、混ざり者達の境遇が改善されていったのだそうだ。
「ノヴァ、それにマナトも、本当にありがとう。あなたたちが頑張ってくれたおかげで、暮らしがとても楽になったわ」
「危険な仕事や無理難題を押し付けられることもなくなった。働きに見合った報酬を支払われるようにもなった。ノヴァ達には感謝が尽きないな」
「混ざり者を劣等種って馬鹿にするヤツらもいなくなったし、これからは堂々とできるって、みんな喜んでるよ。二人とも、ありがとー」
スラムのみんなから、僕達は多大に感謝されたのだ。
ノヴァは本当に嬉しそうに笑って言葉を返す。
「ああ。だけど、俺達だけじゃなく、仲間達が協力してくれたから成し遂げられたことだ」
「そうだね。みんなで掴み取った勝利だよ」
おごり高ぶったりしないノヴァはやっぱり人間ができているなと思いつつ、僕はスラムのみんなに言う。
「これからもっと暮らしやすくするよ。そのために手伝ってもらおうと思って仲間達を連れてきたんだ。やることいっぱいあるから、みんなも協力してね」
モフモフ魔族達が目を輝かせ、僕の周りに集まってくる。
「なになにー、今度は何するのー?」
「お土産の美味しいご飯やお菓子、ここでも作れたりするのかしら?」
「前にマナトがしてくれたトリミングとやらも気持ちよかったな。またしてくれたりするのか?」
ワクワクと楽しそうに話すモフモフ魔族達の姿を見られるだけでも、僕は幸せな気持ちになってしまう。
でもやっぱり、もっともっと喜ばせてあげたいと思うので、僕はわかりやすく説明してあげる。
「えへへへ、それはね――」
この長期休暇の間、一見して不安だったスラムのライフライン設備を整えようと、色々と計画を練ってきたのだ。
要はスラムにある家屋の改築工事や土木工事をする予定なのである。
配下になったグレイ達も、率先して手伝ってくれるというので連れてきたのだ。実に頼もしい。
早速、明日から取り組もうと思う旨を伝えれば、モフモフ魔族達はさらに目をキラキラと輝かせたのだった。
◆
数日が経過し、ノヴァの魔法や怪力な仲間達の手を借りて土木工事は無事に終わり、次いで家屋の改築作業も順調に進んでいた。
そんなある時、モフモフ魔族達が血相を変えて僕達のところに駆けてくる。
「ノヴァ、大変だ!」
「お願い、助けて!」
「重傷者だよ!!」
慌ただしく駆けてきた魔族達によれば、スラムの端で行き倒れている人を発見したのだと言う。
ノヴァと僕は急いでその人の元へと向かった。
着いた先では、ひどい大怪我を負い、虫の息状態の魔族が横たわっていた。
「!!?」
混ざり者達に保護され、寝台で意識を失っている人物。その姿を見て、僕達は驚愕に目を見開く。
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