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佐倉1

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「佐倉さん、何を読んでるの?」

 ウザいのが来た。
 教室の隅で一人、ただ本を読んでるだけの私に何で声をかけてくるのだろうか。いつもみたいにクラスの上位グループ連中とつるんで、男がどうとか、俳優がどうとか勝手に騒いでいれば良いものを。
 声をかけてきた彼女はクラスメイトであるが、名前は何だったろうか。よく覚えてはいないが、上位グループにいるものの、たまにあぶれる存在だった。今もグループは教室の反対側でお喋りに夢中になっている。一人だけ席に座っているのが印象的だ。
 校則違反と言われない程度に髪を染め、長い髪に緩やかなソバージュをかけている。後ろ姿から美人と想像してしまう容姿だが、実際に彼女は美人だった。華やかな雰囲気を振りまいている彼女が、明らかにグループの中心だ。
 私は視線を、話しかけてきたクラスメイトに戻した。
 そもそも、地味で愛想の無い私に声をかけてくる意味が分からない。髪型もストレートで大人しく、目立つようなアクセサリーも身につけていない。胸のサイズだけは平均より大きいから、むしろそれを隠すようにしているくらいだ。
 こんな地味な私など放っておいて、無駄なお喋りで時間を浪費しろと、本心から思う。

「ねえってば、教えてよー。面白い本ならアタシも読みたいしさー」

 ウソだ。
 何を読んでいても、それをあげつらってオモチャにする気満々なのが顔を見れば分かる。気持ち悪い笑顔だ。
 だから、私は正直に答えることにした。

「官能小説」
「……え? は?」

 どうせ恋愛小説かライトノベルだと思っていたのだろう。予想外のジャンルに相手は戸惑いを見せた。

「イヤらしいお話よ。読んだことないの?」

 自分でも嫌な性格だと思うが、思いっきりバカにした口調で挑発してしまった。
 クラスの上位グループにいるということは普通の学校生活を謳歌しているように見えるが、グループの中で下位にいると、途端に事情は変わる。常に上位にぶら下がっているために、より下位のクラスメイトを見下すようになるのだ。
 もちろん、そんな人間ばかりでもないが、少なくとも今、私の目の前にいるのはそういう人間だった。
 大体、私はいわゆるスクールカーストの外にいる人間だ。上位だろうが下位だろうが、私は誰とでも均等に距離を置いている。家に帰ればそれなりに面倒ごとが待ち構えているから、私が落ち着いて本を読む事が出来るのは学校にいる間だけなのだ。だから、邪魔はしないで欲しい。
 私は再び教室の反対側に目をやった。そして、上位グループで一人だけ座っているクラスメイトに視線を向ける。彼女は前を向いたままで、こちらに注意は向いていない。
 と、私の意識が前を向いた隙に、持っていた小説を奪われた。
 反射的に「返して」と言おうと思ったが、すぐに思い直す。私の小説を読んだ彼女がどんな反応を返すか、興味が湧いたのだ。
 ペラペラとめくっていた手が、挿絵のあるページで止まった。一瞬、息を呑むクラスメイト。そのページを読み進めていくと、だんだん顔が赤くなってきた。予想通りの反応過ぎて、むしろ拍子抜けだ。

「何が書いてあるのか、ちゃんと分かる?」
「な、何が……って?」

 私はスッと立ち上がって、傍若無人な振る舞いをするクラスメイトと視線を合わせた。

「官能小説ってね、比喩や遠回しな表現が多いの。文学的な目で見ると、結構技巧に富んでるのよ。読み応えがあるわ。もっとも、何を表現しているのか、元の知識が無いと楽しめないのだけど」

 言外に、二重の意味でお子様には向かない本だと突き付ける。それすら理解出来たかどうか、顔を赤くしたクラスメイトは、私の小説を手にしたまま、なんと反応したらいいのか分からずに固まってしまっていた。

「何やってんの、真島?」
「あ、え、エリちゃん……」
「次、教室移動でしょ。さっさと行こうよ。そんな地味メガネの本なんか放っておいてさ」
「ああ、うん!」

 真島と呼ばれたクラスメイトは、私の小説を机に放り出すと、これ幸いと去っていった。謝罪らしきものは欠片も無かった。
 彼女は真島という名前だったらしいが、小説を返してもらったら、もうどうでもいい。覚えようとする努力もせず、私は彼女の事を忘れる事にした。
 しかし、今の出来事自体を忘れる訳にはいかない。
 私は真島を連れて教室から出て行こうとするもう一人のクラスメイトに目を向けた。彼女は、さっきまで教室の反対側にいた上位グループの中で、一人だけ座っていた少女だ。言うまでもなく、グループのリーダー的存在である。
 振り返った彼女と、一瞬だけ視線が絡み合う。彼女は、上位グループの中では決して見せる事の無い、怯えたような視線を私に向けていた。
 私はそれを受け止めて、ニヤリと笑みを返した。

   ***

「佐倉さん」

 放課後、図書室で一人小説を読んでいた私に、カースト最上位のエリが声をかけてきた。一人でいても目立つ、華やかな雰囲気を持った少女だ。

「なに?」

 私は、煩わしそうに視線だけを上げてクラスメイトを見た。ちょうどストーリーが乗ってきたところを邪魔されたので、不機嫌な感情を隠しもしない。

「あの、昼間の事なんだけど」

 私は軽く溜息を吐いて本を閉じた。

「あなたが約束を守ってくれなかった事?」
「ご、ごめんなさい! でも、あの娘、直前まであたしたちと話してたから、てっきりあたしの後ろにいるもんだと……」
「見てなかったから、仕方ないと? あなたは私に約束してくれたわよね。学校にいる限り、私が本を読んでいるのを邪魔しないって。邪魔する人から守ってくれるって。だから私は、あなたの目の届くところにいつもいるようにしているのよ?」

 教室の中であれば、私もエリも、同じ場にいても不自然ではない。放課後の図書室であれば、あんな連中が来る事も無い。だから、教室の中でだけ、私を守ってくれていればいいのだ。
 しかし、彼女は取り巻きとのお喋りに夢中で、私の方を見ていなかった。

「でも……、佐倉さんって結構目立つから……」
「……私が?」

 それは、意外な思いがした。
 化粧は最低限。メガネをかけて、髪は大人しいストレート。胸の大きさは仕方ないが、それは隠すようにしている。
 誰と話す事も無く、一人教室の隅で本を読んでいるだけの私が目立つはずもない。言い訳にしても、もう少しマシなのは無かったのだろうか。

「人の事を地味メガネなんてヒドイあだ名で呼んだくせに?」
「あ、あれは……ごめんなさい……。でも、あれは本心じゃないの……」

 そんな事は私も承知している。あの場で「クラスの女王」が言うには最適なセリフだ。私と彼女に何の関係も無ければ、まるで問題の無い言い回しだろう。
 だが、私と彼女は無関係では無かった。私と彼女の間には、クラスの他の人間は誰も知らない、秘密の関係がある。
 私は無言で、怯えたような顔をしているクラスメイトを見上げた。
 放課後の図書室。私とエリの他には誰もいない。普段は図書委員が常駐しているはずなのだが、今日に限ってカウンターは空白である。図書館司書を探しに行くと言ったきり、帰って来ていない。
 学校内では様々なクラブ活動も行われているが、静謐を旨とする図書室に、その声は届いてこない。
 静かな空間に、二人。
 私はエリを無言で見上げて、薄っすらと微笑んだ。
 その微笑をどう解釈したのか、エリは私の前でスカートを掴むと、ゆっくりと上げていった。
 クラスメイトに対して、スカートの中身を見せる。常軌を逸した行為だ。しかし、彼女にはそれをする理由があった。
 スカートの中身が私の目の前に現れる。そこに、下着は無かった。

「こ、こっちの約束は、守ってるから……」
「約束ねぇ……」

 私は頬杖を突いて、スカートの中身を晒しているクラスメイトを見上げた。多分、今の私はすごくイヤな笑顔を見せているだろう。
 私は手を伸ばし、薄っすらと生えたエリの叢を指先に絡めた。

「これは、あなたが楽しんでるだけじゃないの?」
「で、でも……、佐倉さんが、言ったから……」

 半泣きで私を見下ろすその表情に、クラスの女王の面影は無い。上位グループの面々が彼女のこんな姿を見れば幻滅するだろう。だが、これが彼女の本性なのだ。

「私が言ったから、下着無しで学校に来るなんて変態行為をするんだ」
「は、はい……」

 その返事には羞恥と、そして蜂蜜のように甘い成分が含まれていた。一度口にしたら忘れられない、何度も求めてしまう、甘い蜜。

「でも、私を守ってくれるって約束は、守ってくれないんだ」
「そ、それは……、だから、あの娘が……」
「飼い犬が粗相をしたら、飼い主が責任を取るモノよ?」

 そう言って、私はエリの毛を無造作に引き抜いた。

「ひいっ!」

 クラスメイトを飼い主とペットのように言ったが、関係性は間違っていないだろう。
 私は手に絡まった陰毛を、エリの目の前で図書館のテーブルの上に落とした。パラパラと縮れた毛が何本も重なる。
 エリを見上げると、目尻の端に涙を浮かべているものの、スカートを持ち上げている手はそのままだ。相変わらず私に対して、人には見せないはずの女の部分を晒している。

「そんな格好して恥ずかしくないの?」
「は、恥ずかしい、です……」
「でも、そのままなんだ? 何で?」
「な、何でって……。佐倉さんが……、佐倉さんの言う事を聞かないと……、私の、秘密が……」
「ふうん。もしかして、私、あなたを脅迫しちゃってるの?」
「ち、ちがっ……。違います……。私が、勝手にやっている事、です……」

 我ながら、何ともイヤらしいやり取りをするものだと思う。実際、私が脅迫しているのでも全然かまわないのだが、この方が彼女のお好みらしい。

「そう。じゃあ、やっぱり、あなたが約束を破ったって事じゃない。それなら、罰を受けてもらわないとね」
「ば、罰……」

 見上げると、怯えたような表情を見せながら、彼女の口角が、ついと上がった。それは、笑い未満の微妙な表情であった。しかし、私にとってはそれで十分だ。

「別に、大したことじゃないわ。そのままじっとしていなさい」

 私はエリの秘所に手を伸ばし、再び陰毛をむしり取った。

「ひぐっ……」
「嬉しそうな顔をしちゃダメよ? これは罰なんだから」

 私は引き抜いた陰毛を、さっきと同じようにテーブルに落とした。そしてもう一度。

「あうっ……」

 もう一度。

「ふっ……」

 放課後の誰もいない図書室。目の前には、スカートを持ち上げているスクールカースト上位のクラスメイト。そのクラスメイトの陰毛を、私は淡々とむしり取っていった。
 大部分むしり取った頃だろうか。指先で上手く摘まめなくなった私の指先が、エリの媚肉に直接触れた。

「ひあんっ!」

 その甘やかな悲鳴を聞いた瞬間、私の下腹部が跳ね上がった。そして腹から喉奥を通って、甘い何かが口元から零れ落ちる。
 私は残った陰毛を指で絡げながら、ついでのように媚肉を指先でつついた。その度に、彼女の口から甘い声が漏れてくる。

「なぁに、今の声? もしかして感じちゃったの? それとも、ずっと感じたままだったの? 同級生に大事なところの毛を毟られて、感じちゃったんだ?」
「……」
「ちゃんと答えなさいよ、っと」

 質問の語尾に合わせて、私は再びエリの毛を引き抜いた。テーブルの上には、結構な量の縮れた毛が小山を作っている。

「はあっ……。痛いです。でも、……佐倉さんの指が、触られると、気持ち良い」
「ふうん?」

 幼女のような見た目になってしまったエリの秘所の奥に、私は無造作に手を挿し込んだ。

「ひゃうわっ!」
「へえ、凄い濡れ方するのね」

 私は立ち上がり、エリの耳元で囁いた。

「変態」
「ひ、あ……ああああ……あ……っ」

 私が囁いた瞬間、エリは目を閉じて身体をブルブルと震わせた。膝が崩れそうになるのか、身体がカクカクと上下する。だが、何とか踏みとどまっているその様子は、涙ぐましいと言えなくもない。

「やだ、もしかしてイッたの?」
「ご、ごめんなさい……」
「謝ってほしいなんて、誰が言ったの? イッたのかって聞いてるの」
「い、イキました……」
「本当に変態なのね。あーあ、手がこんなに汚れちゃった」

 それ以上は何も言わず、私はエリの目の前に、彼女自身の愛液で濡れた指先を突き付けた。エリはそれを、躊躇いなく口に含む。

「……ふっ」

 指先を舐められる。
 指先と言うのは、人体の中でも敏感な部分の一つだ。性器などのデリケートな部分には劣るが、普段から自分の身体以外の部分が触れているにもかかわらず、その敏感な触覚は慣れるという事が無い。慣れてしまえば役に立たないのだから、当たり前の話だ。
 その敏感な指先を舐められて、私の身体を鋭い快感が突き抜けた。肛門から脳天を細い槍が貫くような快感。
 これだ。
 これがあるから、私は彼女を受け入れたのだ。
 可愛い私のエリ。
 私はエリに舐められている指先を引き抜き、自分の口に含んだ。そして、エリに薄く微笑む。
 エリは顔を赤くして私の仕草を見つめていた。それでも、スカートを持ち上げた手は放していない。良い感じだ。
 私は彼女の頬に手を当てると、震える唇にキスをした。
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