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エリ1

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 佐倉さんを地味メガネなんて呼び始めたのは誰だったろうか。真島のような気もするけど、他の娘かもしれない。
 でも、彼女は言うほど地味ではない。というより美人だ。
 黒い艶々のストレートヘアは染めたり脱色したりはしていないだろうけど、手入れはしっかりとしている。でないと、あんなに綺麗な髪にはならない。
 切れ長の怜悧な光を宿す目元にも、キチンとナチュラルメイクが施されている。派手めなメイクになりがちなあたしたちと違って、彼女のメイクは本当に自然だ。
 そしてシャープなフレームのメガネ。昔のマンガみたいにガリ勉なんていう娘もいたけど、実際に頭の良い彼女には知的という言葉が良く似合う。
 あたし自身は、自分でも可愛いと思っている。それは自惚れなんかじゃなく、七五三の頃から周囲に言われていた事だ。そしてあたしも自分が可愛くあろうと、周りには見えないように努力してきたつもりだ。オシャレの勉強もしたし、メイクも化粧品売り場のお姉さんに色々と教えてもらった。バカみたいに高い化粧品は買えないけど、学生でも買える化粧品ならいくらでもある。何度も化粧品売り場に通えば、仲良くしてくれるお姉さんもいる。
 やっかみ半分で「クラスの女王」なんて呼ばれる事もあるけど、残りの半分は事実として受け入れている。
 もしもクラスの男子や女子が、あたしと佐倉さんを比べたら、あたしの方が可愛いと言ってもらえると思う。
 それでも、あたしは佐倉さん程の美人ではない。その自覚はある。
 逆にクラスメイトではなく、良い年をした大人があたしと佐倉さんを選ぶのだったら、多分、みんな彼女を選ぶ。
 彼女はそういう意味で、本当の美人だと思う。
 その佐倉さんが、妖しい微笑を湛えてあたしの頬に手を当てている。
 あたしの背は、佐倉さんより拳一つ分ほど高い。だから、佐倉さんが唇を求めていると気付いて、あたしは腰を少し屈めた。彼女とキスをすると、見下ろすような態勢になる。スカートを両手でたくし上げていたあたしは、自分から動くことは出来ない。少し身をかがめると、佐倉さんはあたしの顔を両手で挟み込み、引き寄せるようにして唇を奪った。
 これが初めてのキスという訳じゃない。でも、あたしのファースト・キスは佐倉さんに捧げた。あの時も、震えるあたしの顔を優しく撫でながら、彼女はあたしの唇と舌を楽しんだのだ。

「ん……ふ……」

 いつもクラスの中心にいるあたしと、教室の隅で本を読んでいる佐倉さん。傍から見れば、あたしの方が彼女を襲っているように見えるかもしれない。
 そんな事を考えていると、佐倉さんはあたしの腰に手を回してスカートのジッパーを下ろした。そして、スカートを無造作に引きずり下ろす。

「んん……!」

 驚いたあたしは佐倉さんから離れようとしたが、彼女は頬に当てていた手をあたしの首に回し、キスを無理やり続けた。唇を重ねたまま、舌をあたしの口の中に挿し込んで舌を絡めてくる。あたしはそれを、されるがままに受け入れた。
 前に、自分から舌を絡めようとしたのだけど、そのとき佐倉さんは、何故か怒ってあたしの頬を叩いた。あたしは多分、きょとんとしていたに違いない。だって、キスは二人でするものでしょう? でも、佐倉さんがあたしに許したのは、キスをことだけだった。

「む……んふ……」

 人気の無い放課後の図書室とはいえ、いつ誰が入ってくるか分からない。今は空になっているカウンターも本当は図書委員が常駐しているはず。それでも、佐倉さんは構わずに、あたしの下半身を裸に剥いた。下着無しで学校に来るのも涼しい感じがして不安だったのに、今は下半身が丸出しだ。単に涼しいというだけでなく、心が冷える思いがした。
 さすがにこの状況では、あたしが彼女を襲っているようには見えないと思う。ううん、でも、普段の彼女を知る他のクラスメイトなら、地味メガネなんて呼ばれている佐倉さんの方が襲われていると考えるかもしれない。
 この閲覧スペースは図書室の奥にあって、入り口もカウンターも書棚に隠れて真っ直ぐには見えない。誰かが図書室に入ってきても、隠れる余裕は一応ある。
 恥ずかしい格好をしているあたしの唇を犯しながら、佐倉さんは同時に、あたしの恥ずかしい場所に指を挿し入れてきた。彼女の指先がヌルリと身体に入る感触が伝わってくる。あたしの身体を、痺れるような浮き上がるような快感が走った。気持ち良い何かは、お腹の奥から喉元を通って、舌先から溢れてくる。その舌は今、彼女に弄ばれている。身体を突き抜けた快感で舌を強張らせてしまったが、またぶたれるのだろうか……。

「何コレ……? さっきより濡れてない?」
「ご、ごめんなさい……」
「ふふ、別に謝るような事じゃないわ。あなたが変態だって事を改めて確認出来ただけだから」
「あ、あたしは……、別に……ひゃうっ!」

 佐倉さんの指先が、またあたしの恥ずかしい場所に触れた。元々あたしはそれほど毛が濃くはなかったが、彼女に毟り取られて今は数えるほどしか生えていない。その残った毛を確かめるように、彼女の指先があたしの……肉の部分を撫で回した。

「ふ……ううん……」
「イヤらしい声」
「だって……」

 同性とはいえ、秘密の場所に触れられて気持ち良くない訳がない。彼女の指先の方がイヤらしいと思う。佐倉さんの綺麗でたおやかな指先が、あたしの女の部分を撫で回している。スカートを剥ぎ取られて手持ち無沙汰なあたしは、彼女が触る事を拒むことも出来ずに両手をウロウロさせた。

「ふふ、中途半端に残ってるわね。綺麗にしてあげるから、ゴミ箱を持ってきてちょうだい」
「は、え? ゴミ箱?」
「そうよ。あなたの抜いた毛を、その辺に撒き散らしていく訳にはいかないでしょう?」
「で、でも、ゴミ箱って……」

 ここが教室であれば、入り口付近にあるゴミ箱にすぐ目が行ったと思う。でも、図書室なんて普段は来ないから、どこにゴミ箱があるのか分からない。

「カウンターの脇にあるわよ」
「え……」

 あたしは血の気が引く思いがした。つまり彼女は、下半身裸のままでゴミ箱を取って来いと言っているのだ。

「いや?」
「で、でも……」
「そう。それじゃ、これでお終いね。後はよろしく。また明日ね」

 そう言って、佐倉さんはビックリするくらいあっさりと帰ろうとした。あたしの方を見向きもせずに、読みかけの文庫を鞄に納めて図書室の出入り口に向かう。

「待って待って!」
「なに?」

 その時の彼女の顔は、本当に無表情だった。さっきまで愉しそうにあたしをいじっていた感情はまるで無く、街中で興味の無い事のアンケートに声をかけられたみたいに、あたしを突き離そうとする。
 あたしは心底ゾッとした。彼女があたしの秘密を守ってくれるのは、あたしが彼女を守ると約束したからだ。それ以外のこれは……、キスをしたりあたしの身体を弄んだりするのは、彼女にとっておまけに過ぎないんだと分かった。今のこの状況を佐倉さんは確かに愉しんでいた。でもそれは、彼女にとって絶対に必要なものじゃない。
 あたしはそれ以上何も言わず、下半身を丸出しのままカウンターに向かった。そして慌てて、ゴミ箱を持って帰ってくると、彼女の前に差し出した。

「…………」

 彼女はしばらく無言であたしを見つめていた。実際には十秒も経っていないだろうけど、とても長い沈黙に思える。

「あ、あの……、佐倉さん?」

 彼女の無言に耐えられなくなったあたしが呼び掛けて、ようやく彼女は笑みを返してきた。

「グズね。でも、自分の立場を思い出した?」

 とても爽やかな、教室では絶対に見せない笑顔をあたしに向けて、彼女の桜貝のような可愛らしい唇は毒を吐いた。
 その毒がとても甘やかに感じられて、あたしの身体は震えた。下半身裸で寒く感じたからでは決してないと思う。

「それじゃ、机の上をキレイにして、寝っ転がって」

 綺麗にというのはもちろん、彼女の手によって毟り取られたあたしの毛を捨てろという事。あたしは素直に従って綺麗にした机の上に横たわった。そして佐倉さんに向かって脚を広げる。
 恥ずかしい。まるで産婦人科みたい。行った事はないけど、中学校の保健体育の授業で、女の体育教師に見せられた資料にあった台。あれに乗せられたみたいに思った。

「うーん、ちょっとやりにくいわね。自分の足を持ち上げて」

 佐倉さんは淡々とあたしに命令しているけど、本当に恥ずかしい。誰もいない放課後の図書室で、あたしはクラスメイトに向かって、女の子の大事な部分を見せつけるような恰好をした。多分、お尻の穴まで丸見えだろう。
 と、彼女の指先があたしのお尻の穴に触れた。ちょうど目を瞑っていたせいで、完全な不意打ちだ。だから、あたしの身体は自分でも驚くくらいビクリと跳ね上がってしまった。

「きひゃうっ!」
「可愛らしい声。でもって、可愛らしいお尻。キュッキュと締まって、まるで別の生き物みたい。はーい、こんにちは。……お返事は?」
「む、無茶なコト言わないで……、恥ずかしい……」
「別に恥ずかしがる事無いわよ。綺麗なお尻じゃない。お尻の周りにムダ毛も全然生えてないし」

 褒められても全然嬉しくない。そもそも、褒めているのか判断に困る。

「そう言えば、修学旅行の時、ブラックホールって仇名を付けられた娘がいたわね。付けたのは、あなたの取り巻きたちだけど。ひっどい仇名よねぇ。ここの毛が凄くって、お尻まで生えてたからって」
「あたしは……」
「あなたが付けたわけじゃない? でも、止めもしなかったわよね。可哀そうな娘。お風呂の時間に寄ってたかって裸に剥かれて、みんなに大事な所を見せびらかされるなんて」
「……」

 カースト下位の学生にとって、修学旅行は旅行と呼べるものではなくなることがある。荷物持ちなどは軽い方で、四六時中オモチャにされて眠る事も出来ない。
 ブラックホールと呼ばれるようになってしまった娘は、佐倉さんとは違った意味で地味だった。いつもオドオドした感じで、そのせいか、よく真島たちにイジられていた。もっとも、修学旅行だというのに陰部の手入れを全くしていなかったあの娘も悪かったのだろう。普段からイジられているのだから、付け入る隙を与えなければいいのに。

「そんなあなたも、今は私に向かって恥ずかしいカッコ。因果は巡るってこういう事なのかしらね」

 佐倉さんは本当に楽しそうだ。
 そこでふと、私は思った。因果が巡るなら、いつか彼女も……。

「いつか私も、こんな目に遭うのかも? って考えてる?」
「ふえ? や……、あたしは……、その……」
「そういう顔してた。ふふ……、良いわねこういうの。いつか私を支配してくれる人が現れたらって考えたら、興奮するわ」

 その瞬間、腑に落ちた。
 なぜ彼女は、こうも的確にあたしの甘やかな所を突いてくるのか。それは、こういう行為を、彼女自身も求めているからだ。今はただ、佐倉さんの方があたしを支配しているからに過ぎない。何かきっかけがあれば、この立場は逆転する……、かもしれない。

「構わないわよ。いつでも」
「ひえっ? あ、あたし、声に出してた?」
「いいえ、でも何か考えてそうな顔してた。ふふ……、でもって、それほど的外れじゃないのかしら?」

 私が佐倉さんを凌辱する。それは確かに心躍る想像だ。でも、それは妄想に過ぎない。だって、今のこの関係が、あたしにとってイヤなものではないからだ。
 彼女に言われるままに身体を開き、彼女に求められるままに身体を差し出す。元々は、あたしの秘密を守る事と、彼女の平穏な学校生活を守る事を約束し合った関係だけど、立場はあたしの方が圧倒的に弱い。約束が守られなかった時、失うモノがあるのはあたしの方で、佐倉さんにとっては無くても良い約束なのだ。
 だからあたしは、彼女に逆らえない。
 でもそれは、それほどイヤな事じゃなかった。

「い、痛っ!」

 いきなり、あたしの大事な部分の毛が引き抜かれた。彼女の手には、いつの間にか毛抜きが握られている。それで一本一本丁寧にあたしの毛を抜いていくつもりなのだろう。

「……っ!」

 さっきまで感じていた、恥ずかしさの混じった甘やかな感覚と違って、針を刺すような痛みが走る。
 佐倉さんは、それから一言も発することなく、淡々とあたしの毛を抜いていった。そしてあたしの用意したゴミ箱に毛を捨てていく。それはまるで、何かの作業のようであった。
 毛を抜きやすくするために佐倉さんの指先があたしに触れている時は、淡い気持ち良さが感じられる。そして、その直後に来る針を刺すような毛を抜かれる痛み。抜いた後は、労わる様に彼女の指先が毛穴の部分を優しく撫で回す。それがまた気持ち良い。
 痛みと気持ち良さを交互に感じながら、あたしは目を瞑って耐えていた。そして、どれくらいの時間が経ったのだろうか。

「はい、お終い」

 と、彼女は簡単に告げた。

「終わり……?」
「ええ、綺麗になったわよ。あの娘がブラックホールなら、あなたのココはホワイトホールね。とっても綺麗」

 そう言って、佐倉さんはあたしの女の部分をペロリと舐め上げた。

「ひやうっ!」
「ホント、とっても舐めやすくなったわ。スベスベして綺麗よ」

 赤ん坊のように自分で上げていた足を下ろし、あたしは自分の足の間を見下ろした。
 そこには何も無かった。その見た目にヒドく違和感を覚える。小学校の頃まではこのような身体であったはずなのに、まるで覚えが無い。

「はい、もう一回、脚を開いて」
「え? ええ……」

 あたしは言われるままに、一本の毛も無くなった足をクラスメイトに向かって広げた。感覚がマヒしてしまっていたのだろうか、後から考えて顔から火が出る思いがしたが、この時は当たり前のように彼女に全てを見せていた。
 佐倉さんの手には、携帯用の小振りな乳液の入った瓶があった。それを掌に垂らし、あたしの毛のあった場所に摺り込み始めた。

「あ……は……」
「気持ち良さそうな声を出すのね。イヤらしいの」
「だ、だって……」
「大事な部分だからね。手入れはちゃんとしないとね」

 佐倉さんの白くてたおやかな手が、あたしのイヤらしい部分を這い回っていた。
 問答無用で人の毛を一本残らず毟るという傍若無人な振る舞いをしたのかと思ったら、今度は人の肌を気遣って丁寧に乳液を摺り込んでくれている。
 あたしは不思議な思いで、彼女の心遣いを見つめていた。

「ふふ、今日はこれで許してあげる」
「は……、え?」
「ちゃんと約束は守ってよね。私も黙っていてあげるから」
「え……ええ……」

 そうだ。そう言えば、これはペナルティだったんだ。

「じゃあね。今度こそ本当に、後片付けはよろしく」
「え、ええ……、また明日……」

 それで興味を無くしたように、彼女は鞄を持って図書室を出て行った。
 放課後の人気の無い図書室に、あたしは一人残される。
 机から降りたあたしは、ツルリとしてしまった股間に手をあてて、その肌をさする。妙にスベスベした手触りが気持ち良い。
 ふと振り返ったあたしは、机の上が濡れている事に気付いた。佐倉さんは何も言わなかったけど、思ったよりも濡らしていたらしい。それもティッシュで拭き取って、自分が机の上で横たわっていた跡を消す。
 スカートを身に着けたあたしは、誰もいない図書室を見回した。
 さっきまで、あたしはここで佐倉さんと人には言えないようなイヤらしいコトをしていたのだ。それを思い返すと、身体の奥からイヤらしい汁が溢れてくるのが感じられる。早く鎮めたい。早く身体を慰めたい。自分の家に帰れば、あたしは貪るようにオナニーをするだろう。
 その気持ち良さを想像しながら、あたしは図書室を後にした。
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