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〜第5章〜
143.『要塞』
しおりを挟む時刻は23時。
24時間稼働している工場の中にシロサキとハナがいる。
みつれはバイクを走らせ、工場を目指す。
しお「みつれさん!工場の全体図がわかったよ。今スマホに送った。」
みつれはスマホホルダーに付けていたスマホを見た。
みつ「随分広いな。発信源の大体の場所は?」
しお「工場内の南側だね。そこには建物があって、社員寮みたいだよ。」
みつ「工場内に寮があるのか……。セキュリティは?」
しお「工場の塀には防犯カメラが20台。死角は無し。深夜警備員が4人から7人くらい見回ってる。作業員は深夜は少ないみたいだよ。それとさっき言った社員寮だけど、新棟と旧棟があって社員は新棟に移ってる。旧棟はあまり使われてないみたいだね。」
しおんは調べたことを次々みつれに説明した。
みつ「だとしたら旧棟に居るだろうな。」
しお「それとちょっと気になることがわかったよ。」
みつ「ん?なんだ?」
しお「この工場は『ネクストクリエイティブ』の子会社なんだよ。」
みつ「『ネクストクリエイティブ』?」
みつれは聞いた事ない名前だった。
しお「あぁ、そうか。みつれさんは知らなかったね。」
しおんは説明を始めた。
みつれがスイと居た旧トンネルの施工会社、『ナムラ組』と『シロサキ組』。
『ナムラ組』が暴力団と繋がりがあり殺人事件を起こした。そのことで『ナムラ組』の社長が逮捕されたことで、後任した新社長は過去の悪行を払拭するために社名を変更した。
その名前は『ネクストクリエイティブ』。
元は建設会社だが、今や大きな会社で色んな事業にも手を伸ばしている。
工場はその1つだった。
しお「・・・で、その子会社だけど、代表者が『シロサキ組』の元従業員、それもシロサキの遠い親戚なんだよ。」
みつ「なんだと……!?」
子会社の代表はシロサキの遠い親戚。
組織との繋がりがみえた。
しお「多分組織と繋がりがあると思う。子会社を隠れ蓑にしてるんだと思う。」
みつ「なるほどな。たとえ工場を爆破しても保険金がおりるから問題無しか。」
しお「つまりこの工場はただの工場じゃない。要塞だよ。従業員も組織の人間かも知れない。」
みつれはバイクを止めた。
みつ「しおん!このことをリンに伝えろ!!絶対踏み込ますなよ!」
しお「わかった!」
みつれは再びバイクを走らせた。
しおんはすぐにリンに電話を掛ける。
しお「・・・出ない。まだ尋問中なのかな?」
リンとの電話から結構時間が経っている。
尋問にしては長過ぎる。
しおんは嫌な予感がした。
しおんはリンのスマホのGPSで居場所を調べる。
すると警察署からかなり移動した場所にいた。
しお「やっぱり!!」
GPS信号は工場に向かっていた。
しおんは慌ててみつれに電話を掛ける。
しお「みつれさん!リンさんが工場にむかってる!!」
みつ「やっぱりか。引き返させろ!」
しお「それが電話に出なくて……メッセージは送ったけど。」
みつ「私から掛けてみる。お前はGPSを追っていてくれ。」
みつれは電話を切り、リンに電話を掛ける。
しかし電話には出なかった。
みつ「気づいてないのか?!…なんで出ないんだ!リン!」
みつれはリンより先に工場に着くべく、バイクのスピードを上げた。
みつれは工場付近まで到着した。
しお「もう着いたんだね。リンさんはまだ大丈夫だよ。けど全然電話に出ないんだ。」
みつ「・・・どうもおかしい。しおん、リンのGPSの位置を教えてくれ。直接会うしかない。」
しお「わかった。…送ったよ。みつれさんから10km程だね。」
しおんはみつれにGPSの位置を送った。
みつ「こっちに向かってきてるから5km地点で会うな。」
みつれはバイクを走らせた。
4km程走ると猛スピードで走る車が前方に現れた。
みつ「アレだ。」
みつれは旋回し、車の前を走る。
すると向こうが気づいたのかスピードが落ちた。
みつれは車の横につく。
みつ「リン!!」
リン「みっちゃん……もう来てたんだね。」
みつ「路肩に止まってくれ。」
リンは車を路肩に止めた。
リンは車から降りる。
みつ「リン、なんで電話に出なかった?」
リン「みっちゃん……私行かないといけないの。」
みつ「しおんが調べた。あの工場はただの工場じゃない。組織が管理している要塞だ。分が悪過ぎる。」
みつれはしおんが得た情報を説明しようとする。
リン「わかってる。半グレの尋問から聞き出せた。シロサキは工場に居るって。」
みつ「それは誘き出すための罠だ。危険過ぎる。ハナさんの姿を見る前に殺されるぞ。」
みつれはリンを止めようとする。
リン「でも、そこにハナちゃんがいる!助けないと!!」
リンは声を荒らげる。
みつ「だから!無理だって言ってんだろ!!」
みつれも声を荒らげた。
リン「じゃあみっちゃんは大人しく家に帰りなよ!!私1人でやる!!」
みつ「このぉ……いい加減にしろ!!」
みつれはリンの顔に平手打ちをした。
みつ「冷静になれ!!むやみやたらにあそこに飛び込んでも死ぬだけだ!!」
リン「・・・」
みつれはリンの胸ぐらを掴む。
みつ「いい加減に目を覚ませ!!一度情報を整理して作戦を…」
リン「そんな時間は無い!!!」
リンは胸ぐらを掴んでいるみつれの手を解いた。
そしてリンはみつれに銃を向ける。
みつ「・・・リン……。」
空気が張りつめた。
リン「行かせて、みっちゃん………お願い。」
みつ「・・・電話の発信源は旧社員寮だ。だがそこまでに辿り着くのは恐らく無理だ。組織の連中が大勢いる。今までとは訳が違う。…それでも行くのか?」
リンは頷いた。
リン「ハナちゃんがすぐそこにいるんだよ。行くに決まってる。」
みつ「・・・死ぬかも知れないんだぞ?」
リン「それでも行く。」
リンの決心は堅かった。
みつれはリンの覚悟をみた。
みつ「・・・わかった。私も行く。」
みつれはリンとともに行くことを決めた。
みつ「しおん!聞こえていたな!」
しおんはみつれとの電話越しで2人の会話をずっと聞いていた。
しお「はぁ……こうなると思ってたよ……。」
しおんはため息をついていた。
しお「1つだけ旧社員寮に直接行ける作戦を思いついたけど…聞く?」
みつ「ふっ、やっぱりお前は天才だよ。いいから教えろ。」
みつれとリンはしおんの作戦に耳を傾けた。。。
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