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しおりを挟む違和感に目が覚める
私の横が随分冷たい
いつもなら温かいのに…
そういえば街に行く日だわ
のそっと起きると横には水差しと手紙
『ゆっくりしてて』
せめてすぐ戻ると書いてくれたらいいのに…
もしかしたら帰って来てくれないんじゃないかと不安になるけど帰って来たら美味しいご飯を作って待っていようとベッドから出る
随分と寝てしまったみたいでお昼も過ぎているみたい
出掛ける前に作った私の分の料理が置かれてる
お腹はペコペコだから座って食べるけど、やっぱり味気ないわ
ルーカスの作る料理は美味しい
私なんかよりずっと
でも1人で食べる時は味気ない
「はぁ…」
私ってこんなだったかしら
もう少し1人でも大丈夫だと思ってたのに
ルーカスに連れられて隠れ家だというこの家に来たばかりの頃は私1人で寝ていたけれど寒い季節だったからソファに寝てるルーカスが可哀想で一緒に眠る事と命令してからルーカスと寝ている生活だから慣れてしまったのかしら
それでもいいわ
だって幸せだもの
あまり食べ進まないからルーカスが帰って来たら一緒に食べようと残してルーカスの分のご飯を支度しましょう
大根があるからサラダにして作っておいたきんぴらとほうれん草焼きにしましょう
少し足りないかしら?いえ、でも街でなにか買ってくるかもしれないからちょうどいいわ
食事の支度とベッドを整えて寝室を片付けたら帰って来たわ!
「おかえりなさい!」
「セラ、いつも誰か確認しろと」
「足音がルーカスだったわ!」
「…仕方ないなぁ、ただいま」
たくさんの荷物を抱えて戻ってきたルーカスは私を抱き上げてキスをする
髪を撫でると苦笑するルーカスに得意げな顔を見せると下ろされてソファに座るように言われたから大人しく座った
「また髪がぼさぼさだ」
「ルーカスがやるって言ってたわ」
「くすくす、そうだね」
「軽く梳かしたら荷物を片付けましょう」
「今日の夜は念入りにさせて」
「分かったわ」
髪を梳かさないのはわざと
ルーカスも知ってるからくすくす笑って梳かしていく
少ししたらやめて荷物を片付けていく
食品はほとんど冷凍して保存する
街に出向くのは3ヶ月に1度
だからたくさん買い足すの
大きな街まで出る方が顔がバレないって言っていたわ
かなり距離があると思うのに朝から行って夜になる前に帰って来る
「今日は笹かまが売ってたから買ってきた」
「美味しそうね」
「ご飯と一緒に食べよう」
「ええ」
「セラ?」
「なあに?」
「また残したの?」
「…だってなんだか味気ないんだもの」
「でも食べなきゃ駄目だと言ったよ」
「ごめんなさい……」
「しょうがないなぁ…寂しかった?」
「寂しかったわ」
抱き着いて甘える
どこかに行ってしまうかもと不安になるんだもの
何度か胸の中で深呼吸してまた片付けに戻る
そういえば
「お金ってどうしてるの?」
「心配しなくていい」
「だってもしかしたら何十年も居る事になるかもしれないわ、だから気になるの」
「…そんなに帰れないのは嫌だろ」
「言ったでしょう?あのままあそこに居てもいい事なんてないって」
「…そうだった」
「ずっとこのままの方が幸せだわ…」
「セラ」
私を抱きしめる腕の中で考えてしまう
あのまま婚約者の元へ嫁ぐのは仕方ないと諦めていたけれど、こんな生活を知ってしまってはもう仕方ないとも思えない
ずっとルーカスの側に居れたらいいのに
「豪邸は無理だけどここなら稼いだ給料でどうにかなる」
「でもルーカスは18歳の時に私の護衛になったでしょう?」
「うん」
「だから…9年?働いたのかしら」
「そうだね」
「それだけで生きていけるの?」
「今の生活なら余る程だよ」
「そうなの…そうだわ、せっかくだから物価を教えて」
「いいよ」
今年29歳のルーカスと18歳の私は傍から見たら夫婦に見えるのかしら
ルーカスは外に出てなんと言って買い物をしているのか気になるわ
独りだと言っているのかしら、それとも…
「セラ?」
「ごめんなさい、考え事をしてたわ」
「今日はご飯を食べて寝よう」
「ええ」
私は残ったご飯と笹かまを食べたらお風呂に浸かって念入りに髪の毛を梳いてくれて一緒に眠る
今日は疲れてるのかすぐに寝たルーカスから離れてカーテンを開けて月を見上げた
ルーカスと初めて出会ったのは私が8歳の時
若くして騎士団一の力と策略を持ち合わせているからと平民にも関わらず私に充てがったのはそこまで大切じゃないからだと分かっていた
兄が2人居て私は精々どこかに嫁ぐしか役に立てないと小さな頃から分かっていた
2人の兄は青の瞳なのに私だけ紫なのも気に入らなかったのだろう父である国王はさっさと縁談を決めて成人を迎えたら嫁ぐ事を私が3歳の時に決めたと聞いた事がある
だからそんな私に平民をよこすなんて期待していないお前には似合いだと言われているようで悔しかった
ルーカスは真面目で私の前だからと態度を変える事もなく側に仕え続けていた
ある日聞いた事がある
どうして私なんかに仕えていられるの?って嫌じゃないの?って
そうしたらルーカスは私の前に膝をついて頭を垂れながら伝えてくれた
「セラフィーナ様は第一王女、そして私は守る為に産まれてきたのです」
「私を守る為?」
「セラフィーナ様を全てから救いたいと出会った瞬間から思い実行しようと日々動いております」
「そうだったの…」
「セラフィーナ様は私の主、永遠にお側に仕え続けたい」
上げた顔は真剣で濃い緑の瞳は私だけを射抜いていた
私はその言葉よりも前から慕っていたから嬉しい気持ちと同じくらい悲しかった
一生仕えるなんて嫌よ
私は嫌よ…
でもどうする事も出来ない
せめて嫁ぐまでは恋をしていたいと
そう願っていた時だった
バキバキと扉が壊れて中に居た私と側仕え、護衛の者は警戒した
そして私の手を取ったのがルーカスだった
「ここから逃げましょう、抱えますから掴まって」
「はい!」
数名の護衛もついていたと思う
途中から私たちを見失ったのか2人だけになりルーカスが友達だという人に情報を仕入れたところ今戻ってもまた暗殺される可能性があるからしばらくここに、と
1ヶ月かけて辿り着いたルーカスの隠れ家に居着いた
あの日から2年ほど経った今、戻れと言われたらどうするのだろう
ルーカスに戻れと言われたらどうしたらいいのか分からない
「セラフィーナ、様?」
「ごめんなさい、月が綺麗だったから」
「ん、おいで」
「はい」
ルーカスの腕に戻って今度こそ目を瞑る
冷えていると体を温められながら
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