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第4章:鬼
第10話:人と鬼の子
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「僕はリュウキって言います……その、食べ物を取ってごめんなさい」
「うん、何か事情がありそうだね」
目の前でしょんぼりしてしまったリュウキと名乗った子鬼に対して、ニコが優しく声を掛ける。
そのリュウキの目の前には、少なくない食べ物が置かれている。
シノビゴブリン達が用意したものだ。
森の中で狩りや採取で集めたものを調理したらしい。
他には、人の町で買った物も。
こうしてみると、こいつらも普通の人っぽいよな。
「とりあえず食べなよ。お腹が空いてるんでしょ?」
「いいの?」
「君のために用意したんだよ」
「……ありがとうございます」
リュウキは軽く頭を下げて、大きな葉っぱに置かれた食べ物に手を伸ばす。
最初に手を伸ばしたのは鹿の肉を鉄板で焼いて、香草と香辛料で味付けしたものだ。
「おいしい……」
口に含んで軽く咀嚼した嚥下したあとで、ポツリともらす。
そのまま夢中で食べ勧め、途中で手を止める。
「こんなにおいしいもの、食べたことない……です」
「そう? 喜んでもらえてよかった」
身体中が汚れてて疲労の色が顔に濃く出ているが、それでも嬉しそうにはにかんで笑う姿は幼さが残る。
いくつくらいなのかな?
「食べながらで良いから、君のことを教えてくれるかな?」
「うん」
ちなみに、ここにきてようやくニコが主導権を握って、会話をしている。
子供相手ということで、ゴタロウもニコでも大丈夫と判断したようだ。
いや、むしろニコの方が良いと思ったのだろう。
事実、その通りのようにも思える。
ニコに対しては、あまり警戒をしていないようだし。
「きみは、いくつなのかな?」
「10歳……」
160cmくらい身長があるのに、まだ10歳なのか。
身長を考えなければ、見た目通りの年齢……
いや、まだ幼く感じるのは栄養状況が悪いからかな?
「なんで、ここにいるの?」
「……僕は、できそこないだから」
ニコの言葉に、リュウキが俯いて呟く。
できそこない。
ハーフだからってことかな?
「お母さんは立派な鬼なのに。僕は夜しか鬼になれない……お兄ちゃんもお姉ちゃんも立派な鬼なのに……お父さんも」
あれ?
父親が人間のパターンかと思ったら、鬼だったのか?
不思議に思って、ゴタロウに視線を向け……目がないから意識を向ける。
俺の意識を感じ取ったのか、ゴタロウも首を傾げている。
「お父さんが人間とかじゃないの?」
「ううん。お父さんは、里の戦士長だもん」
「じゃあ、なんで君は?」
「わかんない……わかんないけど、僕のせいで毎日お父さんとお母さんは喧嘩してる」
「うーん……」
「お父さんは……僕のお父さんじゃないって言うんだ! お母さんは、僕に優しくしてくれるけど……それで、余計にお父さんが機嫌悪くなる。たまに叩かれたりするし」
お母さんは人と浮気でもしてたのかな?
それとも、他に何か要因でも?
クオーターとか、もしくは覚醒遺伝的な?
『人の血が混じっているのは確かですな……その、彼の家族を見てみないと確かなことはいえませんが、おそらく母親の浮気の線が一番で次点で主のおっしゃる覚醒遺伝の可能性があります』
そうか。
その辺りの調査をお願いしても良いか?
『はっ! 適当に配下のものを送りましょう』
ゴタロウがそう言って合図を送ると、周囲から数匹のゴブリンが消えたのを感じる。
フットワークが軽くてなにより。
「とりあえず、リュウキ君はどうするつもりだったの? ずっとこんな生活を送ってたら、いつか捕まっちゃうし……なにより、餓えて死ぬかもしれないよ?」
「うん……それでも良いかなって。でも、お腹が空きすぎると我慢できなくて、つい盗っちゃったんだ。本当にごめんなさい……もう、ここには近づきません」
「それでどうするの? 食べ物とか取れるの?」
「無理だから……どこかで、ひっそりと死ぬんだと思う」
そう言ったリュウキの目から、涙がツーっとこぼれた。
こんな幼い子が、ここまで人生に悲観するとか。
まあ、これが厳しい魔物社会のさだめなのかもしれないが。
言葉が喋れて、人間の子供のような容姿の鬼がこんなに弱ってるのを見て、放置できるほど俺も人間やめてないし。
いや、人じゃなくて剣だけど。
助けてやりたい気持ちは確かにある。
服も鬼の身体の状態だと裾が足りてなくて、夜になって冷えてきたこともあるのかしきりに手や足をこすり合わせている。
その姿が余計に哀愁を漂わせていて、庇護欲をかきたてる。
「誰にも迷惑かけなくてすむし、その方がきっと良いんだ」
「……そうだね」
リュウキの言葉に、ニコが頷く。
「でも……そうしようとして……それでも、我慢できなくて食べ物を盗っちゃったんでしょ?」
「うん、だからここから離れたら……」
「何か食べたくでここに来たんでしょ? 我慢できないんでしょ?」
「ごめんなさい……」
「だったら、それは君の身体が生きたいって思ってるってことじゃん!」
「えっ?」
ニコの言葉に、リュウキが顔をあげる。
そしてジッとニコを見つめる。
ニコはその視線を正面から受け止めて頷くと、微笑み返す。
「だったらさ……必死で生きなよ! 人の迷惑になるからとかって思うんだったら、人の役に立つことも考えなよ!」
「ええっと……」
「明日、僕が村の人に話してあげる」
「それは、だめだよ……今までいっぱい物を盗ったんだもの。村の人に殺されちゃうよ」
あー、ニコ……俺もそう思うぞ?
人と魔物のハーフが、この世界でどういう扱いなのかしらないが。
あまりいい結果にならないと思うし。
お節介だとも思うけど?
『鈴木さんは黙ってて』
酷い……
いや、急にやる気になったと思ったら、いうに事欠いて俺に黙れとか。
身勝手すぎやしませんか?
『とりあえずやってみて、だめならゴブリン王国に連れてくからいいの』
いいのって……
最初っから、ゴブリン王国に連れて行ったんじゃだめなのか?
『だって、あそこに行ったらもうお母さんに会えなくなっちゃうかもしれないじゃん! ここなら、里が近いから会おうと思えば会えるし』
あー、そこまで考えてのことか。
だったら、無理にとはいわんが。
それなら、オーガの里の方を説得した方が早くないか?
『そこだと、リュウキ君が嫌な思いをするんだよね?』
いや、村でも嫌な思いをするかもしれないじゃないか。
むしろ、可能性は高いと思うけど。
『村長さんも奥さんも優しい人だから、話したらきっと分かってくれるよ! それに……リュウキ君の気持ち、僕分かるし』
あっ……
そういえば、ニコも生まれた町では似たような状況だったな。
まあ、あれは父親の浮気が原因だったわけだが。
なるほど、リュウキのおかれた状況と自分の境遇を重ね合わせてしまったのか。
それで、いつになく意欲的に動いてるんだな。
まあ、分からんでもないが。
少し、楽観的すぎやしないか?
まあ、やるだけならやってみても良いと思うけど。
『うん』
いや、手放しで後押ししてるわけじゃないんだけどな。
そんな、嬉しそうに返事されたら、なんとも反応に困る。
「とりあえず、まずは見た目からだね」
「見た目?」
「服装とか、あと身体も洗った方が良いと思う。誰か手伝って」
でもって、結局人に頼るのかい。
ニコの呼びかけに、シノビゴブリンが3人ほど現れる。
「誰、この人達」
「うーん、僕のお友達」
「お友達って……ゴブリン……いや、もっと強い何かじゃ」
リュウキが怯えているが、そんなことお構いなしにゴブリン達が近付いていく。
「大丈夫ですよ。ただのネオゴブリンです」
「私はただのゴブリンキングです」
「私もゴブリンキングです」
3人の自己紹介を受けて、リュウキが固まる。
「ただのゴブリンキングってなに? てか、なんでゴブリンキングの方が多いの? えっ? なに? 誰? 怖い……」
怯えさせてしまったようだが、3人がお構いなしに魔法を使い始める。
水魔法、火魔法、土魔法を駆使して風呂を作る。
そして、そこにリュウキを突っ込んで3人で洗い始める。
ゴブリン王国御用達の石鹸やシャンプーを使って。
「うわっ、あれお湯? あったかい」
すっかり身体が冷えてしまったリュウキは最初、お湯を熱そうにしていたが。
すぐに慣れたのか、目がトロンとしてきていた。
あまり休めていなかったのだろう。
そして風呂からあがったリュウキに、今度は風魔法を使って温風で髪を乾かし始める。
「やはり、痩せすぎですが素材は良さそうですね」
「これなら、磨けば光るかと」
「では、衣装はこちらで用意しましょう」
シノビゴブリンの一匹が、魔法の糸で作った服を作り始める。
おお、着物のような衣装か。
鬼には合いそうだな。
幸い、日本人みたいな顔の造りをしているし。
「魔法の糸を使っているので、身体のサイズに合わせて伸縮します」
「良いですね。足も長いのでとても映えて見えますね」
あれよあれよという間に、髪も綺麗にカットされて整えられていく。
そして気付けば、おかっぱ頭の可愛らしい子鬼が出来上がっていた。
あれだな、道後温泉や台湾の九份をモデルにした某アニメの男の子をちょっと不健康にしたみたいだ。
もう少し太れば、きっと美少年だな。
角が生えてるけど。
「すっごーい! 見違えたよ」
「うーん、自分じゃわからないけど」
「とりあえず、今日のところは彼らと一緒に居て。明日、改めて村で村長さんに話してみるから」
ニコはそう言うと、リュウキをシノビゴブリン達に任せて村へと戻ることにしたらしい。
リュウキが風呂に入っている間、あくびを何回かしていたから眠たくなったのだろう。
ここまで一切口を挟まなかったゴタロウも、多少は満足したのか。
柔らかい笑みを浮かべて頷くと、ニコの後に続いた。
さて……本当に、村長に紹介するつもりなのだろうか?
ひと悶着ありそうな気もするし、大丈夫なような気もするし。
それはそれとしてリュウキの生い立ちや、オーガの里の問題も片付けるべきだと思うが。
そっちは、もう依頼の範疇を超えているな。
依頼は、家畜と畑荒らしの原因の追究と対処だったからな。
リュウキの家庭問題は、そこには含まれないはずだ。
そっちは……
ゴタロウの視線を感じる。
俺の仕事になるのか?
分からんな。
なんとなく里の情報を、ゴタロウがだいぶもっていそうだということは分かる。
そのゴタロウの視線が、ニコには荷が重いと暗に物語っている気がする。
オーガか……
鬼……だよな?
うん、ちょっと会ってみたい気もする。
言葉が通じるなら。
「うん、何か事情がありそうだね」
目の前でしょんぼりしてしまったリュウキと名乗った子鬼に対して、ニコが優しく声を掛ける。
そのリュウキの目の前には、少なくない食べ物が置かれている。
シノビゴブリン達が用意したものだ。
森の中で狩りや採取で集めたものを調理したらしい。
他には、人の町で買った物も。
こうしてみると、こいつらも普通の人っぽいよな。
「とりあえず食べなよ。お腹が空いてるんでしょ?」
「いいの?」
「君のために用意したんだよ」
「……ありがとうございます」
リュウキは軽く頭を下げて、大きな葉っぱに置かれた食べ物に手を伸ばす。
最初に手を伸ばしたのは鹿の肉を鉄板で焼いて、香草と香辛料で味付けしたものだ。
「おいしい……」
口に含んで軽く咀嚼した嚥下したあとで、ポツリともらす。
そのまま夢中で食べ勧め、途中で手を止める。
「こんなにおいしいもの、食べたことない……です」
「そう? 喜んでもらえてよかった」
身体中が汚れてて疲労の色が顔に濃く出ているが、それでも嬉しそうにはにかんで笑う姿は幼さが残る。
いくつくらいなのかな?
「食べながらで良いから、君のことを教えてくれるかな?」
「うん」
ちなみに、ここにきてようやくニコが主導権を握って、会話をしている。
子供相手ということで、ゴタロウもニコでも大丈夫と判断したようだ。
いや、むしろニコの方が良いと思ったのだろう。
事実、その通りのようにも思える。
ニコに対しては、あまり警戒をしていないようだし。
「きみは、いくつなのかな?」
「10歳……」
160cmくらい身長があるのに、まだ10歳なのか。
身長を考えなければ、見た目通りの年齢……
いや、まだ幼く感じるのは栄養状況が悪いからかな?
「なんで、ここにいるの?」
「……僕は、できそこないだから」
ニコの言葉に、リュウキが俯いて呟く。
できそこない。
ハーフだからってことかな?
「お母さんは立派な鬼なのに。僕は夜しか鬼になれない……お兄ちゃんもお姉ちゃんも立派な鬼なのに……お父さんも」
あれ?
父親が人間のパターンかと思ったら、鬼だったのか?
不思議に思って、ゴタロウに視線を向け……目がないから意識を向ける。
俺の意識を感じ取ったのか、ゴタロウも首を傾げている。
「お父さんが人間とかじゃないの?」
「ううん。お父さんは、里の戦士長だもん」
「じゃあ、なんで君は?」
「わかんない……わかんないけど、僕のせいで毎日お父さんとお母さんは喧嘩してる」
「うーん……」
「お父さんは……僕のお父さんじゃないって言うんだ! お母さんは、僕に優しくしてくれるけど……それで、余計にお父さんが機嫌悪くなる。たまに叩かれたりするし」
お母さんは人と浮気でもしてたのかな?
それとも、他に何か要因でも?
クオーターとか、もしくは覚醒遺伝的な?
『人の血が混じっているのは確かですな……その、彼の家族を見てみないと確かなことはいえませんが、おそらく母親の浮気の線が一番で次点で主のおっしゃる覚醒遺伝の可能性があります』
そうか。
その辺りの調査をお願いしても良いか?
『はっ! 適当に配下のものを送りましょう』
ゴタロウがそう言って合図を送ると、周囲から数匹のゴブリンが消えたのを感じる。
フットワークが軽くてなにより。
「とりあえず、リュウキ君はどうするつもりだったの? ずっとこんな生活を送ってたら、いつか捕まっちゃうし……なにより、餓えて死ぬかもしれないよ?」
「うん……それでも良いかなって。でも、お腹が空きすぎると我慢できなくて、つい盗っちゃったんだ。本当にごめんなさい……もう、ここには近づきません」
「それでどうするの? 食べ物とか取れるの?」
「無理だから……どこかで、ひっそりと死ぬんだと思う」
そう言ったリュウキの目から、涙がツーっとこぼれた。
こんな幼い子が、ここまで人生に悲観するとか。
まあ、これが厳しい魔物社会のさだめなのかもしれないが。
言葉が喋れて、人間の子供のような容姿の鬼がこんなに弱ってるのを見て、放置できるほど俺も人間やめてないし。
いや、人じゃなくて剣だけど。
助けてやりたい気持ちは確かにある。
服も鬼の身体の状態だと裾が足りてなくて、夜になって冷えてきたこともあるのかしきりに手や足をこすり合わせている。
その姿が余計に哀愁を漂わせていて、庇護欲をかきたてる。
「誰にも迷惑かけなくてすむし、その方がきっと良いんだ」
「……そうだね」
リュウキの言葉に、ニコが頷く。
「でも……そうしようとして……それでも、我慢できなくて食べ物を盗っちゃったんでしょ?」
「うん、だからここから離れたら……」
「何か食べたくでここに来たんでしょ? 我慢できないんでしょ?」
「ごめんなさい……」
「だったら、それは君の身体が生きたいって思ってるってことじゃん!」
「えっ?」
ニコの言葉に、リュウキが顔をあげる。
そしてジッとニコを見つめる。
ニコはその視線を正面から受け止めて頷くと、微笑み返す。
「だったらさ……必死で生きなよ! 人の迷惑になるからとかって思うんだったら、人の役に立つことも考えなよ!」
「ええっと……」
「明日、僕が村の人に話してあげる」
「それは、だめだよ……今までいっぱい物を盗ったんだもの。村の人に殺されちゃうよ」
あー、ニコ……俺もそう思うぞ?
人と魔物のハーフが、この世界でどういう扱いなのかしらないが。
あまりいい結果にならないと思うし。
お節介だとも思うけど?
『鈴木さんは黙ってて』
酷い……
いや、急にやる気になったと思ったら、いうに事欠いて俺に黙れとか。
身勝手すぎやしませんか?
『とりあえずやってみて、だめならゴブリン王国に連れてくからいいの』
いいのって……
最初っから、ゴブリン王国に連れて行ったんじゃだめなのか?
『だって、あそこに行ったらもうお母さんに会えなくなっちゃうかもしれないじゃん! ここなら、里が近いから会おうと思えば会えるし』
あー、そこまで考えてのことか。
だったら、無理にとはいわんが。
それなら、オーガの里の方を説得した方が早くないか?
『そこだと、リュウキ君が嫌な思いをするんだよね?』
いや、村でも嫌な思いをするかもしれないじゃないか。
むしろ、可能性は高いと思うけど。
『村長さんも奥さんも優しい人だから、話したらきっと分かってくれるよ! それに……リュウキ君の気持ち、僕分かるし』
あっ……
そういえば、ニコも生まれた町では似たような状況だったな。
まあ、あれは父親の浮気が原因だったわけだが。
なるほど、リュウキのおかれた状況と自分の境遇を重ね合わせてしまったのか。
それで、いつになく意欲的に動いてるんだな。
まあ、分からんでもないが。
少し、楽観的すぎやしないか?
まあ、やるだけならやってみても良いと思うけど。
『うん』
いや、手放しで後押ししてるわけじゃないんだけどな。
そんな、嬉しそうに返事されたら、なんとも反応に困る。
「とりあえず、まずは見た目からだね」
「見た目?」
「服装とか、あと身体も洗った方が良いと思う。誰か手伝って」
でもって、結局人に頼るのかい。
ニコの呼びかけに、シノビゴブリンが3人ほど現れる。
「誰、この人達」
「うーん、僕のお友達」
「お友達って……ゴブリン……いや、もっと強い何かじゃ」
リュウキが怯えているが、そんなことお構いなしにゴブリン達が近付いていく。
「大丈夫ですよ。ただのネオゴブリンです」
「私はただのゴブリンキングです」
「私もゴブリンキングです」
3人の自己紹介を受けて、リュウキが固まる。
「ただのゴブリンキングってなに? てか、なんでゴブリンキングの方が多いの? えっ? なに? 誰? 怖い……」
怯えさせてしまったようだが、3人がお構いなしに魔法を使い始める。
水魔法、火魔法、土魔法を駆使して風呂を作る。
そして、そこにリュウキを突っ込んで3人で洗い始める。
ゴブリン王国御用達の石鹸やシャンプーを使って。
「うわっ、あれお湯? あったかい」
すっかり身体が冷えてしまったリュウキは最初、お湯を熱そうにしていたが。
すぐに慣れたのか、目がトロンとしてきていた。
あまり休めていなかったのだろう。
そして風呂からあがったリュウキに、今度は風魔法を使って温風で髪を乾かし始める。
「やはり、痩せすぎですが素材は良さそうですね」
「これなら、磨けば光るかと」
「では、衣装はこちらで用意しましょう」
シノビゴブリンの一匹が、魔法の糸で作った服を作り始める。
おお、着物のような衣装か。
鬼には合いそうだな。
幸い、日本人みたいな顔の造りをしているし。
「魔法の糸を使っているので、身体のサイズに合わせて伸縮します」
「良いですね。足も長いのでとても映えて見えますね」
あれよあれよという間に、髪も綺麗にカットされて整えられていく。
そして気付けば、おかっぱ頭の可愛らしい子鬼が出来上がっていた。
あれだな、道後温泉や台湾の九份をモデルにした某アニメの男の子をちょっと不健康にしたみたいだ。
もう少し太れば、きっと美少年だな。
角が生えてるけど。
「すっごーい! 見違えたよ」
「うーん、自分じゃわからないけど」
「とりあえず、今日のところは彼らと一緒に居て。明日、改めて村で村長さんに話してみるから」
ニコはそう言うと、リュウキをシノビゴブリン達に任せて村へと戻ることにしたらしい。
リュウキが風呂に入っている間、あくびを何回かしていたから眠たくなったのだろう。
ここまで一切口を挟まなかったゴタロウも、多少は満足したのか。
柔らかい笑みを浮かべて頷くと、ニコの後に続いた。
さて……本当に、村長に紹介するつもりなのだろうか?
ひと悶着ありそうな気もするし、大丈夫なような気もするし。
それはそれとしてリュウキの生い立ちや、オーガの里の問題も片付けるべきだと思うが。
そっちは、もう依頼の範疇を超えているな。
依頼は、家畜と畑荒らしの原因の追究と対処だったからな。
リュウキの家庭問題は、そこには含まれないはずだ。
そっちは……
ゴタロウの視線を感じる。
俺の仕事になるのか?
分からんな。
なんとなく里の情報を、ゴタロウがだいぶもっていそうだということは分かる。
そのゴタロウの視線が、ニコには荷が重いと暗に物語っている気がする。
オーガか……
鬼……だよな?
うん、ちょっと会ってみたい気もする。
言葉が通じるなら。
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