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第1章:剣と少年
第10話:冒険者再登録
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「とりあえず、冒険者登録してくれって書いてあるんだけど」
「はあ、そうなんですか?」
「中身知らずに持ってきたの? 呆れた」
戻ってきた受付嬢の質問に、気の抜けた返事をしたニコ。
それに対して、お姉ちゃんが呆れ顔だ。
「ロブスレーの街で冒険者してたんですよね? ランクは?」
「F級です」
「駆け出しなのに、ジークフリードさんから紹介状? まあ、いっか。手紙は本物だし」
「えっと……」
「ちょっと、待っててね。カードを再発行するから」
手紙の内容を知らなかったニコが、困った表情。
本人は冒険者やりたいとかって、一言も言ってないんだけどね。
このお姉ちゃんも、大概人の話聞かないな。
「これで、終わり。どうする? 昇進試験受けてみる?」
「いや、良いです」
「なんで? ジークフリードさんの紹介だから、けっこうやるんじゃないの?」
「いや、全然です」
何も考えが決まってないからか、受付嬢の攻勢をニコが必死で躱している。
まあ、行動の指針もまったく決まってないからな。
一度持ち帰って相談か。
「で、街所属じゃなくてフリーで登録してくれって書いてあるんだけど。それでいい?」
「あー。それも考えさせてください」
「そう? 泊まる当てとかあるの?」
「いえ……」
「そうなの? だったら、このギルドを出て左に真っすぐ行ったところに冒組の宿があるわよ」
「そうなのですか?」
おいっ、ニコ!
冒組の宿ってなんだ?
「名前は、大冒険ってところ」
「分かりやすい」
分かりやすいというか、なんだ?
あと、フィーナを放っておいていいのか?
「えっ?」
ニコが振り返ると、ギルドのロビーが盛り上がっている。
「やべーな、嬢ちゃん!」
「これで5人抜きだ!」
「あんたらが、弱すぎるのよ」
「かーっ、辛辣だな」
何をしてるんだあれは?
「あっ、ニコ様! 今日の晩御飯の心配は大丈夫ですよ!」
「う……うん。うん?」
うん、意味が分からないな。
まあ、良いか。
先にこっちを……
「ちっ、女連れで冒険者登録とか……」
「えっ?」
「あちらの女性の連れは冒険者登録してますかと聞いたのですが?」
嘘つけ!
いま、あからさまに舌打ちしてニコとフィーナを交互に睨んだだろ!
ニコはフィーナの方を見てて気付いてないけど、俺はばっちり見てたからな!
このねーちゃんこえーよ!
「じゃあ、また明日……かな?」
「はいっ、有難うございました!」
お姉さんと別れて、フィーナの方に。
周りに人だかりができてる。
「うそだろ! マッチョールまでやられたぞ!」
「ほへー、その年齢で強化スキルでも身につけてるのか?」
「強化スキルは使えるけど、あんたらじゃ使うまでもないわ」
「ひゅー! 言うねー!」
フィーナは椅子に座っているが、対面の男は椅子ごと地面に転がっている。
うん、仲良く手を繋いでるところを見ると。
あれだな……
腕相撲だな。
「あっ、ニコ様が来たのでここまでで!」
「おうっ、また腕を磨いて挑ませてもらうわ!」
「リンドの街にようこそ! 楽しんでくれよ!」
フィーナが手を振って、こっちに来たが。
手に、なんか小さな紙の束をもってる。
「ニコ様、これ大冒険って宿の食堂の食事券!」
「えっ?」
「腕相撲で勝ったらくれるっていうから」
「そっか……」
ニコが冒険者集団の方に向かうと、頭を下げる。
「フィーナの相手をしてくれて、ありがとうございました」
「なんだ、坊主! あの子の良い人っていうより、保護者みたいだな!」
「まあ、そんなようなものです」
そんな受け応えをしているニコの横で、フィーナが頬を膨らませている。
「私、子供じゃないもん」
「まあまあ」
「ちなみに坊主も強いのか?」
「えっと……僕に強化スキルを使ってもらった状態で、両手で挑んで負けます」
「ははは、大変だなー!」
「頑張れよ!」
「困ったことが、あったら相談しろよ!」
周囲の冒険者達に背中を叩かれて、ギルドから見送られてったが。
良い人たちじゃないか。
「うん……」
ニコ?
「ニコ様?」
外に出たとたん、ニコがうつむいてしまった。
「すっごく緊張したけど……普通に会話してくれた」
地面に水滴の跡が、ポツリポツリと出来ている。
そっか……
結構、勇気出したんだな。
フィーナが世話になったから、怖くてもきちんとお礼を言いたいと思ったし、実際に言えたことにホッとしたのだろう。
加えて、冒険者の人達が好意的だったのも。
ふっ、頑張ったな。
「うん」
ちょっとずつ、進んでいけば良いさ。
せっかくジークフリードってやつが用意してくれた、新しい世界だ。
しっかりと、楽しもうぜ?
「うん!」
「ニコ様、なんで泣いてるんですか?」
「ふふ、嬉しくてさ!」
「嬉しいのに、泣くんですか?」
「うん、そうだよ?」
「痛いとき以外に、泣くことってあるんですね」
ここらへんは、ゴブリンっぽいかな?
ゴブリンも痛いときは泣くらしい。
そういえば、足の小指をぶつけたゴブリンが涙目になってたの見たな。
で、聞きそびれたけど冒組って?
「冒険者組合! 冒険者カードを見せると、ちょっとだけ割引きしてもらえるんだ」
なるほど、冒険者組合略して冒組。
うんうん、ちょっと考えたら分かったけど。
知ったかしてもしょうがないしな。
間違った知識を憶えるくらいなら、面倒でも気になったことは確認しておかないと。
認識の違いで、誤解が生まれても面倒くさいし。
「いらっしゃいっと、おや珍しい。久しぶりのごろつきじゃないお客さんかい。嬉しいね」
宿に入ると、恰幅のいいおかみさんが出迎えてくれた。
「こんな細っこいのに、冒険者かい? しかも、うちに泊まるってことはよそ者だね?」
「あー、はい。ロブスレーの街から来ました」
「おやおや、遠くから来たんだね。そちらの嬢ちゃんと2人パーティかい?」
「えっと、彼女はまだ登録してなくてですな……登録しようかな考えてるところです」
「そうかい? じゃあ、冒険者になるかもしれないってこと、彼女も割り引いてあげるよ」
「ありがとうございます!」
それから会計をして、部屋の鍵を受け取る。
取り合えず、1週間ほど。
大銀貨3枚。
うーん、どれくらいの価値があるか分からないけど。
さっと払えるくらいだから、きっと安いんだと思う。
「この皮袋、金貨とか入ってるんだけど?」
あー、それ?
会計の時に、フィーナに預けてた皮袋を受け取るように言ったけど。
中に入ってるのは、ロブスレーの領主がくれたお金。
金貨の価値が分からない。
親切なおじさんが、使ってくれって。
取り合えず、貰った経緯だけ説明。
「そんな、こんな大金くれる人いるわけなじゃないですか」
だって、くれたんだから仕方ないじゃないか。
ローブ姿の親切なおじさん。
リョウシュって名前だったっかな?
無理があるかな。
「父さん……」
ニコが皮袋を抱きしめて、うつむいてしまった。
「あれっ?」
少しして皮袋を閉じようとしたニコが、中からなにか取り出す。
紙?
紙幣?
「手紙?」
なんて書いてあるんだ?
「うん、あとでしっかりと読みたいから。部屋でね」
そして、部屋に移動。
部屋に入ったニコとフィーナが、少し固まっている。
中はベッドが2つと、テーブルとイス。
あとは収納があるだけだった。
「布団がぺちゃんこ」
「なんにもない……」
あー、部屋のランクが低すぎて固まってたのか。
「途中の村の宿の方が……」
「うん、マシだったね」
ゴブリンの集落で、良い生活を送らせすぎたようだ。
「はあ、そうなんですか?」
「中身知らずに持ってきたの? 呆れた」
戻ってきた受付嬢の質問に、気の抜けた返事をしたニコ。
それに対して、お姉ちゃんが呆れ顔だ。
「ロブスレーの街で冒険者してたんですよね? ランクは?」
「F級です」
「駆け出しなのに、ジークフリードさんから紹介状? まあ、いっか。手紙は本物だし」
「えっと……」
「ちょっと、待っててね。カードを再発行するから」
手紙の内容を知らなかったニコが、困った表情。
本人は冒険者やりたいとかって、一言も言ってないんだけどね。
このお姉ちゃんも、大概人の話聞かないな。
「これで、終わり。どうする? 昇進試験受けてみる?」
「いや、良いです」
「なんで? ジークフリードさんの紹介だから、けっこうやるんじゃないの?」
「いや、全然です」
何も考えが決まってないからか、受付嬢の攻勢をニコが必死で躱している。
まあ、行動の指針もまったく決まってないからな。
一度持ち帰って相談か。
「で、街所属じゃなくてフリーで登録してくれって書いてあるんだけど。それでいい?」
「あー。それも考えさせてください」
「そう? 泊まる当てとかあるの?」
「いえ……」
「そうなの? だったら、このギルドを出て左に真っすぐ行ったところに冒組の宿があるわよ」
「そうなのですか?」
おいっ、ニコ!
冒組の宿ってなんだ?
「名前は、大冒険ってところ」
「分かりやすい」
分かりやすいというか、なんだ?
あと、フィーナを放っておいていいのか?
「えっ?」
ニコが振り返ると、ギルドのロビーが盛り上がっている。
「やべーな、嬢ちゃん!」
「これで5人抜きだ!」
「あんたらが、弱すぎるのよ」
「かーっ、辛辣だな」
何をしてるんだあれは?
「あっ、ニコ様! 今日の晩御飯の心配は大丈夫ですよ!」
「う……うん。うん?」
うん、意味が分からないな。
まあ、良いか。
先にこっちを……
「ちっ、女連れで冒険者登録とか……」
「えっ?」
「あちらの女性の連れは冒険者登録してますかと聞いたのですが?」
嘘つけ!
いま、あからさまに舌打ちしてニコとフィーナを交互に睨んだだろ!
ニコはフィーナの方を見てて気付いてないけど、俺はばっちり見てたからな!
このねーちゃんこえーよ!
「じゃあ、また明日……かな?」
「はいっ、有難うございました!」
お姉さんと別れて、フィーナの方に。
周りに人だかりができてる。
「うそだろ! マッチョールまでやられたぞ!」
「ほへー、その年齢で強化スキルでも身につけてるのか?」
「強化スキルは使えるけど、あんたらじゃ使うまでもないわ」
「ひゅー! 言うねー!」
フィーナは椅子に座っているが、対面の男は椅子ごと地面に転がっている。
うん、仲良く手を繋いでるところを見ると。
あれだな……
腕相撲だな。
「あっ、ニコ様が来たのでここまでで!」
「おうっ、また腕を磨いて挑ませてもらうわ!」
「リンドの街にようこそ! 楽しんでくれよ!」
フィーナが手を振って、こっちに来たが。
手に、なんか小さな紙の束をもってる。
「ニコ様、これ大冒険って宿の食堂の食事券!」
「えっ?」
「腕相撲で勝ったらくれるっていうから」
「そっか……」
ニコが冒険者集団の方に向かうと、頭を下げる。
「フィーナの相手をしてくれて、ありがとうございました」
「なんだ、坊主! あの子の良い人っていうより、保護者みたいだな!」
「まあ、そんなようなものです」
そんな受け応えをしているニコの横で、フィーナが頬を膨らませている。
「私、子供じゃないもん」
「まあまあ」
「ちなみに坊主も強いのか?」
「えっと……僕に強化スキルを使ってもらった状態で、両手で挑んで負けます」
「ははは、大変だなー!」
「頑張れよ!」
「困ったことが、あったら相談しろよ!」
周囲の冒険者達に背中を叩かれて、ギルドから見送られてったが。
良い人たちじゃないか。
「うん……」
ニコ?
「ニコ様?」
外に出たとたん、ニコがうつむいてしまった。
「すっごく緊張したけど……普通に会話してくれた」
地面に水滴の跡が、ポツリポツリと出来ている。
そっか……
結構、勇気出したんだな。
フィーナが世話になったから、怖くてもきちんとお礼を言いたいと思ったし、実際に言えたことにホッとしたのだろう。
加えて、冒険者の人達が好意的だったのも。
ふっ、頑張ったな。
「うん」
ちょっとずつ、進んでいけば良いさ。
せっかくジークフリードってやつが用意してくれた、新しい世界だ。
しっかりと、楽しもうぜ?
「うん!」
「ニコ様、なんで泣いてるんですか?」
「ふふ、嬉しくてさ!」
「嬉しいのに、泣くんですか?」
「うん、そうだよ?」
「痛いとき以外に、泣くことってあるんですね」
ここらへんは、ゴブリンっぽいかな?
ゴブリンも痛いときは泣くらしい。
そういえば、足の小指をぶつけたゴブリンが涙目になってたの見たな。
で、聞きそびれたけど冒組って?
「冒険者組合! 冒険者カードを見せると、ちょっとだけ割引きしてもらえるんだ」
なるほど、冒険者組合略して冒組。
うんうん、ちょっと考えたら分かったけど。
知ったかしてもしょうがないしな。
間違った知識を憶えるくらいなら、面倒でも気になったことは確認しておかないと。
認識の違いで、誤解が生まれても面倒くさいし。
「いらっしゃいっと、おや珍しい。久しぶりのごろつきじゃないお客さんかい。嬉しいね」
宿に入ると、恰幅のいいおかみさんが出迎えてくれた。
「こんな細っこいのに、冒険者かい? しかも、うちに泊まるってことはよそ者だね?」
「あー、はい。ロブスレーの街から来ました」
「おやおや、遠くから来たんだね。そちらの嬢ちゃんと2人パーティかい?」
「えっと、彼女はまだ登録してなくてですな……登録しようかな考えてるところです」
「そうかい? じゃあ、冒険者になるかもしれないってこと、彼女も割り引いてあげるよ」
「ありがとうございます!」
それから会計をして、部屋の鍵を受け取る。
取り合えず、1週間ほど。
大銀貨3枚。
うーん、どれくらいの価値があるか分からないけど。
さっと払えるくらいだから、きっと安いんだと思う。
「この皮袋、金貨とか入ってるんだけど?」
あー、それ?
会計の時に、フィーナに預けてた皮袋を受け取るように言ったけど。
中に入ってるのは、ロブスレーの領主がくれたお金。
金貨の価値が分からない。
親切なおじさんが、使ってくれって。
取り合えず、貰った経緯だけ説明。
「そんな、こんな大金くれる人いるわけなじゃないですか」
だって、くれたんだから仕方ないじゃないか。
ローブ姿の親切なおじさん。
リョウシュって名前だったっかな?
無理があるかな。
「父さん……」
ニコが皮袋を抱きしめて、うつむいてしまった。
「あれっ?」
少しして皮袋を閉じようとしたニコが、中からなにか取り出す。
紙?
紙幣?
「手紙?」
なんて書いてあるんだ?
「うん、あとでしっかりと読みたいから。部屋でね」
そして、部屋に移動。
部屋に入ったニコとフィーナが、少し固まっている。
中はベッドが2つと、テーブルとイス。
あとは収納があるだけだった。
「布団がぺちゃんこ」
「なんにもない……」
あー、部屋のランクが低すぎて固まってたのか。
「途中の村の宿の方が……」
「うん、マシだったね」
ゴブリンの集落で、良い生活を送らせすぎたようだ。
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