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おしまいの後
マイペット ◎
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昼前に会社の地下にあるカフェでミーティングをしていた。
俺の隣には桐生君がいて、前には取引先の女、まあまあ美人だけど、尖った爪先とラインストーン山盛りのネイルが家庭的では無い感じがして俺的にはマイナスポイントだった。
今度一緒にご飯でも、と明らかに仕事以上に近付きたいって雰囲気だしてるけど、毎回桐生君に爽やかな笑顔で当たり障りなく断られてる。
いい加減諦めたらいいのに、今日もまた商談が終わった後に「夏休みは会社でイベントあるんですかー?」なんて雑談してきて、桐生君は素直に八月の土日に全社員でBBOやったりしますよって答えちゃってるよ。
目キラキラにさせた女は、私ぃ実わぁ夏休み何か企画出せって言われててぇ……なんて話合わせてきてるじゃん、どうすんだよ桐生君って睨めば、桐生君は全く笑顔を崩さずに、だったらうちの総務にイベント行事の資料見せてもらえないか相談してみますよって返した、ウケる袴田君に押し付けるパターンかよ。
じゃあまた今度時間がある時にって上手い事流して、そいつは残念そうに頭下げて帰ってった、ああ、あと会話文の語尾伸ばすのも一緒にいたらイライラするから俺は無理だな。
おーおー名残惜しそうな目してこっち見てるじゃん昼でもご一緒したかったんじゃねえの? しないけどさ。
エレベーターが閉まるまで一緒にいて、扉が閉まって頭上げた桐生君の肩に頭突きだな。
「イテ、何だよ言いたい事あるなら口で言え大和」
「そっちこそ、その気がないなら仕事以外の相談乗るとか気のある素振り見せんなバカ。何? 取引先だからって構ってんの? だったら一回ヤッとけば、もっと仕事もらえるんじゃない。それともああいうがマジでタイプ? ああ、だからゆっくり落としにかかってんの」
毎回毎回面倒臭いんだよ、とここぞばかりに不満漏らしたのに桐生君は俺のおでこ叩いて呑気に首傾げてる。
「茶髪にカラコンにバサバサのツケまつ毛に作ったキャラクター…………素顔が分からな過ぎて魅力的には思えないかな、もちろん自分を磨くのはいい事だけど」
「そんなん目つぶってヤッとけよ」
「体で貰った仕事なんて何の実績にもなんないだろ、どうやって評価するんだよ。おい大和絶対やるなよ。それより飯食おう飯」
「ヤッたら必ず仕事が貰える前提ってマジで桐生君どんだけテクニシャンなの? ねえねえ」
「まだ昼だぞお前」
またカフェに戻る背中についていって、オシャレになった本日のランチを頼んで二人でさっきの席に戻ろうとしたら、先に歩く桐生君が一瞬足を止めた。
「危ねえな、急に立ち止まん」
「ん、悪い…………」
桐生君は直ぐ歩き出して、何かと思ったら俺達が座っていた真後ろの席に見慣れた背中が座っていたんだ。
普通なら「尾台ちゃーん」って言う所だけど、その隣に尾台ちゃんの頭一つ高い黒髪の癖毛が座っていたので声はかけないでおいた、むしろ。
「俺の上司さースーパーガラスハートだった気がするから、席移ろっか?」
「誰だよソレ、僕? いいよこんな狭い会社で逃げ回っててもしょうがないだろ。飯食って直ぐ出る」
「そう」
尾台ちゃん達はこっちに気付いてる様子はなくて、まあ何とも眩しい横顔が一瞬見えてしまったよ、艶々の黒髪に潤んだ黒い純粋な瞳に優しいそうな目元、はい! 桐生君のドストライクな人がここにいますよって感じだな。
「有沢」
「何」
「午後一に辰巳さんにさっきの件、報告しないといけないから、ちょっとだけ書類に目通しとく」
「ん? ああわかった」
言いながら、桐生君は資料読み出しちゃって、そんな他の事してないと気が散っちゃう位なら席変わればいいだろうが、意地っ張りめ!
しかもいつもなら行儀よく綺麗に箸で一口大に割ってから食ってるのに、今日は半分に割ってそのままメンチカツ食ってて、はいはい一秒でも早くここから立ち去りたいのね、良かった俺が頼んだの冷やし中華で直ぐ食える。
じゃあ俺はゲームでもしてよっかなって携帯出したら、嫌でも後ろから声が聞こえてきちゃうんだなぁ。
「ねえねえ尾台さん」
「はい何でしょう袴田君」
「俺欲しいも」
「ダメですよ」
「あ? 俺何も言ってないんですが」
「ダメなものはダメですよ。だって袴田君って不言実行じゃないですか、いつも私に相談しないでお買い物するでしょ、それなのに私に相談するんだから私が嫌って言うモノが欲しいに決まってます!」
「……」
「あ! 舌打ちしたぁ! そういうのいけないんだぁ! もう袴田君となんて口きかないんだからね!」
「ごめんなさい、大好きですよこれからも俺とたくさんお話しして下さい。あの、尾台さんが賢くなってて可愛いな、生意気だなって思っただけです。そっか随分俺を研究してるんですね愛を感じます」
「別に感じなくていいですけど」
「尾台さん大好き」
「会社で止めて下さい」
「ねえ尾台さん大好き」
「止めて下さいって言ってるじゃないですか! こっちこないで、触らないで!」
「愛してるよ絵夢」
「う!!!! もう!!! な、何が欲しいの?」
「ふ、ふ、ふ」
「眼鏡キラっじゃないんだよ早く言えよ」
「バイク」
「はいダメ」
「何でですか、俺高校生の時から乗ってたんですよ、当時は400CCでしたけど。大学に入って大型も取って遠距離の時はバイクであなたに会いに行ってたし、仕事で忙しくなって手放しましたけど、またバイクに乗ってどこか行きたいなって思ってます」
「ダメです危ないです、バイクってヤンキーが乗る乗り物じゃないですか」
「いつの時代? 尾台さん時は令和だよ? うちの周りでバイク吹かして暴走してる若者見た事ありますか?」
「それは……ないけど」
「でしょう? ほら見て俺が欲しいバイク……これなんですけど、YAMAHA V-MAX、イケメンでしょ?」
「ん? おお、格好い……ってこれ230万もするじゃないですか!」
「1198ccあって大きいですからね、でも造形美が最高でしょう? どこでアクセル回しても怒涛の加速力で至高の乗り心地なんですよ。尾台さんも後ろ乗りたいよね?」
「…………乗りたいって言うか私も運転してみたいですね! こう! ライダースーツみたいの着て」
「ライダースーツプレイは最高ですけど、これ300キロあるんで尾台さんじゃ起こせないと思いますよ」
「え! そんな重たくて危ないモノ袴田君にだって乗ってもらいたくないですよ!」
「危険なんて車乗ってても危険ですよ、歩いてたって危険です。だから、かもしれない運転するんでしょう」
「かもしれない?」
「後ろに乗ってる尾台さんがエロイかもしれない。もしかしたら次の信号ですげーディープキスきてくるかもしれない。ムラムラしてきたら俺の股触ってくるかもしれない」
「どんなかもしれない!?? 注意散漫すぎでしょ! ちゃんと前見て真剣に運転しろよ! しかもそれかもしれなくない、ただの尾台さんだから!」
「そんな俺を大好きかもしれない尾台さんの為にシーシーバーとゲルザブつけるから」
「何それ」
「背もたれと座布団みたいなのです」
「あ、もう買う方向で話進めてるしぃ! ダメだからね!?」
「何でですか? 危険だ、というのは明確な理由にはなりませんよ」
「でもでも、こういうバイクって絶対うるさいからダメ、お話しどころじゃないでしょう」
「そんなのヘルメットにインカム着ければいいじゃないですか、どこでもクリアな声で言葉攻めできますよ」
「え? 言葉……え? 森でも?」
「攻めます」
「海でも?」
「攻めます」
「湖畔でも?」
「攻めます」
「家でも」
「攻めます」
「買います」
「やった」
「ヘルメットを買います」
「え、メットだけ買うんですか、バイク乗ってないのにメットだけするの」
「だってどこでも攻めてくれるって言ったじゃないですか、いっぱい被る」
「いや、バイク乗ってないのにヘルメット被って歩いてるカップルおかしいでしょう。メットしなくても俺結構尾台さんのいいなりレベルでどこでも攻めてるし」
「そんなに言うなら、じゃあ私も欲しい物買ってい?」
「尾台さんの欲しい物は何でも買ってあげてるでしょう」
「猫様」
「あ?」
「猫様ほしいです。実家にはわんちゃんいましたけど、最近わんちゃんと猫様飼ってる動画好きで見てるんです。で、猫様いいなあって」
「ダメですね」
「なんでよ」
「その猫「様」という呼び方がもう気に入らないです。どうして俺より位が上なんですか。俺は君なのに」
「じゃあ猫ちゃんでいいからさ、そんなとこに突っかかってこなくていいですから。番で猫ちゃん可愛いよ、絶対可愛い」
「可愛くないでしょう」
「可愛いよ!」
「可愛くないです」
「可愛いったら!」
「絶対可愛くないです動物って飼い主に似るって言うじゃないですか。仮に、尾台さんに似てる子なら、すっごくすっごく可愛いと思いますよ。でも俺に似てる猫なんて絶対可愛くないでしょ、ただただムカつきまます」
「同族嫌悪って奴ですか」
と、そこまでで俺達は飯を平らげて席を立った。
すげーイチャイチャしてる訳でもないけど、本当に一緒に暮らしてる感がぐっさりくるな、なんて思ってそうだ桐生君は?? って隣歩いて顔覗いたら、意外や考え事してる顔だった。
おおお、あの会話を仕事で遮断できるとは、さすが課長!! って思ったけど、桐生君はボソッと言った。
「黒猫……」
タバコのケースで唇叩いてて、そ、それはちょっと待ってくれよ!! やっぱり聞いてたな! これ桐生君猫飼おうかなみたいになってね?!
背中叩いて、戻って来い! 正気に戻って来い!! 桐生君!
「桐生君! 猫に尾台なんて名前つけちゃダメだからね?!」
「ん?」
だって絶対子猫から飼って、
ここがお前の家だよ尾台、こらこら噛んじゃダメだろー尾台、ほら一緒に寝ようか尾台、ここ気持ちいいの尾台、帰ってきたらたくさん遊んでやるからな尾台いい子にしてるんだぞ、尾台大好きだよ。
なんて…………
なんてやってる桐生君脳内変換余裕すぎて、思わず抱き付いちゃうから!!!
「く、苦しい!! 止めて本当に! その名前だけは止めて?」
「尾台……ってそんなの付けるわけないだろ」
「ん? そ、そっか」
バカにするな、とでも言うように桐生君は俺の手を払うから、心配したより平気なのかなって思ったら、先を歩く背中から何かが聞こえた。
「名前だから絵夢だろ」
桐生君んんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんん!!!!!!!!!!!!!!!!!!
俺の隣には桐生君がいて、前には取引先の女、まあまあ美人だけど、尖った爪先とラインストーン山盛りのネイルが家庭的では無い感じがして俺的にはマイナスポイントだった。
今度一緒にご飯でも、と明らかに仕事以上に近付きたいって雰囲気だしてるけど、毎回桐生君に爽やかな笑顔で当たり障りなく断られてる。
いい加減諦めたらいいのに、今日もまた商談が終わった後に「夏休みは会社でイベントあるんですかー?」なんて雑談してきて、桐生君は素直に八月の土日に全社員でBBOやったりしますよって答えちゃってるよ。
目キラキラにさせた女は、私ぃ実わぁ夏休み何か企画出せって言われててぇ……なんて話合わせてきてるじゃん、どうすんだよ桐生君って睨めば、桐生君は全く笑顔を崩さずに、だったらうちの総務にイベント行事の資料見せてもらえないか相談してみますよって返した、ウケる袴田君に押し付けるパターンかよ。
じゃあまた今度時間がある時にって上手い事流して、そいつは残念そうに頭下げて帰ってった、ああ、あと会話文の語尾伸ばすのも一緒にいたらイライラするから俺は無理だな。
おーおー名残惜しそうな目してこっち見てるじゃん昼でもご一緒したかったんじゃねえの? しないけどさ。
エレベーターが閉まるまで一緒にいて、扉が閉まって頭上げた桐生君の肩に頭突きだな。
「イテ、何だよ言いたい事あるなら口で言え大和」
「そっちこそ、その気がないなら仕事以外の相談乗るとか気のある素振り見せんなバカ。何? 取引先だからって構ってんの? だったら一回ヤッとけば、もっと仕事もらえるんじゃない。それともああいうがマジでタイプ? ああ、だからゆっくり落としにかかってんの」
毎回毎回面倒臭いんだよ、とここぞばかりに不満漏らしたのに桐生君は俺のおでこ叩いて呑気に首傾げてる。
「茶髪にカラコンにバサバサのツケまつ毛に作ったキャラクター…………素顔が分からな過ぎて魅力的には思えないかな、もちろん自分を磨くのはいい事だけど」
「そんなん目つぶってヤッとけよ」
「体で貰った仕事なんて何の実績にもなんないだろ、どうやって評価するんだよ。おい大和絶対やるなよ。それより飯食おう飯」
「ヤッたら必ず仕事が貰える前提ってマジで桐生君どんだけテクニシャンなの? ねえねえ」
「まだ昼だぞお前」
またカフェに戻る背中についていって、オシャレになった本日のランチを頼んで二人でさっきの席に戻ろうとしたら、先に歩く桐生君が一瞬足を止めた。
「危ねえな、急に立ち止まん」
「ん、悪い…………」
桐生君は直ぐ歩き出して、何かと思ったら俺達が座っていた真後ろの席に見慣れた背中が座っていたんだ。
普通なら「尾台ちゃーん」って言う所だけど、その隣に尾台ちゃんの頭一つ高い黒髪の癖毛が座っていたので声はかけないでおいた、むしろ。
「俺の上司さースーパーガラスハートだった気がするから、席移ろっか?」
「誰だよソレ、僕? いいよこんな狭い会社で逃げ回っててもしょうがないだろ。飯食って直ぐ出る」
「そう」
尾台ちゃん達はこっちに気付いてる様子はなくて、まあ何とも眩しい横顔が一瞬見えてしまったよ、艶々の黒髪に潤んだ黒い純粋な瞳に優しいそうな目元、はい! 桐生君のドストライクな人がここにいますよって感じだな。
「有沢」
「何」
「午後一に辰巳さんにさっきの件、報告しないといけないから、ちょっとだけ書類に目通しとく」
「ん? ああわかった」
言いながら、桐生君は資料読み出しちゃって、そんな他の事してないと気が散っちゃう位なら席変わればいいだろうが、意地っ張りめ!
しかもいつもなら行儀よく綺麗に箸で一口大に割ってから食ってるのに、今日は半分に割ってそのままメンチカツ食ってて、はいはい一秒でも早くここから立ち去りたいのね、良かった俺が頼んだの冷やし中華で直ぐ食える。
じゃあ俺はゲームでもしてよっかなって携帯出したら、嫌でも後ろから声が聞こえてきちゃうんだなぁ。
「ねえねえ尾台さん」
「はい何でしょう袴田君」
「俺欲しいも」
「ダメですよ」
「あ? 俺何も言ってないんですが」
「ダメなものはダメですよ。だって袴田君って不言実行じゃないですか、いつも私に相談しないでお買い物するでしょ、それなのに私に相談するんだから私が嫌って言うモノが欲しいに決まってます!」
「……」
「あ! 舌打ちしたぁ! そういうのいけないんだぁ! もう袴田君となんて口きかないんだからね!」
「ごめんなさい、大好きですよこれからも俺とたくさんお話しして下さい。あの、尾台さんが賢くなってて可愛いな、生意気だなって思っただけです。そっか随分俺を研究してるんですね愛を感じます」
「別に感じなくていいですけど」
「尾台さん大好き」
「会社で止めて下さい」
「ねえ尾台さん大好き」
「止めて下さいって言ってるじゃないですか! こっちこないで、触らないで!」
「愛してるよ絵夢」
「う!!!! もう!!! な、何が欲しいの?」
「ふ、ふ、ふ」
「眼鏡キラっじゃないんだよ早く言えよ」
「バイク」
「はいダメ」
「何でですか、俺高校生の時から乗ってたんですよ、当時は400CCでしたけど。大学に入って大型も取って遠距離の時はバイクであなたに会いに行ってたし、仕事で忙しくなって手放しましたけど、またバイクに乗ってどこか行きたいなって思ってます」
「ダメです危ないです、バイクってヤンキーが乗る乗り物じゃないですか」
「いつの時代? 尾台さん時は令和だよ? うちの周りでバイク吹かして暴走してる若者見た事ありますか?」
「それは……ないけど」
「でしょう? ほら見て俺が欲しいバイク……これなんですけど、YAMAHA V-MAX、イケメンでしょ?」
「ん? おお、格好い……ってこれ230万もするじゃないですか!」
「1198ccあって大きいですからね、でも造形美が最高でしょう? どこでアクセル回しても怒涛の加速力で至高の乗り心地なんですよ。尾台さんも後ろ乗りたいよね?」
「…………乗りたいって言うか私も運転してみたいですね! こう! ライダースーツみたいの着て」
「ライダースーツプレイは最高ですけど、これ300キロあるんで尾台さんじゃ起こせないと思いますよ」
「え! そんな重たくて危ないモノ袴田君にだって乗ってもらいたくないですよ!」
「危険なんて車乗ってても危険ですよ、歩いてたって危険です。だから、かもしれない運転するんでしょう」
「かもしれない?」
「後ろに乗ってる尾台さんがエロイかもしれない。もしかしたら次の信号ですげーディープキスきてくるかもしれない。ムラムラしてきたら俺の股触ってくるかもしれない」
「どんなかもしれない!?? 注意散漫すぎでしょ! ちゃんと前見て真剣に運転しろよ! しかもそれかもしれなくない、ただの尾台さんだから!」
「そんな俺を大好きかもしれない尾台さんの為にシーシーバーとゲルザブつけるから」
「何それ」
「背もたれと座布団みたいなのです」
「あ、もう買う方向で話進めてるしぃ! ダメだからね!?」
「何でですか? 危険だ、というのは明確な理由にはなりませんよ」
「でもでも、こういうバイクって絶対うるさいからダメ、お話しどころじゃないでしょう」
「そんなのヘルメットにインカム着ければいいじゃないですか、どこでもクリアな声で言葉攻めできますよ」
「え? 言葉……え? 森でも?」
「攻めます」
「海でも?」
「攻めます」
「湖畔でも?」
「攻めます」
「家でも」
「攻めます」
「買います」
「やった」
「ヘルメットを買います」
「え、メットだけ買うんですか、バイク乗ってないのにメットだけするの」
「だってどこでも攻めてくれるって言ったじゃないですか、いっぱい被る」
「いや、バイク乗ってないのにヘルメット被って歩いてるカップルおかしいでしょう。メットしなくても俺結構尾台さんのいいなりレベルでどこでも攻めてるし」
「そんなに言うなら、じゃあ私も欲しい物買ってい?」
「尾台さんの欲しい物は何でも買ってあげてるでしょう」
「猫様」
「あ?」
「猫様ほしいです。実家にはわんちゃんいましたけど、最近わんちゃんと猫様飼ってる動画好きで見てるんです。で、猫様いいなあって」
「ダメですね」
「なんでよ」
「その猫「様」という呼び方がもう気に入らないです。どうして俺より位が上なんですか。俺は君なのに」
「じゃあ猫ちゃんでいいからさ、そんなとこに突っかかってこなくていいですから。番で猫ちゃん可愛いよ、絶対可愛い」
「可愛くないでしょう」
「可愛いよ!」
「可愛くないです」
「可愛いったら!」
「絶対可愛くないです動物って飼い主に似るって言うじゃないですか。仮に、尾台さんに似てる子なら、すっごくすっごく可愛いと思いますよ。でも俺に似てる猫なんて絶対可愛くないでしょ、ただただムカつきまます」
「同族嫌悪って奴ですか」
と、そこまでで俺達は飯を平らげて席を立った。
すげーイチャイチャしてる訳でもないけど、本当に一緒に暮らしてる感がぐっさりくるな、なんて思ってそうだ桐生君は?? って隣歩いて顔覗いたら、意外や考え事してる顔だった。
おおお、あの会話を仕事で遮断できるとは、さすが課長!! って思ったけど、桐生君はボソッと言った。
「黒猫……」
タバコのケースで唇叩いてて、そ、それはちょっと待ってくれよ!! やっぱり聞いてたな! これ桐生君猫飼おうかなみたいになってね?!
背中叩いて、戻って来い! 正気に戻って来い!! 桐生君!
「桐生君! 猫に尾台なんて名前つけちゃダメだからね?!」
「ん?」
だって絶対子猫から飼って、
ここがお前の家だよ尾台、こらこら噛んじゃダメだろー尾台、ほら一緒に寝ようか尾台、ここ気持ちいいの尾台、帰ってきたらたくさん遊んでやるからな尾台いい子にしてるんだぞ、尾台大好きだよ。
なんて…………
なんてやってる桐生君脳内変換余裕すぎて、思わず抱き付いちゃうから!!!
「く、苦しい!! 止めて本当に! その名前だけは止めて?」
「尾台……ってそんなの付けるわけないだろ」
「ん? そ、そっか」
バカにするな、とでも言うように桐生君は俺の手を払うから、心配したより平気なのかなって思ったら、先を歩く背中から何かが聞こえた。
「名前だから絵夢だろ」
桐生君んんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんん!!!!!!!!!!!!!!!!!!
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