72 / 154
連載
カラー
しおりを挟む
モノクロだった世界が色を取り戻した。
ピントを直してもぼやけていたままだった視界がようやく滲まなくなった。
生きているなら当たり前の鼓動をこんなに尊く感じるなんて。
廊下に寄りかかって尾台さんを後ろから抱き締めて少しの間、一人で再会の時を味わった。
頭に鼻を埋めればいい香りがして、腕に力を籠めれば息を少し乱して体が反応する、細い体脆い骨、危うい心。
何もかもが愛しくて溜め息しか出なかった。
独占欲というものを生まれて初めて感じた、この人を閉じ込めたい、自分のものにしたい、誰にも渡したくない、視界に俺しか映したくない。
そんな黒い執着心、俺にもあったんだ。
「尾台さん大好き……」
彼女を本名で呼べる喜び、にゃんにゃんさんじゃない、この人は尾台 絵夢さん……。
「んんむぅ……」
力加減が分からなくて強く抱き締めすぎたのか、尾台さんは眉間に皺寄せて体を捻り出した。
「好きです、大好きです」
まるで暗示のようだけど、耳元で心情を吐露したら彼女はクスリと笑ったんだ。
でも薄く開いた口からは…………
「き……りゅ……」
とそこまで聞いて堪えられなくなって、小さな口に指を入れた。
浅く、吐いてしまわない程度に舌を弄ぶその固有名詞を認識したくなかった。
いや、焦っている時点でお察しな訳だけど。
尾台さんは淡い力で指先をちゅっと吸ってきて時折漏らす声に体が疼いた。
濡れた柔らかい舌にぞくぞくして指を抜いたら当然だけど唾液で指先が光る、親指で擦り合わせたら糸を引いた。
その時、携帯が鳴って画面を見たら桐生さんからだった。
ああ、ヒーローってもんはどこまでもヒロインを助けるようにできたてんだな脇役の癖に良からぬ感情を抱いた俺を止めに来たんだ。
「はい」
【お疲れ様、どう袴田君、家着いた?】
「はい、今寝かせる所です。アパートの場所が少し入り組んでいて」
肩に携帯を挟んで尾台さんの体を引き上げたら、脇を掴んだ手に唇が触れて彼女はまた指に吸い付いてきた。
【袴田君?】
「ああそれで、かなり手前で降ろされてしまって家に着くまで時間がかかってしまいました。尾台さんは相変わらず寝ていますよ」
【そっか】
嘘はついてない、何の夢を見ているのか知らないが俺の指を噛んで自分から口に入れて、今度舌を使って指を舐めてくる。
指の腹をざらざらした舌で舐め回されてじれったい舌使いが快感で背筋に熱が走った。
「……ッこのまま彼女を寝かせてそっちに戻ります。俺が行っても大丈夫ですか」
【何の心配をしてんだよ、大歓迎に決まってるだろ。お礼は直接言わせてくれ】
「では直に行きます」
電話を切って、優しい口調の癖にどこもまでも計算高い桐生さんにため息が出た。
きっとこれからも俺が送る度に言われるんだろうな、お礼は直接言わせてくれって、ようは早くそこから出て来いって訳だ。
やらしく指を吸い続ける唇から指を離した。
くちゅっと卑猥な音がして尾台さんは唇を舐めて物欲しそうにしてる、こんなのどう考えたってキスしたいしか頭に浮かばないんだけど。
すっげーディープキスしたい、呼吸できなくなるやつ、だって尾台さんの唇を指でなぞったら唇もじもじさせてるし。
いや、それどころじゃないな早く戻らないとヤバイぞ。
キスなんてしたら止められる自信がない、にゃんにゃんさんと舌なんか絡ませたら…………俺は……もう。
ネイビーのスーツが規律的に動いて、彼女はまた眠りについたようだった。
寝息が可愛いすぎる、ぴくぴくする瞼にキスしたい体柔らかい、いい匂いするすっげー抱きたい、めちゃくちゃにしたい俺のものにしたいトロトロにしたい俺の名前を呼ばせたい、一生愛したい、愛されたい!!
こんな怒涛の欲の濁流生まれて初めてだ、でもその何一つ実現できないなんて俺は何て無力な男なんだろう。
尾台さんを抱いてベッドに運んで、額にキスするのが精一杯だった。
それでもちょっと吸ってしまったりする。
そうか、何一つ叶わないのであれば、この時間だけでも死守しないとと思った。
この時間を大切にしたい。
飲み会に戻って、ありがとう彼女はどうだった? の質問に関して全く顔色変えずに一度も起きませんでしたよと答えた。
まるで彼女に興味がないように装った、家の中どうだったと聞かれても、さあ? 彼女を置いて直ぐ出たのでわかりません、と感心がない様子で眼鏡を直した。
皆は草食系ってマジでそんなんなんだって驚いていた、俺なら無理だわ、やっぱ袴田君が適任だったねって頷いていた、仕事ですからっと返して煙草吹かした。
そして翌日尾台さんはマスクをして出勤してきた。
え、何でマスク? 風邪をひくような気温ではなかったし布団も掛けたけど…………ってそうじゃない、メイク落とさずに寝たから、朝顔がカピカピで痛くてメイクどころじゃなかったんだって……。
へえそうか、これからは気を付けないと。
尾台さんは飲み会慣れしていないのと、あまりお酒が強くないせいでいつの間にか深酒して寝てしまう日が多々あった。
で、どうするってなって変な人が送るなら袴田君! となる訳だ。
俺は終始、総務の仮面の表情を崩さずに分かりましたと機械のように頷いて、内心ではにゃんにゃんさんにゃんにゃんさんにゃんにゃんさんにゃんにゃんさんキタって連呼してた。
そして送迎を重ねる度、その尾台さん寝かし付けスキルはアップしていってまず美容液の入っているメイク落としシートで尾台さんのメイクを落とす事を覚えた、そして洗面器で歯ブラシさせたりスキンケアの順番も覚えた。
そして、シャワー……これは寝かせて帰ろうかなと思ったら、突然起き上がって「おふゅりょ」って風呂場に行ってしまう時がある。あっついあっついってぽいぽい服を脱ぐし。
家に着いて玄関で下ろした瞬間這ってお風呂に行ってしまう日もある。
でも何かあったら大変だから、俺はじっと風呂の外で終わるのを待つわけだが大抵中途半端で出てくるし、下着付けたままシャワー浴びてる事もあって、男女の関係になる前に彼女の裸を幾度と見せつけられて悟りが開けそうだった。
その位無我の窮地で入浴の介助をした。
まあ実際その時になると性的な思考よりも早く寝かせて戻らなくてはって気持が先行していた。
尾台さんの綺麗な体に綺麗な心を汚さず明日を迎えさせる事、いつしかそれが俺の使命になっていた。
風呂場でもちろん俺達は裸同士で彼女は無防備に寄り掛かってくる、それでも無心で体を洗ってあげる。
たまに抱き付いてくるし、擦り寄ってくるし、それでも何にもしないで風呂を上がり頭乾かす俺はもう何かの称号を与えられていいと思うぞ。
尾台さん綺麗な髪を維持するため、トリートメントは当たり前だ。
たまに洗って最中にやらやらって逃げるし、かと思えばうとうとしながらアニソン歌ってえへへってする尾台さん可愛すぎてすっげーキスしまくって(頬とか)帰る。
そう言う日は一度会社に戻りますが、直に合流しますと言っていた。
この人本当は起きてんじゃないのかって思ったけれど、次の日全くこちらを見る素振りもなければ、目があっても社交辞令的な挨拶しかなくて、飲み会の時仲良く話していた男性社員とも全く口を利かない、本気に記憶にないんだ…………そんな彼女の様子から俺が尾台さんに何かしているとか疑う人はいなかった。
でも何か少しでも彼女の五感に残ればいいなと思って、尾台さんが良い匂いだと言っていたアロマオイルを常につけていた。
そんな日々が驚く事に二年続いた、総務部もすっかり会社に馴染んで平和な時間ごしていた。
そしてこの二年間でたくさん尾台さんを知る事ができた。
まず、尾台さんは凄くエッチだった。
全然そんなの興味ありません! みたいな顔しながらエッチな漫画をいっぱい携帯に隠し持っていた。
勝手に見た訳じゃない、彼女が見せてくれたのだ。
枕元に携帯を置いて部屋を出ようとしたらむにゃむにゃ画面弄って、でへへって笑って彼女はまた眠った。
画面には公園の木陰で声を殺しながら情交に耽る男女が映し出されていた(目隠し拘束人格を否定するような言葉攻め多々中出し快楽堕ち)。
他にも色々あるがまた今度話す。
毎回ラインすんのめんどー臭いし、次の日えったん謝ってくるのかわいそーだからどーにかなりませんかねぇ先輩。
と久瀬さんに相談され、まあそうだよなっと思いながら、俺は飲み会の後いつものように尾台さんお風呂に入れにパジャマを着せていた。
そしたら桐生さんから早くこっちに来いメールが入った。
何の策もないまま彼女の頭を撫でて頬に唇を寄せた。
「大好きです尾台さん、俺行きますね。いっぱい寝て下さいポストに鍵入れておきますからね」
「んんん……が、ぎ……」
むくっと起き上がった尾台さんは、あっちいちゅも……取りに行くのやなんらぁ……しゅぺあとブツブツ言いながらクローゼットを開けて風呂敷を取り出した。
床に置いて中を漁ってそのまま倒れて寝た。
な、なんだ……?
側に寄ったら手には鍵が握られていた。
これって合鍵貰っていいって意味か?
合法的に彼女の鍵を手に入れて、それから俺は時間を見付けてはキーケースを眺めた。
久々にじーちゃんと夕飯を共にした、新宿の高層階のレストラン、こういう所に俺も彼女と行きたいなとワインを飲みながら夜景眺めていた、そうしたら。
「どうだ雄太、そろそろ本社に戻ってくるか」
それは、唐突に。
ピントを直してもぼやけていたままだった視界がようやく滲まなくなった。
生きているなら当たり前の鼓動をこんなに尊く感じるなんて。
廊下に寄りかかって尾台さんを後ろから抱き締めて少しの間、一人で再会の時を味わった。
頭に鼻を埋めればいい香りがして、腕に力を籠めれば息を少し乱して体が反応する、細い体脆い骨、危うい心。
何もかもが愛しくて溜め息しか出なかった。
独占欲というものを生まれて初めて感じた、この人を閉じ込めたい、自分のものにしたい、誰にも渡したくない、視界に俺しか映したくない。
そんな黒い執着心、俺にもあったんだ。
「尾台さん大好き……」
彼女を本名で呼べる喜び、にゃんにゃんさんじゃない、この人は尾台 絵夢さん……。
「んんむぅ……」
力加減が分からなくて強く抱き締めすぎたのか、尾台さんは眉間に皺寄せて体を捻り出した。
「好きです、大好きです」
まるで暗示のようだけど、耳元で心情を吐露したら彼女はクスリと笑ったんだ。
でも薄く開いた口からは…………
「き……りゅ……」
とそこまで聞いて堪えられなくなって、小さな口に指を入れた。
浅く、吐いてしまわない程度に舌を弄ぶその固有名詞を認識したくなかった。
いや、焦っている時点でお察しな訳だけど。
尾台さんは淡い力で指先をちゅっと吸ってきて時折漏らす声に体が疼いた。
濡れた柔らかい舌にぞくぞくして指を抜いたら当然だけど唾液で指先が光る、親指で擦り合わせたら糸を引いた。
その時、携帯が鳴って画面を見たら桐生さんからだった。
ああ、ヒーローってもんはどこまでもヒロインを助けるようにできたてんだな脇役の癖に良からぬ感情を抱いた俺を止めに来たんだ。
「はい」
【お疲れ様、どう袴田君、家着いた?】
「はい、今寝かせる所です。アパートの場所が少し入り組んでいて」
肩に携帯を挟んで尾台さんの体を引き上げたら、脇を掴んだ手に唇が触れて彼女はまた指に吸い付いてきた。
【袴田君?】
「ああそれで、かなり手前で降ろされてしまって家に着くまで時間がかかってしまいました。尾台さんは相変わらず寝ていますよ」
【そっか】
嘘はついてない、何の夢を見ているのか知らないが俺の指を噛んで自分から口に入れて、今度舌を使って指を舐めてくる。
指の腹をざらざらした舌で舐め回されてじれったい舌使いが快感で背筋に熱が走った。
「……ッこのまま彼女を寝かせてそっちに戻ります。俺が行っても大丈夫ですか」
【何の心配をしてんだよ、大歓迎に決まってるだろ。お礼は直接言わせてくれ】
「では直に行きます」
電話を切って、優しい口調の癖にどこもまでも計算高い桐生さんにため息が出た。
きっとこれからも俺が送る度に言われるんだろうな、お礼は直接言わせてくれって、ようは早くそこから出て来いって訳だ。
やらしく指を吸い続ける唇から指を離した。
くちゅっと卑猥な音がして尾台さんは唇を舐めて物欲しそうにしてる、こんなのどう考えたってキスしたいしか頭に浮かばないんだけど。
すっげーディープキスしたい、呼吸できなくなるやつ、だって尾台さんの唇を指でなぞったら唇もじもじさせてるし。
いや、それどころじゃないな早く戻らないとヤバイぞ。
キスなんてしたら止められる自信がない、にゃんにゃんさんと舌なんか絡ませたら…………俺は……もう。
ネイビーのスーツが規律的に動いて、彼女はまた眠りについたようだった。
寝息が可愛いすぎる、ぴくぴくする瞼にキスしたい体柔らかい、いい匂いするすっげー抱きたい、めちゃくちゃにしたい俺のものにしたいトロトロにしたい俺の名前を呼ばせたい、一生愛したい、愛されたい!!
こんな怒涛の欲の濁流生まれて初めてだ、でもその何一つ実現できないなんて俺は何て無力な男なんだろう。
尾台さんを抱いてベッドに運んで、額にキスするのが精一杯だった。
それでもちょっと吸ってしまったりする。
そうか、何一つ叶わないのであれば、この時間だけでも死守しないとと思った。
この時間を大切にしたい。
飲み会に戻って、ありがとう彼女はどうだった? の質問に関して全く顔色変えずに一度も起きませんでしたよと答えた。
まるで彼女に興味がないように装った、家の中どうだったと聞かれても、さあ? 彼女を置いて直ぐ出たのでわかりません、と感心がない様子で眼鏡を直した。
皆は草食系ってマジでそんなんなんだって驚いていた、俺なら無理だわ、やっぱ袴田君が適任だったねって頷いていた、仕事ですからっと返して煙草吹かした。
そして翌日尾台さんはマスクをして出勤してきた。
え、何でマスク? 風邪をひくような気温ではなかったし布団も掛けたけど…………ってそうじゃない、メイク落とさずに寝たから、朝顔がカピカピで痛くてメイクどころじゃなかったんだって……。
へえそうか、これからは気を付けないと。
尾台さんは飲み会慣れしていないのと、あまりお酒が強くないせいでいつの間にか深酒して寝てしまう日が多々あった。
で、どうするってなって変な人が送るなら袴田君! となる訳だ。
俺は終始、総務の仮面の表情を崩さずに分かりましたと機械のように頷いて、内心ではにゃんにゃんさんにゃんにゃんさんにゃんにゃんさんにゃんにゃんさんキタって連呼してた。
そして送迎を重ねる度、その尾台さん寝かし付けスキルはアップしていってまず美容液の入っているメイク落としシートで尾台さんのメイクを落とす事を覚えた、そして洗面器で歯ブラシさせたりスキンケアの順番も覚えた。
そして、シャワー……これは寝かせて帰ろうかなと思ったら、突然起き上がって「おふゅりょ」って風呂場に行ってしまう時がある。あっついあっついってぽいぽい服を脱ぐし。
家に着いて玄関で下ろした瞬間這ってお風呂に行ってしまう日もある。
でも何かあったら大変だから、俺はじっと風呂の外で終わるのを待つわけだが大抵中途半端で出てくるし、下着付けたままシャワー浴びてる事もあって、男女の関係になる前に彼女の裸を幾度と見せつけられて悟りが開けそうだった。
その位無我の窮地で入浴の介助をした。
まあ実際その時になると性的な思考よりも早く寝かせて戻らなくてはって気持が先行していた。
尾台さんの綺麗な体に綺麗な心を汚さず明日を迎えさせる事、いつしかそれが俺の使命になっていた。
風呂場でもちろん俺達は裸同士で彼女は無防備に寄り掛かってくる、それでも無心で体を洗ってあげる。
たまに抱き付いてくるし、擦り寄ってくるし、それでも何にもしないで風呂を上がり頭乾かす俺はもう何かの称号を与えられていいと思うぞ。
尾台さん綺麗な髪を維持するため、トリートメントは当たり前だ。
たまに洗って最中にやらやらって逃げるし、かと思えばうとうとしながらアニソン歌ってえへへってする尾台さん可愛すぎてすっげーキスしまくって(頬とか)帰る。
そう言う日は一度会社に戻りますが、直に合流しますと言っていた。
この人本当は起きてんじゃないのかって思ったけれど、次の日全くこちらを見る素振りもなければ、目があっても社交辞令的な挨拶しかなくて、飲み会の時仲良く話していた男性社員とも全く口を利かない、本気に記憶にないんだ…………そんな彼女の様子から俺が尾台さんに何かしているとか疑う人はいなかった。
でも何か少しでも彼女の五感に残ればいいなと思って、尾台さんが良い匂いだと言っていたアロマオイルを常につけていた。
そんな日々が驚く事に二年続いた、総務部もすっかり会社に馴染んで平和な時間ごしていた。
そしてこの二年間でたくさん尾台さんを知る事ができた。
まず、尾台さんは凄くエッチだった。
全然そんなの興味ありません! みたいな顔しながらエッチな漫画をいっぱい携帯に隠し持っていた。
勝手に見た訳じゃない、彼女が見せてくれたのだ。
枕元に携帯を置いて部屋を出ようとしたらむにゃむにゃ画面弄って、でへへって笑って彼女はまた眠った。
画面には公園の木陰で声を殺しながら情交に耽る男女が映し出されていた(目隠し拘束人格を否定するような言葉攻め多々中出し快楽堕ち)。
他にも色々あるがまた今度話す。
毎回ラインすんのめんどー臭いし、次の日えったん謝ってくるのかわいそーだからどーにかなりませんかねぇ先輩。
と久瀬さんに相談され、まあそうだよなっと思いながら、俺は飲み会の後いつものように尾台さんお風呂に入れにパジャマを着せていた。
そしたら桐生さんから早くこっちに来いメールが入った。
何の策もないまま彼女の頭を撫でて頬に唇を寄せた。
「大好きです尾台さん、俺行きますね。いっぱい寝て下さいポストに鍵入れておきますからね」
「んんん……が、ぎ……」
むくっと起き上がった尾台さんは、あっちいちゅも……取りに行くのやなんらぁ……しゅぺあとブツブツ言いながらクローゼットを開けて風呂敷を取り出した。
床に置いて中を漁ってそのまま倒れて寝た。
な、なんだ……?
側に寄ったら手には鍵が握られていた。
これって合鍵貰っていいって意味か?
合法的に彼女の鍵を手に入れて、それから俺は時間を見付けてはキーケースを眺めた。
久々にじーちゃんと夕飯を共にした、新宿の高層階のレストラン、こういう所に俺も彼女と行きたいなとワインを飲みながら夜景眺めていた、そうしたら。
「どうだ雄太、そろそろ本社に戻ってくるか」
それは、唐突に。
10
あなたにおすすめの小説
甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」
母に紹介され、なにかの間違いだと思った。
だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。
それだけでもかなりな不安案件なのに。
私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。
「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」
なーんて義父になる人が言い出して。
結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。
前途多難な同居生活。
相変わらず専務はなに考えているかわからない。
……かと思えば。
「兄妹ならするだろ、これくらい」
当たり前のように落とされる、額へのキス。
いったい、どうなってんのー!?
三ツ森涼夏
24歳
大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務
背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。
小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。
たまにその頑張りが空回りすることも?
恋愛、苦手というより、嫌い。
淋しい、をちゃんと言えずにきた人。
×
八雲仁
30歳
大手菓子メーカー『おろち製菓』専務
背が高く、眼鏡のイケメン。
ただし、いつも無表情。
集中すると周りが見えなくなる。
そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。
小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。
ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!?
*****
千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』
*****
表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~
cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。
同棲はかれこれもう7年目。
お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。
合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。
焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。
何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。
美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。
私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな?
そしてわたしの30歳の誕生日。
「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」
「なに言ってるの?」
優しかったはずの隼人が豹変。
「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」
彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。
「絶対に逃がさないよ?」
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
過去1ヶ月以内にエタニティの小説・漫画・アニメを1話以上レンタルしている
と、エタニティのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にエタニティの小説・漫画・アニメを1話以上レンタルしている
と、エタニティのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。