総務の袴田君が実は肉食だった話聞く!?

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どん

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「ちなみに何か食べたい物はありますか?」
「うーん」
「御茶ノ水ってラーメンから和食も洋食も……ファーストフードも何でもあるし、それぞれにおすすめもあるので」
「えっと、この間は……」
「牛丼でしたね」
「牛……丼牛丼……丼」
「ん? 丼ものがいいなら、色んな種類の」
「壁ドン!」
「………………尾台さん」
「あ! ごめんなさい! ついなんか頭にフワッと浮かんで」
「いえいえ、壁ドンでも股ドンでも床ドンでも何でもしますよ。でもお腹に貯まりませんからね尾台さんの胸が俺でいっぱいになるだけです」
「自意識過剰だからぁ!!」
「はいはい」

 もう! 何だよ! 朝から楽しいよ袴田君……!
 ああ、こんな楽しいのに悩み事は山積み……。

「尾台さん食べるのゆっくりだし、種類があると時間かかりそうですよね」
「ん? ああ……そうかも特に外食しないから何でも新鮮で色々見たいし、ゆっくり食べたくなっちゃう」
「なら、やっぱり単品のが良さそうですね」
「うん?」
「だって色々食べるのは今夜でいい訳だし……ね?」
「あっ…………そっかぁ今日水曜日……えへへ」
「ふふふ」
「ちょっと何笑ってるんですか! 私全然楽しみにしてないですから!」
「わかってますよ。仕事、無理しないで下さいね」
「えっと……はい、あの……大変だったら明日の私にお願いします。あ、そうだ私この服昨日から同じの着てるから洋服取りに帰っても?」
「もちろん、一緒に行きます」
「でも中野に戻ってまたここに来るって手間じゃ……」
「もう」

 ちょっと訝し気に見上げたら袴田君は一瞬額を擦り合わせて直ぐ離した。





「俺にとっては尾台さんといる時間は全部デートなんですよ?」




「ひぅ!」

 い、息ができませんよ! 眼鏡直して細くなる目格好良すぎる……!!
 キスしちゃいそうな距離だったし、前髪額に触れたし息掛かったし袴田君の匂いするし………………好きだし。

「好きだよ尾台さん」
「一々言わなくていいの!!」

 助けて下さい!! 誰か私を素直にして下さい!!
 ありがとうって言わせて!

「じゃあ愛してる」
「うるさい!」

 くないのにぃ!! もうやだよ、この口!!

 恥かしくてめっちゃ顔背けてるのに、総務のサド野郎が面白がって好き好き好き好き低音甘ボイスで言ってくるよ!! もう!

「耳まで真っ赤にしちゃって本当可愛いな、噛み付きたい食べたい、両想いっていいですね?」
「死ぬまで勘違いしてれば?!!」
「はぁーい」


 会社に着いて、挨拶しながら他の階の人とエレベーターに乗って、袴田君は同乗した人と話してた。
 三階でその人達が降りて、一応頭を下げて上げた瞬間、ドン!!
「ヒャッ!」



「これされたかったの?」
「袴田くッ」



 袴田君が前に立ち塞がって右拳が頭のちょっと上の壁を突いた。
 息どころじゃなかった……心臓が止まるかと思った。
 見上げた袴田君の眼鏡の奥の私を見下す視線にゾクゾク。



「あーあ……そんなお馬鹿さんみたいに口開けちゃって……尾台さんって本当に無防備なんだから……今度しっかり躾けないといけないね?」
「袴ッ……んん」

 ちゅって脣触れ合って目瞑ったのに離れちゃう。

「ねえ尾台さんこの体にさ? 私は袴田君のものですって刻んであげないとね。首輪好き? 軽いキスだけでいいんですか? もっと欲しいでしょ舌見せて」

 壁ドンだけでは飽き足らず、袴田君は逆の手で顎クイまでしてきて顔を傾けると開いた口を濡れた唇で塞いできた。
 エレベーターの機械音とぴちゃって一回だけ舌が絡む音がして、深く唇が混じり合う。
 ぬるぬるの厚い舌に擦られて口の中舐め回されて吸われて鳥肌立ってきた。
 顔あっつくて鼻鳴りそうで胸苦しくて心拍凄い事になってって、下半身に血が集結してく。
 袴田君のスーツ握ろうと思ったら、顔が離れた。

「そうやって直ぐとろ顔になっちゃうんだから」
「ぅぁ……だって……袴田君、が」
「はい、ごめんなさい続きは夜ね?」
「う……」

 にって口角上げながら袴田君は唇を舐めると、ハンカチで私の口を拭ってエレベーターの開くのボタンに手を置いた。

 五階のマークが光って扉が開いたら、そこには社員が数名立っていた目が合っちゃって恥ずかしくて顔を隠して慌ててエレベーターから飛び出した。

 もう待ってよ! あれ以上されてたら私腰抜けてた……!
 はあ! 職場職場!! 何考えてんだ私は!




 ああああああああああああああああああああ!!!!



 デスクで煩悩よ去れ去れぇえええ!!!
 ってしてたら、もう止めて……営業成績一番の人が伏せた頭を撫でてくるんです。

「おーだーい? 寝不足? ほらこれ昨日夜上がった素材、確認しといて?」
「ふぁい」

 ちょこっと顔横に向けて頷いたら桐生さんは左右を確認してから、こめかみちゅって。

「ひぅ! やだ桐生さ」
「大丈夫、誰も見てないよ。それよりコレ、今回はモザイクきつめでイクって要望きてるから、チェックしっかり宜しくな」
「は、はい」
「髪サラサラ後でもっと触らせて?」
「だめです!」
「へぇ」

 はっきり断ったのに、桐生さんは茶色の目を細めて笑った。

「そうやって感情出してくるの新鮮でいいね」
「なっ……」
「そーゆーとこもっと見せてな?」

 項垂れたままの頭にキスされて、桐生さんは席を離れて……何なんだよもぉおお!!! どんな脳内変換されてんだよ!

 朝一の案件がAVなのは別に今日に限った事じゃないけど、今こなくてもいいのに!!
 ちょっこっと確認して、後はバイトの子に倉庫で確認してもらおう!


 さっきより脱力してしまって視線だけで朝の行き交う人を追ってたら、まさかの昨日の事務さん達が来たのである。

「尾台さん尾台さん~」
「おっはよぉございますぅ☆」
「は、はい! 何ですか!」
「あ、いいですよそのままで」
「ああ、はい……」

 体起こそうと思ったら寝かされて。
 耳元で「ねえ桐生さんとエッチしました?」って。

「ええ?!!  何言ってんですか! してないですよ、付き合ってもないし!」

 答えたら、彼女達は顔を見合わせ首を傾げて、つまらなそうにした。

「ガッカリ~」
「ガッカリ?」
「だって~ほら桐生さんってえっち拒むから実はすんごい短小なんじゃないのとか包茎とか早漏とか色々噂たってて……あははは」
「私もヤらせてもらえなかったしぃ~ねー?」
「これはED濃厚説」
「ねー尾台さん! エッチしたら感想教えて下さいね!」
「ああ……」


 そこら辺まで聞いて、何だかイヤになった顔を伏せた。
 まだ何か言ってるけど尾台シャットアウトですよコレハ。
 相手にされなかったからって、そんな言い草ないじゃんって、なんかお腹イライラしてきてる。

 それは……女の子がエッチ断られるのプライドに障るだろうけど、だからと言って事実にない身体的特徴をネタにして自分達の傷を見えないようにするって。
 何か……何か…………そういうの凄く嫌なんだけど、でもそうゆの良くないって言えない私はもっとやだけど……。
 かといって私が短小包茎早漏EDじゃないの証明しろって言われても無理だけどさ。






「何えっちゃん睨んじゃって、気利かせて袴田君と二人にさせてあげたし昨日いっぱい相談乗ってあげたっしょ?」

 少しして、コーヒー片手に金髪美少女が出社してきた。

「え? 睨んでた?」
「もう帰りたいみたいな顔してるよ」
「いやしてな……あ、ライン」

【おい無視すんなよ、今日は行くからな】


「ほら、もう帰りたいみたいな顔してるよ」
「し、してないったら」

 これが金曜日まで続くってもう勘弁なんだけど!
 あれでも金曜日もどうするんだっけ?!
 ああ、そっか桐生さんには非処女です! って言ってらいちゃんにはお姉ちゃんとかお母さんに連絡しようとしてたんだ。


 でも、うわぁあ……。
 告白を阻止すべく金曜日前に非処女です! って宣言して、そこで桐生さんにそんなの問題じゃないって言われたらどう返すんだ私……。
 らいちゃんは…………そのらいおんさんはさ、今の気持ち家族に打ち明けてるんだろうか。
 私一人が、今日らいちゃん来るから食い止めてって言っても何で? って感じになるよね、家族的には変な場所行かれるよりはうちのがいいだろうし。
 で、甥に襲われそうでって言って信じえもらえるのか??
 むしろ十歳も年上の叔母が何言ってんだみたいにならない?





 あああああああああ……。



「帰りたい」
「仕事しろ」
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