総務の袴田君が実は肉食だった話聞く!?

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 目が覚めたら裸だった。
 しかも隣に袴田君がいた。









 丸まった体を伸ばして目の前の体をペタペタ触ってみる、その体の上についた顔を見たら、眼鏡の奥にある灰色はいつからなのか私を見ていた。

「おはようございます尾台さん」


「おはようございます袴田君、今何時?」
「んっと……お昼の一時過ぎです」
「ふぁ!!」
「疲れていたんですね、トイレも行かずノンストップで十二時間も眠れるって才能を感じます」
「そんな事いいんだってば! ちょっとヤバイ! これはヤバイよ!!」

 って袴田君の胸叩く!

「あ、何痛い、どうして怒ってるの」
「怒っているのではない! 約束したであろう、我は昨日の昼以降食事を取っておらぬのじゃ、丸一日ご飯食べてないって打ち首獄門の刑であろう」
「ああそっか、でも俺みたいに面倒臭いから食べなかった訳じゃないんだし、減刑申し渡す!」
「有り難きお言葉!」
「抱き締めラブラブの刑~」

 言いながら袴田君抱き着いてくすぐってきて、もう!

「触らないで!! それただの袴田君の刑!」
「ふふふ……無期ですよ無期、永遠。ああ尾台さん知っての通りうちには何もありませんから、食べに行きましょう。何食べたいですかお風呂入ってる間に調べておきます」
「米」
「すみませんちょっと範囲狭めるか、もう一声いいですか」
「肉!」
「わかりました」
「袴田君はお風呂入らないの」
「俺は朝起きて入りましたよ、九時に目が覚めたのでサッパリしてその後四時間尾台さんを嗅いだり触ったりして寝顔見たりしてました」
「きんも!!」

 昨夜の袴田君への情熱はどこへやら、もう本当にノリって大事なのに言わせてくれなかったから言い難くなっちゃったじゃん!
 でも少しでもその気持ちが伝わればって、両手で顔挟んでキスしといた。

 袴田君は唇を離した後、最高って顔を手で覆っていた。

 起き上がったら裸で、まああの、昨日を思い出したらそうなんだけど恥かしすぎて走ってお風呂まで行った。

 体も髪も歯も磨いて、い、生き返る……!!
 やっぱり人って清潔が大事よね。
 尾台 絵夢生まれ変わりました!

 あーこれ私が使っていい奴のだなって化粧水とか顔に塗って何かもう顔カッサカサだったからめっちゃ染み込む、角質層が痛い。
 ふと、そうだ私何着ればいいんだろうって思ったら形だけある洗濯機の上にグレーのスウェットが置かれていた。
 下着もあって……ああそっか、洗濯されたの忙しくて受け取る時間もなかったからそのままだった。
 このスウェットは私に買ってくれたのかなって、ブラして白いキャミソール着て、スウェット着たらピッタリだけど、これなんてヨガスタイル……。
 まあいいや、袴田君見たいポーズでもあるのかな。

 髪を乾かして部屋に戻ったら、袴田君はソファーに座ってPCで何かしてた。
 後ろから首に手を回して抱き着いてただいまってしたら、袴田君はほっぺにちゅってしてくれた。

 PC画面見たらお歳暮と年賀状の虚礼廃止メールを作成してんだけど、この総務の人。

「虚、虚礼廃止……」
「強い言葉ですよね【虚礼廃止……形だけで心のこもっていない、意味のない儀礼はやめろ】って、でもこの事問題になってたんですよ、年賀状が手書きじゃない、と上司から怒られたとか、お歳暮何あげていいのかわからない、バレンタインやホワイトデーあげるあげないって不満が出てました。なのですっぱり禁止する事にしました」
「そっか、言われてみたら営業部一つとってもバレンタインで、売り上げトップの桐生さんと新人さんに同じ物あげるてもいいのかなって悩んだし、葛西さんより高い物あげちゃいけないとか、色々面倒臭かったかも」
「難しいですよね。その裏には本当にお世話になった人や本命で好きな人に真心伝えたくて本心から渡したい人もいるのに【虚礼廃止】だなんて言われちゃうんですよ。こんなメールきたら総務は冷たい事言うなって思うでしょうね。でも嫌われ役って必要ですからね」
「袴田君…………」

 きゅうって腕に力入れても抱き締めても袴田君は無機質にキーボードを叩いてる。

「チョコ…………いる?(本命)」
「…………はい(もちろんもちろんもちろん)」

 目見て話そ? って顎持って上向かせたら、袴田君は私の後頭部を掴んで唇を重ねてきた。
 今日は私の方が上にいるから何だか支配してる気分で自分から広い口に舌を差し込む。
 ピクンと後頭部の指が反応したから調子に乗って袴田君にされてるみたいに、口の中でいっぱい舌を動かしてみた。
 上手に「ちゅ」って綺麗な音が出なくて、苦戦してたら下がる髪を耳に掛けてくれて、袴田君はPCを閉じると私の体をそっと撫で始めた。
 ああダメだ、私の方が優位だと思っていたのなんてたった数秒で、少し肩を指先でなぞられただけで声が出ちゃう。
 それからは抉るように下から伸びてきた舌を受け入れるだけだった、必死に首に掴まって舌を絡ませて倒れないように口に集中して、キスだけで、撫でられただけで倒れそうな私ってヤバくないか。

「んんッ袴田君」
「好き」
「あの」
「はい」
「…………………………お腹空いた」
「ですね」



 立ち上がって直に部屋を出た。


 で、えっ……そっか、こんな服で外行って平気? 。
 私はよくこんなんで外出るけど、それは中野だから!! 袴田君だけ薄いピンクのポロシャツにパンツなんてずるい!!

「私だけ! ヤンキー!!」
「大丈夫ですよ」
「チャリで来た! みたくなってないですか」
「徒歩で行く! なので平気です、拳下げましょう。それにこんな礼儀正しい黒髪のヤンキーなんていないでしょ。上層階にジムありますけど、ここだいたい富裕層の意識高い系が住んでるので休日はジョギングする人も多くてこういう服装の人良く見かけます」
「そうなんだ」
「でも気になるなら、尾台さんのお洋服持って来て下さいね。少し置いておきましょう? もちろん後で買いに行ってもいいですよ、そしたらいつでも泊まれるから(クローゼットの下空いてます)」
「…………行かない(置いとく)」

 で、袴田君が連れて行ってくれた所は、どこの駅前にもありそうな牛丼のチェーン店だった…………。
 もちろんうちの地元の駅にもある。
 そして行った事ないし、お持ち帰りもした事ない。

「ここは注文してレジ清算です。尾台さん券売機使った事なさそうだったので、どうしようか迷ったんですけどとりあえず家から一番近い米と肉です」
「待って待って袴田君! 牛丼屋さんなのにカレーも豚も鍋も鰻もあるってどういう事?!!」
「迷走中です」
「多角経営の闇!」
「とりあえず、牛丼から食べたらよくないですか」
「うん、そうする!」

 そしたら、袴田君は店員さんに牛丼の並と特盛と半熟卵二つ注文した。

「ホテルのランチでもどこにでも行けるんですけど、我々服が服ですし尾台さん顔色が白いから早く血糖値上げたくて」
「袴田君、これ見て紅しょうががこんなにたくさん入ってますこの箱、塩分過多!」
 何から何まで気になって、やだ、会食とか飲み会じゃない外食って何年ぶりって感じだから楽しすぎ!

 ってキョロキョロしてたら直に来た。

「早い! こんな直ぐ出てくるんですか!」
「そうなんですよ、自分でご飯の支度するの嫌になるでしょう? しかも片付けなくていいんですよ」

 って袴田君は箸を割って渡してくれた、牛丼の真ん中開けて半熟卵落としてくれて、ちょっと待って、こんな事で優しいかっこいいキスしたいって思ってる私頭可笑しくて死ねる。

「尾台さんいただきますした?」
「いただきます」

 もういいから! お腹空いてるから早く食べたくていつもより大きめに口に運んだ一日ぶりのご飯は美味しすぎてすっごい噛みしめてしまった。
 ちょっとうるうるきてしまいそうな私を見て袴田君は笑うと自分も箸をつけた、ってゆうか特盛とか多すぎじゃね。
「そんなに食べられるの?」
「食べる時は食べるって言ったでしょ結構食うんですよ。知ってます? 俺こう見えて肉食系なんですよ」

 って牛丼掻っ込んでる袴田君は咀嚼もあんまりしてないし、超肉食君だった。
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