総務の袴田君が実は肉食だった話聞く!?

文字の大きさ
31 / 154
連載

意に反して

しおりを挟む
 PCを叩きながら左手の腕時計を見たら時間は八時を回っていた。

 はぁ、なんてこった。終業時間十分前に電話が掛かってきて、「すみません急ぎで資料貰えますか?」の問いに「はい分かりました」って答えてしまった。

「一緒にアベイラブルなリストもお願いします」ってなんだよ、最近横文字ばっかでイラッとくるな。
 契約をディールって言う必要ある? と思いつつこないだの会議で、今お配りしましたアジェンダのと言ってしまった自分が恥ずかしい、だってちょっと使ってみたかったんだもん!!

 もう無理だ、これ終わるの九時になっちゃう。
 当然めぐちゃんは帰ってる、袴田君に「お約束はまた後日でいいですか」って送ったら直に「もちろんです。残業大変ですね大丈夫ですか? 楽しみを蓄積しておきます。大好きです」だって……。

 ふわわわわわわ……何だこの表現は自分でもキモイって思うけど袴田君からのメッセージ見て汚れた心が洗われて、ふわわわわってなってしまった。

 もれなく総務の所までいって抱っこされたいんですけど、でもそんな事しに行ったらあの眼鏡に「計画通り」ってされて思う壺だよね?! む! 我慢ッ!!
え、何? 私何と戦ってるの? 


 それにしたって最近変なんだ、ああ袴田君じゃなくて仕事の方、桐生さんがスローペースなのもさる事ながら、他の社員の成績が上がってる。
 それには理由があって…………。

 課長の佐々木さんが自分のクライアントを他の社員に回してるからだ、そのせいでその社員担当だった事務の子の仕事が増えて私がフォローしなきゃで手間が増えてる。


 佐々木さん…………上層部から人事異動の内示でも出てるのかな、この状況って引き継ぎ以外のなんでもないと思うんだけど……。
 こういうのって本人がどこまで口外してるのか分からないし、下手に詮索出来ないからもやもやするんだよね、内示の段階だと公に出来ないのはわかるけど……。
 空気読めって言われても、私仕事以外で男性社員と口きかないし、飲み会は…………記憶にねぇしな!!  すまねぇな使えなくて!

 まあいいか私はただのしがない事務員なので与えられた仕事を熟すだけだ、急に辞令が貼り出されてもビビらないよに身構えとこ!!
 気合い入れるため紅茶を作ろうと思って、ああそうだ……桐生さんのお礼……メモに書いてないじゃん。

 引き出しのメモを取って、カップの上にぶどうを書いてみた。
 うん! 絵心ないから、たかが丸いっぱい書くだけでも下っ手くそ!!

 ああ、そっか……メモ帳を擦って気が付いた、次の缶で私達のこのやり取りも終わるんだ。

 次の缶を買う時私はどんな気持ちなんだろう。
 この恩返しが終わる日が来るなんて考えもしなかったや、そっか今日初めて缶を手渡ししたんだ。
 思ったより普通に渡してたな、じゃあ最後の缶はどうするんだろう。
 今までのお礼言って、渡したいけど……。

 何て考えてたら、催促の電話が掛かってきて仕事に戻った。

 家に帰ってお風呂入って寝るだけ、気付いたら朝になってて好きな歌口ずさみながらご飯食べて仕事行けば、また夜になってる、そんな日々が続いたら。

 あっという間に週末だった。
 金曜日は帰宅したのが十二時近くだったしもう面倒臭くててお風呂もご飯もしなかった。
 朝起きて晴れてて、髪一まとめにして溜まった洗濯物分別してまずはタオル類から洗濯機に放り込んだ。
 その間にお風呂に入って、排水溝に流れるお湯に色がついていて、お風呂上りにカレンダーを見た。

 ドクロのマークつけてちょっと溜め息。
袴田君、私とエッチする時はゴム着けませんって言ってたから、初めての時もそうだったのかなって考えたら、うわ何だこのクソ野郎死んでくれって思う反面、その記憶なくてマジすみませんな訳で何とも責められなった。

 だって素面でエッチな事してみたら、私の意に反して体が反応してて意地さえ張らなければもっともっとしてそうなんだもん。
 酔っぱらってる私なんて何言ってんのか分からないじゃん。
 ご主人様もっとえむをいじめてぇとか言ってたらどうするよ!? たくさん縛っていっぱいかけて下さい、ザーメンいっぱいお腹に下さいえむはご主人様の所有物ですぅ、とか言ってたらどうする?!!! 死にたくなる物件!!
 だってエッチで浮かぶセリフってそんなのしかないし!

 ああそっか動画……撮ってあるみたいだけどそんなの絶対見れない!
 動画なんて最悪! 犯罪ッ!! って思ったけど、この二年間事ある毎に酔っ払いの介抱に付き合わされてた袴田君からしたら、証拠映像の一つや二つ残したくなるよね、って何も言えねっす。
 飲み会……私は楽しいんだけどなぁ。
 だってやっと参加できたし……でも真実を知ってしまった以上もう行けないよな……そんな迷惑かけてたとは……!!

 それで、現在私の体に袴田君との生命は宿っていなかった。
 そろそろ生理も終わる。

 安心……?
 安心したのかな、そうだよねだって結婚してないしな! 
 双方の親からして出来ちゃった結婚を反対するような家庭ではなさそうだけど、そこは順序踏んでほしいよね。
 とか言って、お酒も常識的に飲めない私が良く言うよって話ですね猛省します。

 そーいえば、飲み会の次の日また飲み会があるって言われたんだよね。
 返事してないけど……行けないって言わなきゃな。

 髪を乾かして、下着を着けていないTシャツの上からきゅって胸を掴んだ。
 良かった、今生理中で……。

 なんかもう、以前の私ならスマホ弄れば魅惑のエロバナーにほいほい引っ掛かって数多くのエッチなマンガをクリックしていたんですけれど、今じゃスマホ見るの袴田君のライン読み返すかデートスポット見る事にしか使ってない。
 後、彼が喜ぶレシピとか彼が喜ぶテクとか彼が喜ぶ服装とか…………もぉぉおおお!!!
 こう、仕事で疲れた電車の中でキラキラした画面見るだけでテヘヘヘってなって楽しい気持ちになるんだもんよ!
 で、ちょっとエッチな気分になるから困ったもんだよ全く!

 いない時位心穏やかにさせてくれよ!
 いつもはサロンで読むだけで済ませていたファッション雑誌なんて買っちゃってどうした私!

 ベッドに本開いて、見開きでこっち向いてるモデルさんと目があって、なぜかその横に袴田君を脳内で並べてみた。
 うーん、いや、この服装は違うなって次のページめくってまた袴田君並べてみる、うーんこれも違う。

 ひぃ! 何やってんだコレ! 雑誌に顔どんってやったら、洗濯機の終わった音がした。

 タオル出して服入れて二回目の洗濯機のスイッチを入れる。
 ベランダに出て、そうだ布団も干そうって手すりを雑巾で拭いた。

 袴田君はこの土日、インターンシップEXPOのお手伝いなんだって! 仕事なんだって!!!
 むむむ……!!



 こ、これから毎週俺と色んなとこ行こうって袴田君が言った癖にぃ! 一週目から約束破るんだ嘘つき! もう嫌い!! できもしない事言うなんて最低!!!



 なんて、彼女でもないのに言わないでおこう。


 と思ってたのに口が勝手に言ってた…………何なら胸叩きながら言ってた。


 袴田君は後ろによろけた後、困りつつも満面な笑みで抱き締めてきていっぱいちゅーしてくれた(鍵かかった給湯室)


「もう尾台さん俺死んじゃう」
「休日出勤頑張って下さいね!!! 離して! ばかぁ!」

 ってすげー睨みながら抱き締め返したら、

「偉い偉い、我慢させてごめんなさい本当にいい子。ねえ尾台さん、やっぱり一緒に暮らしませんか?(切実に)」
「絶対やだ!(考えておきます!)」

 そんな金曜日のお昼休みだった。



 今袴田君は何してるのかなぁ。
 晴れて良かったね、って思いながらお布団ポンポンしてたら、大家さん家のお庭でわんちゃんとお孫さんが遊んでいた。

 こないだ、家賃持ってったらリンゴくれて、孫があまり着なかったブランドの服や綺麗なおもちゃたくさんあるんだけど、尾台さんのために取っておくわねって言われたよ。
 私に気付いて手振ってるから手振り返しとく。
 可愛いなぁ……明日実家でご飯でも食べようかな、急に家族が恋しくなった。

 タオルを干し終えて、部屋に戻ろうとしたら視線の先に。

 あ、そっか……段ボール……昔の私が眠る箱が見てほしそうにこっちに向かって少し口を開いていた。
 
しおりを挟む
感想 360

あなたにおすすめの小説

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」 母に紹介され、なにかの間違いだと思った。 だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。 それだけでもかなりな不安案件なのに。 私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。 「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」 なーんて義父になる人が言い出して。 結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。 前途多難な同居生活。 相変わらず専務はなに考えているかわからない。 ……かと思えば。 「兄妹ならするだろ、これくらい」 当たり前のように落とされる、額へのキス。 いったい、どうなってんのー!? 三ツ森涼夏  24歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務 背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。 小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。 たまにその頑張りが空回りすることも? 恋愛、苦手というより、嫌い。 淋しい、をちゃんと言えずにきた人。 × 八雲仁 30歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』専務 背が高く、眼鏡のイケメン。 ただし、いつも無表情。 集中すると周りが見えなくなる。 そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。 小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。 ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!? ***** 千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』 ***** 表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~

cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。 同棲はかれこれもう7年目。 お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。 合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。 焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。 何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。 美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。 私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな? そしてわたしの30歳の誕生日。 「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」 「なに言ってるの?」 優しかったはずの隼人が豹変。 「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」 彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。 「絶対に逃がさないよ?」

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にエタニティの小説・漫画・アニメを1話以上レンタルしている と、エタニティのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。