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本編
第二十話 甲府に挨拶に行きました
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「信吾さーん、朝だよー、そろそろ出掛ける準備しないとー」
桜咲く四月も終わり日中は何となく汗ばむような五月。私達は都内のマンションに引っ越しました。
朝ご飯の用意をしながら寝室の信吾さんに声をかける。ゴールデンウィークも後半、やっと二人で甲府に行く時間が確保できた。私は土日祝日はお休みだけど、四月に隊内で配置転換があったらしくて信吾さんの方がなかなか連続した休みが取れてなかったのよね。信吾さん自体は異動することは無いんだけど、周囲が動くから結構あれこれ引き継ぎが大変だったらしい。
「信吾さーん?」
全然返事がないのはどうして? なんだか心配になって部屋を覗いてみる。いつものようにうつ伏せで眠っているのを見て子供みたいと思っちゃう。
「起きてー」
電話の音には直ぐ反応してパチリと目を覚ますのに、私の声ではなかなか起きてくれないのはどうしてなのかな? まあ普段は寝起きが悪いわけでもなく直ぐに起きて出掛けていくんだけど。仕方がない、奥の手だ。
「起きろー!」
そう叫ぶと信吾さんの背中に飛び乗った。ふぎゃとかうげみたいな変な呻き声を発して顔をしかめている。どうだ、起きる気になったかー? あ、ちなみに私の体重は49キロ。飛び乗るにはちょっと重たいかもしれないけど、体力のある自衛官さんだから問題ないよね?
「信吾さん、そろそろ起きないと背中の上でタップダンス踊っちゃうよ?」
「うー……それだけは勘弁してくれ……」
「だったら早く起きなさーい! 今日は出掛けるんだから!」
「まったく遠足に行く前の幼稚園児だな。そんなに早く出発しなくても大丈夫だって何度も言ってるだろ?」
枕に顔をうずめたままのくぐもった声。まだ起きるつもりは無いらしい。着ているTシャツを引っ張っても背中をばしばし叩いてもまったく効果なし。なんで?
「でも、いいお天気だし、せっかく早起きしたし」
「なんで今日に限って早起きなんだよ、昨晩はそんなに早く寝たわけじゃないだろ、いつもの休みの日ならまだ寝てる時間じゃないか」
「目が覚めちゃったんだもん、仕方がないよ」
「……そうか、そんなに元気なのか」
いきなり視界が急転して気がついたら信吾さんが私を見下ろしていた。あれ、いつのまに?
「そんなに元気が有り余っているなら、もう1ラウンド如何かな、奥様」
「え、ちょっ、なんでそうなるの?」
「奈緒が俺を起こしたんだろうが」
そう言って私の手を取って信吾さん自身に触れさせた。それ違う、絶対に違うよ! それは私が起こしたんじゃないもん、その子は勝手に起きたんだよっ!!
「それ、私が起こしたんじゃ、んーーっ!」
キスで抗議を封じられてしまった。信吾さんは片手で私の両手首を掴んで頭の上で押さえつけると、もう一方の手で巻きスカートのボタンを器用に外していく。もう、なんでそんなに指先が器用なのよぉ!
「もう! ご飯、冷めちゃうぅ」
そんな私の言葉なんてお構いなしにスカートはベッドの脇へと放り投げられ、その上に下着が落とされた。
「後で温め直せばいいだろ? それよりも俺を温めてくれ」
「十分に温まってるじゃない、逆に冷ました方が良い気が、ぁうんっ」
いきなり入ってくるなんてっ! それでも急な挿入にも痛みを感じないのはジェルのついたコンドームのお陰なんだよね。最近、信吾さんったら色々なのがあるぞとか言って買ってくるんだよ。なんでも行きつけのドラッグストアのバイトのお兄さんと顔見知りになっちゃって、あれやこれやとゴム談義しているらしい。……顔見知りになるぐらい買ってるって凄いなあと思いつつ、ゴム談義とか何よそれって感じ。っていうかいつの間にゴムをつけたのさって問い詰めたい。
「はっ、いきなりすぎぃ」
「痛かったか?」
「そんなことないけど……」
「奈緒の中は熱いな……溶けそうだ」
満足そうに呟くと急ぐことなく一定のリズムでゆっくりと動き続けた。そうしているうちに私の中も解れて信吾さんのものをしっかりと包み込んでいく。そんな私をじっと見下ろしていた信吾さんは、私の目が快感でトロンとしてきたのを見て取ると徐々にペースを上げていった。
「信吾さん、手、はなして、ぎゅって、したいの」
頭の上で押さえられた手を離してほしくてそう頼むとニッコリ笑って手で作った枷を外してくれた。そのまま信吾さんの首の後ろに手を回してしがみつくと、信吾さんはベッドとお尻に間に手を差し入れて私の体を自分の方へと引き寄せた。
「信吾さん、私のこと好きぃ?」
「当たり前だ、好きだし愛してるよ」
「私もぉ」
そんなわけでせっかく温めたお味噌汁の存在はすっかり忘れ去られちゃったのでした。寝室に行く前にちゃんとガスを消しておいて良かった!
+++++
「休みのたびにこんなにされたら、私、本当に壊れちゃうかも……」
二人してほぼ同時に昇り詰めた後、お互いの唇を啄ばんで余韻に浸りながら私はぼやいた。休みの時は下手すると腰から下の感覚が無い時だってあるんだよ? そういう時は朝昼兼用の食事は信吾さんが用意してくれるんだけど、もうね、どんだけ体力あるのよって話だよ。
「壊れればいい。そうなっても俺がちゃんと面倒みてやるから心配するな」
「そんなのやだぁ……」
これでも昨晩から今朝にかけては出掛けることもあって手加減してくれているんだよね。いつもの週末だったらこんな風に私が先に起きてベッドから出ていることなんて無いんだもの。
「それより朝ご飯! お腹空いた!」
「一緒にシャワー浴びてから食おう」
「やだ、一人で浴びる。信吾さんと一緒に行ったら絶対に何も無いじゃすまないもん!」
そんなわけで楽しそうに笑っている信吾さんをベッドに残して、バスルームへと走った。もちろんシャワーを浴びている時はドアに鍵をかけた。後から知ったんだけど、鍵、信吾さん外からでも簡単に開けられちゃう人なんだよね……私が本気で怒るからってこういう時に入ってこなかっただけで。
しばらくしてテーブルについてから何気なくテレビをつける。この時間の情報番組はたまにお料理のレシピが紹介されていたりして何かと便利。ただ普段はなかなかみることが出来ないのが残念なんだよね。見れない理由? 信吾さんが離してくれないからにきまってるでしょ?
で、今日もそれを期待してテレビをつけたのに、画面に映し出されたのは何やら物々しい風景。黒っぽいスーツを着た集団が何やらぞろぞろと見たことのある建物へと入っていく。
「あれ? ここってお父さんの事務所じゃないかな……」
「え?」
私の言葉に信吾さんもそちらに目を向けた。よく見ると画面の左上に速報とかLIVEとか出ている。これって現在進行形の映像なの?
「何してるんだろ、これ……」
絞っていた音声をちょっと大きめにすると何やら政治資金規正法がどうの家宅捜索がどうのこうのって言っている。よくドラマで政治家が捕まる時のお決まりのパターンってやつっぽい。
「もしかして引っ越す前に電話が良くかかってきたのって、これ関係だったのかな」
「んー……そうかもしれないな。マスコミは早耳だから」
ここ最近は取材申し込みの電話はピタリと止んでいる。姓も変わって引っ越したってのもあるし、移した住民票も見られないようにロックしたっていうのもあるんだけどね。
「きっと緒方さん達、大変だろうなあ……」
本人よりも周囲がきっと右往左往しているだろうなって考えると、ちょっと気の毒かもしれない。あくまでもちょっとだけ。
「私って薄情かな……こういうの見ても何処か他人事なの」
「別にそうは思わないが? あっちのしてきたことを考えれば同情しろって言う方が無理な話だろ」
「そっか、そうだね」
それと家族という意識が希薄なのかもしれないなって思う。どちらかと言えば信吾さんや重光先生や沙織さんの方が家族って感じることの方が強いし、血は水よりも濃いとかいうけど、あれは嘘っぱちなんじゃないかなって思えてくる。
「ところで奈緒」
「んー?」
「奈緒の先輩から、私のお祝いは気に入ってくれたか?という謎のメールが届いたんだが何のことだ?」
危うくお茶でむせてテーブルが大惨事になるところだったよ。
「な、なんでみゅうさんが信吾さんの携帯メール知ってるの?」
「ショートメールで来たからな。電話番号は奈緒が教えたからだろ?」
「あー、そう言えば教えたね、学校で何かあったら連絡取れるようにって」
「で、お祝いって何だ? 奈緒が可愛いだろとか人妻ってエロいとか散々なことが書かれていたぞ?」
「んー……なんて言うか、女の子のくれるお祝いはなかなか過激だってことで察して欲しいかも」
信吾さんは私の言葉をしばらく吟味しているように黙り込み、やがて合点がいったという顔をした。
「ああ、なるほどな。野郎の友達がコンドームにリボンをかけてプレゼントして贈るのと同じか」
「……そんなプレゼント貰ったの?」
「俺にじゃないぞ? そいつは以前に合同訓練に参加していた米軍の海兵なんだが、日本の製品は素晴らしいと常々言っていたんだ。じゃあ結婚祝いにたくさん贈ってやろうということになってな。仲間内でお徳用サイズとかいうのを買ってきてリボンがけしてやった。こういう冗談は日本では通じないけどな」
女の子も過激だけど男の子もなかなか過激だ……。
「なかなか面白いね、そういうのも」
「で?」
「でって?」
「それを俺に見せてくれる気はあるのか? あのメールからして身につけるものだということは分かったが」
「え?! いや、あれはぁ」
みゅうさんに信吾さんの携帯番号を教えたことを真剣に後悔したよ。
「なんだ見せてくれないのか?」
「えっと、じゃあ帰ってから見せてあげるよ。今日は出かけなきゃいけないし、ね?」
「ふーん……じゃあ楽しみにしてる」
……うわーん、せっかくクローゼットの奥に仕舞い込んで封印したのにみゅうさんの馬鹿ぁ!!
+++++
お母さんの実家、つまりは私のお爺ちゃんの家は甲府市郊外にある。
戦前はこのへん一帯の土地を所有する大地主だったそうだ。たくさんあった土地の多くは戦後になって一時手放したらしい。『一時手放した』というのが味噌ね。その後、ちまちまと買い戻した先代の爺様の執念は恐ろしいというかなんというか。戦前ほどの規模ではないけれど今現在もかなりの土地持ち、市内にも結構な不動産を所有しているということだった。
そんなこともあってか家の外見は古い庄屋さんのお屋敷風。内装はお爺ちゃん達が年をとってきたので色々とリフォームをして今時な感じになっている。今は叔父さん夫婦が取り仕切っているとのことだけど、お爺ちゃんは健在で、隠居生活を満喫しているらしい。
「婆さんが生きていたら喜んだだろうにな。まさか婿さんまで連れて来るとは」
お仏壇の前でリンをチーンと鳴らすお爺ちゃん。お婆ちゃんは二年前に病気で亡くなったということだった。最後まで私のことを気にしていたって聞いて、やっぱり尋ねてこれば良かったなあと後悔しちゃった。そんな私の横で信吾さんは仏壇のそばに立ててある母さんの写真を見ている。
「どうしたの?」
「奈緒にそっくりだな」
「そう?」
「ああ」
「奈緒は昔から美弥子に似ていたが、大人になってますます似てきたな」
そうかなあと写真を手にとって見る。自分では意外と分からないものなのかな。私、こんな儚げ美人じゃないよ? なんてったって朝から旦那様の背中に飛び乗ったりしちゃう人だから。
「ところで奈緒ちゃん、森永さんとは何処で知り合ったの? 学生さんが自衛官さんとだなんてなかなかお知り合いになる機会ってないわよね?」
「えっとー……」
叔母さんの無邪気な質問にどう答えようか悩んじゃう。酔っ払った勢いでお持ち帰りしちゃったなんて言っちゃ駄目だよね、やっぱり。中学に入ったばかりの司君や小学生の子達もいることだし、口が裂けても子供達には聞かせられないよねえ。
「重光先生のご紹介です。先生は何かと奈緒さんのことを気にかけておられましてそれが御縁で。あとはまあ、お互いが一目惚れで。片倉先生が気付く前に自分が掻っ攫いました」
信吾さん、偉いよ。さらりとそんな嘘がつけちゃうなんて。しかもさりげなく重光先生の株が上がるようなことを挟み込んじゃってるし。私には無理だあ……。
「ははは、片倉も悔しがっただろうねえ。まさか自衛官に娘を奪われるとは思っていなかっただろうからな。だが、これで彼とうちは完全に縁が切れたわけだな。めでたいことだ」
お爺ちゃんは満足げにそう言うと更にチーンと鳴らした。
「お父さんからこっちに連絡とかあるの?」
「どのツラ下げて電話なんぞ?」
お爺ちゃんってば容赦ないなあ。まあ気持ちは分かるけど。
「妻が闘病中なのに女をつくり鞍替えした人間と話すことなんぞ何も無い。金と力が欲しければ今の嫁の実家を頼ればいい。わし等はもう関係ない」
「今朝方のニュース、見たかい?」
「うん。事務所が家宅捜索受けてた」
叔父さんの言葉に頷く。
「昨日のことだけど、何とか取り成して欲しいってうちに電話があったんだよ、片倉さんから。捜索が入る情報を耳にして慌てて電話してきたみたいだった」
「今の法務大臣は甲府選挙区の伊勢谷議員だ」
信吾さんが付け加えた。ああ、重光先生がわりと親しいって言ってた議員さんのことね。
「出向いて頭を下げてくるならともかく、電話一本で取り成せと言われてもね。他人なのになんでそこまでしなきゃいけないんだ?って言ったら言葉に詰まってたけど」
「私なんて最初どちら様?と尋ねちゃったわよ」
他意はないんだろうけどウフフって笑っている叔母さんの少し笑顔が怖い。
「これだけで終われば良いんだけどね、片倉さん。その前から色々と法務省の人がうちに話を聞きに来ていたから、あの感じだとまだ何かあるのかもしれないなあ」
なんだか叔父さんも楽しそう。
「奈緒ちゃん、もし片倉さんから接触しようとしてきても絆されて関わらないようにね。下手に仏心を出すとロクなことにならないから」
政治の世界にだけは足を踏み入れたくないと思う瞬間だったよ……。
私達はお母さんのお墓参りをして今回は帰ることにした。信吾さんが宿泊を伴う移動許可が取れなかったせいで、それを話したら、仕事が第一だからまた遊びにおいでって言ってもらえた。そう言えば司君が自衛隊の仕事に興味を持ったみたいで帰る間際まで信吾さんに色々と話を聞いていたっけ。もしかして将来は自衛官になるつもりなのかな?
「興味はあるみたいだが、それと自衛官になるかどうかはまた別の話だからな。とにかくしっかり勉強しておけとは言っておいた」
車の中でそんなことを信吾さんが言った。
「ねえ、ところでさ、前にホテルにいた時、えーっと……ガイカンユウチがどうのこうのって言ってたよね、信吾さん。あれってお父さんに関係あること?」
なんとなく引っかかっていたので尋ねてみる。信吾さんが無表情になったのが分かった。
「どうして?」
「だって叔父さん、これだけで終わればラッキーみたいなこと言ってたでしょ? だから、まだ何かあるのかって」
「……もし、何かあるとしたら奈緒はどうするつもりだ?」
うーんと考える。だいたい、そのガイカンなんとかって言うのが何のことだか分からないんだよね。帰ったらネットで調べてみないと。
「罪を犯しているならちゃんと償うべきだと思う。それはお父さんも同じ。身内だからって庇うつもりはないよ? そりゃ冤罪とかだったら話は別だけど」
「……冷静に見届ける自信はあるか?」
なんだか引っかかる言い方……。信吾さんは何を知っているんだろう?
「もしかしたら奈緒にも事情を聞かせて欲しいという話があるかもしれないから」
「え……そうなの? でも私、お父さんの仕事のことなんて何も知らないのと同じなんだけど。あ、マンションとか渡されたお金ことかな。それなら手続してくれた弁護士さんに聞いてもらう方が間違いないと思うけど……」
その時は思いもよらなかったんだよね。その“ガイカンユウチ”っていうのが物凄い罪だなんて。
桜咲く四月も終わり日中は何となく汗ばむような五月。私達は都内のマンションに引っ越しました。
朝ご飯の用意をしながら寝室の信吾さんに声をかける。ゴールデンウィークも後半、やっと二人で甲府に行く時間が確保できた。私は土日祝日はお休みだけど、四月に隊内で配置転換があったらしくて信吾さんの方がなかなか連続した休みが取れてなかったのよね。信吾さん自体は異動することは無いんだけど、周囲が動くから結構あれこれ引き継ぎが大変だったらしい。
「信吾さーん?」
全然返事がないのはどうして? なんだか心配になって部屋を覗いてみる。いつものようにうつ伏せで眠っているのを見て子供みたいと思っちゃう。
「起きてー」
電話の音には直ぐ反応してパチリと目を覚ますのに、私の声ではなかなか起きてくれないのはどうしてなのかな? まあ普段は寝起きが悪いわけでもなく直ぐに起きて出掛けていくんだけど。仕方がない、奥の手だ。
「起きろー!」
そう叫ぶと信吾さんの背中に飛び乗った。ふぎゃとかうげみたいな変な呻き声を発して顔をしかめている。どうだ、起きる気になったかー? あ、ちなみに私の体重は49キロ。飛び乗るにはちょっと重たいかもしれないけど、体力のある自衛官さんだから問題ないよね?
「信吾さん、そろそろ起きないと背中の上でタップダンス踊っちゃうよ?」
「うー……それだけは勘弁してくれ……」
「だったら早く起きなさーい! 今日は出掛けるんだから!」
「まったく遠足に行く前の幼稚園児だな。そんなに早く出発しなくても大丈夫だって何度も言ってるだろ?」
枕に顔をうずめたままのくぐもった声。まだ起きるつもりは無いらしい。着ているTシャツを引っ張っても背中をばしばし叩いてもまったく効果なし。なんで?
「でも、いいお天気だし、せっかく早起きしたし」
「なんで今日に限って早起きなんだよ、昨晩はそんなに早く寝たわけじゃないだろ、いつもの休みの日ならまだ寝てる時間じゃないか」
「目が覚めちゃったんだもん、仕方がないよ」
「……そうか、そんなに元気なのか」
いきなり視界が急転して気がついたら信吾さんが私を見下ろしていた。あれ、いつのまに?
「そんなに元気が有り余っているなら、もう1ラウンド如何かな、奥様」
「え、ちょっ、なんでそうなるの?」
「奈緒が俺を起こしたんだろうが」
そう言って私の手を取って信吾さん自身に触れさせた。それ違う、絶対に違うよ! それは私が起こしたんじゃないもん、その子は勝手に起きたんだよっ!!
「それ、私が起こしたんじゃ、んーーっ!」
キスで抗議を封じられてしまった。信吾さんは片手で私の両手首を掴んで頭の上で押さえつけると、もう一方の手で巻きスカートのボタンを器用に外していく。もう、なんでそんなに指先が器用なのよぉ!
「もう! ご飯、冷めちゃうぅ」
そんな私の言葉なんてお構いなしにスカートはベッドの脇へと放り投げられ、その上に下着が落とされた。
「後で温め直せばいいだろ? それよりも俺を温めてくれ」
「十分に温まってるじゃない、逆に冷ました方が良い気が、ぁうんっ」
いきなり入ってくるなんてっ! それでも急な挿入にも痛みを感じないのはジェルのついたコンドームのお陰なんだよね。最近、信吾さんったら色々なのがあるぞとか言って買ってくるんだよ。なんでも行きつけのドラッグストアのバイトのお兄さんと顔見知りになっちゃって、あれやこれやとゴム談義しているらしい。……顔見知りになるぐらい買ってるって凄いなあと思いつつ、ゴム談義とか何よそれって感じ。っていうかいつの間にゴムをつけたのさって問い詰めたい。
「はっ、いきなりすぎぃ」
「痛かったか?」
「そんなことないけど……」
「奈緒の中は熱いな……溶けそうだ」
満足そうに呟くと急ぐことなく一定のリズムでゆっくりと動き続けた。そうしているうちに私の中も解れて信吾さんのものをしっかりと包み込んでいく。そんな私をじっと見下ろしていた信吾さんは、私の目が快感でトロンとしてきたのを見て取ると徐々にペースを上げていった。
「信吾さん、手、はなして、ぎゅって、したいの」
頭の上で押さえられた手を離してほしくてそう頼むとニッコリ笑って手で作った枷を外してくれた。そのまま信吾さんの首の後ろに手を回してしがみつくと、信吾さんはベッドとお尻に間に手を差し入れて私の体を自分の方へと引き寄せた。
「信吾さん、私のこと好きぃ?」
「当たり前だ、好きだし愛してるよ」
「私もぉ」
そんなわけでせっかく温めたお味噌汁の存在はすっかり忘れ去られちゃったのでした。寝室に行く前にちゃんとガスを消しておいて良かった!
+++++
「休みのたびにこんなにされたら、私、本当に壊れちゃうかも……」
二人してほぼ同時に昇り詰めた後、お互いの唇を啄ばんで余韻に浸りながら私はぼやいた。休みの時は下手すると腰から下の感覚が無い時だってあるんだよ? そういう時は朝昼兼用の食事は信吾さんが用意してくれるんだけど、もうね、どんだけ体力あるのよって話だよ。
「壊れればいい。そうなっても俺がちゃんと面倒みてやるから心配するな」
「そんなのやだぁ……」
これでも昨晩から今朝にかけては出掛けることもあって手加減してくれているんだよね。いつもの週末だったらこんな風に私が先に起きてベッドから出ていることなんて無いんだもの。
「それより朝ご飯! お腹空いた!」
「一緒にシャワー浴びてから食おう」
「やだ、一人で浴びる。信吾さんと一緒に行ったら絶対に何も無いじゃすまないもん!」
そんなわけで楽しそうに笑っている信吾さんをベッドに残して、バスルームへと走った。もちろんシャワーを浴びている時はドアに鍵をかけた。後から知ったんだけど、鍵、信吾さん外からでも簡単に開けられちゃう人なんだよね……私が本気で怒るからってこういう時に入ってこなかっただけで。
しばらくしてテーブルについてから何気なくテレビをつける。この時間の情報番組はたまにお料理のレシピが紹介されていたりして何かと便利。ただ普段はなかなかみることが出来ないのが残念なんだよね。見れない理由? 信吾さんが離してくれないからにきまってるでしょ?
で、今日もそれを期待してテレビをつけたのに、画面に映し出されたのは何やら物々しい風景。黒っぽいスーツを着た集団が何やらぞろぞろと見たことのある建物へと入っていく。
「あれ? ここってお父さんの事務所じゃないかな……」
「え?」
私の言葉に信吾さんもそちらに目を向けた。よく見ると画面の左上に速報とかLIVEとか出ている。これって現在進行形の映像なの?
「何してるんだろ、これ……」
絞っていた音声をちょっと大きめにすると何やら政治資金規正法がどうの家宅捜索がどうのこうのって言っている。よくドラマで政治家が捕まる時のお決まりのパターンってやつっぽい。
「もしかして引っ越す前に電話が良くかかってきたのって、これ関係だったのかな」
「んー……そうかもしれないな。マスコミは早耳だから」
ここ最近は取材申し込みの電話はピタリと止んでいる。姓も変わって引っ越したってのもあるし、移した住民票も見られないようにロックしたっていうのもあるんだけどね。
「きっと緒方さん達、大変だろうなあ……」
本人よりも周囲がきっと右往左往しているだろうなって考えると、ちょっと気の毒かもしれない。あくまでもちょっとだけ。
「私って薄情かな……こういうの見ても何処か他人事なの」
「別にそうは思わないが? あっちのしてきたことを考えれば同情しろって言う方が無理な話だろ」
「そっか、そうだね」
それと家族という意識が希薄なのかもしれないなって思う。どちらかと言えば信吾さんや重光先生や沙織さんの方が家族って感じることの方が強いし、血は水よりも濃いとかいうけど、あれは嘘っぱちなんじゃないかなって思えてくる。
「ところで奈緒」
「んー?」
「奈緒の先輩から、私のお祝いは気に入ってくれたか?という謎のメールが届いたんだが何のことだ?」
危うくお茶でむせてテーブルが大惨事になるところだったよ。
「な、なんでみゅうさんが信吾さんの携帯メール知ってるの?」
「ショートメールで来たからな。電話番号は奈緒が教えたからだろ?」
「あー、そう言えば教えたね、学校で何かあったら連絡取れるようにって」
「で、お祝いって何だ? 奈緒が可愛いだろとか人妻ってエロいとか散々なことが書かれていたぞ?」
「んー……なんて言うか、女の子のくれるお祝いはなかなか過激だってことで察して欲しいかも」
信吾さんは私の言葉をしばらく吟味しているように黙り込み、やがて合点がいったという顔をした。
「ああ、なるほどな。野郎の友達がコンドームにリボンをかけてプレゼントして贈るのと同じか」
「……そんなプレゼント貰ったの?」
「俺にじゃないぞ? そいつは以前に合同訓練に参加していた米軍の海兵なんだが、日本の製品は素晴らしいと常々言っていたんだ。じゃあ結婚祝いにたくさん贈ってやろうということになってな。仲間内でお徳用サイズとかいうのを買ってきてリボンがけしてやった。こういう冗談は日本では通じないけどな」
女の子も過激だけど男の子もなかなか過激だ……。
「なかなか面白いね、そういうのも」
「で?」
「でって?」
「それを俺に見せてくれる気はあるのか? あのメールからして身につけるものだということは分かったが」
「え?! いや、あれはぁ」
みゅうさんに信吾さんの携帯番号を教えたことを真剣に後悔したよ。
「なんだ見せてくれないのか?」
「えっと、じゃあ帰ってから見せてあげるよ。今日は出かけなきゃいけないし、ね?」
「ふーん……じゃあ楽しみにしてる」
……うわーん、せっかくクローゼットの奥に仕舞い込んで封印したのにみゅうさんの馬鹿ぁ!!
+++++
お母さんの実家、つまりは私のお爺ちゃんの家は甲府市郊外にある。
戦前はこのへん一帯の土地を所有する大地主だったそうだ。たくさんあった土地の多くは戦後になって一時手放したらしい。『一時手放した』というのが味噌ね。その後、ちまちまと買い戻した先代の爺様の執念は恐ろしいというかなんというか。戦前ほどの規模ではないけれど今現在もかなりの土地持ち、市内にも結構な不動産を所有しているということだった。
そんなこともあってか家の外見は古い庄屋さんのお屋敷風。内装はお爺ちゃん達が年をとってきたので色々とリフォームをして今時な感じになっている。今は叔父さん夫婦が取り仕切っているとのことだけど、お爺ちゃんは健在で、隠居生活を満喫しているらしい。
「婆さんが生きていたら喜んだだろうにな。まさか婿さんまで連れて来るとは」
お仏壇の前でリンをチーンと鳴らすお爺ちゃん。お婆ちゃんは二年前に病気で亡くなったということだった。最後まで私のことを気にしていたって聞いて、やっぱり尋ねてこれば良かったなあと後悔しちゃった。そんな私の横で信吾さんは仏壇のそばに立ててある母さんの写真を見ている。
「どうしたの?」
「奈緒にそっくりだな」
「そう?」
「ああ」
「奈緒は昔から美弥子に似ていたが、大人になってますます似てきたな」
そうかなあと写真を手にとって見る。自分では意外と分からないものなのかな。私、こんな儚げ美人じゃないよ? なんてったって朝から旦那様の背中に飛び乗ったりしちゃう人だから。
「ところで奈緒ちゃん、森永さんとは何処で知り合ったの? 学生さんが自衛官さんとだなんてなかなかお知り合いになる機会ってないわよね?」
「えっとー……」
叔母さんの無邪気な質問にどう答えようか悩んじゃう。酔っ払った勢いでお持ち帰りしちゃったなんて言っちゃ駄目だよね、やっぱり。中学に入ったばかりの司君や小学生の子達もいることだし、口が裂けても子供達には聞かせられないよねえ。
「重光先生のご紹介です。先生は何かと奈緒さんのことを気にかけておられましてそれが御縁で。あとはまあ、お互いが一目惚れで。片倉先生が気付く前に自分が掻っ攫いました」
信吾さん、偉いよ。さらりとそんな嘘がつけちゃうなんて。しかもさりげなく重光先生の株が上がるようなことを挟み込んじゃってるし。私には無理だあ……。
「ははは、片倉も悔しがっただろうねえ。まさか自衛官に娘を奪われるとは思っていなかっただろうからな。だが、これで彼とうちは完全に縁が切れたわけだな。めでたいことだ」
お爺ちゃんは満足げにそう言うと更にチーンと鳴らした。
「お父さんからこっちに連絡とかあるの?」
「どのツラ下げて電話なんぞ?」
お爺ちゃんってば容赦ないなあ。まあ気持ちは分かるけど。
「妻が闘病中なのに女をつくり鞍替えした人間と話すことなんぞ何も無い。金と力が欲しければ今の嫁の実家を頼ればいい。わし等はもう関係ない」
「今朝方のニュース、見たかい?」
「うん。事務所が家宅捜索受けてた」
叔父さんの言葉に頷く。
「昨日のことだけど、何とか取り成して欲しいってうちに電話があったんだよ、片倉さんから。捜索が入る情報を耳にして慌てて電話してきたみたいだった」
「今の法務大臣は甲府選挙区の伊勢谷議員だ」
信吾さんが付け加えた。ああ、重光先生がわりと親しいって言ってた議員さんのことね。
「出向いて頭を下げてくるならともかく、電話一本で取り成せと言われてもね。他人なのになんでそこまでしなきゃいけないんだ?って言ったら言葉に詰まってたけど」
「私なんて最初どちら様?と尋ねちゃったわよ」
他意はないんだろうけどウフフって笑っている叔母さんの少し笑顔が怖い。
「これだけで終われば良いんだけどね、片倉さん。その前から色々と法務省の人がうちに話を聞きに来ていたから、あの感じだとまだ何かあるのかもしれないなあ」
なんだか叔父さんも楽しそう。
「奈緒ちゃん、もし片倉さんから接触しようとしてきても絆されて関わらないようにね。下手に仏心を出すとロクなことにならないから」
政治の世界にだけは足を踏み入れたくないと思う瞬間だったよ……。
私達はお母さんのお墓参りをして今回は帰ることにした。信吾さんが宿泊を伴う移動許可が取れなかったせいで、それを話したら、仕事が第一だからまた遊びにおいでって言ってもらえた。そう言えば司君が自衛隊の仕事に興味を持ったみたいで帰る間際まで信吾さんに色々と話を聞いていたっけ。もしかして将来は自衛官になるつもりなのかな?
「興味はあるみたいだが、それと自衛官になるかどうかはまた別の話だからな。とにかくしっかり勉強しておけとは言っておいた」
車の中でそんなことを信吾さんが言った。
「ねえ、ところでさ、前にホテルにいた時、えーっと……ガイカンユウチがどうのこうのって言ってたよね、信吾さん。あれってお父さんに関係あること?」
なんとなく引っかかっていたので尋ねてみる。信吾さんが無表情になったのが分かった。
「どうして?」
「だって叔父さん、これだけで終わればラッキーみたいなこと言ってたでしょ? だから、まだ何かあるのかって」
「……もし、何かあるとしたら奈緒はどうするつもりだ?」
うーんと考える。だいたい、そのガイカンなんとかって言うのが何のことだか分からないんだよね。帰ったらネットで調べてみないと。
「罪を犯しているならちゃんと償うべきだと思う。それはお父さんも同じ。身内だからって庇うつもりはないよ? そりゃ冤罪とかだったら話は別だけど」
「……冷静に見届ける自信はあるか?」
なんだか引っかかる言い方……。信吾さんは何を知っているんだろう?
「もしかしたら奈緒にも事情を聞かせて欲しいという話があるかもしれないから」
「え……そうなの? でも私、お父さんの仕事のことなんて何も知らないのと同じなんだけど。あ、マンションとか渡されたお金ことかな。それなら手続してくれた弁護士さんに聞いてもらう方が間違いないと思うけど……」
その時は思いもよらなかったんだよね。その“ガイカンユウチ”っていうのが物凄い罪だなんて。
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「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
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