平和な世界にもう聖女は要らないと言われたので、狭小領地でスローライフします〜旅人さんは実は皇子で、私を溺愛してきます〜

元聖女は農業中。

　アルテミシアは、領民が放置していた農地で農園を始めた。
　彼女の聖女としての力は、農園にも役立った。
　仇なすもの（害虫）だけを駆除し、作物を祝福した。
　 
「ミシアちゃんは植物に愛されているんだねぇ…」
「えへへ、今月も豊作です！」
「ミシアちゃんが来てから、私たちの農地も元気になったみたいだよ」

「あはは…堕天使が倒されたからじゃないですかね？」
「ああ、そういえば倒されたのかい。去年、納税したときは慌ただしかったねぇ」
「聖女？様が倒したんだっけか……あまり、ここには情報がこないからねぇ」
　 
　地元の人々と交流を深めながら、日々を穏やかに過ごすようになった。
　彼女はかつての力を隠し、ただの一人の女性として、新しい人生を謳歌した。
　 
　そんなある日、領地に一人の旅人が訪れた。
　彼は遠く離れた地から、聖女・アルテミシアを探し求めて旅をしていたという。
　アルテミシアは旅人を温かく迎え入れ、彼の話に耳を傾けた。
　彼は美しい青い瞳を持つ青年で、非常に見目麗しく、姿勢もよかった。
　 
　旅人はアルテミシアの姿を見て聖女であると気づき、近々、聖女の力が再び必要になるに違いない、語った。
　アルテミシアは微笑みながら答えた。
　 
　 
「私はもう、聖女じゃありません」
「ただの農夫です。平和なこの地で、私は新しい人生を見つけました。」

「そう、ですか……」
　アルテミシアは、落胆させてしまったかなと少し困った。
　しかし、もう、「要らない」とまで言われたにもかかわらず、首を突っ込むのは嫌だった。