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変化する辺境

撤収前(執事長 視点)

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部下のメイドにしなだれかかられる、その数刻前。

パーティ会場から帰り支度に動いていた。
挨拶も済み、早々に帰る予定ではあった。しかし、トラブルがなかったとはいえない。

「メイさんは大丈夫でしょうか?」

メイド長であり、護衛にもなる彼女は今回メイレス様の側使えとしてパーティに参加していた。
その時、飲み物を奪うように飲んだ行動を見せる。

何か混入されていると見越しての行動であり、今は控え部屋に閉じこもっている。
顔色は悪くなかったが、ふらつきがあり薬物の症状だと察した。
もちろん、他のパーティ客達にわからないよう守りをかためている。

相手は、狙って醜態を晒したかったのだろう。しかし、こんな事で醜聞にさせはしない。
油断なく手配はできています。

「命に関わる物じゃないと思うが。」

未だに姿を見せないメイの心配をする者も出ている。耐性はしっかりありその心配は薄いのですが。
混入していた物は、媚薬であったと考えています。

これが、領主様への攻撃だったとは判明しなかったことからの結論は…
“パーティの場で、若い女性に飲ませようとした”
断れないと踏んで飲み物を渡す不埒な男は、後を絶ちません。

彼女は仕事をした。それは上司として褒める部分ですが、早い復帰が待たれます。
特にメイは、領地で人気が出ています。

弓矢の腕で狩人として、優秀なメイドであり未婚の若い女性です。

「介抱すれば、イイ感じになれるかな?」
「色っぽいメイさんが見れる?!」

身内の者からの会話もこんな浮かれた調子で。

(弱っているところを助ければ、関係が進展する。あながち無視できない方法ですがね。)
若い者が騒ぐのはいつもの事です。

(落ち着きませんね)

自身の心が落ち着かないのは、部下の心配をしているからと…
そう言い切るには、煮え切りません。


そんな気持ちを振り払うのが、正解だと思うものの…歳ですかね。

「誰か、メイに届け物をし欲しいのですが」

それに手を上げる者が出る前に、私が役目を引き取ります。
このまま誰かが彼女の元へ行けば、懇ろになるでしょう。

それを上司として防ぐだけです。そんな名目を持つ。
届け物は、彼女のメイド服。

ドレスで目をつけられるより、メイド服で出て行った方が醜聞になりづらい。
その用意を使う事になる。

部屋をノックすれば、思ったよりしっかりとした声で返され入室する。

乱れ、色香か漂ってくる若い肢体。
瑞々しく、油断していたらしい体勢から恥ずかしげに着衣を整えた。


それでも心許ない。

その女に、触れられた途端に理性が音を立てた気がする。

綺麗な肌は滑らかで、上気した頬。潤んだ瞳が見上げてくる。


「上司として、受け止めましょう」

まだ逃げ道を告げる口に内心、呆れながらも。


きっとこの時に
彼女を受け入れる覚悟が、私にもできたのだと思う。
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