上 下
22 / 67

7-③

しおりを挟む
「酒を飲むくらいしか、やる事がないな」

私にとっては、本を読む時間が増えて嬉しいくらいだが。
読み返すひとりの時間が穏やかだ。

まあ、ここに来た文官や騎士の中にも面倒な者はいた。

2枚舌がある者もいるが、この場所は研究者気質の者と教官が多い。統率もとれているし、私の仕事は書類だな。

毎年、この辺に住む獣人達が寒さを凌ぐために集まる『極北の城』
雪に囲まれて、更に孤立感が深まった。森というより雪の印象が強い。

四方を壁が立ち、中が魔導具で温められている。廊下に出ればもちろん寒いが、冬装備はもちろんあった。商人から物を購入する事もできる。

騎士や兵士は基本配給された物で過ごすらしい。褒美には酒やら甘味を願えるんだとか。

「最後の商人も来た」

そうか、これで今回やって来る者達も揃ったな。
私は本もあるし、温かい場所で食事の提供を受けてのんびり過ごそう。

訓練の参加はない、魔法と薬学の講義には参加する予定だ。ただ、初級と基礎を中心なもで私が邪魔になるかもな。

一度この城に入ったら雪解けまで帰れない。

療養目的の者、その家族も住んでいる。この地で摘んだ薬草の保管と研究がされているため拡張された施設。

魔導具で暖かくしてあるため、快適に過ごせる。
研究者とのんびり意見交換、決まった会議に出て。訓練の視察が終われば、息抜きの酒。

交流は楽しい。王位の話にならないところが特にな。

「面倒な立場ですなあ」
「まあ些事だな、私の権力が目当てらしいですが使い所があるのか疑問です。」

王位の行く先が気になるのは確かだが、口出しも手出しもする予定はない。私は部外者という立ち位置、招かれた研究者でありそのための役職だ。

貴族の囲い込みを流す術も、得られている。

社交なんて関係ないし、この環境も気に入っている。

「子供は可愛いな」
外に出られない日々だが、室内の遊び場で元気な様子を見せてくれた。

療養中の子達の慰問。ここの子達はその家族で幼いから親族に預けるのもじっとしてられないだろう年頃。

(あんな頃が私にもあったのか?)

遠い記憶過ぎる。だがまあ弟がヤンチャだったからな。妹達は固まって遊んでいたが、私はよく弟を探しに行ったものだ。

お蔭で探し物や地理的な把握も得意になった。今の研究で風を読む方法も、そに延長線かもしれないな。

「研究の方は進んでますかな?」
「ええ、まずまずといったところです。ここでは変わった風が吹くので興味深いですよ。」

風を起こす妖精、魔素の湧く地理的条件。

人のは要らない未開の地。時として牙を剥く人を拒絶するような雪深い土地。

酒、研究、たまの会議。

「獣人ばかりで苦労をかける」
「ははっ城でもそうだろう」

獣人の国に、獣人が多いのはもちろんだ。しかし、この役職で長居するのはどうかな。長命ゆえの悩みか。

「私は研究を進めつつ。のんびり暮らしたいなあ。」

それが叶うとは思っていなかったが、それはひと仕事を終えた後になるのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

その幼女、最強にして最恐なり~転生したら幼女な俺は異世界で生きてく~

たま(恥晒)
ファンタジー
※作者都合により打ち切りとさせて頂きました。新作12/1より!! 猫刄 紅羽 年齢:18 性別:男 身長:146cm 容姿:幼女 声変わり:まだ 利き手:左 死因:神のミス 神のミス(うっかり)で死んだ紅羽は、チートを携えてファンタジー世界に転生する事に。 しかしながら、またもや今度は違う神のミス(ミス?)で転生後は正真正銘の幼女(超絶可愛い ※見た目はほぼ変わってない)になる。 更に転生した世界は1度国々が発展し過ぎて滅んだ世界で!? そんな世界で紅羽はどう過ごして行くのか... 的な感じです。

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

公爵家次男はちょっと変わりモノ? ~ここは乙女ゲームの世界だから、デブなら婚約破棄されると思っていました~

松原 透
ファンタジー
異世界に転生した俺は、婚約破棄をされるため誰も成し得なかったデブに進化する。 なぜそんな事になったのか……目が覚めると、ローバン公爵家次男のアレスという少年の姿に変わっていた。 生まれ変わったことで、異世界を満喫していた俺は冒険者に憧れる。訓練中に、魔獣に襲われていたミーアを助けることになったが……。 しかし俺は、失敗をしてしまう。責任を取らされる形で、ミーアを婚約者として迎え入れることになった。その婚約者に奇妙な違和感を感じていた。 二人である場所へと行ったことで、この異世界が乙女ゲームだったことを理解した。 婚約破棄されるためのデブとなり、陰ながらミーアを守るため奮闘する日々が始まる……はずだった。 カクヨム様 小説家になろう様でも掲載してます。

異世界最強の賢者~二度目の転移で辺境の開拓始めました~

夢・風魔
ファンタジー
江藤賢志は高校生の時に、四人の友人らと共に異世界へと召喚された。 「魔王を倒して欲しい」というお決まりの展開で、彼のポジションは賢者。8年後には友人らと共に無事に魔王を討伐。 だが魔王が作り出した時空の扉を閉じるため、単身時空の裂け目へと入っていく。 時空の裂け目から脱出した彼は、異世界によく似た別の異世界に転移することに。 そうして二度目の異世界転移の先で、彼は第三の人生を開拓民として過ごす道を選ぶ。 全ての魔法を網羅した彼は、規格外の早さで村を発展させ──やがて……。 *小説家になろう、カクヨムでも投稿しております。

転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ

如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白? 「え~…大丈夫?」 …大丈夫じゃないです というかあなた誰? 「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」 …合…コン 私の死因…神様の合コン… …かない 「てことで…好きな所に転生していいよ!!」 好きな所…転生 じゃ異世界で 「異世界ってそんな子供みたいな…」 子供だし 小2 「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」 よろです 魔法使えるところがいいな 「更に注文!?」 …神様のせいで死んだのに… 「あぁ!!分かりました!!」 やたね 「君…結構策士だな」 そう? 作戦とかは楽しいけど… 「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」 …あそこ? 「…うん。君ならやれるよ。頑張って」 …んな他人事みたいな… 「あ。爵位は結構高めだからね」 しゃくい…? 「じゃ!!」 え? ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

処理中です...