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番外編7(2024年文披31題)

29・鮭のムニエル焦がしバターソース(焦がす)

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「今日本当に自信作だから」
 夕飯を食べ始める前に由真が言う。自己評価が低い由真には珍しいが、たまに由真は根拠のない自信に満ちているときもあるので、寧々と或果は微笑ましく思っていた。
「でも本当に美味しそう。バターのいい匂い」
「鮭のムニエル焦がしバターソースだって。スーパーのレシピのやつにあった」
「ああ、あそこにあるの美味しいわよね」
 もちろん食材の販促のために置いてあるが、惣菜担当のトップの人が考えているらしく、美味しいものが多い。いただきますと手を合わせ、いざ食べようとした瞬間に電話が鳴った。
「えーただいま電話に出ることができません。ピーッという発信音の後にメッセージを――」
『仕事だ』
「今ご飯食べようと思ってたのに……ハル姉がなんとかしといてよ」
『近くで能力者と無能力者が集団で喧嘩しているらしい。詳しい場所は――』
 淡々と指示をしてくる。本来食事をしないハルには、この焦がしバターの匂いの魔力がわからないのだろう。それを目の前にして食べるなとは拷問に近い。
「あたたかいうちに食べて欲しかった……」
「仕方ないわね。恨みは喧嘩してるバカどもにぶつけてきましょう」
 寧々と由真は今し方食べようとしていた夕飯にラップをかけた。帰ってきた頃には冷めてしまっているだろう。残念だが、呼ばれたからには行かなければならない。

「また作ってよ、由真。今度は温かいうちに食べられる日にさ」
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