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66 夢に揺蕩うその間にも
しおりを挟むムニャムニャと寝言を言うならまだ可愛い。
……レーン様、心からお慕いしています……
一緒の寝台に寝ているのだから、寝言も聞こえる。心の声も洩れているからシェインの気持ちも知っている。けれど、これはないのではないか。
抱きしめて眠る事は出来ても、未だにシェインは面と向かって私に気持ちを伝えて来ない。私がストレートに伝えていてもだ。シェインは寝言でしかこの様に心を口に出してくれない。
好きな相手には、自分の気持ちを知っていてもらいたいし、自分の事も好きで、求めてもらいたいと思うのは普通のことだろう?
シェインリーフ、私は其方の全てが欲しいのだ。喜びも、不安も、苦しみも、戸惑いも、全部、全部…だから、誰を求めているのかもその口から聞きたい。
スヤスヤと満足そうな寝顔を切なそうなガラット王子の赤く光り輝く瞳が見つめる。
そっと唇を塞いでも、目覚める様子無くシェインはすっかり熟睡してしまって起きる様子はない。シェインには眠りが必要な事だと分かってはいるが物足りない。こちらはまだまだ満たされない…
いっその事、本人の断りなく自分の物にしてしまおうか、と何度も頭をよぎるのだ。先程寝入ったばかりだと言うのにもう精霊石を押したくて堪らなくなる。其方の意思など関係なく眠りの底から引き摺り出してしまいたい…
「嫌われたくないのなら、余りそれはお勧めしませんわ。ガラット様。」
いつの間にか室内にはメアリーが寝台を整えにやって来ていた。
そっと口付けを離す。
「眠りが必要でも、回復できないと分かっていても此れはここを、私の側を選んだだろう?」
「はい。」
「私には愛する者が弱って行くのを喜ぶ趣味はない。」
「はい。あなたの側にいる事がシェイン君の最たる望みでしたもの。今はそれが叶って満たされてしまってますものね。もっと求めていいと気が付いて欲しいのですけれど…」
そう、私を求めよ、シェイン…私だとて其方に与えられるものがあるのだ。
私は太陽の眷属…大地に生きる物達に命の糧を降り注ぐ者でもある。その私を捉えた事がどんな事か、まだ其方は分かっていないらしい。
其方の森の眷属が、皆一様に頭を下げた事がどんな事か其方が意味を悟ったらどんな顔をするのだろうか?
弱るシェインリーフを目の前に、やや焦りが強く出てしまったガラット王子。
まだ時間はある。悠長に構えるつもりは到底ないが、共に生きる意味をシェインリーフに教え込む楽しみができたと思って良しとするか?
安らかな寝顔をそっと突いて、優しく見つめる赤い瞳には暖かな、けれど確固たる光が宿っていた。
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