[完結]ひきこもり執事のオンオフスイッチ!あ、今それ押さないでくださいね!

小葉石

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67 大森林の忠告

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 カカカカカ、ココココココ…キツツキの軽快な音が耳を擽る。木にとっては突かれ穿くられるのは不本意かもしれませんが、皮の下に潜り込んだ虫を穿り出してもらったらスッキリもすることでしょう。

 小気味良いリズムに耳を傾けながら、温かな日の光を、森の空気を一杯に取り入れる。やっぱり、森は良い…


……こんにちは、小さな兄弟……

 大森林の精だ。

…こんにちは。大きな兄弟……


……力は…まだ戻らないのですね?……

…はい…自分の森はありませんので…

……あの方の想いに応えるのではなかったのですか?……

……………は、い…………

……小さな兄弟、このままでは………

…でも、私があの方の隣に立つには力が無さすぎます。…

……この森で力を蓄えてから、と?……


…ええそれも考えたのです、大きな兄弟。でも良く考えたら、森を守りここにいたらあの方の隣には立てません。あの方が精霊となった時一緒にいられませんから。森の皆んなをもう一度捨てるなんて………

 考えただけで無理だと思った。私は森を見捨てられない。けれどレーン様から離れることも出来そうにない。レーン様は人間の生が終われば精霊に戻るだろう。その時に力無い私はきっと隣にも立てないし、ましてその権利もない。


 力が戻れば…あの方を守れる。お側にずっと居られるって、そう信じて頑張ろうとしてた。側にいる事で胸がいっぱいでそれで満足して、目の前の壁をずっと無視して…


……消滅も厭わない、と?……

…………………


……暁の方は、それを許さないでしょう。小さな兄弟、貴方の消滅を許さないでしょう。……

…あの方が?許さない?私を?……


……小さな兄弟がそんな事になったら暁の方は永遠に苦しむ事になるでしょうね……

…嫌です!!大きな兄弟!あの方を苦しめたい訳ではないんです!……


 私の声に森にざわりと響めきが走った。


……大丈夫、小さな兄弟、貴方も、あの方も苦しまなくていい方法がちゃんとあるのです……

…え?それは?……


……それは…


…ひあっぁ!…


 大森林の精の答えを聞く前に、私の精霊石は遠慮なく押されたようだ。大森林の精の答えに集中していたから尚のこと、与えられた刺激は強い波の様に私を包み込んで強制的に引き上げて行く。


「大きな兄弟!さっきの、先程の答えは何ですか!!」

 カバッと跳ね起きながら片手を伸ばし、肩で息を吐く。 

 此処は、旦那様の寝室…で、隣には勿論私の片手を握りしめたままの旦那様。


「大森林め、余計な手を出さなくとも良いと言うのに…」

 ポソリと呟く旦那様は何処か複雑そうな表情だった。
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