[完結]ひきこもり執事のオンオフスイッチ!あ、今それ押さないでくださいね!

小葉石

文字の大きさ
上 下
41 / 76

41 押さなくてもいいのでは?

しおりを挟む
 思いがけず、想いが叶った今日この頃。お客様であるフランカ様をお迎えする為に、ただ今順調にメアリーさんと準備中。


「ひゃん?!」

 フランカ様が好きな茶葉を厳選していたら、またあの感覚…
 愛情表現と言われていた内容が、ブワッと湧き上がってきて、恥ずかしさに下を向く。


「あの、メアリー様?もう、石を押さなくても良いのでは?」

 なんだかんだと言いつつ石は旦那様に預けっぱなしだし、それはやぶさかでは無いのだけど、声をかけて下されば良いのに…!


「あら、今までの様にメアリーで良いわよ?記憶と意識は共有しているけど違う性質を持っているし、ね?」

「はい、了解いたしました。でも石は押さなくても良いのでは?」

「フフ、あなたの反応が可愛らしくて…」

 可愛らしいとは何でしょう?まさか、用もないのに石を押されていたのは、ただの反応を見る為ですか?

「そうとも言うわね。」

 いとも楽しそうにさらっとそんな事をメアリーさんは言ってくださる…石、やっぱり返してもらおうかな…



 中庭にあるカウチソファーにゆったりと座っているのは絵になる様な旦那様。石を押されると何処にいるかはすぐに分かる。

 今日の旦那様の瞳の輝きは本当に綺麗。

 
 シェインに気がつけばポンポンとカウチの隣を手で叩き座っての合図。


 が、私は執事ですからね?お客様が来る様な時に何で主人の隣で寛げると思っているのです?


「おはよう。シェイン。」

 え!?まさかのフランカ様?

 衝立に隠れ見えない席に、フランカ様はフワリとお座りになっていた。


「これは、おはようございますフランカ様。お出迎えも致しませんで申し訳ありませんでした。」

「良いのよ。私が無作法を承知で定刻よりも前に来訪させてもらったのだから。」

 
 フランカ様と旦那様との会話には冷風が吹いていそうな雰囲気があるのだけれど、今日のフランカ様の表情は少し柔らかい?


「フランカ様先日は大変失礼を致しました。お手元を汚したばかりか、断りもなく仕事を放棄してしまって…」

 どんな理由をつけようか、旦那様は全てを話したと言っていたが、何と説明しようかずいぶん悩んだ。


「精霊の理はよく分からないけれど、貴方もあの大寒波の被害者だったのでしょう?」

 人間も大分被害を受けた事はフランカも記憶に新しい。だから彼女の瞳には同情の暖かい色が宿っている。


「はい。ご心配をお掛けしました。」

「シェインも座って。殿下よろしいでしょう?」


 ん?身分には手厳しいほどの方が?思わずきょとんと不躾にもフランカ様を見つめてしまったが。


「フフ。私も事情を聞いてしまいましたのよ?貴方のことはただの使用人として見る事はもう出来ませんわ。」

 日なたの瑞々しい花の様にフランカ様は鮮やかに微笑まれた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

【完結】試練の塔最上階で待ち構えるの飽きたので下階に降りたら騎士見習いに惚れちゃいました

むらびっと
BL
塔のラスボスであるイミルは毎日自堕落な生活を送ることに飽き飽きしていた。暇つぶしに下階に降りてみるとそこには騎士見習いがいた。騎士見習いのナーシンに取り入るために奮闘するバトルコメディ。

Switch!〜僕とイケメンな地獄の裁判官様の溺愛異世界冒険記〜

天咲 琴葉
BL
幼い頃から精霊や神々の姿が見えていた悠理。 彼は美しい神社で、家族や仲間達に愛され、幸せに暮らしていた。 しかし、ある日、『燃える様な真紅の瞳』をした男と出逢ったことで、彼の運命は大きく変化していく。 幾重にも襲い掛かる運命の荒波の果て、悠理は一度解けてしまった絆を結び直せるのか――。 運命に翻弄されても尚、出逢い続ける――宿命と絆の和風ファンタジー。

虐げられている魔術師少年、悪魔召喚に成功したところ国家転覆にも成功する

あかのゆりこ
BL
主人公のグレン・クランストンは天才魔術師だ。ある日、失われた魔術の復活に成功し、悪魔を召喚する。その悪魔は愛と性の悪魔「ドーヴィ」と名乗り、グレンに契約の代償としてまさかの「口づけ」を提示してきた。 領民を守るため、王家に囚われた姉を救うため、グレンは致し方なく自分の唇(もちろん未使用)を差し出すことになる。 *** 王家に虐げられて不遇な立場のトラウマ持ち不幸属性主人公がスパダリ系悪魔に溺愛されて幸せになるコメディの皮を被ったそこそこシリアスなお話です。 ・ハピエン ・CP左右固定(リバありません) ・三角関係及び当て馬キャラなし(相手違いありません) です。 べろちゅーすらないキスだけの健全ピュアピュアなお付き合いをお楽しみください。 *** 2024.10.18 第二章開幕にあたり、第一章の2話~3話の間に加筆を行いました。小数点付きの話が追加分ですが、別に読まなくても問題はありません。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

【修正予定】君と話がしたいんだ

遊佐ミチル
BL
『自宅に戻れないなら、俺んちに来ますか?』 ゆっくりしか動けない難病を抱える藤沢紬季(ふじさわつむぎ)二十歳は、人一倍誰かと出会いたい要求が強い。 最近、男だけが利用する出会い系サイトを覚えばかり。しかし、三人目の相手に薬を飲まされた上で激しく蹂躙され、部屋のカードキーまで入った財布まで奪われてしまう。 救急搬送された紬季は、三人目の相手が落としていった鍵を紬季のだと勘違いして持ってきてくれたラブホテルの店員烏堂海(うどうかい)二十歳と出会う。 彼は、中学ときに一瞬だけ話したことがある憧れの長距離ランナーだった。 海は、重度の吃音をかかえているが、大学一年生で箱根駅伝一区を任された実力派。だが、大学二年になってなぜか走るのをやめてしまったらしい。 鍵がなくて家に帰れない紬季に『俺んち来ますか?』と誘ってくれて……。

アルファな俺が最推しを救う話〜どうして俺が受けなんだ?!〜

車不
BL
5歳の誕生日に階段から落ちて頭を打った主人公は、自身がオメガバースの世界を舞台にしたBLゲームに転生したことに気づく。「よりにもよってレオンハルトに転生なんて…悪役じゃねぇか!!待てよ、もしかしたらゲームで死んだ最推しの異母兄を助けられるかもしれない…」これは第2の性により人々の人生や生活が左右される世界に疑問を持った主人公が、最推しの死を阻止するために奮闘する物語である。

処理中です...