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あなたと共に
[完]15 隣にいるもの 3*
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「フレ……フレル……っ…」
息継ぎの合間に、キールはフレトールの名前を呼ぶ。与えられる快感に息を詰めそうになりながら必死にフレトールに縋り付いて。
「ぁあっ…!…ふぅぅ…」
一際深く強く、力の抜けたキールをフレトールは穿つ。反射的に身体が逃げそうになってもフレトールはその腕からキールを逃そうとはしない。何度も続く突き上げにキールは言葉にならない声しか出せなくて、更に力を削ぎ落とす様な快感に自然と涙が流れ落ちる。
本当に…凄い威力だ…
初めて身体を重ねた時から回を重ねる毎に深くキールは思い知る。自分の身体がまるでフレトールの身体に合う様に作り変わっているんじゃないかと思う程に、ぴたりと寄り添い合わさりあっている事に。
知らないよ…こんなに嬉しいなんて……
更に流れてくる涙は快楽によるものだけではない。
「キール……辛くはないのだろう?」
フレトールの腕の中で、何度か達しているキールなのだから痛みや苦しさは大きくないはずなのだが、キールはホロホロと涙を流す。
「あっ…ん…耳…で、話す…な…っ」
フレトールが直接耳に口をつけて話すものだから、息の熱さや息吹、快感に耐えているフレトールの低い声がキールの背筋を貫いて行く。
「キール……」
「ゃ…ぁ…っ…くない…辛くない…!」
止まらない律動から与えられる刺激だけでもキールは1人で持て余しているのに、答えるまで問いかけを止めそうに無いフレトールにキールは必死に答えを返した。
それでもキールの1番弱い所を探るのを止めてくれないフレトールに、キールは力の入らない腕を伸ばす。
下半身から与えられる刺激は全身を甘く痺れさせて身体を支える事すらできず、今自分がどんな姿勢でいるかも分からなくなるほど強烈にキールを支配していった…
「キール……」
やっとの思いでフレトールの頬を撫でるキールの白い手に、フレトールは何度も何度もキスを落とす…
「…れ、しいっから…ぁ…んっ」
「キール…?」
「うれし…っから、しかた…なっ」
嬉しいから…涙を止める事なんて、できやしない…嬉しいから…気を失いそうなほどの激しさから、少し怖くて本当は逃げ出してしまいたくても、手を伸ばす事を止められない…
フレトールはいつもどんな状態のキールであっても、必ず満面の笑顔で心から嬉しそうに躊躇せずにキールのその手を取ってくれるから………
鳥達の囀りや風の音が窓を閉めていても聞こえてくるほどの素朴な造りの小屋。マラント神殿の者達はその小屋を小聖堂と呼び畏怖を込めて軽々しくは立ち入ってはこない。これはその昔、キールの祖母リージュがかけたエルフの魔法の一つの効果がまだ残っているからだが、この中に残されたフレトールとキールには有り難かった事だろう。
少し広めの寝台の上には、上質とは言えない素朴な木綿の寝具類が使われ、置いてある食器類も木を削って作られた荒削りの物だ。建てられてから100年近くは経つこの小屋はあちこち痛み、歩けば床が軋んで音を立てる。一見するとこの小屋は嵐でも来れば今にも吹き飛んで倒れてしまいそうな小屋なのだ。その小屋に昨夜神官長リーフはフレトールとキールを2人だけにしてくれた様で、あの後ここを訪ねてくる者は誰もいなかった。
その小屋でフレトールが目を覚ましてみれば、隣で寝ていたはずのキールはいない。昨夜はあれだけ触れ合ったのだからキールは寝ついてしまうかもしれないと思っていたフレトールの心配をよそに、キールは早朝この小屋から抜け出した様だった。
マラント神殿の敷地内、小聖堂であるこの小屋の更に奥まった所にはひとつだけ小さな泉がある。その昔、リージュ達が守って来た水源だった所だと思われる。
その横でキールは器用に風魔法を起こして泉の水を吸い上げては頭から浴びていた。
「美しいな……」
世辞も無いフレトールの素直な感想がポロリと溢れる。水飛沫に朝日を浴びてキラキラと輝く様なキールの裸体はそれだけで奇跡の様だ。
祖国ソアジャールよりも更に内陸に位置するこの地は、少しばかり気温が高い。それでも水浴するにはまだまだ肌寒いだろうに、キールは冷たそうな素振りも見せない。
「キール……」
先程までフレトールの両腕に抱かれていたキールの身体はすっかりと冷たい泉で冷やされてひんやりと冷たい。
「フレトール…起きたのか?」
水浴びをしているキールを後ろから抱きしめるものだから、勿論フレトールも一緒に水浴びする事になった。
気配に聡いフレトールだが今朝はキールが起きる時には深く寝入っていた。キールの気持ちを知って気が抜けたのか、ただ疲れて寝入っているのか…精悍な男の顔が寝入っている時には少しばかりあどけなく見えて可愛いと感じてしまった事は、フレトールには暫く黙っておこう。
そんな何気ない朝の一時が今まで感じたこともない程例え用もなく愛しいと思ってしまった事も……
「…濡れるよ?」
一向に離れようとしないフレトールに構わず水浴びを続けるキール。
昨夜は色々とあって、頭を冷やしながらじゃないと頭が沸騰しそうだから…
「…たまには水浴もいいものだ…」
キールもいるしな…
そっと耳元でフレトールはそう付け加える。
「いつもは室内の浴室のくせに…」
「フフ…そうだな。だがまだ、離れたくない…」
「……」
つい今し方まで密着して眠っていたというのにフレトールはまだ足りなさそうだ。
「…祖母殿の自宅ですっかり寛がせてもらったな。」
「まぁ、ね。リーフが気を利かせてくれたんだろう?でも、もうそろそろ身支度はした方がいいな。」
小聖堂の外では何人かの人間の動く気配がする。神殿の者達はもう起きて朝の奉仕を始めているようだ。
「分かっているが、今まで以上に離れ難い…」
未だにキールの身体に絡んでくるフレトールの腕が雄弁にフレトールの気持ちを伝えてくる。
「そんな事、分かってるよ…」
キールだって同じなのだ。触れてくれるフレトールの手が気持ち良くて、嬉しくて離れていって欲しくない。けど、この地に2人きりというわけではない状況にちゃんと思考を向けられるほどには頭は働いていた。
「もう…出なくては駄目か?」
フレトールが子供みたいな駄々を捏ね始めたら、それが更に可愛く見えて可笑しくて、キールはひとしきり笑い転げてしまった。
「フハハ…!屈強な騎士でも我儘いうんだ……!」
「騎士の前に、俺も1人の男だからな?」
「分かってる…ちゃんともう分かってるよ……俺だって…エルフって言う前に、愛する者を見つけた1人の男だ…。やっと、返せるな。愛してるよ、フレトール…」
何度も貰っていたフレトールからの告白に、心からキールも答える。
「うん…いいかもしれない…」
「何が…?」
キールの甘い告白を受けて、フレトールは夢心地でそれを受ける。少し冷えた柔らかなキールの唇を甘く吸いながらこの幸せが、夢の様に感じられて仕方がない。
「フレトールと生きるなら、どこでも…お前が言った様に、仲間の残滓を追うのも良いかもしれない…」
それを残った者達に伝えるのも…こんなに幸せなんだったら、きっとそれも悪くない………
息継ぎの合間に、キールはフレトールの名前を呼ぶ。与えられる快感に息を詰めそうになりながら必死にフレトールに縋り付いて。
「ぁあっ…!…ふぅぅ…」
一際深く強く、力の抜けたキールをフレトールは穿つ。反射的に身体が逃げそうになってもフレトールはその腕からキールを逃そうとはしない。何度も続く突き上げにキールは言葉にならない声しか出せなくて、更に力を削ぎ落とす様な快感に自然と涙が流れ落ちる。
本当に…凄い威力だ…
初めて身体を重ねた時から回を重ねる毎に深くキールは思い知る。自分の身体がまるでフレトールの身体に合う様に作り変わっているんじゃないかと思う程に、ぴたりと寄り添い合わさりあっている事に。
知らないよ…こんなに嬉しいなんて……
更に流れてくる涙は快楽によるものだけではない。
「キール……辛くはないのだろう?」
フレトールの腕の中で、何度か達しているキールなのだから痛みや苦しさは大きくないはずなのだが、キールはホロホロと涙を流す。
「あっ…ん…耳…で、話す…な…っ」
フレトールが直接耳に口をつけて話すものだから、息の熱さや息吹、快感に耐えているフレトールの低い声がキールの背筋を貫いて行く。
「キール……」
「ゃ…ぁ…っ…くない…辛くない…!」
止まらない律動から与えられる刺激だけでもキールは1人で持て余しているのに、答えるまで問いかけを止めそうに無いフレトールにキールは必死に答えを返した。
それでもキールの1番弱い所を探るのを止めてくれないフレトールに、キールは力の入らない腕を伸ばす。
下半身から与えられる刺激は全身を甘く痺れさせて身体を支える事すらできず、今自分がどんな姿勢でいるかも分からなくなるほど強烈にキールを支配していった…
「キール……」
やっとの思いでフレトールの頬を撫でるキールの白い手に、フレトールは何度も何度もキスを落とす…
「…れ、しいっから…ぁ…んっ」
「キール…?」
「うれし…っから、しかた…なっ」
嬉しいから…涙を止める事なんて、できやしない…嬉しいから…気を失いそうなほどの激しさから、少し怖くて本当は逃げ出してしまいたくても、手を伸ばす事を止められない…
フレトールはいつもどんな状態のキールであっても、必ず満面の笑顔で心から嬉しそうに躊躇せずにキールのその手を取ってくれるから………
鳥達の囀りや風の音が窓を閉めていても聞こえてくるほどの素朴な造りの小屋。マラント神殿の者達はその小屋を小聖堂と呼び畏怖を込めて軽々しくは立ち入ってはこない。これはその昔、キールの祖母リージュがかけたエルフの魔法の一つの効果がまだ残っているからだが、この中に残されたフレトールとキールには有り難かった事だろう。
少し広めの寝台の上には、上質とは言えない素朴な木綿の寝具類が使われ、置いてある食器類も木を削って作られた荒削りの物だ。建てられてから100年近くは経つこの小屋はあちこち痛み、歩けば床が軋んで音を立てる。一見するとこの小屋は嵐でも来れば今にも吹き飛んで倒れてしまいそうな小屋なのだ。その小屋に昨夜神官長リーフはフレトールとキールを2人だけにしてくれた様で、あの後ここを訪ねてくる者は誰もいなかった。
その小屋でフレトールが目を覚ましてみれば、隣で寝ていたはずのキールはいない。昨夜はあれだけ触れ合ったのだからキールは寝ついてしまうかもしれないと思っていたフレトールの心配をよそに、キールは早朝この小屋から抜け出した様だった。
マラント神殿の敷地内、小聖堂であるこの小屋の更に奥まった所にはひとつだけ小さな泉がある。その昔、リージュ達が守って来た水源だった所だと思われる。
その横でキールは器用に風魔法を起こして泉の水を吸い上げては頭から浴びていた。
「美しいな……」
世辞も無いフレトールの素直な感想がポロリと溢れる。水飛沫に朝日を浴びてキラキラと輝く様なキールの裸体はそれだけで奇跡の様だ。
祖国ソアジャールよりも更に内陸に位置するこの地は、少しばかり気温が高い。それでも水浴するにはまだまだ肌寒いだろうに、キールは冷たそうな素振りも見せない。
「キール……」
先程までフレトールの両腕に抱かれていたキールの身体はすっかりと冷たい泉で冷やされてひんやりと冷たい。
「フレトール…起きたのか?」
水浴びをしているキールを後ろから抱きしめるものだから、勿論フレトールも一緒に水浴びする事になった。
気配に聡いフレトールだが今朝はキールが起きる時には深く寝入っていた。キールの気持ちを知って気が抜けたのか、ただ疲れて寝入っているのか…精悍な男の顔が寝入っている時には少しばかりあどけなく見えて可愛いと感じてしまった事は、フレトールには暫く黙っておこう。
そんな何気ない朝の一時が今まで感じたこともない程例え用もなく愛しいと思ってしまった事も……
「…濡れるよ?」
一向に離れようとしないフレトールに構わず水浴びを続けるキール。
昨夜は色々とあって、頭を冷やしながらじゃないと頭が沸騰しそうだから…
「…たまには水浴もいいものだ…」
キールもいるしな…
そっと耳元でフレトールはそう付け加える。
「いつもは室内の浴室のくせに…」
「フフ…そうだな。だがまだ、離れたくない…」
「……」
つい今し方まで密着して眠っていたというのにフレトールはまだ足りなさそうだ。
「…祖母殿の自宅ですっかり寛がせてもらったな。」
「まぁ、ね。リーフが気を利かせてくれたんだろう?でも、もうそろそろ身支度はした方がいいな。」
小聖堂の外では何人かの人間の動く気配がする。神殿の者達はもう起きて朝の奉仕を始めているようだ。
「分かっているが、今まで以上に離れ難い…」
未だにキールの身体に絡んでくるフレトールの腕が雄弁にフレトールの気持ちを伝えてくる。
「そんな事、分かってるよ…」
キールだって同じなのだ。触れてくれるフレトールの手が気持ち良くて、嬉しくて離れていって欲しくない。けど、この地に2人きりというわけではない状況にちゃんと思考を向けられるほどには頭は働いていた。
「もう…出なくては駄目か?」
フレトールが子供みたいな駄々を捏ね始めたら、それが更に可愛く見えて可笑しくて、キールはひとしきり笑い転げてしまった。
「フハハ…!屈強な騎士でも我儘いうんだ……!」
「騎士の前に、俺も1人の男だからな?」
「分かってる…ちゃんともう分かってるよ……俺だって…エルフって言う前に、愛する者を見つけた1人の男だ…。やっと、返せるな。愛してるよ、フレトール…」
何度も貰っていたフレトールからの告白に、心からキールも答える。
「うん…いいかもしれない…」
「何が…?」
キールの甘い告白を受けて、フレトールは夢心地でそれを受ける。少し冷えた柔らかなキールの唇を甘く吸いながらこの幸せが、夢の様に感じられて仕方がない。
「フレトールと生きるなら、どこでも…お前が言った様に、仲間の残滓を追うのも良いかもしれない…」
それを残った者達に伝えるのも…こんなに幸せなんだったら、きっとそれも悪くない………
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