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人との関わり

2 目覚め

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 長い夢から覚める時は、時折酷く物悲しくなる。懐かしく絶対に忘れられない思い出と香りの中で、そこから離れ難くなって何年振りかで目に涙が溜まっているのが夢の中でもわかった…

 すぅっと目を開ける。パチパチと瞬きをすれば、溜まった涙がポロリと溢れてしまって…

「あ…泣いて…?」

 キールは自分が泣いている事に気がついて一気に現実に意識が浮上してきたようだ。

「あ!気がつかれましたか?」

「!?」

 聞きなれない、……!?

「…どうしたのです?運搬時は完璧だと思っていたのですが?」

 キールの目の前で茶髪の髪をした背の高い者が、心配そうに緑の瞳をキールに向けてくる。

「ぎっ………」

「どこか痛むのですか?」

「ぎゃぁぁぁわぁあぁぁ……!」

 弾かれた様にキールの身体が動いた。近寄ってきた者から一気に距離を取ろうと叫びながら後方へとキールは跳ね飛んだ。


 森じゃない!?


 手で触れたのは寝具の感触。パッと視界に入ってくる景色も、自分がいた森の風景ではない。どこかの室内のようだ。


 ここ、どこだ?


 辺りを見回して確認したいところだけど、今は目の前にいる者が問題。

 見知らぬ背の高い者…見たこともない瞳と髪の色をしている。肌の色も若干キールとは違った。

 男…で、いいんだろうな?男で……
 耳、も違う……?

「まさか…人間…?」

 エルフと人間とは明らかな違いがある。外見的にすぐわかる違いだ。髪や瞳の色もそうだが、耳の形が違う。エルフは森の住人だ。物音を良く拾えるようにか人よりは耳が長い…けどこの男は…

「そうです!私はソアジャール国の騎士をしております。フレトール・レビンジャーと申します。」

「なんでここに人間が!?」

 自分の疑問が正解だった事に更に驚いて、キールは寝台の裏へと逃げ込んだ。

「あぁ、ここはソアジャール国の王城ですよ。貴方様を太古の森で見つけましてここまでお連れしたのです。」

 フレトールと名乗った男の顔は笑顔だったが、なぜか困った者の様にも見える。

「王城………嘘だろ?」


 森にいた自分が王城?人間の住む領域に?どうやって?


 キールはただ昼寝のつもりで草の上に寝ていただけだった。大好きだった最愛の祖母を弔う為に太古の森の入り口付近まで行きはしたが、人間の住む領域になんて近付いてさえいない。

「嘘ではございません。私共がお連れしたのですから。」

 目の前の男はキールが逃げ回るからかこれ以上近付いては来ない。

「嘘だ……!」

 なんと言われようとも未だに信じられないキール。いや、信じたくなかった。


 まさか、人間に捕まるなんて……!?


「どこか、痛むところはありませんか?先程は泣いていたようにお見受けします。」

「泣いて…?……お前には、関係のない事だ!こっちに来るな!」

「しかし、もし怪我などされていては…治療をしなくてはいけませんし……」

「何を言ってる?お前達人間は逆に俺達に攻撃してくるくせに!」

「は…?エルフ殿…何を言われます?私達は貴方を傷つけようなどと思ってもおりません!」

「嘘つき!!俺は知っているんだからな!」

 キールは興奮し、徐々に声が大きくなる。誰も側に寄せ付けないとの態度でキールが言い切った所で、ガチャリと部屋のドアが開いた。

「何を騒いでいるのだ?この小猿が…!」

「!?」


 また、変なのが来た!


 キールにとっては人間を見るのは今日が初めて。美醜の判断は勿論の事、男女の区別も怪しいところ。今新しく入ってきたのはキラキラと太陽のような金の髪と冷たい茶色の瞳の人間と、夜の様な黒髪、黒眼の人間。こちらは顔に二つの丸い物を付けていて両手に何やら沢山の荷物を抱えてきていた。

「ほぅ…!目はしっかりと覚めたようだな?」

 金髪の人間は随分と偉そうな物言いをする。

「覚めて、悪いか!?」

「悪いとは言っておらんだろう?そうキャンキャン喚くな。お前は躾もなっとらんような本物の猿なのか?」

 この言葉にはキールも頭にきた…まさか人間からこんなに侮辱めいた事を言われるとは思ってもいなかったからだ。

「俺は猿ではない!森に住むエルフだ!!」

「ほう?そなたがねぇ?」

 一気に間合いを詰めてきた金の髪の人間に、キールは腕を掴まれる。

「!?」

「流石に容姿は美しいな…御伽噺に出てくるような幻想さではないか?」

 間近に迫る人間の顔……!!

 
……キール、クリティカルヒットからは逃げられないのよ?……


 聞こえてくるのは優しい祖母の声。
 けれど、キールにはそれが怖くて、怖くて…祖母には言えなかった恐怖に焼き切れそうだった…!








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