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「姫様、どうやらここで足止めで御座います……姫様?」
馬車の外から声をかけるが、しばし返答が無い。小窓から覗いてみれば珍しい事にサザーニャはウトウトと眠っている様であった。
一国の姫君として王城に生まれ、神託の巫女姫となってからは王城巫女宮より殆ど外出せずに過ごしてきた。
ゴアラへは幼少の折数度来たことがあるだけで、慣れぬ小さな馬車で気の張る長旅はサザーニャの体力も限界だったのだろう。
急ぎ宿を探して休ませて差し上げなければ!お付きの騎士達が周辺宿を聞きまわるも宿は殆ど空いていない状態であった。
長旅覚悟で地方から出てきた令嬢の中には馬車の中で寝泊りする者も出てきた程だ。神殿ができてから一度にこれ程の人が集まったことが無いというくらいに多くの人で溢れかえったのである。
常であれば国賓として迎えられる様な身分であるサザーニャであり、勿論ゴアラに来た時は王城にて留まるのが常であった。
ゴアラの宿屋での宿泊も、野宿なども勿論した事がなく女騎士達は主人を休めることができる場所を確保する事に全力を注ぐ事になった。
サザーニャの一行は女性のみの一団だ。他の参拝者達は屈強な騎士や護衛兵が付いており、周りの人々からもやや浮いて見えてしまう一団だ。
余りにも多くの馬車が一度に止めておける場所もなく、街の周囲を囲む様に停車させそれぞれ休む様にと触れが出された。
サザーニャの一行も町中に程近く明るさも十分望めるところに落ち着く事になった。
「姫様、ここで申し訳ありませんが、こちらが本日の夕食になります。評判の良い宿屋が出している夕食でして、味は保証いたします。毒味も終わって居ますのでゆっくりとお召し上がりください。」
「ここに留まる方々が多いのですね。」
食事を受け取りながら狭い車内で何とか溢さぬ様にゆっくりと食べ始めた。
「美味しい…。ゴアラでは王城の外にも出た事などなかったのですもの。こんな時ですが、良い機会に恵まれたと思いたいですわね。」
「お宿が取れずに申し訳ありません…。姫様が前向きでいらっしゃるので私達も力付けられます。」
「貴方達もゆっくりと休んで頂戴ね。疲れているでしょう?」
野宿するしかないのだ、それでも体を休めて欲しかった。
「夜分に失礼いたします…」
突然に声が掛けられる。騎士に気取られぬほど、気配がなかった。夜間であり、日中よりも注意していたのに…
「何者?」
馬車から離れた茂みの方からフードを被った一人の男が姿を現した。
「お前は、あの時の?」
エベル国境付近であった不思議な魔術士…
「言付けを主人より預かっております。お嬢様方、主人の館にご案内いたします。其方で数日お過ごし下さい。」
物腰はごく丁寧だが、声質からは感情は読み取れない。
「貴方達少し下がっていて?」
サザーニャが護衛騎士に声をかける。
「姫様?」
「大丈夫、その者と話がしたいのです。ですがどうかこのままでご無礼をお許しください。」
「構いませんよ。此方の用は済みましたから。其方の御用は何でしょう?」
「先ずは先日の礼を申し上げます。
そして貴方様のご主人様のお申し出有り難いとは思いますが、此度の旅は人となるべく関わらぬ様にと参ってきた者です。ご主人様のお世話になっては関わらぬ、では通りませぬでしょう。ご主人様のお気が悪くなりませぬ様に謝っていただくことは出来ますでしょうか?」
「ああ、それならば問題はありませんよ。その屋敷は今は使われていない物ですから。勿論掃除はしてありますが、使用人はおりませんし、諸々のことはあなた方でして頂かなくてはいけませんが、自由に使って良いとのことでした。」
「重ねて失礼な事をお聞き致します。貴方様の話の何をもって信頼すればよろしいかしら?」
「成る程。用心される事は良い事ですね。お待ちください。」
フードの男がフードを取った。
漆黒の黒髪に深い深い緑の瞳。優しげな表情からは敵意は感じない。
ホァと男の手の周りに霧が立ち込める。
手の上に何か載っている?
「此方をお確かめ下さい。」
男が出してきた物は一つのメダルの様に見えた。
メダルの様に見えたのはペンダントだ。
台座の上に刺繍された布が貼ってある?
「それを此方へ!早く!」
失礼かもと思ったが、男の手に持っているものに見覚えがある様に思ったのだ。
女騎士が受け取り、サザーニニャの元へ運んできた。
「間違えありません。持ち主の方を存じています……
けれど、どうして?」
サザーニヤはペンダントを見つめたままポツリと呟いた。
「それの持ち主からの依頼なのです。今は捨て置かれている屋敷へと貴方様を招くようにと。ご安心下さい。神殿までは私が案内を致します。勿論ご滞在中は訪問者などが無いように配慮致しましょう。」
「姫様……如何なさいますか?」
「そんなに気遣って下さって…もう、あの方には全てお見通しでしたのね?では、もう何も隠し倒せるものなどありませんわね…。」
サザーニャは顔を上げて男を見返す。
「貴方様のご主人様の申し出に従いましょう。案内を頼めますか?」
「此方の申し出を受けてくださり、賢明なご判断ですね。では道すがら貴方様の疑問にもいくつかお答えいたしましょう。」
「不思議な魔術士様。理を外れていますのに何故だか貴方様からは危機感を感じませんの。」
「貴方に何かありましたら、私が本気でゴアラの王に命を狙われることになりそうですよ?」
クスクスと笑いながら、恐ろしい事をさらりと言う。
「全てにおいて、貴方様の邪魔は一切致しませんのでご安心を。」
今までの道中が嘘の様に屋敷までの道のりは何とも和やかなものだった。
馬車の外から声をかけるが、しばし返答が無い。小窓から覗いてみれば珍しい事にサザーニャはウトウトと眠っている様であった。
一国の姫君として王城に生まれ、神託の巫女姫となってからは王城巫女宮より殆ど外出せずに過ごしてきた。
ゴアラへは幼少の折数度来たことがあるだけで、慣れぬ小さな馬車で気の張る長旅はサザーニャの体力も限界だったのだろう。
急ぎ宿を探して休ませて差し上げなければ!お付きの騎士達が周辺宿を聞きまわるも宿は殆ど空いていない状態であった。
長旅覚悟で地方から出てきた令嬢の中には馬車の中で寝泊りする者も出てきた程だ。神殿ができてから一度にこれ程の人が集まったことが無いというくらいに多くの人で溢れかえったのである。
常であれば国賓として迎えられる様な身分であるサザーニャであり、勿論ゴアラに来た時は王城にて留まるのが常であった。
ゴアラの宿屋での宿泊も、野宿なども勿論した事がなく女騎士達は主人を休めることができる場所を確保する事に全力を注ぐ事になった。
サザーニャの一行は女性のみの一団だ。他の参拝者達は屈強な騎士や護衛兵が付いており、周りの人々からもやや浮いて見えてしまう一団だ。
余りにも多くの馬車が一度に止めておける場所もなく、街の周囲を囲む様に停車させそれぞれ休む様にと触れが出された。
サザーニャの一行も町中に程近く明るさも十分望めるところに落ち着く事になった。
「姫様、ここで申し訳ありませんが、こちらが本日の夕食になります。評判の良い宿屋が出している夕食でして、味は保証いたします。毒味も終わって居ますのでゆっくりとお召し上がりください。」
「ここに留まる方々が多いのですね。」
食事を受け取りながら狭い車内で何とか溢さぬ様にゆっくりと食べ始めた。
「美味しい…。ゴアラでは王城の外にも出た事などなかったのですもの。こんな時ですが、良い機会に恵まれたと思いたいですわね。」
「お宿が取れずに申し訳ありません…。姫様が前向きでいらっしゃるので私達も力付けられます。」
「貴方達もゆっくりと休んで頂戴ね。疲れているでしょう?」
野宿するしかないのだ、それでも体を休めて欲しかった。
「夜分に失礼いたします…」
突然に声が掛けられる。騎士に気取られぬほど、気配がなかった。夜間であり、日中よりも注意していたのに…
「何者?」
馬車から離れた茂みの方からフードを被った一人の男が姿を現した。
「お前は、あの時の?」
エベル国境付近であった不思議な魔術士…
「言付けを主人より預かっております。お嬢様方、主人の館にご案内いたします。其方で数日お過ごし下さい。」
物腰はごく丁寧だが、声質からは感情は読み取れない。
「貴方達少し下がっていて?」
サザーニャが護衛騎士に声をかける。
「姫様?」
「大丈夫、その者と話がしたいのです。ですがどうかこのままでご無礼をお許しください。」
「構いませんよ。此方の用は済みましたから。其方の御用は何でしょう?」
「先ずは先日の礼を申し上げます。
そして貴方様のご主人様のお申し出有り難いとは思いますが、此度の旅は人となるべく関わらぬ様にと参ってきた者です。ご主人様のお世話になっては関わらぬ、では通りませぬでしょう。ご主人様のお気が悪くなりませぬ様に謝っていただくことは出来ますでしょうか?」
「ああ、それならば問題はありませんよ。その屋敷は今は使われていない物ですから。勿論掃除はしてありますが、使用人はおりませんし、諸々のことはあなた方でして頂かなくてはいけませんが、自由に使って良いとのことでした。」
「重ねて失礼な事をお聞き致します。貴方様の話の何をもって信頼すればよろしいかしら?」
「成る程。用心される事は良い事ですね。お待ちください。」
フードの男がフードを取った。
漆黒の黒髪に深い深い緑の瞳。優しげな表情からは敵意は感じない。
ホァと男の手の周りに霧が立ち込める。
手の上に何か載っている?
「此方をお確かめ下さい。」
男が出してきた物は一つのメダルの様に見えた。
メダルの様に見えたのはペンダントだ。
台座の上に刺繍された布が貼ってある?
「それを此方へ!早く!」
失礼かもと思ったが、男の手に持っているものに見覚えがある様に思ったのだ。
女騎士が受け取り、サザーニニャの元へ運んできた。
「間違えありません。持ち主の方を存じています……
けれど、どうして?」
サザーニヤはペンダントを見つめたままポツリと呟いた。
「それの持ち主からの依頼なのです。今は捨て置かれている屋敷へと貴方様を招くようにと。ご安心下さい。神殿までは私が案内を致します。勿論ご滞在中は訪問者などが無いように配慮致しましょう。」
「姫様……如何なさいますか?」
「そんなに気遣って下さって…もう、あの方には全てお見通しでしたのね?では、もう何も隠し倒せるものなどありませんわね…。」
サザーニャは顔を上げて男を見返す。
「貴方様のご主人様の申し出に従いましょう。案内を頼めますか?」
「此方の申し出を受けてくださり、賢明なご判断ですね。では道すがら貴方様の疑問にもいくつかお答えいたしましょう。」
「不思議な魔術士様。理を外れていますのに何故だか貴方様からは危機感を感じませんの。」
「貴方に何かありましたら、私が本気でゴアラの王に命を狙われることになりそうですよ?」
クスクスと笑いながら、恐ろしい事をさらりと言う。
「全てにおいて、貴方様の邪魔は一切致しませんのでご安心を。」
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