[完結]その手中に収めるものは

小葉石

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114 ガイの印

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 昼間の光景は中々にソウにとっては衝撃的な物だった。魔力を使ってお礼を言われる事は有ったし、驚かれることもあった。けれど人に忌み嫌われ呪いの言葉まで吐かれる事はなかった…直前まで楽しくお話してくれていた女の子でさえ、恐怖に顔を引きつらせて大泣きしていた。 
 魔力を持っている事さえ憎く、罪悪感に苛まされたあの日々を再び目の前に突きつけられたみたいだ。

"これがゴアラだ"

 ガイの言葉が木霊する。無事に今まで採取した泉のサンプルを送り届けた後に、町外れの森の木の上でソウは昼間の出来事が頭から離れない。
 魔力持ちを襲ってくるならばただの敵だ。けれど敵意も暴力も持ち合わせていなかった人々に目の前で拒絶されるのを見るのは、敵を目の前にするのと違う恐怖があった。

「可愛い子だったのにな。」
 サジと同じ位の子だ。仲良く出来ると思っても壁は高く厚い。

「だからと言って辞められない…」
 ポツリと出た呟きに敢えて答える者も無かった。



 ゴアラの国内にもそれぞれ領土があり領主がいる。貴族の館は王城がある王都のみならず国内随所に見られ、大きな街には必ず貴族の館も立ち並んでいる。
 国が領土をまとめ上げていると言うよりは領主が領内で又はその街独自の統治法で民を治めている。
 
 納税については監査が入るが、罪人を裁く方法はその土地様々だ。そして領主や貴族の周りには魔力持ちに対し鼻の効く者達が多く集まるのでなるべく大きな街には入りたくないのだが…

 昨夜、森の中から出て移動中、バートの一言でこの行動を覆してしまった3人だ。

 ゴアラ中央寄りの都市ペルソア、大広場は溢れんばかりの人々でごった返している。綺麗に整備されている広場には噴水もあり、夕焼け時などには素晴らしい街の景観が楽しめそうな所ではあるが、現在の広場は殺伐としており殺気にも似た空気が溢れていた。

「パザンで印をつけた奴らがいる。」

 バートの一言で見た事のあるフードを被った男達を追ってここまで来たが、思った通りゴアラの者だ。フードに付けたバートの印は極々小さな物だから、付けられた者は気にもしなかったのか?
 そのフードの男達は広場中央付近に高く建てられた舞台の上に上がっていった。

「何が始まる?」
「裏切り者の処刑だって!」

 ザワザワと煩い話し声から拾った内容だ。処刑?公開で?微動だにしないパートとガイに比べソウは内心焦ってもいる。人の処刑は流石に見た事はないのだ。


 バートもそうだが、ガイの顔色も悪い…
 

 裏切り者……
 わざわざ印の付いたマントを替えもせず……
 見せしめの処刑は一体誰に見せる為なのか……

 ガイの表情が一層険しくなると、ガッとバートがガイの肩を掴む。
「何としても、抑えろよ?でなけりゃ明日はあそこに3人並ぶぞ?」
 ガイの耳元で小さく囁く声をソウは辛うじて拾った。 

 3人とは自分達のことか?

 人々の歓声が一層大きくなる。舞台中央に後ろ手に縛られた男が連れてこられた。

 怯えた男の顔なら見覚えがある。

 バッとガイを振り返れば、肩に置かれたバートの手首を掴んで男を凝視している。噛み締めている唇からは既に血が滲んでいるようだ。
 
 フードの男の一人が、縛られた男の罪状を伝える。

"この者はゴアラの民でありながら、憎むべき魔力持ちより加護を受けた!"
  
 衆人環視の中でこのように告げた様に聞こえたが、魔力持ちの加護とは?

「何で加護なんて与える必要がある?」
 絞り出す様にガイが呻く。ガイの両肩はバートによってガッチリと組まれ飛び出して行く事は出来ないだろう。

「耐えろよ?」

「あぁ、同じ間違いは起こさん。」
 バートの腕を握り返しているガイが酷く頼りなげに見えて、まるでバートにすがっている様にも見えた。

"これが証拠である!"

 男を抑えていた者の一人が男の上半身の服を破り捨て、右肩を顕にする。

 魔法陣?男の右肩には何かの模様が描いてある様だがここからでは何かわからない。
 周りが更にざわついていき、短く悲鳴のようなものも聞こえてきた。明らかに嫌悪の色が濃くなっていく。

「何が加護だ。ありゃあマーキングだよ。自分の獲物ですってな。」
 バートがボソリと呟いた。

「あの人、何したの?」

 バートもガイも何も答えず男を見ている。 

「にいちゃん達旅行者かい?」
 隣で眺めていた男がソウに話しかけてきた。小さく肯くソウに、ああ、やっぱりなと呟いた。

「じゃあ、こんなのはあんまり見た事ないだろう?ゴアラの名物でもあるかもしれないがね?あいつは憎むべき魔力持ちの魔法を受けて染まっちまったのよ。他国に逃げときゃ良かったものを、時々帰ってくるものや捕まって連れ戻される者もいる。あいつもそうだろうよ。」
 近所の店の主人だろうか?エプロンを付けたまま見物に出てきたようだ。

「全く保守派の奴らもこんな事するから入ろうって奴らが減るんだろうさ…」
 ブツブツと何か言いながら混み合う人混みの方へ入っていってしまった。

 男の処刑が始まるようだ。新たに4人の騎士と見られる男達が舞台の上に上がってくるが、何れも手に得物は持っていないようだ。

 開始、の宣言と共に騎士達は処刑対象の手足をおもむろに掴みあろう事か引きちぎったのである…




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