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105 甘痺草3
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「人払いを…」
地を這うような低い声で執務室に突撃してきたシエラの雰囲気がいつもと違う。着ている衣類は同じでも纏う気?と言うか魔力が周囲に渦巻いている。
普段で有れば急ぐ時は転移して来るし、魔力等おいそれと外には漏らさぬほどにコントロールに長けているのに今では白い羽毛の様な物がシエラの周りを舞っている。
「シエラ?」
訝しげにシエラを見つめながら手を挙げ人払いするルーシウス。ルーシウスの執務机に近づいて来るシエラを遠巻きにする様に侍従達は礼をして外へ出ていく。
チラリとシエラの瞳がシガレットを捕らえる。深紅の瞳からは感情の色は読み取れない。シエラの魔力が渦巻く中で、フゥと溜息をついて礼をとり身を引く。
「確認ですが、シエラ様私も人払いの対象でしょうか?」
シガレットは宰相だ。国に関する事ならば一早く知っておきたいのだが。
それに対しシエラは無言だ。視線を落とし何やら考えあぐねている様子。ルーシウスをチラリと仰げば視線で室内の隅を示される。何かあればシガレットにも対応出来るところにいた方が良いのとの判断だろう。
「シエラ?」
もう一度ルーシウスが声をかける。
スタスタとそのまま執務机に歩いてきたシエラは、一つの包みをルーシウスの前に出した。先程の昼食会でアレーネから預かった甘痺草の包みだ。
「サウラも呼んだ。アレーネ嬢はこれをどこで?」
「北の国からだそうだ。知っている物か?」
「知っているも何も、これはサタヤ村の人しか知らない物よ?」
昔、魔物に追われ村を転々と移しながら、魔力のない、又は弱い村人でも魔物を倒せる様にと当時の村人が苦慮を繰り返してこの痺れ草を見つけ出した。矢尻や刃先に塗り込めて魔物の体内に入れば相手の動きを止める事が容易くなり、これによって村人の死亡率も下がったのだ。
キエリヤ山は広い。偶然にも他の者が見つけ出し、使用していてもおかしくは無いが、"甘痺草"と名付けたのは当時の村長である。
アレーネが持っていてもおかしくは無い物かもしれないが、当時の名前その物で、人に使用する目的ではまず有り得ないのだ。
「あの娘を問い詰めても良いかと思ったけど他国の者だしね。」
きっと詳細は知らずに持たせられている。
「うむ。他に村から出た者とは考えられないか?」
確かにシエラの後にも村を出たものは何人もいるだろう。その者達が広めたと言う線もあるだろうから。
「毒草の類は村長の家で管理される。その生息域も秘匿されるし、生食のままではただの野草。この様に乾燥させるにもコツがあるの。そして知っているものは外には出れない事になっていたはず。」
「サウラは食べたことがあると。」
ルーシウスの言葉にシエラからは苦笑が漏れる。
「フッサウラの魔力研磨の為になら鍛錬の一つとしてやっていてもおかしくない。」
トントンッ
室内にシエラの魔力が漂う中、控えめなノックが聞こえてきた。本来ならば取り次ぎが来室を伝えるはずだが、サウラは自分でドアを開けて覗き込む様に入って来る。
侍女に午睡でも勧められたのか柔らかそうな生成りの室内着のまま急いで来たらしい。
「サウラか。入れ。」
サウラが来る事は分かっていても、顔を見るとついルーシウスの顔は綻ぶ。
「あの、失礼します。どうしたのですか?警備の兵が怯えてて入るのも止められたんですけど?」
ルーシウスの柔らかい顔を見たからか、サウラの間の抜けた質問が効いたのか、シエラもフッと肩の力を抜く。
そのシエラの周りには羽毛の様な羽にも似た魔力の渦が未だに健在で…
「あ、これですか?」
「本当、皆んな失礼にも程があるわね。」
シエラの魔力も相当なものなのだ。で、なければ魔力が可視化して見えたりはしないのだから…
「呼び立てて済まなかったわね。座りなさいな。」
ソファーに向かうサウラの鼻腔に微かな甘い香りが掠める。
「甘痺草?」
「そうよ。サウラは知っているわよね?」
「ええ。サタヤ村で食べた事もありますし。先程アレーネ様が持ってた物も同じ物でしたし?」
「サタヤではどう教えられていて?」
「狩猟用に使う様にと、人には使ってはいけないと。」
「それはどうして?」
「毒だからでは?」
サウラもそれ以上は知らない。人には毒になると、だから使うなとしか教えられてはいないのだ。
「そういう事よ。製法や副作用はあえて村長以外には教えていない。」
「そうなのですか?パザンの倉庫でもこの香りがしました。痺れ薬を撒いたと言ったあの人はこれを撒いたんだ…」
「誰が撒いたって?」
バッとシエラがサウラに向き直る。
「倉庫にいたフードの男です。痺れ薬という事を知っていたし、倉庫の中はこの匂いが残っていて中の人々は倒れてましたから。」
「そう言えば帰国後にサウラが寝言で甘痺草と呟いていたな。」
「ルーシュ………。」
ヒュウンとシエラの魔力の渦がが濃くなる。執務室の中がまるで羽毛枕か何かをぶち撒け強風で煽った様な状態になっている。
「貴方って子はどうして肝心な事を最初に言わないの?」
母が子を叱りつける様にシエラの怒りは容赦ない。
こんなに怒られるとは子供の時以来!
「まて、シエラ!聞いた事の無い物の名だし、サウラの意識もまだ朦朧としていた!寝言だと思ったのだ!」
既に執務室の書類は攪拌され、シガレットは手に持つ重要書類を死守している。
サウラは自身に結界を張っているので影響は出ず、魔力重視の中で育ってきているので荒れ狂った中でも落ち着いている。
「シエラ様報告が遅くなってしまった事申し訳ありません。他の暗部隊員から既に話が行っていると思ったのです。この甘痺草を使った者の顔は見れませんでしたが、ルーシウス様の声の響きに凄く良く似ていたんです。だから一瞬ルーシウス様かと思った程で。」
ピタッ
サウラのこの一言で、一気に室内は静寂に包まれた。
地を這うような低い声で執務室に突撃してきたシエラの雰囲気がいつもと違う。着ている衣類は同じでも纏う気?と言うか魔力が周囲に渦巻いている。
普段で有れば急ぐ時は転移して来るし、魔力等おいそれと外には漏らさぬほどにコントロールに長けているのに今では白い羽毛の様な物がシエラの周りを舞っている。
「シエラ?」
訝しげにシエラを見つめながら手を挙げ人払いするルーシウス。ルーシウスの執務机に近づいて来るシエラを遠巻きにする様に侍従達は礼をして外へ出ていく。
チラリとシエラの瞳がシガレットを捕らえる。深紅の瞳からは感情の色は読み取れない。シエラの魔力が渦巻く中で、フゥと溜息をついて礼をとり身を引く。
「確認ですが、シエラ様私も人払いの対象でしょうか?」
シガレットは宰相だ。国に関する事ならば一早く知っておきたいのだが。
それに対しシエラは無言だ。視線を落とし何やら考えあぐねている様子。ルーシウスをチラリと仰げば視線で室内の隅を示される。何かあればシガレットにも対応出来るところにいた方が良いのとの判断だろう。
「シエラ?」
もう一度ルーシウスが声をかける。
スタスタとそのまま執務机に歩いてきたシエラは、一つの包みをルーシウスの前に出した。先程の昼食会でアレーネから預かった甘痺草の包みだ。
「サウラも呼んだ。アレーネ嬢はこれをどこで?」
「北の国からだそうだ。知っている物か?」
「知っているも何も、これはサタヤ村の人しか知らない物よ?」
昔、魔物に追われ村を転々と移しながら、魔力のない、又は弱い村人でも魔物を倒せる様にと当時の村人が苦慮を繰り返してこの痺れ草を見つけ出した。矢尻や刃先に塗り込めて魔物の体内に入れば相手の動きを止める事が容易くなり、これによって村人の死亡率も下がったのだ。
キエリヤ山は広い。偶然にも他の者が見つけ出し、使用していてもおかしくは無いが、"甘痺草"と名付けたのは当時の村長である。
アレーネが持っていてもおかしくは無い物かもしれないが、当時の名前その物で、人に使用する目的ではまず有り得ないのだ。
「あの娘を問い詰めても良いかと思ったけど他国の者だしね。」
きっと詳細は知らずに持たせられている。
「うむ。他に村から出た者とは考えられないか?」
確かにシエラの後にも村を出たものは何人もいるだろう。その者達が広めたと言う線もあるだろうから。
「毒草の類は村長の家で管理される。その生息域も秘匿されるし、生食のままではただの野草。この様に乾燥させるにもコツがあるの。そして知っているものは外には出れない事になっていたはず。」
「サウラは食べたことがあると。」
ルーシウスの言葉にシエラからは苦笑が漏れる。
「フッサウラの魔力研磨の為になら鍛錬の一つとしてやっていてもおかしくない。」
トントンッ
室内にシエラの魔力が漂う中、控えめなノックが聞こえてきた。本来ならば取り次ぎが来室を伝えるはずだが、サウラは自分でドアを開けて覗き込む様に入って来る。
侍女に午睡でも勧められたのか柔らかそうな生成りの室内着のまま急いで来たらしい。
「サウラか。入れ。」
サウラが来る事は分かっていても、顔を見るとついルーシウスの顔は綻ぶ。
「あの、失礼します。どうしたのですか?警備の兵が怯えてて入るのも止められたんですけど?」
ルーシウスの柔らかい顔を見たからか、サウラの間の抜けた質問が効いたのか、シエラもフッと肩の力を抜く。
そのシエラの周りには羽毛の様な羽にも似た魔力の渦が未だに健在で…
「あ、これですか?」
「本当、皆んな失礼にも程があるわね。」
シエラの魔力も相当なものなのだ。で、なければ魔力が可視化して見えたりはしないのだから…
「呼び立てて済まなかったわね。座りなさいな。」
ソファーに向かうサウラの鼻腔に微かな甘い香りが掠める。
「甘痺草?」
「そうよ。サウラは知っているわよね?」
「ええ。サタヤ村で食べた事もありますし。先程アレーネ様が持ってた物も同じ物でしたし?」
「サタヤではどう教えられていて?」
「狩猟用に使う様にと、人には使ってはいけないと。」
「それはどうして?」
「毒だからでは?」
サウラもそれ以上は知らない。人には毒になると、だから使うなとしか教えられてはいないのだ。
「そういう事よ。製法や副作用はあえて村長以外には教えていない。」
「そうなのですか?パザンの倉庫でもこの香りがしました。痺れ薬を撒いたと言ったあの人はこれを撒いたんだ…」
「誰が撒いたって?」
バッとシエラがサウラに向き直る。
「倉庫にいたフードの男です。痺れ薬という事を知っていたし、倉庫の中はこの匂いが残っていて中の人々は倒れてましたから。」
「そう言えば帰国後にサウラが寝言で甘痺草と呟いていたな。」
「ルーシュ………。」
ヒュウンとシエラの魔力の渦がが濃くなる。執務室の中がまるで羽毛枕か何かをぶち撒け強風で煽った様な状態になっている。
「貴方って子はどうして肝心な事を最初に言わないの?」
母が子を叱りつける様にシエラの怒りは容赦ない。
こんなに怒られるとは子供の時以来!
「まて、シエラ!聞いた事の無い物の名だし、サウラの意識もまだ朦朧としていた!寝言だと思ったのだ!」
既に執務室の書類は攪拌され、シガレットは手に持つ重要書類を死守している。
サウラは自身に結界を張っているので影響は出ず、魔力重視の中で育ってきているので荒れ狂った中でも落ち着いている。
「シエラ様報告が遅くなってしまった事申し訳ありません。他の暗部隊員から既に話が行っていると思ったのです。この甘痺草を使った者の顔は見れませんでしたが、ルーシウス様の声の響きに凄く良く似ていたんです。だから一瞬ルーシウス様かと思った程で。」
ピタッ
サウラのこの一言で、一気に室内は静寂に包まれた。
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