88 / 143
88 再会3
しおりを挟む
「失礼致します。タンチラード辺境伯領のカリナです。」
入浴が済み粗方準備が整ったサウラの部屋へ訪問者があった。
「カリナさん。」
カリナが入室と同時にアミラとスザンナは礼を取る。
「姫様。お久しぶりに御座います。」
畏ったドレスではなく、緩やかな室内着に近いワンピースを身につけて、洗い流した髪を緩やかに纏め上げてもらっているサウラの表情をカリナは無遠慮にもマジマジと見つめる。その目には心からの安堵の色が宿っていた。
「よろしゅう御座いました。お元気そうで。」
カリナは、サウラの足元で跪き礼を取る。顔色も良く、別れた時の何かに追い詰められた様な様子は見て取れない。
「お久しぶりです、カリナさん。あの心配して来てくれたのですか?」
わざわざ?
「いえ、国から召集が掛かりまして、姫様の顔見たさに志願して参りました。姫様、どうぞカリナとお呼びくださいませね。」
「召集?まさか、戦か何か?」
そんな情報は無かったはずだが?
「違います。小さなものを担当するので大したものではありません。ご挨拶が出来て良かったですわ。」
「カリナ嬢やはり来ていたか。」
カリナがニッコリと笑ってその場を辞する挨拶をすれば扉からルーシウスの声がする。
「陛下お邪魔しておりました。もう退室しますので。」
「道中疲れたであろう?今日は緩りと休んでくれ。」
「はい。後程騎士団の元に出向きましてから下がらせて貰います。」
「よろしく頼む。」
2人の会話を聞きながら、特にルーシウスの声を聞いたら、帰ってきて良かったと心から安堵している自分に気付く。前にあった時はルーシウスに異変が無いことで安心したものだが、今回は自分が会いたいと思ってルーシウスの存在を求めていたのに気付かされた。
心の中に降り積もった会いたい気持ちが脈打っているのが分かる。
カリナが部屋を出るのと同じく、サウラも立ち上がってルーシウスに礼を取る。真面に顔を見れなさそうなのでそれで良しとしよう。
「お帰りサウラ。」
優しく低い声を聞けば、ここにもまた自分の帰りを待っていてくれた者がいたと、ここも自分の帰る場所だと教えてくれている。
「ご挨拶が遅くなり申し訳ありませんでした。」
「いや、良い。シエラの所には行ったか?」
「はい、先程。一番最初にここに来るな、と怒られてしまいました。」
「フッそれは良い、サウラの好きなように。こうしてまた顔を見る事が出来たのだから。俺は満足だ。」
言い終わる間も無くサウラの手を取りソファーへ導く。
応接室には侍女たちが昼食の準備をし始めている。その間ソファーで待つつもりらしい。
「カリナさんが呼ばれたのは暗部にも関係ありますか?」
泉の探索を急がせていたにも関わらず一組を残し帰国させたのには訳があろう。サウラはルーシウスとの昼食を取る為に騎士団には出向いていないが、本来ならば召集が掛かっているはずである。
「ん?まあな。小事だ、サウラは気にするな。」
飄々とした態度を崩さないルーシウスから今回のことは大事か、小事か分からない。
けれどずっとニコニコしているし、本当にそんな事何とも無いように優しい笑みは変わらない。
深いエメラルドグリーンの瞳を見つめれば喜びと共にまた懐かしい気持ちになる。
「キエリヤ山岳を超えました。山の空気が懐かしくて、私の村はもう少し上の方だと思いました。」
「景色を見るだけで分かるのか?」
「はい、でも風の冷たさとか空気の匂いでしょうか?」
「匂いか、やはり違いがあるのだな?」
「ええ、違うと思います。」
「そうか、いつか山の空気も味わってみたいものだな。」
山の田舎も嫌がらず話に付き合ってくれるルーシウス。何度も行ってみたいと言ってくれるのがこんなに嬉しいとは。
「あの、山の空気は無理ですけど、お茶は飲んでみますか?」
「お茶とは?」
「今日受け取ってきたんです。サタヤ村の魔草茶なんですけど…」
そう言えばサウラが何やら手に持っていた包みがある。片手で握れる程の小さなものだが?
これですよ、と手に持っていた包みを見せてくれる。
サタヤ村で採れる魔草から作った茶葉だ。凶暴化せず魔物化した薬草の種を取り育て上げてきたものだ。
冬が長く寒さが厳しいサタヤ村では冬を越すのが一苦労である。川まで凍る寒さの中で過ごさなければならないのだ。
霜に弱い野菜は凍らないように地温を上げ且つ寒風から守り、家畜が凍死しない様に家畜小屋の気温を保つ。皆協力し、それぞれの得意の魔力を用いて環境を保つ為、個々にも魔力を大きく使う時期になる。特に家畜番や畑番になるとその消耗も激しくなる。
そこでこの魔草茶が必要となる。これは枯渇した魔力の回復を高めてくれるもので限界まで消耗しても飲んで一晩眠れば朝には回復している程回復を早めてくれる。サタヤ村では冬になると大鍋でこのお茶が炊き出され、畑や家畜の当番になった者はほぼ一日中この茶を飲みながら作業するのが習わしとなっているのである。
魔力の枯渇は命の危機にも繋がるサタヤでは冬の生命線にもなっているのだ。
その魔草茶を村の皆んなは送ってくれた。これだけでもとても大切に飲む物なのに…
「どの様にして飲むのだ?」
興味深々のルーシウスである。
「お湯で煮出してから好きな薄さにして飲むのです。」
ルーシウスは直ぐに侍女に湯の準備をさせる。食後に飲める様に煮出しておく様に告げると彩り良い料理が並ぶ昼食の席へとサウラを誘った。
入浴が済み粗方準備が整ったサウラの部屋へ訪問者があった。
「カリナさん。」
カリナが入室と同時にアミラとスザンナは礼を取る。
「姫様。お久しぶりに御座います。」
畏ったドレスではなく、緩やかな室内着に近いワンピースを身につけて、洗い流した髪を緩やかに纏め上げてもらっているサウラの表情をカリナは無遠慮にもマジマジと見つめる。その目には心からの安堵の色が宿っていた。
「よろしゅう御座いました。お元気そうで。」
カリナは、サウラの足元で跪き礼を取る。顔色も良く、別れた時の何かに追い詰められた様な様子は見て取れない。
「お久しぶりです、カリナさん。あの心配して来てくれたのですか?」
わざわざ?
「いえ、国から召集が掛かりまして、姫様の顔見たさに志願して参りました。姫様、どうぞカリナとお呼びくださいませね。」
「召集?まさか、戦か何か?」
そんな情報は無かったはずだが?
「違います。小さなものを担当するので大したものではありません。ご挨拶が出来て良かったですわ。」
「カリナ嬢やはり来ていたか。」
カリナがニッコリと笑ってその場を辞する挨拶をすれば扉からルーシウスの声がする。
「陛下お邪魔しておりました。もう退室しますので。」
「道中疲れたであろう?今日は緩りと休んでくれ。」
「はい。後程騎士団の元に出向きましてから下がらせて貰います。」
「よろしく頼む。」
2人の会話を聞きながら、特にルーシウスの声を聞いたら、帰ってきて良かったと心から安堵している自分に気付く。前にあった時はルーシウスに異変が無いことで安心したものだが、今回は自分が会いたいと思ってルーシウスの存在を求めていたのに気付かされた。
心の中に降り積もった会いたい気持ちが脈打っているのが分かる。
カリナが部屋を出るのと同じく、サウラも立ち上がってルーシウスに礼を取る。真面に顔を見れなさそうなのでそれで良しとしよう。
「お帰りサウラ。」
優しく低い声を聞けば、ここにもまた自分の帰りを待っていてくれた者がいたと、ここも自分の帰る場所だと教えてくれている。
「ご挨拶が遅くなり申し訳ありませんでした。」
「いや、良い。シエラの所には行ったか?」
「はい、先程。一番最初にここに来るな、と怒られてしまいました。」
「フッそれは良い、サウラの好きなように。こうしてまた顔を見る事が出来たのだから。俺は満足だ。」
言い終わる間も無くサウラの手を取りソファーへ導く。
応接室には侍女たちが昼食の準備をし始めている。その間ソファーで待つつもりらしい。
「カリナさんが呼ばれたのは暗部にも関係ありますか?」
泉の探索を急がせていたにも関わらず一組を残し帰国させたのには訳があろう。サウラはルーシウスとの昼食を取る為に騎士団には出向いていないが、本来ならば召集が掛かっているはずである。
「ん?まあな。小事だ、サウラは気にするな。」
飄々とした態度を崩さないルーシウスから今回のことは大事か、小事か分からない。
けれどずっとニコニコしているし、本当にそんな事何とも無いように優しい笑みは変わらない。
深いエメラルドグリーンの瞳を見つめれば喜びと共にまた懐かしい気持ちになる。
「キエリヤ山岳を超えました。山の空気が懐かしくて、私の村はもう少し上の方だと思いました。」
「景色を見るだけで分かるのか?」
「はい、でも風の冷たさとか空気の匂いでしょうか?」
「匂いか、やはり違いがあるのだな?」
「ええ、違うと思います。」
「そうか、いつか山の空気も味わってみたいものだな。」
山の田舎も嫌がらず話に付き合ってくれるルーシウス。何度も行ってみたいと言ってくれるのがこんなに嬉しいとは。
「あの、山の空気は無理ですけど、お茶は飲んでみますか?」
「お茶とは?」
「今日受け取ってきたんです。サタヤ村の魔草茶なんですけど…」
そう言えばサウラが何やら手に持っていた包みがある。片手で握れる程の小さなものだが?
これですよ、と手に持っていた包みを見せてくれる。
サタヤ村で採れる魔草から作った茶葉だ。凶暴化せず魔物化した薬草の種を取り育て上げてきたものだ。
冬が長く寒さが厳しいサタヤ村では冬を越すのが一苦労である。川まで凍る寒さの中で過ごさなければならないのだ。
霜に弱い野菜は凍らないように地温を上げ且つ寒風から守り、家畜が凍死しない様に家畜小屋の気温を保つ。皆協力し、それぞれの得意の魔力を用いて環境を保つ為、個々にも魔力を大きく使う時期になる。特に家畜番や畑番になるとその消耗も激しくなる。
そこでこの魔草茶が必要となる。これは枯渇した魔力の回復を高めてくれるもので限界まで消耗しても飲んで一晩眠れば朝には回復している程回復を早めてくれる。サタヤ村では冬になると大鍋でこのお茶が炊き出され、畑や家畜の当番になった者はほぼ一日中この茶を飲みながら作業するのが習わしとなっているのである。
魔力の枯渇は命の危機にも繋がるサタヤでは冬の生命線にもなっているのだ。
その魔草茶を村の皆んなは送ってくれた。これだけでもとても大切に飲む物なのに…
「どの様にして飲むのだ?」
興味深々のルーシウスである。
「お湯で煮出してから好きな薄さにして飲むのです。」
ルーシウスは直ぐに侍女に湯の準備をさせる。食後に飲める様に煮出しておく様に告げると彩り良い料理が並ぶ昼食の席へとサウラを誘った。
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。
ドラゴン王の妃~異世界に王妃として召喚されてしまいました~
夢呼
ファンタジー
異世界へ「王妃」として召喚されてしまった一般OLのさくら。
自分の過去はすべて奪われ、この異世界で王妃として生きることを余儀なくされてしまったが、肝心な国王陛下はまさかの長期不在?!
「私の旦那様って一体どんな人なの??いつ会えるの??」
いつまで経っても帰ってくることのない陛下を待ちながらも、何もすることがなく、一人宮殿内をフラフラして過ごす日々。
ある日、敷地内にひっそりと住んでいるドラゴンと出会う・・・。
怖がりで泣き虫なくせに妙に気の強いヒロインの物語です。
この作品は他サイトにも掲載したものをアルファポリス用に修正を加えたものです。
ご都合主義のゆるい世界観です。そこは何卒×2、大目に見てやってくださいませ。
転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜
家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。
そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?!
しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...?
ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...?
不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。
拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。
小説家になろう様でも公開しております。
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる