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第三節 受験

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時は、2030年――。



もう一つの物語の主人公、主人公ツトムは高校受験の為、勉強に勤しんでいた。

(お金がかかるから、塾には行けない……自分の力で、合格するんだ! それにしても……)

チラリと手に取った赤本を見る。

(赤本の問題、やりまくってるけど、山張って勉強するべきだろうか……? 年度別に見て、次の出題を見極める……? 平均的に出ている問題を抑えとけばいいのかなぁ? でも、山が外れたらどうしようー)

頭を抱える主人公であった。結局、真面目な主人公。赤本の全問題を平日6時間、休日9時間勉強して、完全網羅して受験に挑むこととなった。

主人公が受験する高校と学科は、〇×高校環境学部環境科。ゾムビー達と戦う中で、地球の環境問題や、宇宙に点在するスペースデブリについて考える様になった主人公は高校で環境について学ぶべく、この学科を受験することと決めた。県立の高校だったので、5科目以上を受けるコトとなる。遂には受験日当日がやって来た。携帯をふと見る主人公。

『受験、頑張ってねー。受かったら良いコト、してあ、げ、る(ハートのマーク)』

尾坦子からのメールだった。

(尾坦子さん……どんなとんでもないコトをしてくれるんだろう……? ダメだダメだ、集中集中っと)

主人公は受験票を握りしめ、受験会場へ向かった。一歩一歩歩みを進めていくうちに、心臓の鼓動が大きくなっていくのを感じた。

受験会場へ着いた。主人公は受験票の番号の通りの席へ座り、受験が始まった。社会の試験が始まる。

「始めて下さい」

パラァと、主人公達受験生は、問題用紙を表に向けた。シーンと静まり返る受験会場に、鉛筆の進む音だけが、静かに鳴っていた。

(2020年頃をピークに蔓延した疫病……分かるぞ! 別名……!)

時間の針が刻々と過ぎていった。

(歴史問題だ……何だっけ……出て来ない……)

緊張の余り指先が震える。

(あ……墾田永年私財法!!)



「残り10秒です」



「!?」

主人公は更に緊張した。指先も震えている。

(こん……でん……)



「止め、鉛筆を置いて下さい」



主人公は鉛筆を置いた。

「ふー、何とか書き切れた……」

数分の休憩を挟み、数学の試験が始まる。

「始めて下さい」

(3kmの道のりを……30分で……秒速何mでしょう……? 1kは1000m、30分は1800秒だから……よし! 次は……分速××mは時速何kmでしょう!? 1分は1/60時間で……逆数になるから……で、1mは1/1000kmで普通に割って……)

数学の試験も終わった。

(何とか……何とかついていけてる。赤本の問題もだいぶ出てきた残りの科目も、頑張らなきゃ!)



――、

試験が終わる頃には、夕日が傾いていた。岐路に立つ主人公。

「はー、しんどかった。狩人の任務以来のしんどさだよ。まぁ、やれることはやった! 後は結果を待つのみ!!」

そこへ――、

「ツトムくーん!」

「!?」

尾坦子が待ち伏せていた。

「受験、お疲れ様」

「あ、ありがとう……尾坦子さん……」

「頑張ったキミに、ごほうびあげる!」

「え!?」

「目を閉じて」

「! ……」

少し動揺したが、促されるままに主人公は目を閉じた。そして――、



二人の唇は重なる。



しかも、今までとは違う感覚のモノだった。

「! ! ! !」

二人の唇と唇は一旦離れ、尾坦子は言った。

「大人のキスよ。受かってたら続きをしましょう」

中学三年の終わりを迎える主人公だったが、刺激が強すぎたようで……。

「は……ハヒ」

ろくに返事もできなかった。

「じゃーね! 合否分かったら、電話入れてね!」

二人は手を振り、別れを告げる。





その頃、宇宙では――、

『ヤハリココデツトムトイウ少年ガ石ヲ返シタノデ、ソレデドッコイデイイノデハ?』

「いいやダメだな。キサマらは好実の命を奪っている。MASAだけ攻撃しなかった報いが、キサマらをそうさせたんだ」

「まぁまぁスマシちゃん、東大麻薬理論っていうのがあってだね、東大生の一人が麻薬をやっていたという事件があってニュースになったら、それを聞いた人達は日本一の大学が何やってんだって、真面目に勉強している学生まで非難の矛先に挙げられるもんなんだよ。だからMASAの連中も地球人、俺も地球人ってコトにされちゃう」

『ソウダ、我々ゾムビー達モゾムビートイウ存在一色単ニサレテ、殺サレテイル』

「しかしだなぁ」

ゾムビーの親玉、爆破、杉田のやり取りを遠くで見て、抜刀は頭の後ろに手を組んで言うのだった。



「ハァー、付き合ってらんねぇ」



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