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6. めろめろのデリカシー
しおりを挟む(あれ? これって、この数式をあてはめるんじゃないんだっけ?)
テキストの設問を解いてったら、ありえない数字が現れて、オレは、開いていた教科書の例題をながめた。
うん、やっぱり、この公式でいーんだ。
解き方はあってた。
でも、なんで、答えがマイナスになっちゃうんだろう???
う~ん、と悩んでると、
「 ―――― 皓也、」
英嗣に呼ばれて、はっとして、オレは顔をあげた。
オレのはす向かいに座ってた英嗣とばちっと目が合う。
英嗣の部屋の、そんなには広くないローテーブルには、オレと英嗣が広げている教科書やテキストでいっぱいいっぱいだ。
ほんの間近に、いつもの眼鏡を掛けた英嗣が、いつもと違ってちょこっとだけくちびるのはしっこをゆるめてる。
(あ、・・ヤバ)
うっわ、恥ずかしぃ。
オレ、いつものクセでシャープペンシルの頭んとこをかじってた。
「ええと、ナニ?」
さり気なく、シャーペンから口を離したオレは、何でもないように英嗣に返事した。
英嗣から噛み癖を注意されんのかな、ってちょっと身がまえる。
すると、少し身体を引いたオレを引き寄せるみたいにして、英嗣がオレの肩に手を置いてきた。
それから、そっと、ささやいてきた。
「キスしてもいい?」
まるで、「何か飲む?」みたいな、全然、なんでもないことみたいに。
(えーっと、、、)
放課後に英嗣んちで、試験対策の勉強をしようって誘ってきたのは英嗣なのに。
全然、そんな、雰囲気とかナシで、黙々と数学と闘ってたから、イキナリの展開にびっくりだ。
それに、なんか、こういうこと直球で聴かれても返事に困る。
英嗣は平気みたいだけど、オレはすごぉく照れくさい。
なんか、顔が熱くなってきた。
オレは、じっと見つめてくる英嗣の視線から目をそらした。
出来れば、なんとなくそういう流れになって、するのがいいナ・・。
平然とそういうことを尋ねてくる英嗣に、自分ばっかりオタオタしてしまうのが、なんかくやしい気がするー。
「 ―――― ダメ・・、って言ったら?」
オレはそう言って、口をきゅっと引き結んだ。
とたんに、
「っあ、」
肌がぞくん、として変な声が出た。
あああああ、ずるい・・!
そんふうに首筋を指で撫でるのは反則だ。
「ダメなんだ?」
残念そうな声で英嗣が聞き返してきたけど、もう、断然、さっきよりも英嗣の顔がちかづいてきてる。
余裕の笑みがオレをそそのかす。
やさしくて甘くてやらしいこと、オレにする気だ。
「だめじゃない、けど」
英嗣の本気には全然、敵わない。
「けど?」
追い詰められて、
「・・だって、うん、って言うの、なんか、恥ずかしぃし」
って、小声で言った。
「そうなんだ? でも、皓也、ベッドの中じゃ、ここがイイとかそっちがイイとか、舐めてとか噛んでとか言ってくるけど?」
眼鏡のブリッジを押し上げながら英嗣がさらっと言った。
その瞬間に、
ぐわわわわー、と胃の中から灼熱の息が飛び出してきた。
その熱に焼かれながらオレは必死で叫んだ。
「えいし、嫌いっ! 絶対、キライっっ!!」
・・・もう少し、デリカシーを下さい。
( おわり )
英嗣 「涙目で真っ赤になって怒ってるのをなだめてかわいがって、とろとろにするのが好きなんです」
応援ありがとうございます!
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