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62 グランディスの街で①
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お祖父様たちとのご対面は無事に終わったとダリウス叔父様から書簡が来た。ファルーク君は始終ご機嫌で大物かもしれないと書かれていた。それを見た兄様が「叔父上も親馬鹿みたいだね」って笑っていた。
明日は一日ゆっくりと過ごすって言っていたけれど、シャマル様はどうやらフィンレーで色々とお土産を買いたいらしい。シャマル様って結構行動的だな。
父様が気になるものがあれば送ってあげるって言ったんだけどグランディスの街を見てみたいんだって。
僕は冬祭りの時しか言った事がないんだけど、春のグランディスはどんな感じなのかな。
「見てみたいなぁ」
僕は兄様に相談をして、ダリウス叔父様に書簡を出した。そして……
◇ ◇ ◇
「ここがグランディスの街です。まずは何がご覧になりたいですか?」
そう尋ねた僕に、ダリウス叔父様とシャマル様はニッコリと笑った。
フィンレーの屋敷から魔法陣を使ってやってきたのはグランディスの街の領主の館だ。ここから馬車でお昼まで行きたい所を回って、昼食をとって残っている所があればもう一度出かける予定。
今日はファルーク君も一緒に行くんだよ。でも無理はしないように、むずかるようならすぐに領主の館に連れて帰る事になっている。
冬祭りではないので、雪像があった通りも馬車が通る事が出来るし、当たり前だけどどこにも雪はないから移動もスムーズだしね。
「そうだな、せっかくだからグランディス神にご挨拶をして行こうか」
「ではまずは神殿ですね。その後はお店を眺める感じでよろしいですか?」
「うん。フィンレーは羊毛の製品が有名だからね。季節的にはずれているけれど、砂漠の地は寒暖差があるから薄布で何か温かな羽織りものがあるといいな。ルークにもね。ああ、あとは父上と母上にフィンレーのチーズやミルクを使った何かを土産にしたい。マジックバッグに入れておけば大丈夫だろう?」
「そうですね」
ああ、そうか。ファルーク君の愛称はルークなんだね。
「では該当する店に先触れを出しますね。警護はしっかりしないといけないので。それと、食事は領主の館でとるよろしいでしょうか? ええとデザートはこちらで有名なお店のものを取り寄せます」
「ああ。色々と悪いね、急に」
「いえ、僕も楽しいですし。こんな風にグランディスの街に来る事はなかったので」
「そう。それなら、よろしくお願いするね。それにしてもよくアルフレッドが許可したね」
苦笑しながらダリウス叔父様が言った。
「ああ、ええっと、昼食の後は一緒に。午前中は急ぎの仕事を入れていたようです」
「そうなんだ。それでも来るのか。愛されているね、エディ」
ファルーク君を抱っこしたままシャマル様が口を開いて、ダリウス叔父様もニコニコしている。
シャマル様は僕の事をエディと呼ぶようになった。僕はついシャマル様って言ってしまうんだけど、一度シャマル叔父様って言ったら、何とも言えない顔をしていた。
ダリウス叔父様は「叔父様」で大丈夫なんだけど、シャマル様ってなんだか「シャマル様」なんだよね。
「そうですね。僕は……植物を育てるような力とか、色々あるので、余計心配されているんだと思います。でも爵位を賜って結婚してからはだいぶそういった事も少なくなってきました。アルだけでなく後ろ盾にも感謝です」
「ああ、そうだね。フィンレー公爵家と懇意にしているのは有力な家ばかりだしね。うちと同様にそちらも随分整理をしたと聞いている。少しは過ごしやすくなったなら良かった」
何やら少し物騒な事を言って、シャマル様はファルーク君の寝顔を見つめながらふわりと笑った。
「でも、エディのように自分の力を理解して、納得して、使いこなそうとするのは素晴らしい事だと思うよ」
「! ありがとうございます」
「ふふ、皆がそういう風に魔法を使うようになれるといいな。シェルバーネは魔法を使える者がそれほど多くはないから、魔力のある者を手の内にと考える家もあるし、魔力を持つ者の中には自分の力に驕る者もいる。マルリカの実を使って生まれた子は魔力を持つ子が多い事は言ったかな。それもあってマルリカの実を求める者もいる。シェルバーネにとってはそれも一つの課題だ。勿論純粋に子が欲しいと望む者も沢山いる。将来的にどういう形になるのが望ましいのか、きちんと考えていくと約束するよ。この子が育っていく未来の為にも」
シャマル様は変わられたなって思った。何より表情がとても柔らかく、優しく、それでいて強く? うん。以前とは違う感じで強くなったように思える。
これが母親になるっていう事なのかな。
「はい。よろしくお願いします。では神殿に参りましょう」
こうして僕たちは用意をした馬車に乗った。
ファルーク君は目を開けてご機嫌な様子だった。うん。やっぱり大物だね。
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明日は一日ゆっくりと過ごすって言っていたけれど、シャマル様はどうやらフィンレーで色々とお土産を買いたいらしい。シャマル様って結構行動的だな。
父様が気になるものがあれば送ってあげるって言ったんだけどグランディスの街を見てみたいんだって。
僕は冬祭りの時しか言った事がないんだけど、春のグランディスはどんな感じなのかな。
「見てみたいなぁ」
僕は兄様に相談をして、ダリウス叔父様に書簡を出した。そして……
◇ ◇ ◇
「ここがグランディスの街です。まずは何がご覧になりたいですか?」
そう尋ねた僕に、ダリウス叔父様とシャマル様はニッコリと笑った。
フィンレーの屋敷から魔法陣を使ってやってきたのはグランディスの街の領主の館だ。ここから馬車でお昼まで行きたい所を回って、昼食をとって残っている所があればもう一度出かける予定。
今日はファルーク君も一緒に行くんだよ。でも無理はしないように、むずかるようならすぐに領主の館に連れて帰る事になっている。
冬祭りではないので、雪像があった通りも馬車が通る事が出来るし、当たり前だけどどこにも雪はないから移動もスムーズだしね。
「そうだな、せっかくだからグランディス神にご挨拶をして行こうか」
「ではまずは神殿ですね。その後はお店を眺める感じでよろしいですか?」
「うん。フィンレーは羊毛の製品が有名だからね。季節的にはずれているけれど、砂漠の地は寒暖差があるから薄布で何か温かな羽織りものがあるといいな。ルークにもね。ああ、あとは父上と母上にフィンレーのチーズやミルクを使った何かを土産にしたい。マジックバッグに入れておけば大丈夫だろう?」
「そうですね」
ああ、そうか。ファルーク君の愛称はルークなんだね。
「では該当する店に先触れを出しますね。警護はしっかりしないといけないので。それと、食事は領主の館でとるよろしいでしょうか? ええとデザートはこちらで有名なお店のものを取り寄せます」
「ああ。色々と悪いね、急に」
「いえ、僕も楽しいですし。こんな風にグランディスの街に来る事はなかったので」
「そう。それなら、よろしくお願いするね。それにしてもよくアルフレッドが許可したね」
苦笑しながらダリウス叔父様が言った。
「ああ、ええっと、昼食の後は一緒に。午前中は急ぎの仕事を入れていたようです」
「そうなんだ。それでも来るのか。愛されているね、エディ」
ファルーク君を抱っこしたままシャマル様が口を開いて、ダリウス叔父様もニコニコしている。
シャマル様は僕の事をエディと呼ぶようになった。僕はついシャマル様って言ってしまうんだけど、一度シャマル叔父様って言ったら、何とも言えない顔をしていた。
ダリウス叔父様は「叔父様」で大丈夫なんだけど、シャマル様ってなんだか「シャマル様」なんだよね。
「そうですね。僕は……植物を育てるような力とか、色々あるので、余計心配されているんだと思います。でも爵位を賜って結婚してからはだいぶそういった事も少なくなってきました。アルだけでなく後ろ盾にも感謝です」
「ああ、そうだね。フィンレー公爵家と懇意にしているのは有力な家ばかりだしね。うちと同様にそちらも随分整理をしたと聞いている。少しは過ごしやすくなったなら良かった」
何やら少し物騒な事を言って、シャマル様はファルーク君の寝顔を見つめながらふわりと笑った。
「でも、エディのように自分の力を理解して、納得して、使いこなそうとするのは素晴らしい事だと思うよ」
「! ありがとうございます」
「ふふ、皆がそういう風に魔法を使うようになれるといいな。シェルバーネは魔法を使える者がそれほど多くはないから、魔力のある者を手の内にと考える家もあるし、魔力を持つ者の中には自分の力に驕る者もいる。マルリカの実を使って生まれた子は魔力を持つ子が多い事は言ったかな。それもあってマルリカの実を求める者もいる。シェルバーネにとってはそれも一つの課題だ。勿論純粋に子が欲しいと望む者も沢山いる。将来的にどういう形になるのが望ましいのか、きちんと考えていくと約束するよ。この子が育っていく未来の為にも」
シャマル様は変わられたなって思った。何より表情がとても柔らかく、優しく、それでいて強く? うん。以前とは違う感じで強くなったように思える。
これが母親になるっていう事なのかな。
「はい。よろしくお願いします。では神殿に参りましょう」
こうして僕たちは用意をした馬車に乗った。
ファルーク君は目を開けてご機嫌な様子だった。うん。やっぱり大物だね。
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