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第8章 収束への道のり
329. 目覚めた後の
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ゆっくりと目を開くと、見慣れた天井が見えた。
「あ……れ……?」
一瞬何が起きたのか、どうしてタウンハウスの部屋ではなく、フィンレーの部屋にいるのか分からなくて、身体を起こそうとしたら、何かパチンって音がしたような気がして、次の瞬間マリーが部屋の中に飛び込んできた。
「エドワード様!」
ノックもしないで部屋の中に駆け込んでくるなんてマリーらしくないな。どうしたんだろう。でも駆け込んできたのはマリーだけじゃなかった。
「エディ!」
「……兄様?」
え? なんで? 兄様までフィンレーにいらっしゃるの? それに何だか疲れているように感じるのはどうして?
そんな事を考えていたら次の瞬間ものすごい勢いで抱きしめられていた。
「わぁぁぁぁ! に、兄様?!」
「良かった。無事に目を覚まして」
「え?」
耳元で兄様がそう言った。何が何だか分からなかったけれど、とりあえずギュッとしている腕が少しだけ苦しくどうしようって思っていたら。
「アルフレッド、エドワードが苦しがっているよ。加減をね」
「と、父様?」
えっと、えっと、父様まで。皆揃って今日はお城のお仕事がないのかな? あれ?
「どこか痛む所は?」
「ないです……」
お城って思ったら僕の頭の中にようやく記憶が甦ってきた。
それと同時に兄様がゆっくりと抱きしめていた手を離した。
「あの……スタンピードは」
「終わったよ。覚えていないかい? エドワードが終わらせてくれた。感謝する」
枕元の椅子に腰を下ろした父様にそう言われて、僕は改めてあの日の光景を思い出した。
ぞろぞろと現れたマルコシアスの群れ。一度消したのに時間が逆戻りをしたかのように赤く染まった森。そして天を駆け、地を駆けるマルコシアス達と、火と高位種のマルコシアスの群れから逃げるように霧散した魔物達。
皆が必死で戦っていたあの場所。
「……思い出しました。父様、僕は父様に謝罪をしなければならない事があります。書簡一つで勝手な行動をして申し訳ございませんでした。でも僕は」
「ああ、もういい。分かっている。きっとエドワードが居なければ、魔物達は王都の街へ溢れ出していただろう」
「街は無事でしたか?」
「うん、何体かの有翼の魔物が城壁の結界の上を通って街へ降りた。全く被害が出なかったわけではないが、それでも警護をしていた近衛騎士団や他領からきた援護のお陰で最小限に防げたと言っていい」
「……そうだったんですね」
「ああ。王城の敷地内も同じだ。第一隊には少なからず被害が出てしまったが、それでも援護が来るまでよく戦ってくれた」
「…………はい」
そうだよね。あれだけの戦いだったんだもの。まったく被害が出ないわけではなかった。
「エドワードたちが大量に用意をしてくれたポーションと、途中から駆けつけてくれたルシルのお陰だ。彼がヒールをしてくれたり、聖神殿までもたなかったような者を救ってくれた。魔力枯渇状態だったエドワードの事もね」
「ルシルが……お礼を言わなければいけませんね」
「そうだね、だけどしっかり身体を治してからだよ。治癒魔法はかけてもらったけれど、休養は必要だ。身体にも心にもね」
「はい。父様」
それから僕は今の状況を色々と父様と兄様から聞いた。
僕はルシルから聖魔法の治癒を受けてフィンレーに戻って来たんだけど、なんと三日間眠っていたらしい。
その日の晩と翌日は兄様とマリーが交代で付き添っていてくれて、でも兄様も色々と事後処理があったみたいでやむなく仕事へ。それで、僕が気づいて動いたら分かるようにしていたんだって。あのパチンっていう音がそうだったんだね。
スタンピードが終わった後、お祖父様はスティーブ君とミッチェル君。そして魔力を大量に使う可能性を考えてレイモンド伯が扉の設置を手伝ってくれたんだって。
スティーブ君が修復してくれた扉はそっとそっと地中に戻されて、そして魔力を流した途端、空間を繋げている道の前をピタリと閉じて、封じた。これでとりあえずはダンジョンの方から迷い込んでこちらへきてしまったものが居ても、もう王城の森の中に姿を現す事はなくなった。
もう少ししたらダンジョンに繋がっている方も調べて扉を閉めてしまうってお祖父様が言っていたって聞いた。
それから苔むした魔物達はそのままにして万が一魔素が湧いてしまうと困るのでお祖父様が作ったマジックバックの中に回収する事になった。さすがにこれは一晩ではとても終わるものではなくて、しかも広い王城の敷地内の森とか、ぐちゃぐちゃに荒らされた庭園の中を探しながらの回収だから、翌日から始まった回収はまだ続いているって聞いて驚いた。すごいな、スタンピード。
あ、あと、森の火は僕が降らせた雨で鎮火をしていて、特に火の回りが激しかった始点の辺りは、焼け落ちてしまったような木は苔むして、もう新たな木が育ち始めているんだって。焼けてしまったのが悲しかったから、森がちゃんと再生をしているって聞いてすごく嬉しかった。もっとも普通の早さではないけれどね。
「最終的には色々な領からの援護隊が来てくれたし、それぞれが文句も言わずにその場所を守ってくれた事に感謝をしたいっていう言葉が発表されたんだよ」
父様がそう言って笑った。その横で兄様も頷いて笑っている。
「そうですか。でも無事に『首』を封印出来て、魔人も消えて、あの物語とは異なってはいるけれど、それでもバランスの崩壊という禍がこれで収まってくれるのであれば、良かったです」
「うん、そうだね。ところで始点の所でね、とても気になる事を聞いたんだ。すぐにでも確かめようと思ったが、エドワードが目覚めてから確認をと思ってね」
父様がそう言うと兄様がものすごく綺麗な笑みを浮かべた。え? 何? 何を聞いたの?
「婚約は、いつ決まったんだい?」
父様の言葉が僕の頭にはうまく入ってこなかった。
「こん……へ? えっと、こんやく?」
「……アルフレッド、これはどういう事なのかな? 騙すような事はならないと言っていた筈だが?」
父様のこめかみにピキッて音がするような感じで血管が浮き上がった。
「騙してはいませんよ。きちんと申し込んで、きちんと了承を得ました。ただ、まだ父上や母上にご報告はしていないのでその話はこれからです。一部で話が勝手に独り歩きをしたのでしょう。今回の事が終わったらそれについても予定を組んでいきたいとは思っています。ねぇ、エディ」
「は……え……よてい……!」
その瞬間、僕はものすごい勢いで顔を赤く染めた。どうして言われた言葉ではなくてその後の口づけを思い出しちゃったんだろう!?
「エドワード!? アルフレッドこれは一体」
「だい……だいじょうぶ、大丈夫です。すみません、あの、あの、お話をしなければ、ならない事があって、えっと、あの……」
「エディ、大丈夫だよ。ちゃんと元気になってから、きちんと父上と母上とお話をしようね」
そう言って覗き込んでくる綺麗な空の色の瞳に僕は赤い顔のまま「はい」と頷いた。それを見て父様が「はぁ」と息をついた。
「ああ……まぁ、そうだね。この話はエドワードの体力が戻ってからだ。ポーションは山のように飲んでいるからそれに頼らずに、きちんと静養しなさい。いいね?」
「はい」
コクリと頷いて返事をした僕に、父様は僕の顔を真っ直ぐに見つめて名前を呼んだ。
「エドワード」
「はい」
「幸せかい?」
短い言葉だった。だけど、答えは一つしかなかった。
「はい」
父様は僕の言葉になぜかそっと目を閉じて、すぐに開いて「それならいい」と言って立ち上がった。
「さて、私は一旦城に戻るよ。アルフレッドはどうするんだい?」
「本日はこの後の休みを頂いてまいりました」
「………………そうか。ではエドワードをしっかり休ませてほしい。無理も、無茶もさせないように。くれぐれも節度を持ってね」
「勿論です」
なんだろう。父様と兄様は何を言っているんだろう?
父様は慌ただしく出かけてしまった。部屋の中には僕と兄様だけになった。
「目が覚めたばかりだからね、水分を取ろう。果実水なら飲めるかな? できれば何か食べられそうなものを食べた方がいいけれど、さっぱりとしたスープでも用意をさせようか」
そう言って父様が座っていた椅子に腰を下ろした兄様はとろけるような笑みを浮かべながらそう言った。
「エディ」
「はい」
「ありがとう」
「兄様?」
「私を、選んでくれてありがとう」
「……そんな、僕の方こそ、あ、ありがとうございます」
再び赤くなってしまった顔に兄様は小さく笑って頬に口づけた。
「ふわぁ!」
思わず上がった声。そしてコンコンコンとタイミングよくノックの音がした。
「はい」
「失礼いたします。果実水をお持ち致しました」
「ああ、ありがとう。ふふふ、ドアの外にちょっと知らせを出したんだよ」
「そうなんですね。あ、ありがとうございます。マリーもありがとう。えっと、スタンピードの時も、沢山助けてくれてありがとう。心配かけてごめんね。それと、これからもよろしくね」
「! はい。勿論でございます。マリーはエドワード様の専属メイドでございますから」
そう言ってマリーは頭を下げると部屋を出て行った。
「さて、沢山話をして疲れただろう? スープが出来たら知らせるよ。それまで少し横になっていて?」
「はい」
そう言われて僕は半分ほど飲んだ果実水の入ったカップをサイドテーブルに置いてベッドに横になった。すると兄様の指がそっと僕のミルクティ色の髪を撫でた。
「……もう、戻って来てもらえないかと思って怖かった」
「ごめんなさい。でも、僕が、帰ってくるのは……に、兄様のところだから……」
「うん。そうだね。これからもそうしてくれると嬉しいな。おやすみ、エディ。また後で」
そうして兄様の顔が近づいて……
「愛してる」
「……はい、僕も。あ、愛して、ます」
二度目の口づけは優しくて、さっき口にした果実水みたいに甘かった。
----------------
よう、ようやく、ようやくBLっぽくなったねぇ……(゜ーÅ)ホロリ
「あ……れ……?」
一瞬何が起きたのか、どうしてタウンハウスの部屋ではなく、フィンレーの部屋にいるのか分からなくて、身体を起こそうとしたら、何かパチンって音がしたような気がして、次の瞬間マリーが部屋の中に飛び込んできた。
「エドワード様!」
ノックもしないで部屋の中に駆け込んでくるなんてマリーらしくないな。どうしたんだろう。でも駆け込んできたのはマリーだけじゃなかった。
「エディ!」
「……兄様?」
え? なんで? 兄様までフィンレーにいらっしゃるの? それに何だか疲れているように感じるのはどうして?
そんな事を考えていたら次の瞬間ものすごい勢いで抱きしめられていた。
「わぁぁぁぁ! に、兄様?!」
「良かった。無事に目を覚まして」
「え?」
耳元で兄様がそう言った。何が何だか分からなかったけれど、とりあえずギュッとしている腕が少しだけ苦しくどうしようって思っていたら。
「アルフレッド、エドワードが苦しがっているよ。加減をね」
「と、父様?」
えっと、えっと、父様まで。皆揃って今日はお城のお仕事がないのかな? あれ?
「どこか痛む所は?」
「ないです……」
お城って思ったら僕の頭の中にようやく記憶が甦ってきた。
それと同時に兄様がゆっくりと抱きしめていた手を離した。
「あの……スタンピードは」
「終わったよ。覚えていないかい? エドワードが終わらせてくれた。感謝する」
枕元の椅子に腰を下ろした父様にそう言われて、僕は改めてあの日の光景を思い出した。
ぞろぞろと現れたマルコシアスの群れ。一度消したのに時間が逆戻りをしたかのように赤く染まった森。そして天を駆け、地を駆けるマルコシアス達と、火と高位種のマルコシアスの群れから逃げるように霧散した魔物達。
皆が必死で戦っていたあの場所。
「……思い出しました。父様、僕は父様に謝罪をしなければならない事があります。書簡一つで勝手な行動をして申し訳ございませんでした。でも僕は」
「ああ、もういい。分かっている。きっとエドワードが居なければ、魔物達は王都の街へ溢れ出していただろう」
「街は無事でしたか?」
「うん、何体かの有翼の魔物が城壁の結界の上を通って街へ降りた。全く被害が出なかったわけではないが、それでも警護をしていた近衛騎士団や他領からきた援護のお陰で最小限に防げたと言っていい」
「……そうだったんですね」
「ああ。王城の敷地内も同じだ。第一隊には少なからず被害が出てしまったが、それでも援護が来るまでよく戦ってくれた」
「…………はい」
そうだよね。あれだけの戦いだったんだもの。まったく被害が出ないわけではなかった。
「エドワードたちが大量に用意をしてくれたポーションと、途中から駆けつけてくれたルシルのお陰だ。彼がヒールをしてくれたり、聖神殿までもたなかったような者を救ってくれた。魔力枯渇状態だったエドワードの事もね」
「ルシルが……お礼を言わなければいけませんね」
「そうだね、だけどしっかり身体を治してからだよ。治癒魔法はかけてもらったけれど、休養は必要だ。身体にも心にもね」
「はい。父様」
それから僕は今の状況を色々と父様と兄様から聞いた。
僕はルシルから聖魔法の治癒を受けてフィンレーに戻って来たんだけど、なんと三日間眠っていたらしい。
その日の晩と翌日は兄様とマリーが交代で付き添っていてくれて、でも兄様も色々と事後処理があったみたいでやむなく仕事へ。それで、僕が気づいて動いたら分かるようにしていたんだって。あのパチンっていう音がそうだったんだね。
スタンピードが終わった後、お祖父様はスティーブ君とミッチェル君。そして魔力を大量に使う可能性を考えてレイモンド伯が扉の設置を手伝ってくれたんだって。
スティーブ君が修復してくれた扉はそっとそっと地中に戻されて、そして魔力を流した途端、空間を繋げている道の前をピタリと閉じて、封じた。これでとりあえずはダンジョンの方から迷い込んでこちらへきてしまったものが居ても、もう王城の森の中に姿を現す事はなくなった。
もう少ししたらダンジョンに繋がっている方も調べて扉を閉めてしまうってお祖父様が言っていたって聞いた。
それから苔むした魔物達はそのままにして万が一魔素が湧いてしまうと困るのでお祖父様が作ったマジックバックの中に回収する事になった。さすがにこれは一晩ではとても終わるものではなくて、しかも広い王城の敷地内の森とか、ぐちゃぐちゃに荒らされた庭園の中を探しながらの回収だから、翌日から始まった回収はまだ続いているって聞いて驚いた。すごいな、スタンピード。
あ、あと、森の火は僕が降らせた雨で鎮火をしていて、特に火の回りが激しかった始点の辺りは、焼け落ちてしまったような木は苔むして、もう新たな木が育ち始めているんだって。焼けてしまったのが悲しかったから、森がちゃんと再生をしているって聞いてすごく嬉しかった。もっとも普通の早さではないけれどね。
「最終的には色々な領からの援護隊が来てくれたし、それぞれが文句も言わずにその場所を守ってくれた事に感謝をしたいっていう言葉が発表されたんだよ」
父様がそう言って笑った。その横で兄様も頷いて笑っている。
「そうですか。でも無事に『首』を封印出来て、魔人も消えて、あの物語とは異なってはいるけれど、それでもバランスの崩壊という禍がこれで収まってくれるのであれば、良かったです」
「うん、そうだね。ところで始点の所でね、とても気になる事を聞いたんだ。すぐにでも確かめようと思ったが、エドワードが目覚めてから確認をと思ってね」
父様がそう言うと兄様がものすごく綺麗な笑みを浮かべた。え? 何? 何を聞いたの?
「婚約は、いつ決まったんだい?」
父様の言葉が僕の頭にはうまく入ってこなかった。
「こん……へ? えっと、こんやく?」
「……アルフレッド、これはどういう事なのかな? 騙すような事はならないと言っていた筈だが?」
父様のこめかみにピキッて音がするような感じで血管が浮き上がった。
「騙してはいませんよ。きちんと申し込んで、きちんと了承を得ました。ただ、まだ父上や母上にご報告はしていないのでその話はこれからです。一部で話が勝手に独り歩きをしたのでしょう。今回の事が終わったらそれについても予定を組んでいきたいとは思っています。ねぇ、エディ」
「は……え……よてい……!」
その瞬間、僕はものすごい勢いで顔を赤く染めた。どうして言われた言葉ではなくてその後の口づけを思い出しちゃったんだろう!?
「エドワード!? アルフレッドこれは一体」
「だい……だいじょうぶ、大丈夫です。すみません、あの、あの、お話をしなければ、ならない事があって、えっと、あの……」
「エディ、大丈夫だよ。ちゃんと元気になってから、きちんと父上と母上とお話をしようね」
そう言って覗き込んでくる綺麗な空の色の瞳に僕は赤い顔のまま「はい」と頷いた。それを見て父様が「はぁ」と息をついた。
「ああ……まぁ、そうだね。この話はエドワードの体力が戻ってからだ。ポーションは山のように飲んでいるからそれに頼らずに、きちんと静養しなさい。いいね?」
「はい」
コクリと頷いて返事をした僕に、父様は僕の顔を真っ直ぐに見つめて名前を呼んだ。
「エドワード」
「はい」
「幸せかい?」
短い言葉だった。だけど、答えは一つしかなかった。
「はい」
父様は僕の言葉になぜかそっと目を閉じて、すぐに開いて「それならいい」と言って立ち上がった。
「さて、私は一旦城に戻るよ。アルフレッドはどうするんだい?」
「本日はこの後の休みを頂いてまいりました」
「………………そうか。ではエドワードをしっかり休ませてほしい。無理も、無茶もさせないように。くれぐれも節度を持ってね」
「勿論です」
なんだろう。父様と兄様は何を言っているんだろう?
父様は慌ただしく出かけてしまった。部屋の中には僕と兄様だけになった。
「目が覚めたばかりだからね、水分を取ろう。果実水なら飲めるかな? できれば何か食べられそうなものを食べた方がいいけれど、さっぱりとしたスープでも用意をさせようか」
そう言って父様が座っていた椅子に腰を下ろした兄様はとろけるような笑みを浮かべながらそう言った。
「エディ」
「はい」
「ありがとう」
「兄様?」
「私を、選んでくれてありがとう」
「……そんな、僕の方こそ、あ、ありがとうございます」
再び赤くなってしまった顔に兄様は小さく笑って頬に口づけた。
「ふわぁ!」
思わず上がった声。そしてコンコンコンとタイミングよくノックの音がした。
「はい」
「失礼いたします。果実水をお持ち致しました」
「ああ、ありがとう。ふふふ、ドアの外にちょっと知らせを出したんだよ」
「そうなんですね。あ、ありがとうございます。マリーもありがとう。えっと、スタンピードの時も、沢山助けてくれてありがとう。心配かけてごめんね。それと、これからもよろしくね」
「! はい。勿論でございます。マリーはエドワード様の専属メイドでございますから」
そう言ってマリーは頭を下げると部屋を出て行った。
「さて、沢山話をして疲れただろう? スープが出来たら知らせるよ。それまで少し横になっていて?」
「はい」
そう言われて僕は半分ほど飲んだ果実水の入ったカップをサイドテーブルに置いてベッドに横になった。すると兄様の指がそっと僕のミルクティ色の髪を撫でた。
「……もう、戻って来てもらえないかと思って怖かった」
「ごめんなさい。でも、僕が、帰ってくるのは……に、兄様のところだから……」
「うん。そうだね。これからもそうしてくれると嬉しいな。おやすみ、エディ。また後で」
そうして兄様の顔が近づいて……
「愛してる」
「……はい、僕も。あ、愛して、ます」
二度目の口づけは優しくて、さっき口にした果実水みたいに甘かった。
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よう、ようやく、ようやくBLっぽくなったねぇ……(゜ーÅ)ホロリ
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