言霊付与術師は、VRMMOでほのぼのライフを送りたい

工藤 流優空

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チラシと目玉商品づくり

旅の準備。

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 そうと決まれば、私も旅の準備だ。ああでも、何を持っていけばいいんだろう。地図とか? 地図とか? ああ、地図しか出てこない。あとは、食料?

 私が、わくわくしていると、カンナさんがにこにこ笑ってやってきた。

「おやおや、楽しそうだわね。旅に出るんだって」
「はい。カンナさんには色々ご迷惑をおかけしますが……」
「迷惑なんてかからないよ。人生には休息が必要だ。あくまでこの世界は、アンタにとって休息をもたらす場所であってほしいと思うよ」

 カンナさんの言葉に、私は安堵する。

「アイテムを量産できるようになって、もっとお店の役に立ってみせます」
「無理だけはしないようにね。店のことで、アンタの人生を狂わせたくないしさ。できることだけ手伝ってくれてりゃいいんだから」

 カンナさんは笑う。こういう人の役に立つことは、嫌じゃないしむしろ好きだ。何とか役に立てる方向に持って行けるといいんだけど。

「特殊スキルをさらに強くできるような方法の心あたりは、あるのかい」

 カンナさんの言葉に、私は首を横に振る。

「ありません。でも、ここから一度離れてみるのも大事だと思ったんです」

 創作においても同じ。ただ部屋に籠って創作を続けるのも必要だけど、外に出ていろんなものを見て、様々なことを吸収するのも大事だ。五感をとぎすませて、たくさんのことを見聞きしたりすることで、新しいことが見つかったりするから。

 そう私が答えると、カンナさんは頷く。

「確かに。たまには外へ出て色んなものに目を向けてみるのも大事だろうね」
「そうなんです。ですから方法を見つけられるかどうかよりも、新しい自分になるために、外へ出てみることも必要なのではないかと思いまして」

 カンナさんはどんと私の肩をたたく。

「いいじゃないか。現実世界ではそれほど冒険をすることも、その時間もないんだろう? だったら、この世界で存分に旅をして、冒険をしたらいいよ」

 そう。現実世界で旅に出たり、冒険をしようとすれば時間がかかる。でも今の私にはそれをするだけの力と時間がない。けれど、この世界でなら、途中でログアウトして、またログインすれば冒険の途中から始められる。何日も泊りがけの旅に出るために休みを申請する必要もない。これほど、旅に適したところはないかもしれない。

 それに、こちらの世界で体験したことも、経験として私の中に残る。データとして残るのではなくて、私の心と記憶の中に。だから、旅に出る意味はある。

 スキルの増強ができるかどうかは現時点では分からない。でも、自分の成長が、もしかしたらスキルの成長にもつながるかもしれない。まずは、自分磨きに力を入れて行こう、私はそう思った。
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