85 / 304
チラシと目玉商品づくり
頼り方が分からない
しおりを挟む昔から、人付き合いが苦手だった。大人になってからも、それは続いた。仕事をしていて、本当は誰かに任せたい、自分だけで仕事回しきれない、そう思った時でも、結局人に頼ることができなくって、残業したり休日出勤したりして、なんとか仕事を片付けた。
そうやって無理に仕事を片付けてたら、「困ったらこいつに仕事を任せればいい」という空気になって、自分が回しきれない仕事なんかが、回ってくるようになった。断ったら、その後の仕事に支障が出る。そう思ったら、断り切れなくていつも引き受けて、自分で自分に負担をかける。そんな生活がここ数年続いていた。
だから。シュウさんやフジヤさんが見返りなしに私に手を貸そうと申し出てくれるのが、すごくうれしくて、でも本当に頼っていいのか不安で。
私の表情を見て、シュウさんは何か悟ったのか言った。
「……人を頼ることに、遠慮はいらない。特にそちらのようなタイプならなおさらな」
「せや。ど厚かましい人間が、遠慮せずに頼ってくるのは気に入らんけど。サランちゃんはそういうタイプちゃうやろ。遠慮せず言ってくれたらええ。……あれ、なんか矛盾してるな?」
自分で言って、自分で首をひねっているカズアキさんを見ていたら、私はなんだか安心した。……頼って、いいんだ。
「それでは。……お手伝い頂けますか」
私の言葉に、シュウさんとフジヤさんは頷く。
「もちろんだ」
「うん。お安い御用だよ」
あと一人くらい誘いたいということで。今私の知り合いの中で、戦力になりそうな人と言えば。私の脳裏に、一人の名前が浮かび上がる。
「もう一人の同行者ですが。一人、心当たりがあります。連絡してみますね」
私が言うと、フジヤさんは言った。
「うん、サランちゃんの知り合いなら信用できるだろうし、その人さえよければ、一緒に行ってもらおう」
私は早速、フリントさんに連絡をとる。
『フリントさんへ。お久しぶりです。お元気ですか。こちらは元気に過ごしています。突然なのですが、私のスキルをさらに使いやすくするために、旅に出ようと思っています。よければ協力して頂きたいのですが』
そう前置いて、私は自分のスキルでアイテムを量産できるようにしたいこと、その方法があるかどうかを旅に出て調べてみたいことをメールに書いて送付した。
あとは、返信があるのを待つのみだね。
「……さて。返事を待つ間、旅に出る準備に取り掛かるか」
シュウさんが言う。それからシュウさんとカズアキさんは店から出ようとする。その背中に、私は声をかけた。
「シュウさん、それにカズアキさん。……ありがとうございます」
すると、カズアキさんはこちらを振り返ってにやっと笑った。
「かまへんかまへん、いつでもたよってな」
「……礼には及ばない。また何かあれば連絡してくれ」
シュウさんもまた、こちらを振り返ると目を細めて言ってくれた。
「そうと決まったら、私も旅の準備しなくっちゃなぁ。何をもっていこう」
フジヤさんも楽しげだ。私も、なんだか楽しみになってきた!
20
お気に入りに追加
615
あなたにおすすめの小説
Anotherfantasia~もうひとつの幻想郷
くみたろう
ファンタジー
彼女の名前は東堂翠。
怒りに震えながら、両手に持つ固めの箱を歪ませるくらいに力を入れて歩く翠。
最高の一日が、たった数分で最悪な1日へと変わった。
その要因は手に持つ箱。
ゲーム、Anotherfantasia
体感出来る幻想郷とキャッチフレーズが付いた完全ダイブ型VRゲームが、彼女の幸せを壊したのだ。
「このゲームがなんぼのもんよ!!!」
怒り狂う翠は帰宅後ゲームを睨みつけて、興味なんか無いゲームを険しい表情で起動した。
「どれくらい面白いのか、試してやろうじゃない。」
ゲームを一切やらない翠が、初めての体感出来る幻想郷へと体を委ねた。
それは、翠の想像を上回った。
「これが………ゲーム………?」
現実離れした世界観。
でも、確かに感じるのは現実だった。
初めて続きの翠に、少しづつ増える仲間たち。
楽しさを見出した翠は、気付いたらトップランカーのクランで外せない大事な仲間になっていた。
【Anotherfantasia……今となっては、楽しくないなんて絶対言えないや】
翠は、柔らかく笑うのだった。

最悪のゴミスキルと断言されたジョブとスキルばかり山盛りから始めるVRMMO
無謀突撃娘
ファンタジー
始めまして、僕は西園寺薫。
名前は凄く女の子なんだけど男です。とある私立の学校に通っています。容姿や行動がすごく女の子でよく間違えられるんだけどさほど気にしてないかな。
小説を読むことと手芸が得意です。あとは料理を少々出来るぐらい。
特徴?う~ん、生まれた日にちがものすごい運気の良い星ってぐらいかな。
姉二人が最新のVRMMOとか言うのを話題に出してきたんだ。
ゲームなんてしたこともなく説明書もチンプンカンプンで何も分からなかったけど「何でも出来る、何でもなれる」という宣伝文句とゲーム実況を見て始めることにしたんだ。
スキルなどはβ版の時に最悪スキルゴミスキルと認知されているスキルばかりです、今のゲームでは普通ぐらいの認知はされていると思いますがこの小説の中ではゴミにしかならない無用スキルとして認知されいます。
そのあたりのことを理解して読んでいただけると幸いです。

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました
鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。
だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。
チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。
2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。
そこから怒涛の快進撃で最強になりました。
鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。
※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。
その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。
鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。
鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。
まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。

Free Emblem On-line
ユキさん
ファンタジー
今の世の中、ゲームと言えばVRゲームが主流であり人々は数多のVRゲームに魅了されていく。そんなVRゲームの中で待望されていたタイトルがβテストを経て、ついに発売されたのだった。
VRMMO『Free Emblem Online』
通称『F.E.O』
自由過ぎることが売りのこのゲームを、「あんちゃんも気に入ると思うよ~。だから…ね? 一緒にやろうぜぃ♪」とのことで、βテスターの妹より一式を渡される。妹より渡された『F.E.O』、仕事もあるが…、「折角だし、やってみるとしようか。」圧倒的な世界に驚きながらも、MMO初心者である男が自由気ままに『F.E.O』を楽しむ。
ソロでユニークモンスターを討伐、武器防具やアイテムも他の追随を許さない、それでいてPCよりもNPCと仲が良い変わり者。
そんな強面悪党顔の初心者が冒険や生産においてその名を轟かし、本人の知らぬ間に世界を引っ張る存在となっていく。
なろうにも投稿してあります。だいぶ前の未完ですがね。

神速の冒険者〜ステータス素早さ全振りで無双する〜
FREE
ファンタジー
Glavo kaj Magio
通称、【GKM】
これは日本が初めて開発したフルダイブ型のVRMMORPGだ。
世界最大規模の世界、正確な動作、どれを取ってもトップレベルのゲームである。
その中でも圧倒的人気な理由がステータスを自分で決めれるところだ。
この物語の主人公[速水 光]は陸上部のエースだったが車との交通事故により引退を余儀なくされる。
その時このゲームと出会い、ステータスがモノを言うこの世界で【素早さ】に全てのポイントを使うことを決心する…

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

異世界でお取り寄せ生活
マーチ・メイ
ファンタジー
異世界の魔力不足を補うため、年に数人が魔法を貰い渡り人として渡っていく、そんな世界である日、日本で普通に働いていた橋沼桜が選ばれた。
突然のことに驚く桜だったが、魔法を貰えると知りすぐさま快諾。
貰った魔法は、昔食べて美味しかったチョコレートをまた食べたいがためのお取り寄せ魔法。
意気揚々と異世界へ旅立ち、そして桜の異世界生活が始まる。
貰った魔法を満喫しつつ、異世界で知り合った人達と緩く、のんびりと異世界生活を楽しんでいたら、取り寄せ魔法でとんでもないことが起こり……!?
そんな感じの話です。
のんびり緩い話が好きな人向け、恋愛要素は皆無です。
※小説家になろう、カクヨムでも同時掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる