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第三章 旅
サーベルウルフ
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朝ごはんを6人でいっしょに食べ、テントの片づけを各自で始めた。
といっても、廃棄するものと必要なものを分けるだけでいい。
マリの取柄スキル「収納」で収納空間にしまってしまえばよいからだ。捕虜もしまおうかという話になったが、中で死んじゃったりすると気持ち悪いので、昨夜解放している。
取柄スキルは生まれながらに持つスキルで、俺の「優しい心」は取柄スキルだ。だが、自分の取柄スキルが何であるのかは、普通の場合はわからない。
マリの場合も、3日前までわからなかった。旅の荷物をまとめているときに、偶然発現したのだ。
用意していた旅の荷物をマリが片付けているときに、妙な空間が突然現れ、そこに収納できることを発見したのだ。
マリは自分がパーティのお荷物だと勘違いしている。確かに戦闘では皆から守られる存在かもしれないが、非戦闘時のパーティへの貢献度はNo1だ。この収納スキルがどれだけ価値があるものか、彼女はまだピンと来ていないようだ。
マリにはこのスキルがあるので、誰とでも結婚できるよ、と言ったら、じゃあ、お兄ちゃんと結婚するって言われた。
その話をフローラさんに話して、
「マリは全く自分の価値がわかっていないですよね」
とフローラさんに言ったら、
「あなたもね、リンリン君」
と言われた。
「本当に収納ってすごいわ。マリちゃん、あなたがいてくれて、旅がどんなに快適か。あなた、一生離さないわよ」
カトリーヌさんがマリを抱きあげて、大絶賛している。
そういえば、カトリーヌさんにも嬉しいことが起きた。今朝、カトリーヌさんは突然魔法が使えるようになったのだ。悪魔になったのは、恐らくこれが狙いだったのだろう。
カトリーヌさんがずっと悩まされていたハンデキャップだったと思うので、本当に良かったと思う。ユカリさんなんて、よかったよかったと号泣していたぐらいだ。
さて、今日はサーベルウルフの討伐を行う日だ。
100匹以上のサーベルウルフの群れが、森と近隣の村々を縦横無尽に荒らしまわって、大きな被害が出ているという。討伐隊が何度か送られたが、森の地形を上手く使って群れで攻撃してくるサーベルウルフに返り討ちに合っているらしい。
ユカリさんから、討伐にはユカリとルミとマリの3人で行くという提案が出た。
「ルミが索敵して、私が仕留め、マリがしまうを100回繰り返せば終わりだよ」
ユカリが特に気負うこともなく淡々と説明した。
「私が行っても森が燃えちゃうわね」
フローラさんは3人に任せるつもりだ。
「せめてマリの護衛にカトリーヌさんをつけた方がいいのではないでしょうか」
俺はまだ心配だった。
「マリは2人がいるから大丈夫ですわ。私はリンリンさまをお守りしないといけませんわ」
カトリーヌさんも3人で行かせる案に賛成らしい。
「では、3人に討伐は任せて、私とリンリン君とカトリーヌは待機ね」
フローラさんの決定がなされると、討伐隊の3人は森の中に入って行った。
残ったカトリーヌさんと俺は、フローラさんに魔法の指導をお願いした。
カトリーヌさんは魔法を放つのがよほど楽しいらしく、次から次に魔法を放っている。
「カトリーヌさん、そんなに魔法を次から次に出して、疲れませんか?」
「私も気になっていたわ。カトリーヌ、魔力量を測らせてもらっていい?」
「いいわよ。どうぞ」
カトリーヌさんがフローラさんに胸を突き出している。フローラさんは胸を揉むような手つきで、カトリーヌさんの胸に両手をあて、回すようにしながらバストを少し持ち上げる動作を数回繰り返した。
(あれが魔力を測る方法か。絶対にマスタしないといけないな)
「カトリーヌ、あなたの魔力量は私の5倍以上あるわ」
「それはすごいことなの?」
カトリーヌさんは実感がわかないらしい。
「私はこれでも大陸一の魔力量を持つと言われてるわ。実際、私よりも魔力量を持つ人を初めて見たわ。これだけあれば、魔力を借りられるわね。カトリーヌは魔力のタンクとしても優秀ってわけね」
カトリーヌさんはそう聞いて本当に嬉しそうだった。
そうこうしているうちに、討伐隊の3人が森から出てきた。3時間ぐらい森に入っていたことになる。
「お待たせ。100匹どころか187匹もいたよ」
ユカリさんが報告した。
「それにしては、早くないですか? 1匹当たり1分ぐらいで仕留めた計算になりますよ」
「狩り自体は1時間ぐらいで終わったんです。その後、近くの冒険者組合まで行って、換金するのに時間がかかったのです」
(え? マジか。どんだけ凄いんだよ、この人たち)
ルミさんがそう説明している間に、ユカリさんがフローラさんに報酬を渡していた。
「マリの収納、めっちゃ便利だよ。この子、将来超有名になるんじゃない?」
ユカリさんはマリの収納スキルの便利さに興奮していた。
***
夜、フローラさんとルミさんのどっちが来るか楽しみにしていたら、何とカトリーヌさんが忍び込んで来た。
「実は私、今日が18歳の誕生日なんです」
「それはおめでとうございます」
「プレゼントにリンリンさまを頂けますか?」
「はい、こんな僕でよろしければ」
「嬉しいです。あの、私、初めてですので、エスコートもお願いします」
「はい、喜んで」
俺、こんな楽しい人生でいいんでしょうか?
といっても、廃棄するものと必要なものを分けるだけでいい。
マリの取柄スキル「収納」で収納空間にしまってしまえばよいからだ。捕虜もしまおうかという話になったが、中で死んじゃったりすると気持ち悪いので、昨夜解放している。
取柄スキルは生まれながらに持つスキルで、俺の「優しい心」は取柄スキルだ。だが、自分の取柄スキルが何であるのかは、普通の場合はわからない。
マリの場合も、3日前までわからなかった。旅の荷物をまとめているときに、偶然発現したのだ。
用意していた旅の荷物をマリが片付けているときに、妙な空間が突然現れ、そこに収納できることを発見したのだ。
マリは自分がパーティのお荷物だと勘違いしている。確かに戦闘では皆から守られる存在かもしれないが、非戦闘時のパーティへの貢献度はNo1だ。この収納スキルがどれだけ価値があるものか、彼女はまだピンと来ていないようだ。
マリにはこのスキルがあるので、誰とでも結婚できるよ、と言ったら、じゃあ、お兄ちゃんと結婚するって言われた。
その話をフローラさんに話して、
「マリは全く自分の価値がわかっていないですよね」
とフローラさんに言ったら、
「あなたもね、リンリン君」
と言われた。
「本当に収納ってすごいわ。マリちゃん、あなたがいてくれて、旅がどんなに快適か。あなた、一生離さないわよ」
カトリーヌさんがマリを抱きあげて、大絶賛している。
そういえば、カトリーヌさんにも嬉しいことが起きた。今朝、カトリーヌさんは突然魔法が使えるようになったのだ。悪魔になったのは、恐らくこれが狙いだったのだろう。
カトリーヌさんがずっと悩まされていたハンデキャップだったと思うので、本当に良かったと思う。ユカリさんなんて、よかったよかったと号泣していたぐらいだ。
さて、今日はサーベルウルフの討伐を行う日だ。
100匹以上のサーベルウルフの群れが、森と近隣の村々を縦横無尽に荒らしまわって、大きな被害が出ているという。討伐隊が何度か送られたが、森の地形を上手く使って群れで攻撃してくるサーベルウルフに返り討ちに合っているらしい。
ユカリさんから、討伐にはユカリとルミとマリの3人で行くという提案が出た。
「ルミが索敵して、私が仕留め、マリがしまうを100回繰り返せば終わりだよ」
ユカリが特に気負うこともなく淡々と説明した。
「私が行っても森が燃えちゃうわね」
フローラさんは3人に任せるつもりだ。
「せめてマリの護衛にカトリーヌさんをつけた方がいいのではないでしょうか」
俺はまだ心配だった。
「マリは2人がいるから大丈夫ですわ。私はリンリンさまをお守りしないといけませんわ」
カトリーヌさんも3人で行かせる案に賛成らしい。
「では、3人に討伐は任せて、私とリンリン君とカトリーヌは待機ね」
フローラさんの決定がなされると、討伐隊の3人は森の中に入って行った。
残ったカトリーヌさんと俺は、フローラさんに魔法の指導をお願いした。
カトリーヌさんは魔法を放つのがよほど楽しいらしく、次から次に魔法を放っている。
「カトリーヌさん、そんなに魔法を次から次に出して、疲れませんか?」
「私も気になっていたわ。カトリーヌ、魔力量を測らせてもらっていい?」
「いいわよ。どうぞ」
カトリーヌさんがフローラさんに胸を突き出している。フローラさんは胸を揉むような手つきで、カトリーヌさんの胸に両手をあて、回すようにしながらバストを少し持ち上げる動作を数回繰り返した。
(あれが魔力を測る方法か。絶対にマスタしないといけないな)
「カトリーヌ、あなたの魔力量は私の5倍以上あるわ」
「それはすごいことなの?」
カトリーヌさんは実感がわかないらしい。
「私はこれでも大陸一の魔力量を持つと言われてるわ。実際、私よりも魔力量を持つ人を初めて見たわ。これだけあれば、魔力を借りられるわね。カトリーヌは魔力のタンクとしても優秀ってわけね」
カトリーヌさんはそう聞いて本当に嬉しそうだった。
そうこうしているうちに、討伐隊の3人が森から出てきた。3時間ぐらい森に入っていたことになる。
「お待たせ。100匹どころか187匹もいたよ」
ユカリさんが報告した。
「それにしては、早くないですか? 1匹当たり1分ぐらいで仕留めた計算になりますよ」
「狩り自体は1時間ぐらいで終わったんです。その後、近くの冒険者組合まで行って、換金するのに時間がかかったのです」
(え? マジか。どんだけ凄いんだよ、この人たち)
ルミさんがそう説明している間に、ユカリさんがフローラさんに報酬を渡していた。
「マリの収納、めっちゃ便利だよ。この子、将来超有名になるんじゃない?」
ユカリさんはマリの収納スキルの便利さに興奮していた。
***
夜、フローラさんとルミさんのどっちが来るか楽しみにしていたら、何とカトリーヌさんが忍び込んで来た。
「実は私、今日が18歳の誕生日なんです」
「それはおめでとうございます」
「プレゼントにリンリンさまを頂けますか?」
「はい、こんな僕でよろしければ」
「嬉しいです。あの、私、初めてですので、エスコートもお願いします」
「はい、喜んで」
俺、こんな楽しい人生でいいんでしょうか?
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