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捨てられました
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サーシャから憑依を解かれ、何とも心地よかった一体感が急になくなり、とてつもない喪失感が襲ってきたが、そんなことはお構いなしに、サイレスが俺に話しかけてきた。
「サトー殿、まずはあちらの箱に電撃魔法を放っていただけるか?」
(え? 魔法?)
サイレスが指さす箱は、広間の片隅にあった。それをめがけて電撃魔法とやらを放つ必要があるらしい。
しかし、できて当たり前のように言われでも、魔法なんてまるでわからない。
「どうされた。あの箱はしっかりと固定されでおりますゆえ、周りへの影響は気にしなくても結構ですぞ。手加減なく放っていただきたい」
(そう言われても……。ひょっとすると俺が知らないだけで、念じたら、出るのかな?)
俺はイチかバチか、箱に向かって、手拳銃でバーンとやってみた。
しかし、何も起きなかった。
「は、ははは、王の御前ですぞ。サトー殿、ご冗談はおやめください」
サイレスが何とも奇妙な笑い顔になってしまっているが、俺にはなすすべもない。
「サイレス、どういうことじゃ?」
王がイラついた様子でサイレスを問い詰めた。
「王様、お待ちください。ひょっとするとサトー殿は防御に特化した能力をお持ちかもしれません。サトー殿、そうですな」
サイレスの俺への圧がすごかったが、俺はうなずくことはできなかった。嘘はつけない性質なのだ。
だが、サイレスは無理矢理話を進めた。
「どうやらそのようですな。それでは、私と聖女たちで魔法の集中砲火を浴びせますので、サトー殿、防御してくだされ」
サイレスの少し先に控えているあの女性たちは聖女だったのか、と俺が変なところに感心していたとき、ドンという音がしたかと思うと、全身が痺れ、身動き出来なくなった。
サイレスの体からバチバチと青白い火花が出ているのが見えた。
その後、聖女たちから、七色に輝く光線や炎のようなものが次々と放たれ、動けないでいる俺をめがけて迫って来た。
光の奔流が俺をぶっ飛ばし、すさまじい勢いで俺の体は床を転がって行った。全身が沸騰するような猛烈な熱さを感じたかと思うと、それが次々に激痛に変わり、俺はすぐに失神してしまった。
それから、何時間、いや何日経過したのか分からない。次に目を覚ましたとき、俺はかすかに死臭が漂う暗闇の中にいた。
スケルトンは暗闇の中でも、ものが見えるらしい。暗視スコープのように緑がかって見えてきたものは、何百何千もの骨が積みあがってできた骨の山だった。
地面に巨大な縦穴を掘って、火葬した人骨を穴が埋まるまで捨て続ける。後で知ったこの国の埋葬方法だ。俺は死んだと思われ、捨てられたのだった。
(勝手に召喚して、使えないと知ったら、捨てるのか)
怒っていいはずの仕打ちを受けたのに、不思議と腹は立たなかった。
(サーシャっていったな。また会いたいな)
サーシャに憑依したときの彼女との一体感が忘れられなかったのだ。たった数分だけの一回限りの出来事だったのに、心と心が完全に一つになったような、今までに味わったことのない幸福感だった。
(何はともあれ、まずはここから出ないとな)
穴の深さは30メートほどだろうか。俺は土の壁に手をかけた。
「サトー殿、まずはあちらの箱に電撃魔法を放っていただけるか?」
(え? 魔法?)
サイレスが指さす箱は、広間の片隅にあった。それをめがけて電撃魔法とやらを放つ必要があるらしい。
しかし、できて当たり前のように言われでも、魔法なんてまるでわからない。
「どうされた。あの箱はしっかりと固定されでおりますゆえ、周りへの影響は気にしなくても結構ですぞ。手加減なく放っていただきたい」
(そう言われても……。ひょっとすると俺が知らないだけで、念じたら、出るのかな?)
俺はイチかバチか、箱に向かって、手拳銃でバーンとやってみた。
しかし、何も起きなかった。
「は、ははは、王の御前ですぞ。サトー殿、ご冗談はおやめください」
サイレスが何とも奇妙な笑い顔になってしまっているが、俺にはなすすべもない。
「サイレス、どういうことじゃ?」
王がイラついた様子でサイレスを問い詰めた。
「王様、お待ちください。ひょっとするとサトー殿は防御に特化した能力をお持ちかもしれません。サトー殿、そうですな」
サイレスの俺への圧がすごかったが、俺はうなずくことはできなかった。嘘はつけない性質なのだ。
だが、サイレスは無理矢理話を進めた。
「どうやらそのようですな。それでは、私と聖女たちで魔法の集中砲火を浴びせますので、サトー殿、防御してくだされ」
サイレスの少し先に控えているあの女性たちは聖女だったのか、と俺が変なところに感心していたとき、ドンという音がしたかと思うと、全身が痺れ、身動き出来なくなった。
サイレスの体からバチバチと青白い火花が出ているのが見えた。
その後、聖女たちから、七色に輝く光線や炎のようなものが次々と放たれ、動けないでいる俺をめがけて迫って来た。
光の奔流が俺をぶっ飛ばし、すさまじい勢いで俺の体は床を転がって行った。全身が沸騰するような猛烈な熱さを感じたかと思うと、それが次々に激痛に変わり、俺はすぐに失神してしまった。
それから、何時間、いや何日経過したのか分からない。次に目を覚ましたとき、俺はかすかに死臭が漂う暗闇の中にいた。
スケルトンは暗闇の中でも、ものが見えるらしい。暗視スコープのように緑がかって見えてきたものは、何百何千もの骨が積みあがってできた骨の山だった。
地面に巨大な縦穴を掘って、火葬した人骨を穴が埋まるまで捨て続ける。後で知ったこの国の埋葬方法だ。俺は死んだと思われ、捨てられたのだった。
(勝手に召喚して、使えないと知ったら、捨てるのか)
怒っていいはずの仕打ちを受けたのに、不思議と腹は立たなかった。
(サーシャっていったな。また会いたいな)
サーシャに憑依したときの彼女との一体感が忘れられなかったのだ。たった数分だけの一回限りの出来事だったのに、心と心が完全に一つになったような、今までに味わったことのない幸福感だった。
(何はともあれ、まずはここから出ないとな)
穴の深さは30メートほどだろうか。俺は土の壁に手をかけた。
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